訪問診療・在宅医療とは|対象・費用・依頼の流れを医師が解説する完全ガイド › (本記事)
「親の通院がつらそうになってきた」「退院後の療養先をどうすればよいか分からない」——そうした困りごとを抱えたとき、在宅医療という選択肢を知っておくと、対処の幅が広がります。本記事では、往診料の算定方法をはじめ、訪問診療とケアプランの関係、24時間対応の考え方、退院後すぐに必要となる支援の流れなど、家族が「次の一手」を考えるうえで役立つ情報を横断的に整理します。診断・治療の判断は必ず医師の診察を前提とすることをお断りしたうえで、まずは基本から確認していきましょう。
往診料の算定方法とは?まず「往診」と「訪問診療」の違いを整理
往診は「必要時に医師が呼ばれて行う診療」、訪問診療は「計画的に定期訪問する診療」
「往診」と「訪問診療」は混同されやすい言葉ですが、制度上は異なります。往診は、患者さんや家族の求めに応じて医師が臨時で自宅を訪れる診療です。一方、訪問診療(在宅患者訪問診療)は、あらかじめ計画を立て、定期的に自宅や施設へ出向いて行う診療を指します。日常的に「往診してもらっている」と表現される場合でも、実態は計画的な訪問診療であることが少なくありません。
どちらが選ばれるかは病状・通院困難さ・生活環境で異なる
要介護度が高く定期的な医療管理が必要な方には訪問診療が適しており、急変時に緊急で医師を呼ぶ場合は往診となります。多くのケースでは訪問診療を基盤としつつ、急変時に往診で対応する形が取られます。詳しくは往診料の算定方法は?親の費用が気になるときの基本をあわせてご覧ください。
算定の考え方は診療内容や時間帯、同一日複数回の訪問などで変わる
往診料の算定方法は、診療内容・訪問の緊急性・時間帯(夜間・深夜・休日など)・同一日に複数回訪問したかどうかなどの条件によって異なります。なお、在宅緩和ケア充実診療所・病院加算(往診料)のように、終末期ケアに手厚い体制を持つ医療機関では追加の加算が設けられている場合があります。これらの算定は医師・医療機関が診療内容と制度に基づいて行うものですが、家族として大まかな仕組みを知っておくと、請求内容を確認する際の助けになります。
往診料の算定方法で押さえる基本
往診料は「医師が患者宅などへ往診した場合」に算定される
往診料は、患家(自宅・介護施設など)へ医師が出向いて診察した場合に算定されます。在宅医療の算定方法全体については、厚生労働省が告示する診療報酬点数表(改定のたびに改訂)に基づきます(出典:厚生労働省 在宅医療の推進)。
距離や時間帯、緊急性、診療内容によって加算が関係することがある
往診料には、緊急往診加算(夜間・緊急の場合)などの加算が存在します。時間帯(深夜・休日など)や緊急性によって算定内容が異なるため、実際の費用は医療機関への確認が必要です。「在宅医療 算定方法」で調べる際は、改定時期を確認することが重要です。
訪問診療との算定の違いは、定期訪問か緊急対応かで整理すると理解しやすい
| 区分 | 訪問診療 | 往診 |
|---|---|---|
| 性質 | 計画的・定期的 | 臨時・必要時 |
| 算定の主な根拠 | 在宅患者訪問診療料 | 往診料 |
| 想定される場面 | 月1〜2回の定期管理 | 急変・体調悪化時 |
| 計画書の要否 | 必要(在宅療養計画) | 不要 |
この表は概念の整理を目的としたものであり、実際の算定は医師・医療機関が個別の診療内容に基づいて行います。
実際の請求・算定は医師の診察内容と制度に基づいて行われる
家族が「自分で算定を計算する」必要はありません。ただし、請求明細書(レセプト)を確認する際に大まかな仕組みを理解しておくと、医師や医療事務担当者へ適切に質問できます。費用の目安や自己負担額については、医療機関または加入している保険者(健康保険組合・市区町村)へ直接ご確認ください。
在宅医療の算定方法を知ると、家族が確認しやすくなるポイント
月1回以上の定期訪問で算定される診療費の考え方
訪問診療では、医師が計画を立て月1回以上定期的に訪問します。算定される診療費はその回数・内容・患者の状態(重症度・医療依存度など)によって変わります。ケアプランとの連携がある場合は、介護保険サービスとの調整も必要になります。
24時間対応の有無で費用や体制の見え方が変わる
在宅療養支援診療所・病院では、24時間の連絡・往診体制を持つことが要件のひとつです。この体制があるかどうかで、算定できる診療料や患者・家族が受けられる夜間対応の内容が変わります。詳しくは後述の「24時間対応しない訪問診療はどう考える?」をご参照ください。
在宅療養支援診療所・病院の体制によって受けられる支援が異なる
在宅療養支援診療所・病院は、体制の充実度により「機能強化型」と一般の在宅療養支援診療所に区分されます。機能強化型は複数の医師が連携し、手厚い対応が可能な場合があります(出典:日本在宅医療連合学会)。
費用は改定されるため、最新情報は医療機関・保険者・厚労省資料で確認する
診療報酬は原則2年ごとに改定されます。本記事の内容も、記載時点の情報を基にしています。費用・制度の最新情報は、必ずかかりつけの医療機関・加入保険者、または厚生労働省の公開資料でご確認ください。
退院後すぐに在宅医療が必要になるケース
退院日が急に決まり、数日で療養先を決める必要がある
退院支援は、訪問診療を始める大きなきっかけのひとつです。病状が安定したとみなされると、退院日が「数日後」と急に告げられるケースがあります。その短い期間に、自宅環境の整備・医療器具の手配・介護サービスの開始を同時並行で進めなければならない場合もあります。
病院で「自宅か施設か」と案内されても、在宅医療を入れると自宅療養を検討しやすくなる
病院から「自宅か施設か」の二択で案内されたとき、在宅医療という第三の軸を加えると選択肢が広がります。訪問診療・訪問看護・訪問介護を組み合わせれば、医療依存度が高い状態でも自宅療養が可能になるケースがあります。一方で、状態によっては施設入居や入院継続が適切な場合もあります。どちらが望ましいかは、本人の状態・家族の介護力・住環境を総合的に判断する必要があります。
判断に迷ったときは、訪問診療・在宅医療を知る|相談・依頼するためのまとめに、相談の進め方のヒントをまとめています。
退院前カンファレンスに在宅医が加わると引き継ぎが進めやすい
退院前カンファレンスとは、退院に向けて病院スタッフ・在宅医・ケアマネジャー・訪問看護師などが一堂に会し、療養計画を共有する会議です。在宅医がこの段階から関わることで、医療情報の引き継ぎが円滑になり、退院後の急変にも備えやすくなります。
地域包括ケア病棟は入院期間に上限があるため、早めの準備が役立つ
地域包括ケア病棟(在宅復帰を目指す回復期の病棟)は、入院期間が原則60日を上限としています。この期限を逆算し、退院先・訪問診療・ケアプランを早めに整えることが、スムーズな自宅療養につながります。
訪問診療とケアプランの関係
訪問診療はケアプランと連携して進めることがある
要介護認定を受けている方の場合、ケアマネジャーが作成するケアプランに訪問診療の利用が盛り込まれることがあります。医療保険(訪問診療)と介護保険(訪問介護・訪問看護など)の両方を組み合わせることで、生活全体を支える体制が整います。詳しくは訪問診療のケアプランとサービス内容をわかりやすく整理をご参照ください。
ケアマネジャー・訪問看護・薬局との役割分担を整理する
| 職種・機関 | 主な役割 |
|---|---|
| 在宅医(訪問診療) | 診察・治療方針の決定・処方 |
| ケアマネジャー | ケアプランの作成・サービス調整 |
| 訪問看護師 | 医療処置・バイタル管理・療養指導 |
| 薬剤師(訪問薬局) | 服薬管理・薬の自宅配送 |
| 訪問介護員 | 入浴・食事・排泄などの生活援助 |
役割が重なる部分もありますが、担当者が連絡を密に取り合うことで「誰が何を担うか」が明確になります。
ケアプランへの記載内容は、病状や生活状況に応じて変わる
ケアプランに「訪問診療」を盛り込む際の記載内容は、本人の病状・介護度・生活環境によって異なります。文例的なひな形よりも、実際の困りごとを言語化することが出発点です。
文例を探す前に、本人の困りごとと必要な支援を整理することが大切
「ケアプランの文例を知りたい」という気持ちはよく分かりますが、文例はあくまで参考です。まず「何が困っていて、何を支援してほしいか」を整理することが、ケアマネジャーとの連携をスムーズにします。文例の考え方については訪問診療のケアプラン文例を知りたいときの考え方で解説しています。
24時間対応しない訪問診療はどう考える?
24時間対応の有無で、できる支援とできない支援がある
すべての訪問診療医療機関が24時間対応をしているわけではありません。24時間体制がある場合、夜間・休日の急変時にも医師や看護師に連絡が取れ、必要であれば往診が行われます。一方、24時間対応がない場合は、夜間の緊急対応が救急受診になるケースがあります。
夜間・休日の急変時にどこへ連絡するかを事前に確認する
訪問診療を始める前に、「夜間・休日に急変した場合の連絡先と対応方法」を医療機関へ必ず確認してください。体制によっては、連携している救急病院への搬送ルートをあらかじめ決めておくことも大切です。
すべての医療機関が同じ体制ではないため、地域の連携先を確認する
訪問診療を行う医療機関は、規模・体制・連携先がさまざまです。かかりつけ医・地域包括支援センター・医療ソーシャルワーカーなどに相談しながら、地域の連携ネットワークを把握しておきましょう。
必要に応じて入院や救急受診を選ぶこともある
在宅医療が始まっても、病状が急変したり医療依存度が高まったりした場合には、入院や救急受診が必要になることがあります。「在宅で最期まで」という希望があっても、状態によっては入院が最善の選択肢になる場合もあります。在宅医療には適応と限界の両面があることを、あらかじめ理解しておくことが大切です。
当院の在宅診療の現場から
AIプラスクリニックたまプラーザでは、病院の地域連携室や医療ソーシャルワーカー(MSW)からのご紹介を受け、退院前カンファレンスに参加したうえで在宅への引き継ぎを行っています。退院当日からの訪問診療開始にも対応しており、退院直後の医療的に不安定な時期を24時間の連絡体制でサポートしています。
消化器外科・消化器内視鏡の専門的な経験を活かし、在宅での栄養管理・嚥下評価・胃ろう管理・在宅酸素療法にも対応しています。地域の訪問看護ステーション・居宅介護支援事業所(ケアマネジャー)と密に連携し、医療と介護の両面から生活全体を支える体制を整えています。
対応エリアはたまプラーザ・あざみ野・美しが丘・新石川など横浜市青葉区を中心とし、隣接する都筑区・川崎市宮前区についてもご相談に応じています。
受診・相談の目安
以下のいずれかに当てはまる場合は、早めに在宅医療の相談を検討することをお勧めします。
- 週1回以上の通院が、本人・家族ともに負担になってきた
- 退院日が決まったが、自宅での療養体制がまだ整っていない
- 食事・服薬・排泄・移動に介助が必要な場面が増えてきた
- 夜間や休日の急変に家族だけで対応することが不安になってきた
- ご本人が来院できず、家族だけで相談の窓口を探している
在宅でのケアは、家族だけで抱えていると限界が早く来ます。医師・看護師が定期的に自宅へ入ることで、対処の負担そのものを減らせます。まずは一度、ご予約・お問い合わせからご連絡ください。
よくある質問
Q. 訪問診療を始めるのは「まだ早い」のでしょうか?
訪問診療は、症状が重くなってから始めるものと思われがちですが、通院が負担になってきた段階から検討できます。状態が悪化してからでは選択肢が狭まることもあるため、「少し早いかな」と思うタイミングでの情報収集が、後の選択肢を広げることにつながります。
Q. かかりつけ医を変えないまま相談できますか?
はい、可能です。訪問診療を導入する際、現在のかかりつけ医との関係を終わらせる必要はありません。役割を分担しながら「併診」する形や、病状に応じてかかりつけ医から訪問診療医へ引き継ぐ形など、さまざまな連携の方法があります。
Q. 家族だけで相談してもよいですか?
はい、ご本人が来院できない場合でも、ご家族だけでのご相談をお受けしています。その際は、現在の病名・服薬内容・介護の状況などをできる範囲でまとめてお越しいただくと、より具体的な情報をお伝えしやすくなります。
Q. 往診料や在宅医療の費用はどこで確認できますか?
費用は診療内容・保険の種類・自己負担割合・各種加算の有無などによって異なります。目安の確認先は、①かかりつけの医療機関(医療事務窓口)、②加入している健康保険の保険者、③厚生労働省の診療報酬関連資料です。制度は改定されますので、記載時点の情報として参考程度にご覧ください。
Q. すぐに入院が必要になることはありますか?
在宅医療を始めたあとでも、病状の変化によっては入院が必要になることがあります。在宅医療には対応できる範囲と限界があり、すべての病状を自宅で管理できるわけではありません。入院になる場合の連携先を事前に確認しておくことが、安心につながります。
Q. 施設入居を考えていても相談できますか?
はい、施設入居を検討していることは、相談の妨げにはなりません。自宅療養・施設入居・入院のいずれが本人にとってよいかを判断するためにも、在宅医療という選択肢を知っておくことは有益です。施設と在宅医療は組み合わせて利用できる場合もあります。
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参考文献・出典
本記事の監修医師
佐藤 靖郎(さとう やすお) 医師(医学博士)/AIプラスクリニックたまプラーザ 監修医 専門:消化器外科・消化器内視鏡/一般内科/在宅医療・高齢者医療・がん緩和ケア・心不全・呼吸不全
【略歴】 1988年 福島県立医科大学医学部卒業、医師免許取得。1997年 同大学大学院修了、博士号取得。国立国際医療研究センター、東京新宿メディカルセンター、NTT東日本関東病院、横浜市立大学関連病院、国立病院機構横浜医療センター外科医長・救命救急センター副部長、済生会若草病院(横浜市)外科部長・内視鏡センター・診療部長を歴任。丸亀医療センター・佐々木病院副理事長、日立おおみか病院理事を経て現在に至る。
【公的役割】 厚生労働省「地域連携クリティカルパスモデルの開発」班研究員、全国保健所長会 地域連携パス推進班アドバイザー、神奈川県がん診療連携協議会 地域連携クリティカルパス部会 相談役。
AIプラスクリニックたまプラーザのご案内
ご家族の通院が難しくなってきた、退院後の療養先に迷っている、自宅でどこまで医療が受けられるか知りたい——そうしたご相談を、たまプラーザで承っています。
ご予約・お問い合わせ TEL:045-909-0117(横浜市青葉区)
たまプラーザ・あざみ野・美しが丘・新石川など横浜市青葉区を中心とした地域を対応エリアとしており、隣接する都筑区・川崎市宮前区についてもご相談に応じています。
ご相談の際は、以下をご用意いただくとスムーズです。
- お薬手帳または薬剤情報提供書
- 医療保険証・各種受給者証
- 介護保険証・介護保険負担割合証
- (お持ちであれば)診療情報提供書(紹介状)や退院時サマリー
ご本人が来院できない場合のご相談も承ります。まずはお気軽にご連絡ください。
免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個々の患者さんの診断・治療を代替するものではありません。症状や治療方針の判断は、必ず主治医にご相談ください。制度・費用は改定される場合があります。最新の情報は各自治体・保険者の窓口でご確認ください。