お尻の床ずれ(褥瘡)とは何か|家族が知りたい基本と対策
この記事の3行まとめ
- お尻(仙骨部・臀部)は体の中でもっとも床ずれができやすい部位で、早期発見と体重の「逃がし方」が悪化を防ぐ最大の鍵です。
- 「赤みが指で押しても消えない」「皮膚がただれてきた」段階で、家庭での対応だけでなく、医療者への相談が必要なサインです。
- 在宅でも訪問診療を通じて医師が処置・薬・寝具の見直しをまとめて行うことができます。一人で抱え込まないことが大切です。
お尻に床ずれができやすいのはなぜか
床ずれ(褥瘡)は、体の同じ部分に体重がかかり続けることで皮膚や皮膚の下の組織が傷む状態です。お尻の中でも、腰の骨(仙骨)の突き出た部分と、左右のお尻の丸みの頂点(大転子・坐骨)あたりは、骨と皮膚の間に脂肪や筋肉が薄く、寝ているときや座っているときの圧力が集中しやすいという特徴があります。
日本褥瘡学会の調査(2016年度 全国実態調査)でも、褥瘡の発生部位として仙骨部がもっとも多く報告されており、在宅療養でも特に注意が必要な場所です。
また、お尻まわりは排泄による汚れや湿気が生じやすい場所でもあります。尿や便に含まれる成分が皮膚の表面をふやかし、摩擦への抵抗力を弱めるため、圧力だけでなく「ずれ(皮膚が引っ張られる力)」や「湿気」も重なって傷みが起きやすくなります。
初期サインの見分け方|色・かたさ・痛みで確認する
床ずれは見た目の変化で進行度をある程度確かめられます。画像を用意できないご家庭でも、次の点を手と目で確認してください。
| 確認ポイント | 初期(ステージ1相当) | 注意が必要な状態(ステージ2以降) |
|---|---|---|
| 色 | 赤みがある(ただし後述の白い皮膚でも起こる) | 暗紫色・黒っぽい変色、表皮がめくれている |
| 押したときの変化 | 指で押すと赤みが薄くなる(一過性) | 押しても赤みが消えない(持続する発赤) |
| 皮膚の表面 | ほぼ平ら・乾燥または少し熱感 | 水ぶくれ・ただれ・浅いくぼみ |
| 傷の深さ | 皮膚の表面だけ | 傷が深くなっている・湿った赤い面が見える |
| におい・分泌物 | なし | 液体がにじむ・膿・悪臭 |
画像で確認したい場合のポイント: スマートフォンのカメラで、明るい場所(自然光が理想)で撮影し、赤みのある範囲・水ぶくれの有無・皮膚の色の均一さを確認します。撮影した写真を医師や訪問看護師に見せると状態の説明がしやすくなります。
「痛い」という訴えをどう受け止めるか
床ずれの痛みは「じくじくした痛み」「押すと痛い」「何もしなくても痛い」など個人差があります。一方で、認知症や意識レベルが低下している方は痛みをうまく伝えられないことがあり、「痛くない=大丈夫」とは限りません。お尻を触ると表情が変わる、体位を変えると落ち着く、といった行動の変化にも目を向けてください。
家庭でできる対策|体重を「逃がす」3つの工夫
褥瘡の全体像や治療の仕組みについては、褥瘡(床ずれ)とは|原因・ステージ・治療・予防・在宅ケアまで医師が解説する総合ガイドに詳しくまとめています。ここではお尻に絞った家庭での具体策を説明します。
① 体の向きを定期的に変える(体位交換)
同じ姿勢でいる時間を2時間以上続けないことが基本です。ただし、本人の状態によって適切な時間は変わります。体位交換のタイミングや方法は、担当の訪問看護師やケアマネジャーに相談しながら決めましょう。
仰臥位における褥瘡好発部位|観察ポイントと予防では仰向けのときの注意点を、側臥位における褥瘡好発部位|観察ポイントと予防では横向きのときの体の当たり方を詳しく説明しています。姿勢を変えたあとに「どこが当たっているか」を確認するための参考にしてください。
② 体圧分散用具(マットレス・クッション)の選び方
マットレス(床ずれ防止マットレス): 空気が入ったエアセル式や、ウレタンフォーム素材のものがあります。どちらが向いているかは、本人の体重・体型・褥瘡のある・なしによって異なるため、福祉用具専門相談員や医師に相談した上で選ぶことをお勧めします。なお、介護保険の福祉用具貸与制度(厚生労働省、2024年度)の対象となる場合があり、貸与を利用することで費用負担を抑えられることがあります。
座位用クッション: 車椅子や椅子に座る時間が長い方は、座面のクッション選びも重要です。お尻の坐骨や仙骨に集中する圧力を分散するため、素材(ウレタン・ゲル・エア・ハイブリッドなど)と厚みの組み合わせが使い心地を左右します。体重や座り方のくせに合ったものを選ぶため、専門家のフィッティングを受けることが望ましいです。褥瘡がある場合は特に、医師や訪問看護師と連携した上で検討してください。
③ 皮膚を清潔・乾燥に保つスキンケア
排泄後はすみやかに拭き取り、お湯や弱酸性の洗浄料でやさしく洗います。強くこすると皮膚の表面が傷つくため、押し当てて水気を吸い取るようにしてください。洗浄後は保湿剤を薄く塗って皮膚の乾燥を防ぎます。使用する保湿剤や撥水性のバリアクリームについては、市販のものを使う場合も含め、訪問看護師・医師に種類を確認することをお勧めします。
褥瘡が疑われる傷がある場合、市販の傷薬を自己判断で使い続けることは避け、医師・看護師の指示のもとで処置方法を決めてください。
ポジショニング(体の位置づくり)の基本
お尻の床ずれで特に重要なのが「仙骨部を浮かせる」ポジショニングです。仰向けに寝るとき、骨盤をやや斜めに傾けるようにクッションを差し込み、仙骨が直接マットレスに当たらないようにします。ただし、不安定な姿勢は転落や二次的な問題につながることがあるため、具体的な手順は専門家に教わることが大切です。
仙骨部褥瘡のポジショニング|臥位・座位の実践ガイドでは、寝ているときと座っているときそれぞれのポジショニングを具体的に解説しています。ぜひあわせてご覧ください。
在宅で医師に診てもらえること
「傷があるけれど、本人が外出できない」「どの薬を使えばよいかわからない」という場合、訪問診療を利用すると医師が自宅で傷の評価・処置・薬の選択まで対応することができます。
自宅でできる医療処置のすべて|胃ろう・在宅酸素・褥瘡ケアと管理の実際では、在宅で受けられる処置の範囲を詳しく紹介しています。また、寝たきりでおしりが痛いとき、家でできる対処と相談先では、痛みへの対応と相談先の探し方をまとめています。
外用薬(塗り薬)やドレッシング材(傷を覆うシート類)は医師の処方・指示のもとで使用するものが多く、傷の状態に合わないものを使うと逆効果になることがあります。家族が市販品だけで対応しようとする場合も、軽い皮膚トラブルに限り、褥瘡が疑われる場合は必ず受診または訪問診療へ相談してください。
当院の在宅褥瘡診療の現場から
AIプラスクリニックたまプラーザは在宅療養支援診療所として、訪問診療の場で褥瘡の評価・処置を行っています。傷の程度は日本褥瘡学会が定めたDESIGN-R®2020という評価基準を用いて判定し、外用薬やドレッシング材の選択、マットレス・クッションの見直しまで、在宅での治療計画を包括的に立てています。訪問看護ステーション・ケアマネジャー・福祉用具専門相談員と連携して、ご家族が孤立しないチーム体制をとっています。
監修医の佐藤は消化器外科医として長年、術後の傷・治りにくい創傷の管理に携わってきた経験を持ちます。お尻の床ずれは適切なタイミングで適切な処置を行うことで回復が期待できる状態です。悪化して外科的な処置が必要になった場合は、連携病院への紹介も行っています。「どこから手をつければいいかわからない」というご家族のご相談からも、ぜひお気軽にお声がけください。
受診・相談の目安
以下のいずれかに当てはまる場合は、早めに医師・看護師へ相談してください。
- 赤みが指で押しても消えず、翌日以降も続いている
- 皮膚がめくれている、水ぶくれができている、または傷が深くなってきた
- 傷から液体がにじむ、膿が出る、悪臭がある
- 発熱が続いている、または本人がぐったりしている
- 処置の方法・薬の使い方で迷っている、または今の方法が合っているか不安
- 本人が外出できず、通院での受診が難しい
床ずれは、ご家族だけで判断・処置を続けると悪化に気づきにくいものです。訪問診療では医師がご自宅で傷を診て、処置の方法・薬・マットレスまで一緒に見直します。ご本人が通院できない場合も、ご家族だけでのご相談から承っています。まずは在宅・介護施設での褥瘡ケア完全ガイドもあわせてご覧いただき、ご予約・お問い合わせからお気軽にご連絡ください。
よくある質問
Q. 赤くなっているけれど、まだ傷はない。様子を見ていいですか?
A. 「赤み」の段階は床ずれの最初のサインです。指で押したときに赤みが消える場合はまだ比較的早い状態ですが、消えない場合(持続する発赤)は皮膚の下の組織がすでにダメージを受け始めているサインです。後者の場合は早めに医師や訪問看護師に相談してください。赤みがある間に体重の当たり方を改善できれば、傷が深くなるリスクを下げられます。
Q. 市販の傷テープや軟膏を使ってもいいですか?
A. 軽い表皮のすり傷程度であれば市販品で対応できる場合もありますが、褥瘡が疑われる傷(持続する赤み・皮膚がめくれている・深い傷)には、市販品だけで対応し続けることは避けてください。傷の状態に合っていない薬やテープを使うと悪化させることがあります。医師・看護師の処方・指示のもとで適切な処置材を選ぶことが重要です。
Q. おむつを使っていると床ずれになりやすいですか?
A. おむつの使用そのものが直接の原因ではありませんが、排泄物による皮膚の湿潤・汚染が続くと皮膚が傷みやすくなります。こまめな交換・洗浄・保湿を組み合わせることが大切です。また、おむつのあて方がきつすぎると圧迫やずれが生じる場合があります。訪問看護師に適切なあて方を確認してみてください。
Q. クッションを使えば床ずれは防げますか?
A. クッションや体圧分散マットレスは床ずれの予防に有効ですが、それだけで完全に防げるわけではありません。体位交換・スキンケア・栄養管理・病状の管理など複数の要因が絡み合うため、複合的なアプローチが必要です。クッションを選ぶ際も、体重や姿勢に合ったものを専門家と相談して決めることをお勧めします。
Q. 床ずれになったら、絶対に寝たきりでいなければなりませんか?
A. 傷があるからといって動いてはいけない、ということはありません。むしろ、適度な体位変換や可能であれば離床(ベッドから起きる)は予防・回復の両面で有効とされています。ただし、傷の深さや全身状態によって安静度は異なりますので、どの程度動いてよいかは担当の医師・看護師に確認してください。
Q. 訪問診療に頼むと費用はどのくらいかかりますか?
A. 費用は介護保険・医療保険の適用状況や、訪問の頻度・内容によって異なります。一般的に訪問診療は医療保険の対象となり、介護保険の福祉用具貸与(体圧分散マットレス等)は介護保険が適用される場合があります(厚生労働省 介護保険制度、2024年度)。詳細な費用についてはご予約・お問い合わせの際にお気軽にお尋ねください。
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参考文献・出典
- 日本褥瘡学会(褥瘡予防・管理ガイドライン/DESIGN-R®2020)
- 日本創傷・オストミー・失禁管理学会(スキンテア・IAD関連情報)
- 厚生労働省 在宅医療の推進
- 厚生労働省 介護保険制度(福祉用具貸与)
本記事の監修医師
佐藤 靖郎(さとう やすお)
医師(医学博士)
専門:消化器外科・消化器内視鏡/一般内科/在宅医療・高齢者医療・がん緩和ケア・心不全・呼吸不全
1988年 福島県立医科大学医学部卒業、医師免許取得。1997年 同大学大学院修了、博士号取得。国立国際医療研究センター、東京新宿メディカルセンター、NTT東日本関東病院、横浜市立大学関連病院、国立病院機構横浜医療センター外科医長・救命救急センター副部長、済生会若草病院(横浜市)外科部長・内視鏡センター・診療部長を歴任。丸亀医療センター・佐々木病院副理事長、日立おおみか病院理事を経て現在に至る。
AIプラスクリニックたまプラーザの訪問診療
お尻の床ずれ(褥瘡)を含む在宅での創傷ケアに対応しています。医師が自宅に伺い、傷の状態の評価・処置・薬の処方・用具の見直しをまとめて行います。
ご予約・お問い合わせ
TEL:045-909-0117
対応エリア:たまプラーザ・あざみ野・美しが丘・新石川など横浜市青葉区を中心とした地域
免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個々の患者さんの診断・治療を代替するものではありません。褥瘡の状態や処置・薬の選択は、必ず医師・看護師の判断のもとで行ってください。医療用医薬品・医療機器の使用は処方・指示に従ってください。制度・費用は改定される場合があります。