胃がん治療の選択肢と自分に合う考え方
胃がんと診断されたとき、「どんな治療があるのか」「自分の状態にはどの治療が合うのか」と悩む方は多くいます。胃がんの治療は手術・薬物療法・内視鏡治療など複数の選択肢があり、病状の進行度や体の状態によって最適な方針は異なります。本記事では、治療の種類と考え方を整理し、主治医との相談の際に役立つ情報をお伝えします。
胃がんの治療の選択|押さえておきたい要点を医師監修で解説も、治療を検討する際にあわせてご参照ください。
目次
胃がん治療はどう選ぶ?まず知っておきたい基本
治療方針は「がんの進行度」と「体の状態」で決まる
胃がんの治療方針は、主に次の2つの要素で決まります。
- 進行度(ステージ):がんが胃壁のどの深さまで浸潤しているか、リンパ節・他臓器への転移の有無で分類されます(ステージⅠ〜Ⅳ)。
- 患者さんの全身状態:年齢、持病(心疾患・糖尿病など)、栄養状態、体力(PS:パフォーマンスステータスと呼ばれる指標で評価)など。
これらを総合的に評価し、日本胃癌学会の「胃癌治療ガイドライン」に基づいて主治医が治療計画を提案します。「すべての患者さんに同じ治療」ということはなく、個々の状況に応じた選択が行われます。
胃がん治療は主治医との相談が前提
治療の種類や特徴を知ることは大切ですが、実際に「どれが適切か」の判断は主治医との診察が前提です。本記事は一般的な情報の整理を目的としており、個々の診断・治療方針の決定にそのまま当てはめることはできません。
胃がんの主な治療法
手術療法
胃の全部または一部を切除する治療です。早期から進行胃がんまで幅広く適応されます。腹腔鏡(おなかに小さな穴を開けてカメラで行う)手術と開腹手術があり、病状や施設の状況により選択されます。切除の範囲によって術後の食事・生活習慣への影響が変わるため、事前に医師に確認しておくことが重要です。
薬物療法(抗がん薬・分子標的薬・免疫療法など)
- 抗がん薬(化学療法):フルオロウラシル系薬やプラチナ系薬などを組み合わせて使用します。手術前後の補助療法としても用います。
- 分子標的薬:がん細胞の特定のタンパク質(HER2など)を標的にする薬剤です。HER2陽性の胃がんでは有効性が示されており、検査でHER2の状態を確認したうえで適応が判断されます。
- 免疫チェックポイント阻害薬(免疫療法):免疫の「ブレーキ」を解除してがんに働きかける薬剤です。一定の条件を満たす場合に適応となりますが、すべての患者さんに有効とは限らず、副作用のリスクもあります。詳しくは胃がんの免疫療法とは?治療の位置づけを解説をご参照ください。
内視鏡治療
内視鏡(口から入れるカメラ)を用いて、胃壁の粘膜ごとがんを切除する方法です。代表的なものにESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)があります。リンパ節転移の可能性がきわめて低い早期胃がんに適応され、胃を残せるメリットがあります。
放射線治療
胃がんに対する放射線治療の役割は限定的ですが、出血や痛みのコントロール、他の臓器への転移部位(骨転移・脳転移など)の症状緩和に用いられることがあります。
緩和ケア
緩和ケアは「最後の手段」ではなく、診断の早い段階から並行して行われるものです。痛み・吐き気・倦怠感などの症状を和らげ、患者さんとご家族の生活の質(QOL)を支えることを目的とします。
ステージ別にみる胃がん治療の考え方
| ステージ | 目安 | 主に選ばれる治療 |
|---|---|---|
| ステージⅠ | 粘膜〜筋層への浸潤、転移なし | 内視鏡治療または手術(腹腔鏡・開腹) |
| ステージⅡ〜Ⅲ | 深い浸潤、リンパ節転移あり | 手術+薬物療法(補助化学療法) |
| ステージⅣ | 他臓器への転移あり | 薬物療法が中心、緩和ケアと並行 |
※上記はあくまで一般的な目安です。個々の状態によって方針は異なります。
早期胃がんで選ばれやすい治療
ステージⅠの早期胃がんでは、条件を満たせば内視鏡治療で根治を目指せる場合があります。条件を超えるサイズ・深さの場合は手術が選択されます。
進行胃がんで考える治療
ステージⅡ〜Ⅲでは、手術で切除可能な場合は手術が基本となり、術後に再発予防を目的とした補助化学療法が行われます。
再発・転移がある場合の治療
ステージⅣや再発後は薬物療法が中心となります。根治を目指すことが難しい状況であっても、がんの進行を抑えながら生活の質を保つことを目標とした治療が続けられます。
「胃がんは治る」はどう考える?治療の目的を整理する
根治を目指す治療と症状をやわらげる治療
胃がんの治療目的は大きく2つに分かれます。
- 根治的治療:がんを完全に取り除き、再発を防ぐことを目標とする治療(主に早期〜一部の進行がん)
- 緩和的治療:根治が難しい状況で、症状をやわらげ、できるだけ長く、充実した生活を送ることを目標とする治療
どちらが選ばれるかは、がんの状態と体の状態によって異なります。胃がんは治る?治療成績と病院選びのポイントでは、治療成績についてさらに詳しく解説しています。
余命や生存率は統計であり個人差がある
「5年生存率」などの数値は、多数の患者さんのデータをまとめた統計値であり、特定の個人の予後を示すものではありません。同じステージでも予後には個人差があります。数値は目安として参考にしながら、主治医に自分の状況について直接確認することが大切です(出典:国立がん研究センター がん情報サービス)。
スキルス胃がんの治療で知っておきたいこと
進行が早いことがあるため早めの受診が大切
スキルス胃がんは、がん細胞が胃壁全体に広がりやすく、通常の胃がんとは異なる性質を持ちます。腹膜播種(おなかの中にがんが広がる状態)を来しやすく、診断時にすでに進行していることも少なくありません。気になる症状(食欲低下・みぞおちの違和感・体重減少など)があれば早めに消化器科を受診することが勧められます。
治療選択で注意したい点
スキルス胃がんでは手術適応が限られる場合があり、薬物療法が治療の中心となることが多いです。治療の選択肢と見通しについて、主治医から十分な説明を受け、必要に応じてセカンドオピニオンを活用することも一つの方法です。
治療を選ぶときに確認したいポイント
年齢・持病・体力
高齢の方や持病のある方は、治療に伴うリスクが高まることがあります。手術や薬物療法の適応は、これらを総合的に評価したうえで判断されます。
手術後の生活への影響
胃を切除した後は、食事の摂り方(少量頻回食など)や栄養管理の工夫が必要になることがあります。術後の生活についても、治療前に医師・栄養士に相談しておくと安心です。
副作用と通院頻度
抗がん薬や分子標的薬には、吐き気・倦怠感・手足のしびれなどの副作用が生じる場合があります。副作用の種類・程度・対処法、および通院スケジュールについて事前に確認しておくことが重要です。
セカンドオピニオンという選択肢
治療方針について別の専門医の意見を聞くセカンドオピニオンは、患者さんの権利として認められています。主治医に「他の医師の意見も聞いてみたい」と伝えることは、治療関係を損なうものではありません。胃がん治療法の種類と選び方をわかりやすく解説もあわせてご覧いただくと、選択肢の整理に役立ちます。
公的データやガイドラインは何を見る?
国立がん研究センターで確認できる情報
国立がん研究センター がん情報サービスでは、胃がんの治療法・生存率・療養情報などを患者さん向けにわかりやすくまとめています。信頼性の高い公的情報源として参考にしてください。
ガイドラインで分かる標準治療の考え方
日本胃癌学会が作成する「胃癌治療ガイドライン」は、現時点で科学的根拠のある標準的な治療方針を示したものです。Minds ガイドラインライブラリでも関連情報を確認できます。「標準治療」とは「最低限の治療」ではなく、現時点でもっとも推奨されるエビデンス(科学的根拠)に基づいた治療を意味します。
当院での診療から
初診で行う確認事項
当院(AIプラスクリニックたまプラーザ)は消化器内視鏡センターを備えており、鎮静下(眠っている状態に近い状態)での胃内視鏡検査を日常的に実施しています。初診時には、自覚症状・既往歴・服用中の薬・健診歴などを丁寧に確認したうえで、必要な検査を案内します。
胃内視鏡検査で早期がんを疑う所見が認められた場合は、速やかに基幹病院へご紹介します。紹介後は地域連携クリティカルパス(がん診療の地域連携の仕組み)を活用し、手術・入院後のフォローアップを当院が担当することも可能です。また、在宅療養支援診療所として在宅での緩和ケアや看取りにも対応しており、治療の各段階で患者さんとご家族を継続的にサポートできる体制を整えています。
必要に応じて他院治療の情報も踏まえて相談
他院で胃がんと診断された後、治療方針について整理したい場合や、術後の経過観察を地域でお受けになりたい場合もご相談いただけます。お持ちの紹介状・検査結果・お薬手帳などをお持ちいただくと、より具体的なご案内が可能です。
受診・相談の目安
こんな症状があるときは早めに相談
以下の症状が続く場合は、消化器科・内科への受診をお勧めします。
- 食欲不振や食後の不快感・みぞおちの痛みが続く
- 体重が急に減少している
- 黒い便(タール便)や血便がある
- 食べ物が飲み込みにくい
検査や治療方針に迷ったときの相談先
「診断を受けたがどう治療を進めればいいかわからない」「セカンドオピニオンを受けたい」「術後のフォローをどこに頼めばいいか」といった相談も、当院でお受けしています。ご予約・お問い合わせはこちらからどうぞ。
よくある質問(FAQ)
早期胃がんで条件を満たす場合は、内視鏡治療(ESD)によって手術なしで根治を目指せることがあります。また、薬物療法が治療の中心となるケースもあります。どの治療が適切かは、がんの状態と体の状態によって異なりますので、主治医にご確認ください。
手術後の再発予防(術後補助化学療法)や、手術が難しい進行・再発胃がんの治療として用いられます。また、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬と組み合わせて使用される場合もあります。
年齢だけで治療の適応が決まるわけではありません。全身状態・持病・体力などを総合的に評価したうえで、高齢の方に適した治療法が検討されます。身体への負担を考慮しながら、内視鏡治療や腹腔鏡手術が選ばれることもあります。
ステージⅣや再発後でも、薬物療法によってがんの進行を抑え、生活の質を保つことを目標とした治療が行われます。緩和ケアと並行することで、症状のコントロールを図りながら治療を続けることが可能です。治療の選択肢がなくなるわけではありませんので、まず主治医にご相談ください。
参考文献・出典
本記事の監修医師
専門:消化器・内科(消化器外科/内視鏡/一般内科)
略歴:1988年 福島県立医科大学医学部卒業、医師免許取得。1997年 同大学大学院修了、博士号取得。国立国際医療研究センター、東京新宿メディカルセンター、NTT東日本関東病院、横浜市立大学関連病院、国立病院機構横浜医療センター外科医長・救命救急センター副部長、済生会若草病院(横浜市)外科部長・内視鏡センター・診療部長を歴任。丸亀医療センター・佐々木病院副理事長、日立おおみか病院理事を経て現在に至る。
公的役割:厚生労働省「地域連携クリティカルパスモデルの開発」班研究員、全国保健所長会 地域連携パス推進班アドバイザー、神奈川県がん診療連携協議会 地域連携クリティカルパス部会 相談役。
AIプラスクリニックたまプラーザのご案内
たまプラーザで内科・消化器の気になる症状がある方へ。受診の目安や検査についてお気軽にご相談ください。
初診の際は、保険証・お薬手帳・(お持ちであれば)健診結果や紹介状をご用意いただくとスムーズです。ご予約はWebまたはお電話で承ります。