大転子部の褥瘡|発生機序・ポジショニングとケア
3行要約
- 大転子部の褥瘡は、側臥位や同一姿勢の持続で、骨の出っ張りに圧が集中して起こりやすいです。
- 予防とケアの基本は、30度側臥位などのポジショニング、除圧、皮膚観察、摩擦・ずれの軽減です。
- 赤みが続く、傷が深い、臭い・滲出液が増える場合は、在宅でも医師・看護師に相談が必要です。
大転子部の褥瘡とは
大転子部は、股関節の外側にある骨の出っ張りです。側臥位で長く過ごすと、この部位に体重が集中しやすく、褥瘡が発生しやすくなります。
また、腸骨部の褥瘡も側臥位でみられやすく、大転子部とあわせて観察することが重要です。
褥瘡の全体像は、褥瘡(床ずれ)とは|原因・ステージ・治療・予防・在宅ケアまで医師が解説する総合ガイド もあわせてご覧ください。
発生しやすい背景
- 体位変換の回数が少ない
- 片麻痺、拘縮、疼痛で自力体位変換が難しい
- 低栄養、脱水、浮腫がある
- 失禁や発汗で皮膚がふやけている
- ベッド上でのずれ、シーツのしわ、硬い寝具がある
発生機序:なぜ大転子部にできやすいのか
大転子部は骨が皮膚に近く、筋肉や脂肪が少ない方では圧が逃げにくい部位です。
褥瘡は「圧迫」だけでなく、「ずれ」「摩擦」「湿潤」が重なることで起こりやすくなります。
| 要因 | 大転子部で起こること |
|---|---|
| 圧迫 | 側臥位で体重が集中し、局所血流が低下する |
| ずれ | ベッド頭側を上げたまま滑ると、皮膚と深部組織に負担がかかる |
| 摩擦 | 体位変換時の引きずりで表皮が傷つく |
| 湿潤 | 汗や失禁で皮膚が弱くなる |
日本褥瘡学会のガイドラインやDESIGN-R®2020では、局所の状態を総合的に評価し、悪化を防ぐ視点が重視されています。
ステージ分類の見方と、画像で確認したいポイント
写真がなくても、色・深さ・形でおおよそ把握できます。
| 観察ポイント | 目安 |
|---|---|
| 皮膚の色 | 赤み、紫色、黒っぽさがないか |
| 圧で変化するか | 押しても赤みが消えないか |
| 深さ | 皮膚だけか、くぼみがあるか、皮下脂肪が見えるか |
| 滲出液・臭い | 増えていないか、感染を疑う所見がないか |
- 初期: 皮膚が赤い、熱感がある、押しても赤みが消えにくい
- 進行: 皮膚が破れて浅い傷になる
- 深い損傷: くぼみが目立つ、黄色い脂肪が見える、黒い壊死がある
※「大転子部 褥瘡 写真」で検索する代わりに、実際には押しても赤みが消えないか、痛みや熱感があるか、皮膚が破れていないかを重点的に確認してください。
ポジショニングの実践ポイント
1. 30度側臥位を基本にする
真正の真横ではなく、30度程度の傾斜をつけると、大転子部への圧集中を減らしやすくなります。
枕やクッションを背部・膝の間・足首に入れ、骨突出部同士が直接当たらないようにします。
2. ずれを減らす
- ベッド頭側を上げすぎない
- 体を引きずらず、シーツやスライディングシートを活用する
- 体位変換後は骨の当たり方を再確認する
3. 腸骨部も一緒に観察する
側臥位では大転子部だけでなく腸骨部も圧がかかります。
腸骨褥瘡が疑われるときは、体位だけでなく、寝具の硬さや骨盤の傾きも見直します。
4. 体圧分散用具を使う
マットレスやクッションは、本人の体格・活動性・寝返り能力に合わせて選びます。介護保険の福祉用具貸与の対象になることもあり、自宅でできる医療処置のすべて|胃ろう・在宅酸素・褥瘡ケアと管理の実際 も参考になります。
ケアの手順:家でできること、医療職が行うこと
- 毎日観察する
赤み、熱感、腫れ、痛み、皮膚の破れを確認します。 - 除圧する
同じ側を続けて下にしないよう、体位変換を計画します。 - 皮膚を清潔・乾燥に保つ
失禁後は早めに洗浄し、こすらずやさしく拭き取ります。 - 外用薬や被覆材を使う場合は指示に従う
医療用医薬品は医師の処方・指示のもとで使うことが前提です。自己判断で使わないでください。 - 栄養と水分を整える
たんぱく質不足や脱水は、皮膚トラブルの回復を妨げます。
在宅での具体的な進め方は、訪問診療・在宅医療とは|対象・費用・依頼の流れを医師が解説する完全ガイド も役立ちます。
また、在宅での相談導線としては訪問診療・在宅医療を知る|相談・依頼するためのまとめ もご覧ください。
当院の在宅褥瘡診療の現場から
AIプラスクリニックたまプラーザでは、在宅療養支援診療所として、訪問診療で褥瘡の評価を行い、DESIGN-R®2020に基づく状態確認、処置、外用薬やドレッシング材の選択、体圧分散用具の見直しを進めています。訪問看護ステーション、ケアマネジャー、福祉用具専門相談員と連携し、在宅で継続しやすい治療計画を立てます。悪化がある場合や外科的処置が必要な場合は、連携病院へ紹介します。
受診・相談の目安
- 押しても消えない赤みが続く
- 皮膚が破れて深くなってきた
- 臭い、膿、滲出液の増加がある
- 発熱や強い痛みを伴う
- 処置方法や体位変換に迷う、通院が難しい
よくある質問
Q. 大転子部の褥瘡は、真横向きだと必ずできますか?
必ずではありませんが、真横に近い姿勢を長く続けると圧が集中しやすくなります。30度側臥位を基本に、体位変換と除圧を組み合わせることが大切です。
Q. 腸骨部と大転子部、どちらを優先して見るべきですか?
どちらも重要です。側臥位では両方が圧を受けやすいため、まとめて観察してください。赤みの位置を指でなぞるように確認するとわかりやすいです。
Q. 市販の軟膏を塗ればよいですか?
軽い皮膚トラブルに限って検討しますが、褥瘡が疑われる場合は受診が必要です。自己判断で処方薬や医療用被覆材を使わないでください。
Q. 在宅で見守るとき、何を記録すればよいですか?
赤みの有無、痛み、熱感、皮膚の破れ、滲出液の量、体位変換の時間、食事量を記録すると、医療者が評価しやすくなります。
Q. いつ訪問診療に相談すべきですか?
赤みが改善しない、傷が深くなる、介護者だけでは体位変換が難しい、通院が困難、という場合は早めに相談してください。
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参考文献・出典
- 日本褥瘡学会: https://www.jspu.org/
- 日本創傷・オストミー・失禁管理学会: https://www.jwocm.org/
- 日本皮膚科学会: https://www.dermatol.or.jp/
- 厚生労働省 在宅医療の推進: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000061944.html
- 厚生労働省 介護保険制度(福祉用具貸与): https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/
- 日本在宅医療連合学会: https://www.jahcm.org/
本記事の監修医師
佐藤 靖郎(さとう やすお)/医師(医学博士)/専門: 消化器外科・消化器内視鏡/一般内科/在宅医療・高齢者医療・がん緩和ケア・心不全・呼吸不全。
略歴: 1988年 福島県立医科大学医学部卒業、医師免許取得。1997年 同大学大学院修了、博士号取得。国立国際医療研究センター、東京新宿メディカルセンター、NTT東日本関東病院、横浜市立大学関連病院、国立病院機構横浜医療センター外科医長・救命救急センター副部長、済生会若草病院(横浜市)外科部長・内視鏡センター・診療部長を歴任。丸亀医療センター・佐々木病院副理事長、日立おおみか病院理事を経て現在に至る。
AIプラスクリニックたまプラーザの訪問診療
免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個々の患者さんの診断・治療を代替するものではありません。褥瘡の状態や処置・薬の選択は、必ず医師・看護師の判断のもとで行ってください。医療用医薬品・医療機器の使用は処方・指示に従ってください。制度・費用は改定される場合があります。