胃がんは治る?治療成績と病院選びのポイント
「胃がんは治るのか」という問いに対して、現時点での答えは「ステージと治療法の選択によって、治る可能性は大きく異なる」です。早期に発見できれば高い割合で根治が見込まれる一方、進行・再発例では治癒よりも「がんと長く付き合う」視点が加わります。この記事では、治療成績の正しい見方から病院選びのポイントまで、公的データと診療ガイドラインをもとにわかりやすく解説します。
本記事は胃がんの治療の選択|押さえておきたい要点を医師監修で解説を親記事とするクラスター(詳細解説)記事です。
胃がんは治る?まず押さえたい「完治」と「治療成績」の考え方
「治る」とは何を指すのか
医学的に「治る(治癒)」とは、治療後にがんの再発がなく一定期間(通常5年以上)が経過した状態を指すことが多く、「長期生存」や「無再発生存」とほぼ同義で使われます。ただし、がんの種類・ステージ・個人の状態によって意味合いが異なるため、担当医と「何をゴールにするか」を丁寧に確認することが大切です。
余命・生存率は統計であり、個々の患者さんに当てはまるとは限らない
生存率や余命の数値は、多数の患者さんのデータを集計した統計値です。同じステージでも、患者さん個人の年齢・合併症・腫瘍の性質・治療への反応性によって経過は異なります。数値はあくまで「傾向を知る目安」であり、特定の個人の予後を断言するものではないことをご理解ください。
胃がんの治療成績はどのくらい?公的データで見るポイント
国立がん研究センターの統計で確認する生存率の見方
国立がん研究センター がん統計(2025年公開データ)によると、胃がんの5年相対生存率(全ステージ合計)は男女ともに約67〜70%前後とされています(※データの更新時期により変動します。最新値は同サイトでご確認ください)。「相対生存率」とは、同性・同年齢の一般集団と比較した生存割合で、治療効果を評価する指標として広く使われます。
ステージ別に差が出る理由
| ステージ | 概要 | 5年相対生存率の目安(参考) |
|---|---|---|
| Ⅰ期 | 粘膜〜粘膜下層・固有筋層にとどまる | 約90%以上 |
| Ⅱ期 | 胃壁深部またはリンパ節転移あり(限局) | 約70〜80%台 |
| Ⅲ期 | リンパ節転移が広い範囲に及ぶ | 約40〜50%台 |
| Ⅳ期 | 他臓器・遠隔転移あり | 約10〜20%台 |
※数値は国立がん研究センターの公表データをもとにした参考値です。統計値は集計時点・対象集団により異なります。個々の患者さんへの適用はできません。
ステージが上がるほど生存率が下がる主な理由は、腫瘍が胃壁を超えてリンパ節・他臓器へ広がると外科的に完全切除しにくくなることです。
早期発見と治療成績の関係
日本は胃がん検診(バリウム検査・内視鏡検査)が普及しており、無症状の段階で発見されるケースが他国と比べて多いとされています。早期発見はそのまま治療成績向上につながるため、定期的な検診が重要です。
胃がんはステージによって治療の考え方が変わる
早期胃がんで検討される治療
粘膜内にとどまり、一定の条件を満たす場合は内視鏡的切除(ESD/EMR)が第一選択となります。リンパ節転移リスクが低い早期がんでは、胃を残した低侵襲な治療が可能です。
進行胃がんで検討される治療
胃壁深部浸潤やリンパ節転移を伴う場合は外科的手術(胃切除+リンパ節郭清)が基本となります。術前・術後に薬物療法(化学療法)を組み合わせる集学的治療も行われます。
再発・転移がある場合の治療の位置づけ
遠隔転移(肝・肺・腹膜など)がある場合、外科手術で根治を目指すことは難しいことが多く、薬物療法を中心とした治療で「がんの進行を抑え、生活の質を保つ」ことが主眼となります。緩和ケアは末期だけでなく、診断直後から並行して行うものです。
胃癌ガイドラインではどのような治療が推奨されているか
日本胃癌学会の「胃癌治療ガイドライン」(Mindsガイドラインライブラリでも参照可能)では、以下の治療が整理されています。
手術療法の基本
胃切除範囲はがんの部位・ステージに応じて決まります。幽門側胃切除・全摘・噴門側胃切除など複数の術式があり、リンパ節郭清(D1〜D2)も同時に行います。腹腔鏡下手術は一定の条件下で標準治療として認められています。
内視鏡治療の適応
EMR(内視鏡的粘膜切除術)・ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)は、潰瘍のない分化型・2cm以下の粘膜内癌などを適応の基本とし、条件によって拡大適応が検討されます。
薬物療法(化学療法・分子標的薬・免疫療法)の位置づけ
切除不能進行・再発胃がんに対する一次治療では、フッ化ピリミジン系薬剤+プラチナ系薬剤を基本とした化学療法が推奨されます。HER2陽性の場合はトラスツズマブ(分子標的薬)の上乗せ、PD-L1陽性等の条件下では免疫チェックポイント阻害薬(ニボルマブ等)の併用も検討されます。ただし、これらの適応は腫瘍の遺伝子検査・病理検査結果に基づき個別に判断されるものです。
緩和ケアを含めた治療方針の考え方
がん治療においては、病気の進行程度にかかわらず、痛みや不安・生活の質の維持を目的とした緩和ケアを早期から組み合わせることが世界標準です。「緩和ケア=治療の断念」ではありません。
胃がんが「治る可能性」を高めるために大切なこと
病期を正確に評価すること
CT・内視鏡・超音波内視鏡・PET-CTなど複数の検査を組み合わせ、正確な病期(ステージ)診断を行うことが、適切な治療選択の出発点です。
治療開始の前に確認したい検査
病理検査でのHER2・PD-L1などの biomarker(バイオマーカー)評価は、薬物療法の選択に直結します。これらが未実施の場合、最適な治療が受けられない可能性があるため、主治医に確認することをお勧めします。
標準治療を土台に治療を選ぶこと
「標準治療」とは「最も効果が劣る治療」ではなく、「現時点で科学的根拠が最も高い治療」です。胃がん治療の選択肢と自分に合う考え方も参考に、ガイドラインに基づく治療を基本軸に置くことが大切です。
胃がんの病院選びで確認したいポイント
胃がん治療の実績と診療体制
年間の胃がん手術件数・内視鏡治療件数は病院の公開情報やDPC(診断群分類)データで確認できます。症例数の多い施設ほど経験が蓄積されています。
外科・内科・放射線科などの連携
複数の診療科が連携して一人の患者さんの治療を議論する「キャンサーボード(腫瘍内科カンファレンス)」が定期的に行われているかは重要な判断基準です。
セカンドオピニオンに対応しているか
診断や治療方針について別の専門医の意見を求めることは、患者さんの権利として広く認められています。「主治医への遠慮」は不要です。治療を急ぐ必要がある場合は主治医に相談した上で日程を調整してください。
ガイドラインに基づく説明があるか
治療の選択肢・根拠・リスクについて、胃癌治療ガイドラインに沿った丁寧な説明があるかどうかも、信頼できる病院の目安となります。
当院での診療から
当院(AIプラスクリニックたまプラーザ)は消化器内視鏡センターを備え、鎮静下(眠った状態)での胃・大腸内視鏡検査を日常的に実施しています。検査中に早期がんを疑う所見が見つかった場合は、速やかに連携先の基幹病院(大学病院・がん診療連携拠点病院等)へご紹介します。
紹介後も地域連携クリティカルパスを活用し、術後の定期フォローアップを当院が担当することで、患者さんが遠方の大病院へ何度も足を運ぶ負担を軽減しています。また、在宅療養支援診療所として在宅緩和ケア・看取りにも対応しており、治療のどの段階においても「地域でのQOL(生活の質)の維持」を支えることを重視しています。
消化器症状が気になる方、健診で異常を指摘された方、他院での治療について相談したい方は、お気軽にご来院ください。
受診・相談の目安
こんな症状があるときは早めの受診を
- みぞおちの痛み・違和感が続く
- 食欲低下・体重減少が続いている
- 黒色便(タール便)・嘔吐・嚥下困難がある
- 貧血を指摘された
検診や内視鏡で異常を指摘されたとき
「要精検」「ポリープあり」「ピロリ菌陽性」など、健診結果で何らかの指摘があった場合は、放置せず消化器内科を受診してください。異常所見の多くは精密検査で詳しく評価できます。
すでに胃がんと診断され、治療先を迷っているとき
診断後に「本当にこの病院・この治療法でよいか」と迷うことは自然なことです。セカンドオピニオンの利用や、かかりつけ医への相談を遠慮なくご活用ください。ご予約・お問い合わせはWebまたはお電話で承っています。
よくある質問(FAQ)
胃がんは早期なら治りますか?
粘膜内にとどまる早期胃がん(ステージⅠ期)では、内視鏡切除や手術後の5年相対生存率は90%を超える場合があり、根治が見込める状況が多いとされています(国立がん研究センター統計より)。ただし「早期」の定義や腫瘍の性質によって治療方針は異なりますので、専門医による正確な評価が前提です。
ステージ4でも治療の意味はありますか?
はい、意味があります。切除不能・転移のある場合でも、薬物療法によってがんの進行を抑え、症状を和らげ、生活の質を保てる期間を延ばすことを目指します。緩和ケアとの組み合わせで、自宅での生活を続けながら治療を続ける方も少なくありません。
手術をすれば必ず完治しますか?
手術は根治を目指す重要な手段ですが、「手術=必ず完治」ではありません。ステージや腫瘍の性質によっては術後再発のリスクが残るため、定期的な経過観察と場合によっては補助化学療法が行われます。治療後のフォローアップが重要です。
高齢でも標準治療は受けられますか?
年齢だけで治療を一律に制限することは適切ではありません。心肺機能・栄養状態・日常生活動作(ADL)などを総合的に評価したうえで、手術・内視鏡治療・薬物療法の適否が検討されます。ご本人・ご家族の希望も含めて担当医と十分に話し合うことが大切です。
治療成績は病院によって変わりますか?
症例数・多職種連携・手術の技量・薬物療法の習熟度など、病院の体制によって治療成績に差が生じる可能性はあります。特に高難度手術や希少な病理型では、専門施設への紹介を積極的に検討することが推奨されます。
まとめ:胃がんは「早く見つけて、適切な治療を選ぶ」ことが大切
胃がんは、早期発見ができれば根治が十分に見込まれるがんです。一方、進行・再発した場合でも、標準治療・薬物療法・緩和ケアを組み合わせることで「がんと共に生きる期間」を支えることができます。治療成績の数値は統計であり、あなた個人の予後を決めるものではありません。
不安があるときは主治医に治療選択を相談する
治療の目的・選択肢・副作用・生活への影響について、わからないことは遠慮なく主治医に質問してください。胃がん治療法の種類と選び方をわかりやすく解説も参考になります。
必要に応じてセカンドオピニオンを活用する
現在の診断・治療方針に疑問があるときや、より専門的な意見を聞きたいときは、セカンドオピニオンを活用することをお勧めします。利用することは主治医への不信任ではなく、治療の質を高めるための正当な権利です。
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参考文献・出典
本記事の監修医師
略歴
1988年 福島県立医科大学医学部卒業、医師免許取得。1997年 同大学大学院修了、博士号取得。国立国際医療研究センター、東京新宿メディカルセンター、NTT東日本関東病院、横浜市立大学関連病院、国立病院機構横浜医療センター外科医長・救命救急センター副部長、済生会若草病院(横浜市)外科部長・内視鏡センター・診療部長を歴任。丸亀医療センター・佐々木病院副理事長、日立おおみか病院理事を経て現在に至る。
公的役割
厚生労働省「地域連携クリティカルパスモデルの開発」班研究員 / 全国保健所長会 地域連携パス推進班アドバイザー / 神奈川県がん診療連携協議会 地域連携クリティカルパス部会 相談役
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