入院中の床ずれ責任|医療機関・施設への対応と裁判事例
入院中に床ずれができると、「病院の責任なのか」と不安になります。
責任が問題になるのは、予防や観察が不十分だったかどうかが中心です。
まずは記録を残し、説明を受け、必要に応じて相談先を整理することが大切です。
入院中の床ずれで責任が問題になるのはどんなときか
入院中の床ずれは、病院や施設が十分な予防をしていたかが見られます。たとえば、体位変換(寝る向きを変えること)、皮膚の観察、清潔の保持、栄養管理、圧力を分散する寝具の使用が不十分だった場合です。
一方で、もともとの病気や全身状態の悪さで起こりやすいこともあり、床ずれができた=自動的に病院の過失とは限りません。褥瘡の全体像はこちらの総合ガイドも参考になります。
| 見るポイント | 例 |
|---|---|
| 予防 | 体位変換、寝具の調整、スキンケア |
| 観察 | 赤みや皮むけの早期発見 |
| 記録 | ケア内容や傷の変化の記録 |
| 説明 | 家族への説明があったか |
| 体制 | 医師・看護師の連携があったか |
公的な考え方としては、日本褥瘡学会のガイドラインや、厚生労働省の在宅医療・介護の考え方が参考になります。
裁判では何が見られるのか
褥瘡の裁判では、主に次の3点が検討されます。
- 予防義務を果たしていたか
- 傷ができた後の対応が遅れていないか
- 記録や説明が適切か
つまり、裁判で問題になるのは「床ずれが発生した事実」そのものより、その前後の対応です。
赤みが続いていたのに放置された、傷が深くなっているのに対策が変わらなかった、家族への説明が乏しかった、といった点が争点になりやすいです。
裁判例でよくある争点
- 何日も同じ姿勢が続いていないか
- 皮膚の赤みを軽く見ていないか
- 栄養不良や失禁への対応が十分か
- 看護記録に具体性があるか
病院・施設にまず確認したいこと
責任追及を急ぐ前に、事実確認をしておくと話し合いが進めやすくなります。
- いつから赤みや傷があったか
- どのような予防ケアをしていたか
- 体位変換の頻度はどうだったか
- 皮膚の状態をいつ誰が確認したか
- 今後の処置方針は何か
可能であれば、面談の内容をメモし、説明資料や看護記録の写しについても相談します。
なお、家でどこまでできるか、誰に頼ればよいかを考える場面では、訪問診療・在宅医療とは|対象・費用・依頼の流れを医師が解説する完全ガイドや、自宅でできる医療処置のすべて|胃ろう・在宅酸素・褥瘡ケアと管理の実際が役立ちます。
また、入院後の退院先や介護負担を考える際は、寝たきりで入院費用が気になる私へ、負担の整理と相談先も参考になります。
示談や賠償請求を考える前に知っておきたいこと
示談や賠償請求は、感情だけで進めるより、記録を整理してからのほうが話し合いしやすいです。
まずは次の順で進めるとよいでしょう。
- 病院・施設へ説明を求める
- 診療情報や看護記録の開示を相談する
- 必要に応じて第三者へ相談する
- 話し合いで解決が難しければ、法的相談を検討する
ただし、医療内容の評価は難しく、一般の方だけで判断しにくいことがあります。褥瘡の記録には、傷の深さや色、滲出液(にじみ出る液)の量など、専門的な見方が必要です。
当院の在宅褥瘡診療の現場から
当院の在宅褥瘡診療の現場から
AIプラスクリニックたまプラーザでは、在宅療養支援診療所として、訪問診療で褥瘡の状態を評価し、処置や外用薬、ドレッシング材、体圧分散用具の見直しを行っています。訪問看護ステーション、ケアマネジャー、福祉用具専門相談員と連携し、在宅で無理のない治療計画を立てます。悪化時や外科的対応が必要な場合は、連携病院へ紹介します。
入院中 褥瘡 責任を考えるときのポイント
入院中の床ずれは、患者さん側の体力低下が大きく関わることがあります。そのため、責任の有無は単純ではありません。
日本褥瘡学会の考え方では、予防と早期発見が重要です。日本創傷・オストミー・失禁管理学会は、皮膚トラブルの見分け方として、褥瘡だけでなく、失禁関連のただれや皮膚のめくれも区別する必要があるとしています。
褥瘡の相談先に迷うときは、褥瘡は何科を受診?家族が知っておきたい受診先と入院の目安も確認してください。
相談先の整理
| 状況 | 相談先 |
|---|---|
| 入院中の傷の説明を受けたい | 主治医・病棟看護師 |
| 退院後も傷が心配 | 訪問診療・訪問看護 |
| 施設での対応を確認したい | 施設責任者・ケアマネジャー |
受診・相談の目安
次のような場合は、早めに医療者へ相談してください。
- 赤みが押しても消えない状態が続く
- 皮膚がむける、傷が深くなる
- においが強い、膿が出る
- 発熱や元気の低下がある
- 処置方法が分からない、通院が難しい
床ずれは、ご家族だけで判断・処置を続けると悪化に気づきにくいものです。訪問診療では医師がご自宅で傷を診て、処置の方法・薬・マットレスまで一緒に見直します。ご本人が通院できない場合も、ご家族だけでのご相談から承っています。
ご予約・お問い合わせ
よくある質問
Q. 入院中に床ずれができたら、必ず病院の責任ですか?
A. いいえ、必ずしもそうではありません。全身状態や持病で起こりやすいこともあります。予防や観察、説明が十分だったかが大切です。
Q. 家族は何を集めておくとよいですか?
A. 面談のメモ、傷の経過、説明資料、写真を撮れる場合は時系列の記録が役立ちます。
Q. 退院後も傷が残っていたらどうすればよいですか?
A. 退院後も傷が続く場合は、訪問診療や訪問看護で継続してみることがあります。再評価が必要です。
Q. 施設で起きた床ずれも考え方は同じですか?
A. 基本は同じです。予防や観察、説明が適切だったかが見られます。施設側の記録確認が重要です。
Q. 市販薬を塗ってよいですか?
A. 軽い皮膚トラブルに限られます。褥瘡が疑われる場合は自己判断せず、医師の処方・指示のもとで使ってください。
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参考文献・出典
- 日本褥瘡学会 https://www.jspu.org/
- 日本創傷・オストミー・失禁管理学会 https://www.jwocm.org/
- 厚生労働省 在宅医療の推進 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000061944.html
- 厚生労働省 介護保険制度(福祉用具貸与) https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/
本記事の監修医師
佐藤 靖郎(さとう やすお)/医師(医学博士)/専門: 消化器外科・消化器内視鏡/一般内科/在宅医療・高齢者医療・がん緩和ケア・心不全・呼吸不全。
略歴: 1988年 福島県立医科大学医学部卒業、医師免許取得。1997年 同大学大学院修了、博士号取得。国立国際医療研究センター、東京新宿メディカルセンター、NTT東日本関東病院、横浜市立大学関連病院、国立病院機構横浜医療センター外科医長・救命救急センター副部長、済生会若草病院(横浜市)外科部長・内視鏡センター・診療部長を歴任。丸亀医療センター・佐々木病院副理事長、日立おおみか病院理事を経て現在に至る。
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免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個々の患者さんの診断・治療を代替するものではありません。褥瘡の状態や処置・薬の選択は、必ず医師・看護師の判断のもとで行ってください。医療用医薬品・医療機器の使用は処方・指示に従ってください。制度・費用は改定される場合があります。