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高齢者に多い病気と急変のサイン|受診の目安を医師が解説する総合ガイド

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高齢者に多い病気と急変のサイン|受診の目安を医師が解説する総合ガイド

高齢者に多い病気と急変のサイン|受診の目安を医師が解説する総合ガイド

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「最近、親の様子がなんとなくおかしい」「救急を呼ぶべきか、様子を見るべきか迷う」——そのような不安を抱えながらこのページを開いてくださった方のために、高齢者に多い病気の全体像・急変のサイン・受診の目安を、消化器外科専門医の監修のもとで体系的にまとめました。情報を整理することで、いざというときに落ち着いて動けるようになることを目指しています。


高齢者に多い病気と急変サインを知っておく意味

高齢者は症状が典型的に出ないことがある

若い世代であれば「肺炎→高熱・咳・呼吸困難」と比較的はっきりした症状が出やすいのに対し、高齢者の場合は熱が出にくい、痛みを訴えない、食欲低下や意識の変化だけで現れることが少なくありません。これを「非典型的な症状発現」と呼びます。そのため、家族が「風邪かな」「年のせいかな」と思っているうちに、実は肺炎や尿路感染症が進んでいることがあります。

「様子を見る」だけでは見逃しやすい急変がある

高齢者は体の予備力(生理的余力)が低下しているため、若い世代では軽症で済む病気でも急速に重篤化しやすい傾向があります。特に脱水・感染症・心不全などは、数時間で状態が大きく変化することがあります。「とりあえず様子を見ましょう」と決断を先送りにすることが、結果として治療の難しい状態に至るリスクを高める場合があります。

早めの情報収集で在宅医療・施設・入院を含めて選びやすくなる

いざ急変が起きてから情報を集めようとすると、判断の時間が限られ、選択肢が狭まります。訪問診療・訪問看護・施設入居・入院といった選択肢のそれぞれについて、穏やかな時期に仕組みを知っておくことが、本人と家族の双方にとって大きな助けになります。まずは気づく・見極めるためのまとめから体系的に確認いただけます。


高齢者に多い病気の全体像

呼吸器の病気(肺炎、誤嚥性肺炎、気管支炎など)

高齢者の死因として、肺炎は常に上位に位置します(厚生労働省「令和4年人口動態統計」)。特に誤嚥性肺炎(食べ物や唾液が気道に入ることで起きる肺炎)は75歳以上で割合が増し、繰り返し起こりやすい特徴があります。アスペルギルスなどの真菌(カビ)による肺炎(アスペルギルス肺炎)は免疫力が低下した高齢者に起こりうる感染症で、通常の抗菌薬では改善しないため早期の専門的検索が必要です。

心臓・血管の病気(心不全、脱水、血圧変動など)

心不全とは、心臓のポンプ機能が低下し、全身に必要な血液を送り出せなくなった状態です。「うっ血性心不全」はその代表で、肺や全身に血液がうっ滞(たまる)ことでむくみや息切れが生じます。高血圧の症状が気になるときの受診の目安もあわせて参考にしてください。高血圧は心不全・脳卒中の主要な危険因子です。

脳の病気(脳梗塞、脳出血、一過性脳虚血発作)

脳梗塞は脳の血管が詰まる病気、脳出血は血管が破れて出血する病気です。一過性脳虚血発作(TIA)は症状が数分〜1時間以内に消える一時的な発作ですが、脳梗塞の前触れである可能性が高く、見逃してはなりません。どちらも発症後の時間が治療の効果に直結するため、即座の受診が重要です。

尿路・腎臓の病気(尿路感染症、腎機能低下)

尿路感染症は高齢女性・前立腺肥大のある男性・介護が必要な方に多い感染症です。典型的な排尿時痛を訴えず、発熱とぐったりした状態だけで現れることがあります。腎機能が低下した状態(慢性腎臓病)では、薬の排泄が遅れて副作用が出やすくなるほか、脱水で急激に悪化することもあります。

消化器の病気(便秘、腸閉塞、消化管出血)

高齢者の便秘は非常に多く、活動量の低下・水分摂取不足・薬の影響などが重なって起きます。腸閉塞(腸が詰まって内容物が通過しなくなる状態)は強い腹痛・嘔吐・腹部膨満で現れ、救急対応が必要なこともあります。消化管出血は黒い便(タール便)や血便として気づかれることがありますが、高齢者ではゆっくりと出血が続き貧血が先に進む場合もあります。

骨・筋肉・栄養の問題(転倒、骨折、サルコペニア、フレイル)

サルコペニアとは加齢に伴う筋肉量・筋力の低下で、転倒・骨折のリスクを高める状態です。フレイルは身体・精神・社会面を含む「虚弱」の状態で、サルコペニアはその一要素です。腰椎圧迫骨折後の日常生活で気をつけたいこともご参照ください。

認知症・せん妄・意識変化

認知症はゆっくりと進行する記憶・判断力の低下ですが、せん妄(急性の意識混乱状態)は感染症・脱水・薬の影響などで数時間〜数日で突然現れる点が異なります。認知症の方にせん妄が合併すると区別が難しくなりますが、「急に変わった」のであればせん妄を疑うことが重要です。認知症とともに自宅で暮らすための支援についてはこちらのガイドも参考にしてください。


すぐ受診・救急要請を考える急変サイン

急変サインは「重篤な場合は迷わず119番」が基本です。以下のいずれかに当てはまる場合は、まず救急要請を検討してください

意識がもうろうとしている、呼びかけへの反応が悪い

普段と比べて会話がかみ合わない、目を開けない、名前を呼んでも反応が薄いといった変化は、脳・心臓・代謝異常など多くの緊急疾患のサインである可能性があります。

片側の手足の麻痺、ろれつが回らない、急な視野異常

これらは脳梗塞・脳出血の典型的な症状です。発症から4.5時間以内(脳梗塞の場合)にt-PA(血栓溶解療法)が適応になりうるため、時間が治療成績に直結します。「FAST」(顔のゆがみ・腕の麻痺・話し方の異常・Time:発症時刻の確認)を覚えておくと便利です。

強い息苦しさ、唇が紫、横になると苦しい

唇や爪の色が紫・青みがかる(チアノーゼ)、横になると呼吸が苦しくなる(起坐呼吸)は、心不全・重症肺炎などの緊急サインです。

胸痛、冷や汗、顔面蒼白

急性心筋梗塞・大動脈解離などが疑われます。高齢者・糖尿病のある方は典型的な胸痛を訴えず、「胃が痛い」「だるい」だけの場合もあるため注意が必要です。

高熱とぐったりしている、食事や水分が取れない

高熱+意識の変化は、重症感染症(敗血症)の可能性があります。敗血症は早期の抗菌薬投与が命を左右するため、様子を見ずに救急受診を検討してください。

転倒後の強い痛み、歩けない、頭を打った後の変化

転倒後に股関節・骨盤の強い痛みで立てない場合は骨折を疑います。また、頭を打った後に数時間〜数日かけて意識が悪化する「慢性硬膜下血腫」は、初期は比較的元気に見えることもあるため注意が必要です。

けいれん、意識消失、急なけいれん様の動き

初めてのけいれんは必ず医療機関を受診してください。既知のてんかんでも、5分以上続く・繰り返す場合は救急対応が必要です。

尿が極端に少ない、強い脱水が疑われる

丸一日ほとんど尿が出ない、口腔内が著しく乾燥している、皮膚のつまみが戻りにくいなどは、重篤な脱水・腎不全のサインです。

家族が「いつもと違う」と強く感じる変化

医療的に名前のついた症状でなくても、「今日はなんか変」という家族の直感は非常に重要なサインです。家族の違和感は診断の手がかりになることがあります。迷ったときの対応について、急変時に家族が迷わないために知ることも事前に確認しておくことをお勧めします。


症状別にみる高齢者に多い病気

発熱・咳・痰があるときに考える病気

肺炎

肺に細菌・ウイルスが感染し炎症が起きた状態です。高齢者では発熱が目立たず、食欲低下・ぐったり感・意識の変化だけで現れることがあります。CRPや白血球数などの血液検査・胸部レントゲンで診断します。

誤嚥性肺炎

食事中のむせだけでなく、睡眠中の無意識の誤嚥(不顕性誤嚥)でも起こります。繰り返す誤嚥性肺炎では、嚥下(えんげ)機能評価・食事形態の調整・口腔ケアが予防の柱となります。訪問診療の現場では嚥下評価と栄養管理を組み合わせた対応を行っています。

インフルエンザやCOVID-19などの感染症

高齢者はこれらの感染症でも重症化しやすく、入院が必要になる場合があります。早期の抗ウイルス薬投与(インフルエンザであればオセルタミビルなど)が有効なため、発症後できるだけ早く受診してください。

息切れ・むくみ・体重増加があるときに考える病気

うっ血性心不全とは

心臓のポンプ機能が落ちて血液の流れが滞り、肺や全身に水分がたまった状態です。数日で2〜3kg以上体重が増えた、足がむくんで靴が入らなくなったなどは要注意のサインです。クリニカルシナリオ(CS)分類という考え方では、うっ血性心不全の緊急度を血圧・酸素飽和度などで分類し、治療の方針を決めます。

むくみと心臓の関係

むくみ(浮腫)は心臓・腎臓・肝臓・栄養不足など多くの原因で起こります。両足のむくみ・横になると呼吸が苦しい・夜間の頻尿増加は心不全を疑うサインです。一方、片足だけのむくみは深部静脈血栓症を疑う必要があります。

体動で苦しい、夜間に息苦しい場合の注意点

夜間に突然息苦しくなって目が覚める(発作性夜間呼吸困難)は心不全の重要な症状です。「横になれず椅子に座って眠っている」状態が続いているようであれば、早急な受診が必要です。

ふらつき・脱水・食欲低下があるときに考える病気

脱水

高齢者は口渇を感じにくく、腎臓の水分保持機能も低下しているため、気づかないうちに脱水が進みます。夏場だけでなく冬の室内暖房・発熱時にも注意が必要です。

低栄養

食事量が減ると、体重減少・筋力低下・免疫低下が連鎖します。体重が1か月で2〜3kg以上落ちている場合は、かかりつけ医に相談してください。

薬の副作用や飲み合わせ

複数の薬を服用している高齢者(ポリファーマシー)では、薬の相互作用・副作用がふらつき・食欲低下・意識変化の原因になることがあります。お薬手帳を持参して定期的に処方内容を見直すことが重要です。

急な混乱・会話がかみ合わないときに考える病気

せん妄

急性の意識混乱で、「急に別人のようになった」「昼夜が逆転した」「幻覚を訴える」などが特徴です。入院・環境変化・感染症・脱水・薬が誘因になります。

認知症の進行との違い

認知症はゆっくり進みますが、せん妄は数時間〜数日で急激に発症するのが大きな違いです。「急に悪くなった」場合はせん妄・感染症・脱水を先に除外することが重要です。

感染症や脱水が背景にあること

せん妄の背景に隠れた感染症(尿路感染・肺炎など)や脱水がある場合、その治療でせん妄も改善することがあります。原因を探さずに鎮静薬だけで対応すると悪化する場合があります。

便秘・腹痛・吐き気があるときに考える病気

便秘

3日以上排便がない、強くいきまないと出ない、残便感が強いなどが続く場合は、腸の動きを促す薬や食事・水分の調整が必要です。

腸閉塞

強い腹痛・嘔吐・腹部の張り・排便ガスが出ないなどは腸閉塞を疑います。以前に腹部の手術を受けたことがある方は癒着による閉塞も起こりやすいため、早めの受診が必要です。

消化管出血

黒いタール状の便・赤い血便・吐血は消化管出血のサインです。抗凝固薬・NSAIDs(非ステロイド性消炎鎮痛薬)を服用中の方はリスクが高まります。

尿の異常・発熱があるときに考える病気

尿路感染症

頻尿・排尿時痛・血尿に加え、高熱とぐったりした状態が出れば腎盂腎炎(じんうじんえん)に進展している可能性があります。高齢者では排尿症状が目立たず発熱のみのこともあります。困りごとへの対処法にも対応の考え方をまとめています。

腎機能低下

慢性腎臓病(CKD)は長年かけて進行します。むくみ・倦怠感・食欲低下・貧血などが症状として現れることがありますが、初期は無症状のことも多いため、定期的な血液検査が重要です。

歩けない・転ぶ・骨折が疑われるときに考える病気

骨折

高齢者の骨折は脊椎圧迫骨折・大腿骨近位部骨折(股関節骨折)が多く、後者は手術・入院・長期リハビリを要することが多い病態です。

サルコペニアとフレイルの違い

サルコペニアは主に筋肉量・筋力・身体機能の低下を指す概念です。フレイルは筋肉だけでなく精神・社会的なもろさも含む、より広い概念です。サルコペニアはフレイルの重要な構成要素であり、両者が重なって転倒・骨折リスクが高まります。

サルコペニア予防の考え方

適切なたんぱく質摂取・レジスタンス運動(筋力トレーニング)・日常的な身体活動の維持が予防の柱です(日本老年医学会ガイドラインより)。訪問診療の場でも、食事量・活動量の確認と栄養指導を組み合わせた支援が可能です。


意識状態の見方と受診判断の補助

JCSとは何か

JCS(Japan Coma Scale:ジャパン・コーマ・スケール)は日本で広く使われる意識レベルの分類法です。「目が自然に開いている(0)」から「刺激しても覚醒しない(300)」まで3桁で表します。数字が大きいほど意識障害が重いことを示します。

JCS 状態の目安
0 意識清明
1〜3 覚醒しているが、やや混乱や見当識障害
10〜30 刺激で覚醒するが、放置すると眠ってしまう
100〜300 刺激しても覚醒しない

GCSとは何か

GCS(Glasgow Coma Scale:グラスゴー・コーマ・スケール)は国際的に使われる意識評価法で、「開眼(E)」「言語反応(V)」「運動反応(M)」の3項目を合計します(満点15点、最低3点)。

EVMで見る意識の基本

GCSはEVM——Eye opening(開眼)、Verbal response(言語)、Motor response(運動)——の頭文字から構成されます。救急・集中治療の現場では「E4V5M6=GCS15(正常)」のように記録します。

家族が確認できる意識の変化の例

専門的なスコアの記録は医療職が行うものですが、家族でも以下の変化は確認できます。

  • 名前を呼んで目を開けるか
  • 「今日は何日ですか」など簡単な質問に答えられるか
  • 手を握るよう頼んで従えるか
  • 普段と比べて反応が遅い・少ない

数値よりも「いつもと違う」が重要な場面

JCSやGCSはあくまで医療職が使う目安です。家族にとって最も重要なのは「いつものその人と違う」という変化です。スコアが良くても普段と比べて明らかに変であれば、遠慮なく医療機関に相談してください。


受診・相談の目安

すぐに救急要請を検討する症状

  • 呼びかけへの反応が明らかに悪い、意識がない
  • 片側の麻痺・ろれつが回らない・急な激しい頭痛
  • 強い息苦しさ・唇が紫・横になれない
  • 胸痛・冷や汗・顔面蒼白
  • 5分以上続くけいれん

当日中に医療機関へ相談したい症状

  • 38℃以上の発熱+食事・水分が取れない
  • 転倒後に痛みで動けない
  • 数日で急に体重が増えた(2〜3kg以上)
  • 黒い便・血便・吐血

数日以内にかかりつけ医へ相談したい症状

  • 食欲が落ちて体重が減ってきた
  • 足のむくみが続いている
  • 尿の色がいつもより濃い・少ない
  • ふらつきが増えた・転倒が増えた

迷うときはどこに相談するか

症状の重さの判断に迷ったときは、救急安心センター(#7119)(神奈川県では24時間対応)に電話すると医療職が相談に応じます。また、かかりつけ医に電話で相談するのも有効です。

かかりつけ医・救急・訪問診療の使い分け

状況 対応の目安
意識障害・麻痺・強い息苦しさ 119番(救急要請)
急な発熱・転倒・急な変化 救急外来・当日受診
慢性疾患の管理・定期処方 かかりつけ医
通院が困難・退院後の継続管理 訪問診療を検討

家族だけで相談してよいケース

本人が認知症や体力低下で来院できない場合でも、ご家族のみで相談窓口に連絡することは可能です。状況を整理してから医療機関に連絡するだけでも、次のステップが見えやすくなります。

施設入居や入院を否定せず選択肢として比べる視点

「自宅にいること」が必ずしも唯一の正解ではありません。施設入居・入院・在宅医療のそれぞれに適した状況と限界があります。選択肢を比べるためのまとめでは、状況に応じた比較の視点を整理しています。「うちの親は訪問診療の対象になるのか」——その判断から一緒に整理します。まずはご予約・お問い合わせでお気軽にご相談ください。


在宅で医療を受けられるケースと限界

訪問診療で対応しやすい状態

  • 慢性疾患(心不全・糖尿病・COPD・認知症など)の継続管理
  • 定期的な診察・処方・検査が必要だが通院が難しい
  • 誤嚥性肺炎の繰り返し予防・栄養管理
  • 胃ろう・在宅酸素・褥瘡(床ずれ)などの処置管理

訪問診療についての詳細は訪問診療・在宅医療の完全ガイドでご確認ください。

体調悪化時に在宅医療が役立つ場面

発熱・脱水・傷の管理など、軽〜中等度の急性増悪であれば在宅での点滴・採血・画像評価(エコーなど)で対応できる場合があります。夜間・休日の電話相談体制が整っていれば、「救急に行くべきか」の判断にも役立ちます。

入院や救急搬送が必要になる場合

在宅医療には対応できる範囲の限界があります。手術が必要な病態・集中治療が必要な状態・高度な検査が必要な場合は、病院への入院・救急搬送が最善の選択です。訪問診療は「入院の代わり」ではなく、必要な医療と組み合わせながら在宅生活を支える仕組みです。

かかりつけ医との併診・引き継ぎは可能

訪問診療を始めることで、今のかかりつけ医との関係を切る必要はありません。専門外来への通院と訪問診療の併診が可能なことも多く、病状に応じて役割分担しながら医療を受けられます。

本人が通院できないときの家族相談の活用

ご本人が来院・通院できない状況でも、ご家族だけが窓口に相談してスタートすることができます。相談・依頼するためのまとめには、相談の流れや準備することを具体的に記載しています。


退院後の生活でよくある困りごとと在宅医療

退院日が急に決まりやすい理由

日本の病院では、急性期治療が一段落すると「回復期・療養期」への移行を促す仕組みが働きます。入院当初は「もう少し入れてもらえる」と思っていても、担当医から数日後の退院を告げられることは珍しくありません。家族は短時間で退院先を決める状況に置かれることがあります。

病院で「自宅か施設か」の二択に見えやすい理由

退院支援の相談では「自宅療養」か「施設入所」のどちらかで話が進みやすい構造があります。しかし自宅に訪問診療・訪問看護・介護サービスを組み合わせれば、自宅療養の難易度は大きく下がります。「家では無理」と感じていた方でも、在宅医療を組み合わせれば自宅復帰が現実的になるケースは少なくありません。退院後の療養先の選び方についてはこちらのガイドもあわせてご参照ください。

退院前カンファレンスに在宅医が加わるメリット

退院前カンファレンス(病院・家族・介護・在宅医などが集まる会議)に在宅医が加わることで、退院後の医療管理の方針・処方内容・緊急時の連絡フローを引き継ぎ前に確認できます。退院当日から訪問診療を開始するケースでも、この引き継ぎがあることで安全なスタートが可能になります。

地域包括ケア病棟の入院期間に上限があることと準備の考え方

地域包括ケア病棟は急性期後のリハビリ・在宅復帰準備の場ですが、入院期間は原則60日が上限と定められています(2024年時点、診療報酬制度による)。「もう少しゆっくりできると思っていた」という家族の声はよく聞かれますが、この上限を逆算して早めに退院後の準備を進めることが重要です。

退院支援で早めに確認したいこと

  • 退院後に必要な医療処置・薬の内容
  • 訪問診療・訪問看護の手配
  • 介護保険のケアプラン(ケアマネジャーの選定)
  • 福祉用具・住宅改修の手続き
  • 緊急時の連絡先の整理

費用・手続きの詳細は費用と手続きを確認するためのまとめでご確認ください。


家族が事前に準備しておくとよいこと

服薬内容とお薬手帳をまとめる

服用中の薬・サプリメント・市販薬を一覧にし、お薬手帳に記録しておくことで、救急・訪問診療いずれの場面でもスムーズな情報提供が可能になります。

既往歴・手術歴・アレルギーを整理する

「過去にかかった病気」「受けた手術」「薬や食べ物のアレルギー」を、家族が把握してメモにまとめておきましょう。救急搬送時に本人が説明できない状況でも役立ちます。

普段の生活動作と食事量を記録する

「一人でトイレに行けるか」「食事は何割食べるか」「歩行補助具は使うか」などの日常生活動作(ADL)の基準を把握しておくと、状態変化に気づきやすくなります。

連絡先を一覧にする

かかりつけ医・訪問看護ステーション・ケアマネジャー・かかりつけ薬局・救急病院の電話番号を一覧にして冷蔵庫などに貼っておくことを推奨します。

緊急時の希望を家族で共有する

「どこまでの治療を望むか」「最期をどこで迎えたいか」——こうした意思(アドバンス・ケア・プランニング:ACP)を穏やかな時期に話し合っておくことが、緊急時の判断を助けます(厚生労働省「人生会議」参照)。在宅での看取りと終末期ケアのガイドも参考にしてください。


当院の在宅診療の現場から

AIプラスクリニックたまプラーザでは、病院の地域連携室・医療ソーシャルワーカー(MSW)からの紹介を受け、退院前カンファレンスに在宅医として参加し、入院中の医療情報を引き継いだうえで退院当日から訪問診療を開始するケースに継続的に対応しています。退院直後は病状が不安定になりやすい時期であるため、24時間の連絡体制を整え、夜間・休日の急変にも対応しています。

監修医の消化器外科・消化器内視鏡の専門的バックグラウンドを活かし、在宅での栄養管理・嚥下評価・胃ろう管理・在宅酸素療法にも対応しています。地域の訪問看護ステーション・居宅介護支援事業所と連携することで、医療と介護を組み合わせた包括的な支援を行っています。診療エリアは、たまプラーザ・あざみ野・美しが丘・新石川など横浜市青葉区を中心とした地域で、隣接する都筑区・川崎市宮前区もご相談に応じます。


よくある質問

Q. 高齢者の肺炎はどんな症状で気づきやすいですか

高齢者の肺炎は、若い人のような高熱・激しい咳が出ないことがあります。「食欲がない」「ぐったりしている」「いつもより会話が少ない」「呼吸が少し速い気がする」といった変化が最初のサインになる場合があります。発熱がなくても、こうした変化が数日続くようであれば早めの受診をお勧めします。

Q. 誤嚥性肺炎は食事中のむせだけで判断できますか

むせは誤嚥のサインの一つですが、高齢者ではむせを感じないまま食べ物・唾液が気道に入る「不顕性誤嚥(ふけんせいごえん)」が少なくありません。特に夜間の睡眠中に起こることもあります。むせが少ないから安心、とは言えないため、繰り返す肺炎・体重減少・食事時間の延長などがある場合は嚥下機能の評価をお勧めします。

Q. うっ血性心不全はむくみだけで分かりますか

むくみは心不全の重要なサインですが、むくみだけで心不全と判断することは医師でも難しく、心エコー・血液検査(BNPなど)などの検査が必要です。また、「体重が急増した」「夜横になると咳が出る・苦しい」「少し動いただけで息切れする」といった症状がむくみと一緒に出てくる場合は、心不全の可能性として早めの受診を検討してください。

Q. JCSやGCSは家族でも使えますか

JCS・GCSは主に医療職が評価に使うスコアです。家族の方が正確に数値化する必要はなく、「名前を呼んで目を開けるか」「簡単な質問に答えられるか」「指示通りに動けるか」といった観点で普段と比べた変化を観察することのほうが実際には重要です。変化を感じたら、その変化の内容を医療機関に伝えるだけで十分です。

Q. 本人が通院を嫌がる場合はどうすればよいですか

通院を嫌がる理由(移動がつらい・病院が苦手・自分は大丈夫と思っている、など)によって対応が変わります。まず家族だけが相談窓口に連絡し、状況を説明することから始めることができます。訪問診療であれば、ご本人が自宅にいながら医師の診察を受けられるため、「通院しなくていい」という点で受け入れやすくなる方もいらっしゃいます。通院が難しくなったときの選択肢も参考にしてください。

Q. サルコペニアとフレイルはどう違いますか

サルコペニアは筋肉量・筋力・身体機能の低下に焦点を当てた概念です。フレイルはこれに加えて、意欲の低下・社会的つながりの喪失なども含む、より幅広い「もろさ」の状態です。両者は重なることが多く、どちらも早期から運動・栄養・社会参加で予防・改善を図ることが推奨されています。

Q. 家族だけで訪問診療の相談をしてもよいですか

はい、可能です。ご本人の状態を把握しているご家族から状況をお聞きし、訪問診療の適否・手続きの流れをご説明します。ご本人が来院できない場合でも、まずはお電話またはウェブからご相談ください。

Q. 訪問診療を始めたら今のかかりつけ医は変える必要がありますか

必ずしも変える必要はありません。専門外来への通院と訪問診療を組み合わせること(併診)は多くの場合可能です。どのような役割分担にするかは、かかりつけ医と訪問診療医が連携しながら調整します。

Q. 施設入居や転院を選んだほうがよい場合もありますか

あります。医療依存度が高い・在宅での介護力が不十分・家族の介護負担が限界に達しているなど、自宅療養よりも施設や入院のほうが本人の安全と家族の生活を守れる場合があります。選択肢を比べるためのまとめでは、それぞれのメリット・デメリットを整理しています。どの選択が正解かは状況によって異なり、どれかを選んだことを責める必要はありません。


まとめ|高齢者の急変サインは早めに共有し、相談先を確保しておく

「自宅でも医療を受ける」選択肢を知っておく

高齢者の病気は症状が分かりにくく、急変が早いことがあります。一方で、訪問診療・訪問看護・介護サービスを組み合わせることで、多くの方が自宅で安心して療養生活を続けることができます。「自宅での医療」という選択肢を知っておくことで、いざというときの選択肢が広がります。在宅医療全体の仕組みについては訪問診療・在宅医療の完全ガイドで詳しくご確認いただけます。

迷ったら早めに相談して今後の備えを進める

「まだ早いのでは」という気持ちはよく理解できます。しかし、状態が悪化してからでは選べる手段が少なくなります。早い段階で相談し、情報を整理しておくことが、結果として本人と家族の双方を助けます。相談・依頼するためのまとめを参考に、まずは一歩を踏み出していただければ幸いです。


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参考文献・出典


本記事の監修医師

佐藤 靖郎(さとう やすお)

医師(医学博士)/AIプラスクリニックたまプラーザ 監修医

専門:消化器外科・消化器内視鏡/一般内科/在宅医療・高齢者医療・がん緩和ケア・心不全・呼吸不全

略歴

1988年 福島県立医科大学医学部卒業、医師免許取得。1997年 同大学大学院修了、博士号取得。国立国際医療研究センター、東京新宿メディカルセンター、NTT東日本関東病院、横浜市立大学関連病院、国立病院機構横浜医療センター外科医長・救命救急センター副部長、済生会若草病院(横浜市)外科部長・内視鏡センター・診療部長を歴任。丸亀医療センター・佐々木病院副理事長、日立おおみか病院理事を経て現在に至る。

公的役割

厚生労働省「地域連携クリティカルパスモデルの開発」班研究員、全国保健所長会 地域連携パス推進班アドバイザー、神奈川県がん診療連携協議会 地域連携クリティカルパス部会 相談役。


AIプラスクリニックたまプラーザのご案内

ご家族の通院が難しくなってきた、退院後の療養先に迷っている、自宅でどこまで医療が受けられるか知りたい——そうしたご相談を、たまプラーザで承っています。

たまプラーザ・あざみ野・美しが丘・新石川など横浜市青葉区を中心とした地域で、訪問診療・在宅医療を行っています。隣接する都筑区・川崎市宮前区もご相談に応じます。

ご予約・お問い合わせ / TEL:045-909-0117(横浜市青葉区)

ご相談の際は、下記をご用意いただくとスムーズです。

  • お薬手帳または薬剤情報提供書
  • 医療保険証・各種受給者証
  • 介護保険証・介護保険負担割合証
  • (お持ちであれば)診療情報提供書(紹介状)や退院時サマリー

ご本人が来院できない場合のご相談も承ります。


免責事項

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個々の患者さんの診断・治療を代替するものではありません。症状や治療方針の判断は、必ず主治医にご相談ください。制度・費用は改定される場合があります。最新の情報は各自治体・保険者の窓口でご確認ください。


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