褥瘡の好発部位マップ|部位別ケアの要点
褥瘡(床ずれ)とは|原因・ステージ・治療・予防・在宅ケアまで医師が解説する総合ガイド › (本記事)
この記事の3行要約
褥瘡(床ずれ)は体の「骨の出っ張り」に圧力が集中する部位から始まります。仰臥位なら仙骨・踵、側臥位なら大転子・くるぶし、車椅子乗車時は坐骨・尾骨が最もリスクの高い部位です。部位ごとの特徴を知って日常の観察に活かすことが、早期発見・早期ケアにつながります。
褥瘡の好発部位とは何か
褥瘡(じょくそう)は、皮膚が骨と外部の面(ベッド・車椅子など)に挟まれて持続的な圧力を受けることで、血流が途絶え、組織が壊死する状態です。発生しやすい場所は「骨が皮膚のすぐ下に位置していて、皮下脂肪や筋肉のクッションが薄い部位」に集中します。これを好発部位(こうはつぶい)と呼びます。
日本褥瘡学会が公表している「褥瘡予防・管理ガイドライン(第5版)」でも、好発部位への持続的な圧力を避けることが予防の基本として位置づけられています。
好発部位を押さえることがなぜ重要か
褥瘡は「できてから治す」より「できる前に見つけて防ぐ」ほうが、ご本人の痛みも介護の負担も大幅に軽くなります。ご家族や介護職の方が好発部位を知っておくと、入浴や清拭のタイミングで早期の皮膚の変化(赤み・硬さ・温感の違いなど)に気づきやすくなります。
褥瘡全体の基礎知識(原因・ステージ・治療の流れ)については、褥瘡(床ずれ)とは|原因・ステージ・治療・予防・在宅ケアまで医師が解説する総合ガイドをご覧ください。
褥瘡好発部位のイラスト的マップ|体位ごとに整理する
姿勢(ポジション)が変わると、圧力が集中する部位も変わります。以下の表で体位ごとの好発部位を確認してください。
体位別・主要好発部位一覧
| 体位 | 主な好発部位 | 特徴・注意点 |
|---|---|---|
| 仰臥位(あおむけ) | 仙骨部、踵(かかと)、後頭部、肩甲骨部、肘頭部 | 仙骨と踵に体重が強くかかる。踵は皮下組織が薄く深達しやすい |
| 側臥位(横向き) | 大転子部、くるぶし(外果・内果)、膝関節外側、耳介 | 骨の突出が顕著な大転子に最も注意。膝と膝が触れる部位も要注意 |
| 腹臥位(うつ伏せ) | 前額部、膝蓋骨部(膝の前面)、胸骨部、趾先 | 実施する機会は少ないが、体位変換の一環で使う場合に注意 |
| 座位・車椅子乗車時 | 坐骨結節部、尾骨部、大転子部(座り方による) | 座位では坐骨に集中した圧力がかかりやすい。スライドずれも加わる |
仰臥位における褥瘡の好発部位
仰臥位(あおむけ)は在宅や施設で最も多い寝姿勢です。この体位では全体重のうち相当な割合が仙骨部と踵部に集中します。
仙骨部(せんこつぶ)
仙骨は骨盤後面の中央にある逆三角形の骨です。あおむけで寝ると、この部位が最も強くマットレスに接触します。仙骨部褥瘡は褥瘡全体のなかで最も発生頻度が高いとされており、「臀部の割れ目の上あたり」をまず確認することが大切です。
初期サインを画像で確認したい場合のポイント: 仙骨の正中から周囲2〜5cmの範囲に、発赤(赤みが消えない部分)、紫色への変色、皮膚の硬化・浮腫が見られる場合は要注意です。
仙骨部褥瘡の具体的なポジショニングについては仙骨部褥瘡のポジショニング|臥位・座位の実践ガイド、クッション・マットレス選択については仙骨部褥瘡のクッション・マットレス選択ガイドで詳しく解説しています。
踵部(かかと)
踵は接触面積が小さいため、単位面積あたりの圧力が非常に高くなります。また皮下組織が薄いため、外見上は軽く見えても内部組織まで傷んでいること(深部損傷褥瘡)が起こりやすい部位です。かかとの褥瘡初期は、皮膚が赤黒く・または紫色に変色したり、ふくらんで硬くなったりします。
かかと・くるぶしの予防・ケアの詳細は足部の褥瘡好発部位|かかと・くるぶしの予防とケアをご参照ください。
その他の仰臥位好発部位
- 後頭部: 頭部が固定されている場合(意識障害・頭部固定など)にリスクが上がります。
- 肩甲骨部: 骨の突出が強い方に見られます。
- 肘頭部: ベッド柵につかまる習慣がある方に注意。
仰臥位全体の観察ポイントと予防策は仰臥位における褥瘡好発部位|観察ポイントと予防で網羅的に解説しています。
側臥位における褥瘡の好発部位
体位変換で側臥位をとるとき、または横向きで長時間過ごす場合に注意すべき部位が変わります。
大転子部(だいてんしぶ)
大転子は太ももの骨(大腿骨)の外側上端にある骨の突出部で、横向きに寝ると直接ベッドに当たります。ここに生じる褥瘡は皮下組織・筋肉まで及ぶ深い損傷になりやすく、見た目以上に重症化することがあります。
大転子部褥瘡の発生機序とケアについては大転子部の褥瘡|発生機序・ポジショニングとケアをご覧ください。
くるぶし(外果・内果)・膝関節外側
骨の突出がはっきりしているくるぶしは、皮下脂肪が少なく、側臥位で下になる側に集中した圧力がかかります。また膝と膝が重なる部分(内側膝)も骨どうしの接触で褥瘡が生じることがあります。
側臥位の観察チェックポイント
- 下になる耳介(耳の外側)に発赤・変形がないか
- 大転子部の皮膚の色・温感・硬さを左右で比較する
- 外くるぶし(外果)とベッドの接触部分を必ず確認する
側臥位全体の観察・予防の詳細は側臥位における褥瘡好発部位|観察ポイントと予防で解説しています。
車椅子乗車時の褥瘡好発部位
「座っているから大丈夫」と思われがちですが、車椅子乗車中も褥瘡は発生します。座位では坐骨結節部と尾骨部への圧力集中に加え、前へずれる「ずれ力(シアーフォース)」も大きな要因になります。
座位での主な好発部位と特徴
| 部位 | リスクが高まる状況 | 観察のポイント |
|---|---|---|
| 坐骨結節部 | 長時間の車椅子乗車、不適切なクッション | 左右の臀部中心やや後ろ側の発赤・硬化 |
| 尾骨部 | 仙骨が後傾した「ずり落ち座り」 | 背骨の最下端・臀部の上部中央の変色 |
| 大転子部 | 体が横に傾いた姿勢 | 傾いた側の股関節外側の皮膚変化 |
| 膝裏・下腿後面 | フットレストの位置が不適切 | 足置き部分との接触を確認 |
お尻(臀部)全体の褥瘡の基本と対策についてはお尻の床ずれ(褥瘡)とは何か|家族が知りたい基本と対策を、臀裂部の特徴と感染予防については臀部・臀裂部の褥瘡|部位の特徴と感染予防ケアをご覧ください。
見落とされやすい部位:背中・医療機器との接触部
背部(背中)
脊椎の棘突起(背骨の出っ張り)が並ぶ背中の中央部も、長期臥床では褥瘡リスクがあります。また体格が細く骨の突出が目立つ方では肩甲骨の間あたりにも注意が必要です。背中の褥瘡については背中の褥瘡(床ずれ)の原因と対応|家族・介護職向けで詳しく解説しています。
医療機器関連褥瘡(MDRPU)
酸素マスク・カテーテル・ギプス・弾性ストッキングなどの医療機器が皮膚に接触・圧迫することで生じる褥瘡をMDRPU(Medical Device Related Pressure Ulcer)と呼びます。これは「好発部位マップ」には収まらない、機器の当たる場所ならどこにでも発生しうる点が特徴です。詳しくはMDRPU(医療機器関連褥瘡)とは|原因・予防・スキンケアをご覧ください。
在宅でできる観察・ケアの基本
毎日の皮膚観察のポイント
好発部位を中心に、入浴・清拭・オムツ交換のタイミングで以下を確認します。
- 発赤(押して色が消えない赤み): 指で数秒押して離したとき、赤みが残る場合は褥瘡の初期サインです。
- 色の変化: 紫・暗赤色への変色は、深部に損傷が及んでいる可能性があります。
- 皮膚の温感・硬さ: 周囲と比べて熱い、または硬い・むくんでいる部位はリスクが高い状態です。
- 傷・水疱・びらん: 皮膚が破れている・水ぶくれがある場合は速やかに医療職へ連絡します。
なお、褥瘡の重症度を評価する際には、日本褥瘡学会が策定したDESIGN-R®2020が広く用いられています。これは深さ(Depth)・滲出液(Exudate)・大きさ(Size)・炎症/感染(Inflammation/Infection)・肉芽組織(Granulation)・壊死組織(Necrosis)・ポケット(Pocket)の各項目をスコア化し、治癒の経過を客観的に追うツールです。在宅の訪問診療・訪問看護の現場でも活用されています。
家族ができる予防ケアの要点
- 体位変換: 少なくとも2時間ごと(状態に応じて1時間以内)の体位変換が基本です。ただし実際の変換間隔は医師・看護師の指示に従ってください。
- 体圧分散用具の活用: 体圧分散マットレス・クッションの選択は福祉用具専門相談員・訪問看護師とともに検討します。介護保険の福祉用具貸与制度(厚生労働省)を活用できる場合があります。
- 皮膚の清潔と保湿: 汚染(尿・便)はすみやかに除去し、保湿剤で皮膚の乾燥を防ぎます。
- 栄養状態の確認: 低栄養は褥瘡リスクを高めます。管理栄養士・医師との連携が重要です。
在宅での医療処置全般については自宅でできる医療処置のすべて|胃ろう・在宅酸素・褥瘡ケアと管理の実際で解説しています。また、「誰に相談すればよいか」を整理したい方は訪問診療・在宅医療とは|対象・費用・依頼の流れを医師が解説する完全ガイドをご覧ください。
当院の在宅褥瘡診療の現場から
AIプラスクリニックたまプラーザは在宅療養支援診療所として、訪問診療の場で褥瘡の評価・処置・外用薬およびドレッシング材の選択・体圧分散用具の見直しを行っています。評価にはDESIGN-R®2020を用い、治癒の経過を数値で追いながら治療方針を見直しています。
訪問看護ステーション・ケアマネジャー・福祉用具専門相談員と定期的に情報を共有し、在宅での治療計画を多職種で立てることを大切にしています。監修医は消化器外科医として長年にわたり術後創・難治性創傷の管理に携わってきた経験を在宅診療に活かしています。外科的デブリードマンや専門的な処置が必要と判断した場合は、連携病院へ速やかに紹介する体制をとっています。
「どの医療機関に相談すれば良いかわからない」という方は、まず在宅・介護施設での褥瘡ケア完全ガイドもご参考ください。
受診・相談の目安
以下のような状態が見られるときは、ご自身での判断・対応に限界がある場合があります。医師・訪問看護師へ早めに連絡・相談してください。
- 赤みを指で押しても色が消えない状態が1日以上続いている
- 皮膚が紫・黒色に変色している、または硬く腫れている
- 傷が深くなっている・臭いが強い・膿(うみ)が出ている
- 発熱を伴っている、または傷の周囲が広範囲に赤く腫れている
- 処置方法がわからない・現在の処置で改善の兆しが見えない
- ご本人が通院できず、在宅での継続治療を検討している
褥瘡は「早く見つけて、原因(圧迫・栄養・環境)から整える」ほど治りやすくなります。在宅で治療を続けたい方は、訪問診療・訪問看護の利用をご検討ください。状態の確認から処置方法の相談まで、ご予約・お問い合わせからお気軽にご連絡ください。
よくある質問
Q. 褥瘡が最もできやすい部位はどこですか?
仰臥位(あおむけ)で過ごす時間が長い場合は仙骨部が最多といわれています。次いで踵部、大転子部(側臥位時)、坐骨部(座位時)の順に頻度が高く、いずれも骨の突出が皮膚のすぐ下にある部位です。
Q. かかとの褥瘡は初期にどのような見た目になりますか?
初期は皮膚が赤黒く、または紫色に変色します。触ると周囲より硬くなっていたり、逆にやわらかく水ぶくれのような感触になることもあります。踵は「外から見た傷は小さいのに内部が深く傷んでいる」ことがあるため、色の変化を見つけた時点で早めに医療職へ相談することをおすすめします。
Q. 仰臥位のときに褥瘡が生じやすい部位はどれですか(国試・資格試験でよく出る問い)?
仰臥位の主な好発部位は、仙骨部・踵部・後頭部・肩甲骨部・肘頭部です。なかでも仙骨部と踵部がとくに重要とされています。試験対策だけでなく実際の観察でも、この2か所を優先的に確認することが臨床的にも推奨されています。
Q. 車椅子に乗っていても褥瘡はできますか?
できます。車椅子座位では坐骨結節部への圧力集中が最も問題になります。加えて、体がずり落ちる「ずれ力(シアーフォース)」が仙骨・尾骨に加わり、皮膚が引きちぎられるように傷つくことがあります。座位時間が長い方には、座面クッションの選択と定期的な除圧(プッシュアップや体位の修正)が重要です。
Q. 褥瘡の好発部位を家族が自分でケアするには限界がありますか?
皮膚の観察・清潔・保湿・体位変換の補助はご家族でも行えますが、処置(創の洗浄・ドレッシング交換・薬の塗布)は医師・看護師の指示のもとで行うのが原則です。とくに傷が深い場合・感染のサインがある場合・薬(医療用医薬品)の使用が必要な場合は、必ず医療職と連携してください。
Q. 褥瘡の評価にDESIGN-R®2020が使われると聞きました。どのようなものですか?
DESIGN-R®2020は日本褥瘡学会が策定した褥瘡の重症度・治癒経過を評価するスコアリングシステムです。深さ・滲出液・大きさ・炎症/感染・肉芽組織・壊死組織・ポケットの7項目をそれぞれ点数化し、合計スコアで重症度を把握します。スコアが改善されていくことが治癒の目安となり、医師・看護師がケアの方向性を見直す判断材料になります。
このテーマの詳しい記事
- 仰臥位における褥瘡好発部位|観察ポイントと予防
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- MDRPU(医療機器関連褥瘡)とは|原因・予防・スキンケア
- 仙骨部褥瘡のポジショニング|臥位・座位の実践ガイド
- 仙骨部褥瘡のクッション・マットレス選択ガイド
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- 臀部・臀裂部の褥瘡|部位の特徴と感染予防ケア
- 背中の褥瘡(床ずれ)の原因と対応|家族・介護職向け
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参考文献・出典
本記事の監修医師
佐藤 靖郎(さとう やすお)
医師(医学博士)
専門: 消化器外科・消化器内視鏡/一般内科/在宅医療・高齢者医療・がん緩和ケア・心不全・呼吸不全
1988年 福島県立医科大学医学部卒業、医師免許取得。1997年 同大学大学院修了、博士号取得。国立国際医療研究センター、東京新宿メディカルセンター、NTT東日本関東病院、横浜市立大学関連病院、国立病院機構横浜医療センター外科医長・救命救急センター副部長、済生会若草病院(横浜市)外科部長・内視鏡センター・診療部長を歴任。丸亀医療センター・佐々木病院副理事長、日立おおみか病院理事を経て現在に至る。
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免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個々の患者さんの診断・治療を代替するものではありません。褥瘡の状態や処置・薬の選択は、必ず医師・看護師の判断のもとで行ってください。医療用医薬品・医療機器の使用は処方・指示に従ってください。制度・費用は改定される場合があります。