胃がんの治療の選択|押さえておきたい要点を医師監修で解説
胃がんの治療は「1つの答え」ではなく、病期(ステージ)・腫瘍の性質・体力・持病・本人の希望など複数の要素を組み合わせて選ばれます。内視鏡治療・手術・抗がん剤・放射線・緩和ケアのどれが中心になるかは、担当医と患者さんが一緒に検討して決めるものです。本記事では、治療法の種類と位置づけ、病期ごとの方針の違い、免疫療法・食事療法の捉え方、病院選びのポイントまで、公的情報に基づいて体系的に解説します。個別の診断・治療方針は必ず主治医にご相談ください。
目次
- 胃がんの治療を考える前に知っておきたいこと
- 胃がん治療の選択肢と自分に合う考え方
- 胃がん治療法の種類と選び方をわかりやすく解説
- 病期(ステージ)で変わる治療方針
- 胃がんは治る?治療成績と病院選びのポイント
- スキルス胃がんの治療をどう考えるか
- 胃がんの免疫療法とは?治療の位置づけを解説
- 治療中・治療後の食事療法と生活上の工夫
- 副作用と合併症を見据えた準備
- 治療の前に確認したい検査と説明
- 当院での診療から
- 受診・相談の目安
- よくある質問(FAQ)
- まとめ:胃がん治療は「自分に合う標準治療」を主治医と一緒に選ぶ
- このテーマの詳細記事
- 関連するテーマ
- 参考文献・出典
- 本記事の監修医師
- AIプラスクリニックたまプラーザのご案内
- 免責事項
胃がんの治療を考える前に知っておきたいこと
胃がんは「治療法が1つ」ではなく、進行度や体の状態で選び方が変わる
胃がんは早期であれば内視鏡のみで対応できる場合もあり、進行度が上がるにつれて手術・薬物療法・放射線治療が組み合わされます。また、同じステージでも年齢・心肺機能・栄養状態・腫瘍の部位によって選択肢は変わります。胃がんの治療選択肢と自分に合う考え方も合わせてご確認ください。
この記事でわかること
- 治療法の種類とそれぞれの位置づけ
- 病期(ステージ)別の治療方針の概要
- 免疫療法・食事療法の正しい理解
- 治療成績・病院選び・セカンドオピニオンの考え方
主治医に確認したい基本情報
| 確認項目 | 具体的な質問例 |
|---|---|
| 病期(ステージ) | 「今の病期はどの段階ですか?」 |
| 推奨される治療法 | 「標準治療として何が勧められますか?」 |
| 治療の目的 | 「根治を目指す治療ですか、症状を和らげる治療ですか?」 |
| 副作用・合併症 | 「主な副作用とその対処法を教えてください」 |
| 治療期間・生活への影響 | 「仕事や食事はどの程度制限されますか?」 |
胃がん治療の選択肢と自分に合う考え方
胃がん治療の選択肢と自分に合う考え方(詳細解説)では、各治療の特徴をさらに詳しく比較しています。
手術、内視鏡治療、薬物療法、放射線治療の位置づけ
国立がん研究センター「がん情報サービス」(2024年版)によると、胃がんの主な治療法は①内視鏡治療、②手術、③薬物療法(抗がん剤・分子標的薬・免疫チェックポイント阻害薬)、④放射線治療の4種類で、多くの場合これらを組み合わせて用います。
体への負担、治療期間、生活への影響をどう比べるか
| 治療法 | 入院期間の目安 | 主な生活への影響 |
|---|---|---|
| 内視鏡治療(ESD等) | 数日〜1週間程度 | 術後一時的な食事制限 |
| 外科手術(開腹・腹腔鏡) | 1〜3週間程度 | 食事量の調整、体力回復に時間を要する |
| 抗がん剤治療 | 外来中心(入院もあり) | 吐き気・倦怠感・脱毛など副作用の管理 |
| 放射線治療 | 外来が多い | 照射部位による局所的な副作用 |
※入院期間は術式・病院・回復状況により大きく異なります。
「治すこと」と「症状を和らげること」を分けて考える
治療の目標は大きく「根治(がんを取り除く)」と「緩和(症状を和らげQOLを保つ)」の2つです。どちらを主軸に置くかによって治療の選び方は変わり、両者を並行させることも少なくありません。
胃がん治療法の種類と選び方をわかりやすく解説
胃がん治療法の種類と選び方(詳細)では各治療の手順・費用・注意点を個別に解説しています。
内視鏡治療が検討されるケース
粘膜内にとどまる早期胃がんで、一定の条件(大きさ・潰瘍の有無・組織型など)を満たす場合、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)が選択されます。開腹しないため身体への負担が少なく、胃を温存できます。
手術が中心となるケース
粘膜下層以深に浸潤している場合やリンパ節転移が疑われる場合、外科切除(胃切除+リンパ節郭清)が基本となります。腹腔鏡手術やロボット支援手術も普及しています。詳しくは胃がんの手術について詳しく知るをご覧ください。
抗がん剤治療が中心または補助的に使われるケース
進行・再発胃がんでは薬物療法が中心となります。術前・術後の補助化学療法として使われることもあります。分子標的薬(トラスツズマブ等)は HER2 陽性例に用いられ、免疫チェックポイント阻害薬(ニボルマブ等)は一定の条件下で承認されています。
放射線治療が使われることがある場面
胃がんで放射線治療単独が用いられることは多くありませんが、手術困難な局所進行例や出血・疼痛緩和を目的とした緩和照射として用いられることがあります。
緩和ケアを早めに組み合わせる考え方
日本胃癌学会「胃癌治療ガイドライン」(第6版)でも、緩和ケアは終末期だけでなく診断早期から並行して提供することが推奨されています。痛み・吐き気・栄養問題への対処は治療継続を支える重要な柱です。
病期(ステージ)で変わる治療方針
胃がんのステージ・分類・進行度について詳しく知るもあわせてご参照ください。
早期胃がんと進行胃がんで治療の考え方はどう違うか
| 病期 | 主な治療の方向性 |
|---|---|
| ステージⅠ(早期) | 内視鏡治療または手術が中心。条件を満たせばESDで根治可能なことも |
| ステージⅡ〜Ⅲ | 手術+補助化学療法が標準。術前化学療法を行う場合もあり |
| ステージⅣ(遠隔転移) | 薬物療法が中心。手術は限定的。緩和ケアを組み合わせる |
リンパ節転移や遠隔転移がある場合の治療
肝・肺・腹膜などへの遠隔転移がある場合、根治手術の適応は原則外れますが、症状緩和や生存期間の延長を目的とした薬物療法が行われます。胃がんの再発・転移について詳しく知るも参考にしてください。
病期だけでなく年齢、持病、体力も判断材料になる
高齢・心疾患・腎機能低下などがある場合、標準的な治療の強度を調整することがあります。画一的な「正解」はなく、個別の状況に応じた検討が不可欠です。
胃がんは治る?治療成績と病院選びのポイント
胃がんは治る?治療成績と病院選びのポイント(詳細)では、各病期の生存率データや病院選びの具体的な視点を解説しています。
「治る」「完治率」をどう理解するか
医学的には「5年相対生存率」が治療成績の指標として用いられます。がん全体の5年生存率(胃がん)は、国立がん研究センター「がん統計」によると、診断時期・病期によって大きく異なります。
生存率は統計であり、個別の予後とは異なる
治療成績だけでなく、症例数や連携体制も確認したい
病院選びでは「その施設での年間胃がん手術件数」「化学療法の経験・体制」「栄養サポートチーム(NST)の存在」「緩和ケアチームとの連携」なども重要な確認ポイントです。
セカンドオピニオンを考える場面
診断内容や治療方針に疑問・不安がある場合、セカンドオピニオンの取得は患者さんの権利です。現在の主治医との関係を維持しながら別の専門医の意見を聞くことができます。
スキルス胃がんの治療をどう考えるか
スキルス胃がんの特徴と治療上の注意点
スキルス胃がん(びまん浸潤型)は、胃壁全体に広がるように進行し、内視鏡検査では発見しにくく、腹膜播種(腹膜への広がり)を来しやすい特徴があります。進行が速く、診断時にはすでにステージが進んでいることも少なくありません。
手術だけでなく薬物療法を組み合わせることがある
切除可能と判断された場合でも術前化学療法を行い、腫瘍を縮小させてから手術する方針がとられることがあります。切除不能例では薬物療法が中心です。
症状が出にくい時期にこそ早めの相談が大切
スキルス胃がんは早期に自覚症状が乏しいことが多く、気になる症状(みぞおちの不快感、食欲低下、体重減少など)があれば早めの受診が重要です。胃がんの症状・初期サインについて詳しく知るもご覧ください。
胃がんの免疫療法とは?治療の位置づけを解説
胃がんの免疫療法の位置づけと根拠(詳細)では、承認薬・臨床試験情報をさらに詳しく解説しています。
免疫療法はどのような治療か
免疫チェックポイント阻害薬(代表例:ニボルマブ)は、がん細胞が免疫細胞の攻撃を回避する仕組みをブロックすることで、免疫系ががんを攻撃しやすくする薬剤です。
現在の標準治療との関係
2024年時点で、ニボルマブは一定のPD-L1発現スコアやMSI-H(マイクロサテライト不安定性高頻度)を持つ進行胃がん患者さんに対し、化学療法との併用で保険適用があります。単独で全員に使える治療ではなく、適応の確認が必要です。
有効性の根拠と限界を確認する
大規模臨床試験(CheckMate 649等)のデータに基づいて承認されていますが、すべての患者さんに同等の効果があるわけではありません。奏効率・副作用(免疫関連有害事象)についても担当医から説明を受けてください。
自由診療を検討する前に確認したいこと
保険適用外の「免疫療法」と称するサービスも存在しますが、有効性・安全性の根拠が不明確なものも少なくありません。自由診療を検討する場合は、事前に担当医に相談し、科学的根拠(エビデンス)を確認することを強くお勧めします。
治療中・治療後の食事療法と生活上の工夫
胃がん食事療法で大切な考え方
「食事療法でがんが治る」という科学的根拠はありません。しかし、治療中・術後の栄養管理は治療継続と回復を支える重要な要素です。
少量頻回、栄養補助、体重減少への備え
胃切除後は一度に食べられる量が減るため、1日5〜6回に分けた少量頻回食が基本です。体重減少が続く場合は栄養補助食品(経口栄養補助剤)の活用も選択肢に入ります。
食べられない、吐き気があるときの対応
吐き気・食欲不振は抗がん剤治療中に多く見られます。制吐剤の処方を担当医に相談するとともに、食べやすい食形態(やわらかく消化しやすいもの)を工夫してください。
サプリメントや健康食品は主治医に相談する
一部のサプリメントは抗がん剤と相互作用を起こす可能性があります。市販品を含め、新たに摂取を開始する前に必ず主治医・薬剤師に相談してください。
副作用と合併症を見据えた準備
手術後に起こりやすい変化
- ダンピング症候群: 食後の動悸・冷汗・めまい。少量頻回食・糖分の急速摂取を避けることで対応
- 逆流性食道炎: 食後すぐ横にならない、就寝時に頭部を高くする
- 貧血・骨粗鬆症: 胃切除後は鉄・ビタミンB12・カルシウムの吸収が低下するため、定期的な採血が必要
抗がん剤の主な副作用と対応
| 副作用 | 主な対応 |
|---|---|
| 吐き気・嘔吐 | 制吐薬の使用、食事のタイミング調整 |
| 骨髄抑制(感染リスク上昇) | 感染予防行動、発熱時は早急に受診 |
| 末梢神経障害(手足のしびれ) | 担当医への報告、必要に応じて投与調整 |
| 口内炎 | 口腔ケア、刺激物の回避 |
いつ受診すべきか、危険な症状の見分け方
38℃以上の発熱・激しい腹痛・血便・嘔吐が止まらない・強いめまいが生じた場合は、自己判断せず速やかに担当医または救急に連絡してください。
治療の前に確認したい検査と説明
胃がんの検査・診断について詳しく知るもあわせてご覧ください。
病理検査、画像検査、内視鏡検査の役割
治療方針を決める前に、①内視鏡による組織生検(病理診断)、②CT・PETなどの画像検査(転移・進行度の評価)、③場合によってはHER2検査・MSI検査などの分子マーカー検査が行われます。
治療前に伝えておきたい持病や服薬情報
血液をサラサラにする薬(抗凝固薬)・免疫抑制薬・漢方薬・サプリメントを含め、現在服用中のものはすべて担当医に伝えてください。
説明時に確認したいポイント
「なぜこの治療が勧められるのか」「他の選択肢はあるか」「治療しない場合どうなるか」を確認することは、患者さん自身が治療に主体的に参加するための大切なステップです。
当院での診療から
当院(AIプラスクリニックたまプラーザ)は、消化器内視鏡センターを備え、鎮静下での胃・大腸内視鏡検査を日常的に実施しています。内視鏡検査中に早期がんを疑う所見が確認された場合は、速やかに基幹病院へ紹介し、地域連携クリティカルパスに基づいて術後フォローアップを継続して担当します。
消化器外科専門医(医学博士)の監修のもと、検査結果の説明・他院からの紹介状の対応・治療後の経過観察に対応しています。また、在宅療養支援診療所として在宅緩和ケア・看取りにも対応しており、治療の各フェーズで地域と連携しながら患者さんとご家族を継続的に支えることを大切にしています。「検査結果をどう理解すればいいか」「次のステップをどう考えればいいか」といったご相談もお気軽にどうぞ。
受診・相談の目安
すぐに相談したい症状
- 激しい腹痛・嘔血(血を吐く)・黒色のタール便
- 38℃以上の発熱が続く(抗がん剤治療中)
- 急激な体重減少(1か月で3kg以上など)
早めに受診を考えたい状況
- 食欲不振・胃もたれ・みぞおちの不快感が2〜3週間以上続く
- 胃がんの家族歴があり、定期検査を受けていない
- 治療方針に疑問・不安があり、セカンドオピニオンを検討している
- 胃がんの基礎知識・全体像について知りたい方はこちら
かかりつけ医や紹介状があるときの流れ
紹介状・検査データをお持ちの場合は、初診時にご持参ください。院内で状況を確認した上で、必要に応じて専門病院へのスムーズな連携を行います。ご予約はこちらのWeb予約フォームまたはお電話(045-909-0117)からどうぞ。
よくある質問(FAQ)
早期(ステージⅠ)の胃がんでは、内視鏡治療や手術後の5年生存率が高く、長期生存が期待できるケースがあります。一方、進行した状態では根治が難しいこともあります。「治る」かどうかは病期・腫瘍の性質・体の状態によって大きく異なり、統計値が個別の患者さんに当てはまるとは限りません。担当医と十分に話し合ってください。詳しくは胃がんの治療成績と予後についてをご覧ください。
現在、保険適用の免疫チェックポイント阻害薬は特定の条件を持つ進行胃がん患者さんを対象に、化学療法との併用で使用されるものが中心です。免疫療法単独で標準治療に取って代わるものではなく、適応・効果・副作用について担当医から詳しく説明を受けることが重要です。
早期がんで条件を満たせば内視鏡治療が手術の代替となります。また、高齢や全身状態によっては、手術よりも薬物療法や緩和ケアを中心とする方針が選ばれることもあります。「手術をしない」という選択を含め、複数の選択肢について担当医とオープンに話し合うことが大切です。
胃がんの手術件数・化学療法の経験・多職種連携(栄養士・薬剤師・緩和ケアチーム等)の体制・患者さんとのコミュニケーションの丁寧さが重要な指標です。「がん診療連携拠点病院」への受診も選択肢のひとつです。詳しくは胃がんの病院選びのポイントをご参照ください。
特定の食事療法だけでがんが縮小・消失するという科学的根拠はありません。食事・栄養管理は治療を継続するための体力維持に重要ですが、標準治療の代替にはなりません。「食事療法に切り替えたい」と思う場合も、まず主治医にご相談ください。
治療方針の説明を受けた後、疑問・不安があればいつでも受けることができます。初診の診断直後・治療効果が十分でないと感じるとき・新たな治療選択肢を検討するときが多い場面です。主治医との関係を損なうものではなく、患者さんの正当な権利です。
まとめ:胃がん治療は「自分に合う標準治療」を主治医と一緒に選ぶ
治療の選択は病期と体の状態を踏まえて決める
胃がんの治療は、内視鏡・手術・薬物療法・放射線・緩和ケアを組み合わせて個別に設計されます。病期(ステージ)は重要な判断材料ですが、それだけでなく年齢・体力・持病・患者さん自身の希望も治療方針に反映されます。
不安な点は早めに相談し、必要なら専門病院で確認する
不明点・不安点は遠慮なく担当医に質問し、必要に応じてセカンドオピニオンや専門病院への相談を活用してください。胃がんの生存率・予後・余命についての情報や胃がんの検診・予防・リスクについての情報も、治療を考えるうえでの参考になります。
このテーマの詳細記事
参考文献・出典
本記事の監修医師
専門:消化器・内科(消化器外科/内視鏡/一般内科)
略歴: 1988年 福島県立医科大学医学部卒業・医師免許取得。1997年 同大学大学院修了・博士号取得。国立国際医療研究センター、東京新宿メディカルセンター、NTT東日本関東病院、横浜市立大学関連病院、国立病院機構横浜医療センター外科医長・救命救急センター副部長、済生会若草病院(横浜市)外科部長・内視鏡センター・診療部長を歴任。丸亀医療センター・佐々木病院副理事長、日立おおみか病院理事を経て現在に至る。
公的役割: 厚生労働省「地域連携クリティカルパスモデルの開発」班研究員、全国保健所長会 地域連携パス推進班アドバイザー、神奈川県がん診療連携協議会 地域連携クリティカルパス部会 相談役。
AIプラスクリニックたまプラーザのご案内
たまプラーザで内科・消化器の気になる症状がある方へ。受診の目安や検査についてお気軽にご相談ください。
初診の際は、保険証・お薬手帳・(お持ちであれば)健診結果や紹介状をご用意いただくとスムーズです。ご予約はWebまたはお電話で承ります。