親の通院が難しくなったら|受診をあきらめる前に知っておきたい選択肢
「最近、外来への連れ出しが本当につらそうで……」「自分も仕事があるし、毎回付き添うのも限界に近い」——そう感じているご家族は、決して少なくありません。
通院が難しくなったとき、まず知っておいてほしいことは「受診をあきらめる必要はない」という事実です。 医療との関わり方を変えることで、親の状態や希望に合った医療を継続できる可能性があります。
このガイドでは、通院が難しくなったときに取れる選択肢を体系的に整理し、何から動けばよいかを分かりやすく示します。在宅医療・訪問診療をはじめ、介護タクシー、退院支援、費用・制度まで、一つひとつ確認していきましょう。
通院が難しくなったとき、まず知っておきたいこと
「受診をやめる」ではなく「受診方法を変える」という考え方
高齢になり、あるいは病気の進行とともに「病院まで出かけること」が負担になってきた場合、多くのご家族はどうしても「通院をやめるしかないか」という方向で考えがちです。しかし、通院が困難になっても医療との接点を断つ必要はありません。
受診方法を変える——すなわち、移動の手段を工夫する、自宅まで医師に来てもらう、複数のサービスを組み合わせる——という発想の転換が、本人・家族双方の負担を大きく減らします。
自宅療養・通院継続・入院・施設入居の主な選択肢
通院が難しくなったときに検討できる主な選択肢を以下に整理します。
いずれの選択も否定されるものではなく、状況や本人の希望、家族の支援能力によって最適な組み合わせが変わります。このガイドの通院が難しくなったとき|気づく・見極めるためのまとめでは、どの選択肢が現在の状態に合っているかを整理する視点を詳しく解説しています。
まだ早いと思う段階で相談してよい理由
「まだそこまでひどくはないし……」と感じていても、相談を先延ばしにするほど選択肢は狭まります。状態が悪化してから動き始めると、在宅医療の導入準備が整う前に入院・施設入居以外の選択がなくなるケースもあります。情報を早めに集めることは、本人の自宅で療養したいという希望を守ることにつながります。
こんなときは通院の方法を見直すサイン
歩行や移動に介助が必要になってきた
自力で立ち上がれない、車椅子が必要になった、段差の乗り越えに時間がかかるようになった——こうした変化が続くようであれば、現在の通院スタイルを見直す時期です。
受診のたびに強い負担や疲労が残る
外来受診の翌日、親がぐったりしていたり、体調が崩れたりすることが続く場合、通院そのものが体力を消耗させているサインかもしれません。
予約通院でも待機や移動が難しい
待合室での長時間の着席が難しい、院内の移動だけで疲弊する、といった場合は通院の形態を根本から見直すことを検討してください。
退院後の通院先が決まらない
入院中は病院が主治医として管理してくれますが、退院後の外来フォローをどこで行うか決まっていないケースも少なくありません。退院後に通院先を探すことは思いのほか難しく、早期に相談することが重要です。
家族の付き添いだけでは通院が続けにくい
仕事・育児・遠距離介護など、家族が毎回付き添うことには現実的な限界があります。付き添い疲れは長期化すると介護者自身の健康問題にも発展しうるため、仕組みで解決することを考えましょう。介護タクシーが必要か迷う方へ、通院困難の見極め方も参考にしてください。
通院が難しいときの主な選択肢
介護タクシーや福祉タクシーを使って通院する
介護タクシーは、車椅子のまま乗降できる車両や、ストレッチャーに対応した車両を使って移動をサポートするサービスです。ヘルパーが乗降介助を行うタイプもあります。費用は介護保険の適用範囲・事業者の設定により異なります。詳しくは介護タクシーの利用条件についての基礎知識と介護タクシーの料金の見方と費用の整理をご覧ください。
訪問診療を利用して自宅で診察を受ける
訪問診療とは、医師が定期的に患者の自宅(または施設)を訪問し、診察・処方・検査・療養の管理を行う医療の仕組みです(健康保険適用)。「往診」が患者の求めに応じてその都度訪問するのに対し、訪問診療は計画的・定期的な訪問を指します。通院が困難な状態であれば、要介護認定の有無にかかわらず対象となり得ます(詳細は主治医や在宅医療機関にご確認ください)。
訪問看護や在宅サービスを組み合わせる
医師の訪問診療だけでなく、看護師が定期的に訪問する訪問看護や、理学療法士・作業療法士による訪問リハビリを組み合わせることで、自宅での療養体制をより充実させることができます。筋力低下が気になる場合は自宅でできる筋力低下への対応とリハビリの考え方も参照してください。
病院への入院や施設入居を検討する
自宅での療養が医療的・介護的に難しい状況では、入院や施設入居が適切な選択となる場合があります。これらの選択は「あきらめ」ではなく、本人の安全と安心を守る一つの選択肢です。
かかりつけ医を変えずに併診・引き継ぎを行う
訪問診療を始めても、これまでのかかりつけ医との関係を断つ必要はありません。外来と訪問診療を並行する併診や、かかりつけ医から在宅医への引き継ぎ(連携)が可能な場合が多く、かかりつけ医の紹介状があると引き継ぎがよりスムーズになります。
訪問診療で自宅ではどんな医療が受けられるか
医師の定期訪問でできること
訪問診療では、診察・処方・各種検査(採血・尿検査・超音波など)・注射・点滴・栄養管理の指導・在宅酸素の管理・胃ろう管理・褥瘡(じょくそう/床ずれ)の処置など、幅広い医療行為が自宅で受けられます。また、療養上の相談や、本人・家族への説明も訪問時に行うことができます。
必要に応じて行う検査や処方の考え方
毎回すべての検査を行うわけではなく、症状や病状の変化に応じて必要な検査を計画的に実施します。処方は定期的に見直され、病状の変化があれば臨時往診で対応することも可能です。
在宅で対応しやすい症状・病気の例
- パーキンソン病などの神経疾患の長期療養管理
- 心不全・慢性呼吸不全(在宅酸素療法を含む)の管理
- がんの緩和ケア(疼痛管理・症状コントロール)
- 認知症の療養管理
- 糖尿病・高血圧などの慢性疾患の継続的な管理
- 胃ろう・ストーマ(人工肛門)などのデバイス管理
- 退院後の傷の処置・栄養管理
自宅で対応が難しく入院が必要になる場合
訪問診療で対応できる範囲には限りがあります。骨折・手術が必要な状態、急性の感染症・肺炎の重症化、高度な検査・処置が必要な場合などは入院が必要になることがあります。在宅医療を選んでいても、状態によっては入院となる可能性があることは、あらかじめご承知おきください。
家族のみの相談でも利用できること
本人が来院できない場合でも、ご家族だけで来院・問い合わせをして相談することができます。「うちの親は訪問診療の対象になるのか」——その判断から一緒に整理しますので、まずは気軽にご相談ください。通院が難しくなったとき|相談・依頼するためのまとめに、相談前の準備や相談の流れを整理しています。
退院後に「自宅か施設か」で迷ったときの考え方
病院が示す選択肢と在宅医療を入れた選択肢の違い
病院のスタッフから退院後の生活について相談を受けると、多くの場合「自宅か施設か」という形で選択肢が示されます。しかし、在宅医療(訪問診療)を組み合わせるという選択肢を加えることで、「自宅での療養」が現実的になるケースは少なくありません。訪問診療・訪問看護・ケアマネジャーによる介護サービスが整えば、退院後も安心して自宅で過ごせる環境を整えることが可能です。
退院後の療養先の考え方の全体像は退院後の療養先はどう決める?在宅・施設・転院の選び方ガイドでも詳しく解説しています。
退院前カンファレンスで在宅医が関わるメリット
退院前カンファレンスとは、退院後の療養方針を病院・患者・家族・在宅医・ケアマネジャーなど関係者が集まって事前に確認する場です。在宅医がこの場に参加することで、病院の主治医から療養の詳細を直接引き継ぐことができ、退院後の医療の連続性が高まります。退院当日からのスムーズな在宅医療開始につながります。
地域包括ケア病棟の入院期間に上限があるため早めの準備が必要な理由
地域包括ケア病棟(リハビリや退院支援を目的とした病棟)の入院期間は、原則として60日が上限(2024年度診療報酬改定時点。詳細は厚生労働省の最新情報でご確認ください)とされています。入院中は安心しがちですが、退院後の療養先が決まらないまま期限が近づくことのないよう、入院早期から在宅医療や施設の情報収集を始めることをお勧めします。
退院日が急に決まったときの動き方
退院日が数日前に突然決まることは珍しくありません。そのような場合でも、病院の医療ソーシャルワーカー(MSW)に相談し、地域の在宅医療機関やケアマネジャーにつないでもらうことで、退院当日から訪問診療を開始できる場合があります。退院日が迫っているときこそ、早急に相談行動に移ることが大切です。
施設入居や転院を選ぶ場合の確認ポイント
施設入居や転院を選ぶ際には、以下の点を事前に確認しておくと安心です。
- 施設内で医療行為(点滴・処置・看取り対応など)が受けられるか
- 協力医療機関・嘱託医の体制はどうか
- 必要なケアが施設で継続できるか(ストーマ管理・在宅酸素など)
- 費用の内訳と介護保険の適用範囲
こんな病気・状態で相談が増えています
パーキンソン病で通院負担が大きくなったとき
パーキンソン病は進行とともに移動が難しくなり、外来通院そのものが大きな負担になる時期が訪れます。薬の調整や療養管理が継続的に必要なため、訪問診療への移行を検討するご家族が多い疾患の一つです。
寝たきりに近い状態で移動が難しいとき
寝たきりに近い状態では、外来受診のための移動自体が体調悪化のリスクになります。点滴・栄養管理・褥瘡ケアなど、必要な医療処置の多くが在宅でも対応できます。寝たきりで点滴だけになっている状況で家族が知りたいことも参考にしてください。
うつ症状で外出や通院が続けにくいとき
抑うつ状態では、外出そのものへの意欲が著しく低下し、定期的な通院が難しくなることがあります。精神科・心療内科との連携を保ちながら、在宅での療養管理を組み合わせる方法を主治医と相談することが有効なケースがあります。
ストーマ管理が必要で通院負担が大きいとき
人工肛門(ストーマ)を造設した方は、定期的な管理と観察が必要です。ストーマケアは訪問看護で対応できる部分が多く、外来通院の頻度を減らしながら安全に管理を続けることが可能です。
神経難病や重い後遺症で移動が難しいとき
ギラン・バレー症候群などの神経疾患、脳卒中・交通事故後遺症による四肢の麻痺など、移動に著しい制限がある場合も、在宅での医療・リハビリが選択肢に入ります。訪問リハビリとの組み合わせにより、自宅での機能維持をサポートすることができます。
認知症が加わり受診を拒否するケースについては認知症で受診を拒む親への対応と相談先を、精神疾患による受診拒否については統合失調症で受診を拒む家族への対応の考え方もご参照ください。
受診・相談の目安
すぐに相談したい状態
- 発熱・強い痛み・呼吸困難など急性の症状がある
- 意識の変化・転倒による骨折が疑われる
- 退院日が数日以内に迫っており療養先が未定
近日中に相談したい状態
- 退院後の通院先や療養先が決まっていない
- 現在の通院が本人・家族ともに週1回以上の大きな負担になっている
- 地域包括ケア病棟に入院中で、退院後の生活を考え始めている
- ストーマ・胃ろう・在宅酸素などの管理を在宅で続けたい
まず家族で情報収集してよい状態
- まだ通院できているが、今後の見通しを知りたい
- 親の病状は安定しているが、将来の療養の選択肢を整理したい
- 訪問診療がどんなものか理解した上で検討したい
相談先として考えられる窓口
「訪問診療の対象になるかどうか分からない」という段階からでもご相談いただけます。ご予約・お問い合わせより、まずはお気軽にお問い合わせください。AIプラスクリニックたまプラーザは、たまプラーザ・あざみ野・美しが丘・新石川など横浜市青葉区を中心とした地域で、ご家族のみのご相談にも対応しています。
相談前に準備しておくとよいこと
現在の病名・お薬・通院先を整理する
お薬手帳または薬剤情報提供書があると、現在の処方内容をすぐに確認できます。どの病院・クリニックに通っているかも把握しておきましょう。
介護保険の利用状況を確認する
介護保険証・介護保険負担割合証・現在の要介護度・担当ケアマネジャーの氏名と連絡先を手元に準備してください。介護保険の申請がまだの場合は、市区町村の窓口または地域包括支援センターに申請方法を確認しましょう。介護保険制度の概要は厚生労働省 介護保険制度のページでも確認できます。
本人の希望と家族の支援可能範囲を共有する
本人が「自宅にいたい」という希望を持っているかどうか、また家族が同居しているか、日中の見守りが可能かどうかは、療養方針を決める上で重要な情報です。家族間で事前に共有しておくと相談がスムーズになります。
退院予定日や主治医の説明内容を控えておく
退院日・病状の現状・退院後の通院方針について主治医から説明を受けた内容を、メモしておきましょう。診療情報提供書(紹介状)や退院時サマリーがあれば、在宅医への引き継ぎが大変スムーズになります。費用や手続きの詳細は通院が難しくなったとき|費用と手続きを確認するためのまとめをご覧ください。
費用や制度で確認しておきたいこと
訪問診療・往診・訪問看護の費用の考え方
訪問診療は医療保険が適用されます。費用は診療報酬の点数・訪問の頻度・医療機関の所在地・患者の保険の種類・負担割合などによって異なります。おおまかな目安として、月2回の定期訪問の場合、1割負担の方で月額数千円〜1万円台程度となることがありますが、個人の状況により大きく異なります(以下の参考資料や各機関へご確認ください)。訪問看護は医療保険・介護保険のいずれかが適用されます。
介護保険と医療保険の使い分け
訪問診療は原則医療保険が適用されます。訪問看護・訪問リハビリは状態によって医療保険と介護保険のいずれかが適用され、判断は主治医・ケアマネジャー・訪問看護ステーションが連携して行います。介護タクシーの料金については介護保険の適用範囲がサービス内容によって異なります。
費用は改定されうるため確認先を押さえる
診療報酬・介護報酬は定期的に改定されます。本記事の費用情報は参考目安であり、最新の情報は厚生労働省 在宅医療の推進や横浜市 介護・高齢者福祉のページ、各保険者の窓口でご確認ください。
公的制度や助成の確認先
自治体によっては医療費助成・交通費補助・在宅医療関連の独自補助がある場合があります。横浜市青葉区にお住まいの場合は、横浜市または青葉区の窓口にお問い合わせください。
よくある質問
Q. 訪問診療はどんな人が対象ですか
訪問診療は、疾病・傷病・加齢などにより通院が困難な状態にある方が対象となります。要介護認定の有無は問いません。具体的な適応は医師が判断しますので、まずはご相談ください。
Q. かかりつけ医がいても相談できますか
できます。訪問診療を開始する場合も、かかりつけ医との連携(併診・引き継ぎ)が可能なケースが多くあります。かかりつけ医の紹介状があれば引き継ぎがよりスムーズです。かかりつけ医との関係を続けながら在宅医療を取り入れる形を相談の中で整理することができます。
Q. 本人が来院できなくても家族だけで相談できますか
できます。ご本人が外出できない状況でも、ご家族だけでご来院・お電話・オンラインでのご相談に対応しています。現状の整理から一緒に行いますので、まずはお気軽にお問い合わせください。
Q. 訪問診療を始めると通院はできなくなりますか
そのようなことはありません。状態が改善して外来通院が可能になれば、通院に戻ることもできます。また、訪問診療と専門外来の受診を並行するケースもあります。病状や生活環境の変化に応じて、柔軟に対応することが可能です。
Q. 施設入居を先に選んだほうがよい場合もありますか
はい、あります。在宅での医療・介護が本人の安全を確保できない状態や、24時間の見守りが必要な場合、家族の介護力が限界に達している場合などは、施設入居が本人にとってより安全な選択になることもあります。どちらが正解ということではなく、本人の状態・希望・家族の状況を総合して判断することが大切です。
Q. いつ相談するのが早すぎず遅すぎませんか
「まだ早いかな」と感じているタイミングが、実はちょうどよい相談時期であることがほとんどです。状態が安定しているうちに情報収集しておくことで、いざというときの選択肢が広がります。特に、退院が近い・病状が進行傾向にある・家族の負担が増えてきた、のいずれかに当てはまれば、早めの相談をお勧めします。通院が難しくなったとき|困りごとに対処するためのまとめも参考にしてください。
まとめ|受診をあきらめる前に選択肢を整理しよう
通院が難しくなっても医療につながる方法はある
移動手段の工夫、訪問診療の活用、在宅サービスとの組み合わせにより、通院が困難になっても医療との接点を継続することは可能です。受診をあきらめる前に、まず選択肢があることを知ってください。
早めの相談で自宅療養・退院支援・施設検討の幅が広がる
情報収集は早ければ早いほど、選べる選択肢が増えます。退院前・病状悪化前の段階から在宅医療について知っておくことで、いざというときに落ち着いて判断できます。
まずは家族だけでも相談してみるという選択肢
ご本人が外出できない状況でも、ご家族だけで相談することができます。「何から始めればいいか分からない」という段階からでも、一緒に整理しますのでご安心ください。訪問診療・在宅医療の全体像については訪問診療・在宅医療とは|対象・費用・依頼の流れを医師が解説する完全ガイドもあわせてご覧ください。
当院の在宅診療の現場から
AIプラスクリニックたまプラーザでは、病院の地域連携室や医療ソーシャルワーカーからのご紹介を通じて退院前カンファレンスに参加し、入院中の主治医から直接引き継ぎを受けた上で在宅医療を開始しています。退院当日からの訪問診療開始にも対応しており、退院直後の不安定な時期に夜間・休日を問わず連絡が取れる体制を整えています。
消化器外科・内視鏡の専門的な経験を活かし、胃ろう管理・嚥下評価・在宅での栄養管理・在宅酸素療法にも対応しています。地域の訪問看護ステーションや居宅介護支援事業所と日常的に連携しており、ケアマネジャーを通じた介護サービスとの一体的な調整も行っています。
対応エリアはたまプラーザ・あざみ野・美しが丘・新石川など横浜市青葉区を中心に、隣接する都筑区・川崎市宮前区もご相談に応じています。