訪問診療・訪問看護で受けられる褥瘡治療|役割分担と費用
- 在宅で褥瘡(床ずれ)が見つかっても、訪問診療・訪問看護を活用すれば自宅にいながら医師・看護師による本格的な治療を受けることができます。
- 医師と看護師はそれぞれ異なる役割を担い、ケアマネジャーや福祉用具の専門家とも連携しながら治療を進めます。
- 費用は医療保険・介護保険のどちらが適用されるかによって異なり、状態に応じた組み合わせが可能です。
褥瘡は「通院しないと治せない」わけではない
在宅で療養されているご家族の背中やお尻に赤みや傷を発見したとき、「病院に連れて行かないと治せないのでは」と不安になる方は多くいらっしゃいます。しかし、褥瘡の治療は自宅でも十分に行うことが可能です。
在宅・介護の場面で褥瘡が生じやすい状況や予防の考え方は、在宅・介護施設での褥瘡ケア完全ガイドで詳しくまとめています。本記事では、訪問診療・訪問看護がそれぞれ「何をしてくれるのか」「費用はどうなるのか」「どうやって利用を始めるのか」に絞って解説します。
訪問診療・訪問看護とは何か
訪問診療(医師が自宅を定期訪問)
訪問診療は、通院が難しい方のために医師が定期的に自宅へ出向いて診察・処置・薬の処方などを行う医療サービスです。褥瘡の場合、医師は傷の深さや状態を直接評価し、外用薬やドレッシング材(傷を覆う素材)を選んで処置の計画を立てます。
訪問診療の基本的な仕組みや依頼の流れについては、訪問診療・在宅医療とは|対象・費用・依頼の流れを医師が解説する完全ガイドをご参照ください。
訪問看護(看護師が自宅でケアを継続)
訪問看護は、看護師や准看護師が定期的に自宅を訪問して、日常的なケアや処置を継続する仕組みです。褥瘡では、医師の指示のもとで傷の洗浄・ドレッシング材の交換・状態の観察などを担当します。訪問看護師が担う役割の詳細については、訪問診療の看護師は何をする?家族が知りたい役割もあわせてご覧ください。
医師と看護師の役割分担
褥瘡の在宅治療は、医師と看護師が互いに役割を分担することで成り立っています。
| 担当 | 主な役割 |
|---|---|
| 訪問診療医師 | 傷の深さ・広さの評価(DESIGN-R®2020を用いた記録)、外用薬の処方、ドレッシング材の選択・変更、体圧分散用具(マットレスなど)の見直し指示、悪化時の病院紹介 |
| 訪問看護師 | 医師の指示書に基づく傷の洗浄・ドレッシング交換、状態変化の観察と医師への報告、家族への処置の説明・指導、スキンケア(皮膚の清潔保持) |
| ケアマネジャー | 介護サービス全体の調整、訪問診療・訪問看護との連絡窓口 |
| 福祉用具専門相談員 | 体圧分散マットレス・車椅子クッションなどの選定・貸与 |
DESIGN-R®2020とは:日本褥瘡学会が定めた、褥瘡の状態を数値で記録する評価ツールです。傷の深さ、滲出液(じゅうしつえき=傷から出る液)の量、皮膚の色などを一定の基準で記録し、治療の効果を客観的に追うために使います。
医師が自宅で行える褥瘡の処置内容
褥瘡の全体像や各ステージの特徴については、褥瘡(床ずれ)とは|原因・ステージ・治療・予防・在宅ケアまで医師が解説する総合ガイドで詳しく解説しています。
在宅の訪問診療で対応できる処置の例を以下にまとめます。
- 皮膚の評価と記録:傷の深さ・色(赤み・黒ずみ・黄色いネバネバの付着など)・臭い・周囲の状態を確認します。
- 外用薬の処方:傷の状態に合わせて、感染を抑える薬・肉芽(傷の回復組織)の形成を助ける薬・滲出液を吸収する軟膏などを医師が処方します。これらは医療用医薬品のため、必ず医師の処方・指示のもとで使用します。
- ドレッシング材の選択:ハイドロコロイド(うるおいを保つシート)・フォーム(泡状の吸収素材)・アルギン酸塩(ゲル状になる繊維素材)など、傷の状態に合った素材を選びます。市販品と医療用とでは品質・種類が大きく異なるため、軽い皮膚トラブルへの市販品使用は可能ですが、褥瘡が疑われる場合は自己判断を避け、受診してください。
- デブリードマン(壊死組織の除去):黒や黄色いかたまり(壊死した組織)が傷をふさいでいる場合、医師が器具を用いて取り除く処置を行うことがあります。
- 体圧分散用具の見直し:現在使っているマットレスや姿勢保持用具が合っているかを確認し、必要に応じて福祉用具の変更を提案します。
費用の仕組み|医療保険と介護保険の違い
訪問診療の費用(医療保険)
訪問診療は基本的に医療保険が適用されます。月2回の定期訪問が基本で、1割負担の方(75歳以上の後期高齢者で一定以下の所得)であれば、1か月あたりの自己負担は概ね数千円程度が目安です。ただし、年齢・所得区分・処置の内容によって変わります。
訪問看護の費用(医療保険または介護保険)
訪問看護の費用は、利用する保険によって異なります。
| 区分 | 適用される場面の目安 |
|---|---|
| 医療保険の訪問看護 | 特別訪問看護指示書が出た場合(褥瘡が重症・感染しているなど)、週4日以上の集中的なケアが必要なとき |
| 介護保険の訪問看護 | 要介護認定を受けており、医療保険の特別指示がないとき |
どちらが適用されるかは医師の判断と利用者の状況によって決まります。費用と保険制度の全体的な仕組みは、在宅医療・介護の費用と保険のしくみ|自己負担の目安と軽減制度で詳しく解説しています。
福祉用具(体圧分散マットレス)の費用
介護保険の要介護認定を受けている方は、体圧分散マットレスを介護保険の福祉用具貸与として月数百円〜数千円程度(利用者負担1〜3割)でレンタルできる場合があります(2024年度時点。制度は改定される場合があります)。詳しくはケアマネジャーへご相談ください。
利用を始めるための流れ
- ケアマネジャーに相談する:すでに介護保険を利用している場合は、まずケアマネジャーに「褥瘡が心配なので訪問診療を使いたい」と相談します。
- 訪問診療クリニックへ問い合わせる:クリニックが対応エリア内かどうかを確認し、初回の相談・面談を行います。ご本人が通院できない場合でも、ご家族だけで相談することも可能です。
- 医師が初回訪問して評価する:褥瘡の状態を確認し、治療計画を立てます。
- 訪問看護ステーションと連携する:医師が訪問看護指示書を発行し、看護師が定期的にケアを担当します。
- 定期的に状態を見直す:医師・看護師が記録をもとに治療の方針を調整します。
当院の在宅褥瘡診療の現場から
AIプラスクリニックたまプラーザは、在宅療養支援診療所として訪問診療を行っています。褥瘡の評価にはDESIGN-R®2020を用い、傷の状態を数値で記録しながら外用薬やドレッシング材の選択・変更を行っています。体圧分散マットレスや姿勢保持の方法についても、訪問看護ステーション・ケアマネジャー・福祉用具専門相談員と連携し、ご自宅の環境に合った治療計画を一緒に考えます。
監修医の佐藤医師は、消化器外科医として長年にわたり術後の創傷管理や難治性の傷の治療に携わってきた経験を在宅医療にも活かしています。傷が深い・感染が疑われる・外科的な処置が必要と判断した場合は、連携する病院へ適切にご紹介します。「自宅で本当に治せるのか」と不安な方も、まずはお気軽にご相談ください。
受診・相談の目安
以下のような状態が見られる場合は、速やかに医師への相談・受診をお勧めします。
- 皮膚の赤みが、指で押しても色が消えない状態が1日以上続いている
- 傷が日ごとに深くなっている・広がっている
- 傷から臭いがする・黄色や緑色の膿が出ている
- 発熱が続いている(38度以上が目安ですが、高齢者は熱が出にくい場合もあります)
- 処置の方法・使う薬・マットレスの選び方に迷っている
- 本人の通院が難しく、現在の処置が正しいか確認したい
床ずれは、ご家族だけで判断・処置を続けると悪化に気づきにくいものです。訪問診療では医師がご自宅で傷を診て、処置の方法・薬・マットレスまで一緒に見直します。ご本人が通院できない場合も、ご家族だけでのご相談から承っています。
よくある質問
Q. 訪問診療と訪問看護は、どちらか一方だけを利用することはできますか?
はい、それぞれ単独での利用も可能です。ただし、訪問看護師が褥瘡の処置を行うためには医師の「訪問看護指示書」が必要です。すでにかかりつけ医がいる場合はその医師に、いない場合は訪問診療医に指示書を発行してもらう形になります。
Q. 傷の処置に使う薬やガーゼは、自分で購入する必要がありますか?
医師が処方する外用薬は保険処方の対象となります(医療用医薬品のため、必ず医師の処方のもとで使用します)。ドレッシング材は医師・看護師が処置に使う場合は医療費として算定されることが多いですが、ご家族がご自宅でケアに使う場合の扱いはクリニックにご確認ください。
Q. 夜間や週末に状態が急変した場合はどうすればよいですか?
在宅療養支援診療所は、24時間対応できる体制を整えることが要件となっています(厚生労働省の定める基準による)。当院でも緊急時の連絡先をお伝えし、状況に応じて対応します。急変の程度によっては救急や連携病院への対応になる場合もあります。
Q. 介護保険の認定を受けていなくても訪問診療は利用できますか?
はい、訪問診療は医療保険で利用できるため、介護保険の認定がなくても対象になります。ただし、介護保険の認定を受けている場合は、福祉用具の貸与や訪問看護の費用区分など、使える制度が広がることもあります。
Q. 市販のドレッシング材や保護フィルムを自己判断で使ってよいですか?
軽い皮膚の乾燥や小さなすり傷であれば市販品の使用も選択肢のひとつですが、褥瘡が疑われる(赤みが消えない・皮膚がめくれている・傷が深いなど)場合は、自己判断での対応は避けてください。傷の状態によっては、合わないドレッシング材を使うと悪化するリスクがあります。必ず医師・看護師に確認してから使用してください。
Q. 介護士が褥瘡の処置をすることはできますか?
介護士が行える褥瘡へのかかわりには範囲があり、医療行為にあたる処置は原則として行えません。具体的な境界については、介護士が行える褥瘡処置の範囲|医療行為との境界を解説をご参照ください。
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参考文献・出典
本記事の監修医師
1988年 福島県立医科大学医学部卒業、医師免許取得。1997年 同大学大学院修了、博士号取得。国立国際医療研究センター、東京新宿メディカルセンター、NTT東日本関東病院、横浜市立大学関連病院、国立病院機構横浜医療センター外科医長・救命救急センター副部長、済生会若草病院(横浜市)外科部長・内視鏡センター・診療部長を歴任。丸亀医療センター・佐々木病院副理事長、日立おおみか病院理事を経て現在に至る。
AIプラスクリニックたまプラーザの訪問診療
褥瘡の在宅治療に対応しています。ご本人の通院が難しい場合も、ご家族からのご相談を承っております。
TEL:045-909-0117
対応エリア:たまプラーザ・あざみ野・美しが丘・新石川など横浜市青葉区を中心とした地域
免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個々の患者さんの診断・治療を代替するものではありません。褥瘡の状態や処置・薬の選択は、必ず医師・看護師の判断のもとで行ってください。医療用医薬品・医療機器の使用は処方・指示に従ってください。制度・費用は改定される場合があります。