大腸がんの手術|押さえておきたい要点を医師監修で解説
大腸がんとは|症状・検査・治療・生活までを医師監修で解説する総合ガイド › (本記事)
大腸がんの治療において、手術は最も重要な選択肢のひとつです。切除範囲や術式は、がんの部位・進行度・患者さんの全身状態によって異なります。このページでは「手術の目的」「術式の種類」「術後の生活」「合併症への備え」まで、大腸がんの手術に関する情報を横断的にまとめています。個々の治療方針は必ず主治医にご確認ください。
大腸がんの手術を考える前に知っておきたい基本
手術の目的と、薬物療法・放射線治療との役割分担
大腸がんの手術の主な目的は、がん病巣を含む腸管と周囲のリンパ節を切除し、根治(がんを取り除くこと)を目指すことです。手術のみで根治が難しい場合は、抗がん剤などの薬物療法や放射線治療と組み合わせる「集学的治療」が行われます。特に直腸がんでは、術前に放射線化学療法を行うことで腫瘍を縮小させてから手術に臨むケースもあります。
どのような場合に手術が検討されるか
早期がん(ステージ0〜Ⅰ)では内視鏡的切除が検討されますが、筋層への浸潤が認められる場合や内視鏡では取りきれないと判断された場合は手術が適応となります。ステージⅡ・Ⅲでは手術が標準治療の中心であり、ステージⅣ(遠隔転移あり)でも転移巣が限局的であれば根治切除が検討されます。手術適応の判断は、大腸がん診療ガイドライン(日本癌治療学会)に基づいて行われます。
診断から手術までの流れ
大腸内視鏡検査・生検による確定診断 → CTや MRI などによる病期診断 → 手術前評価(心肺機能・全身状態) → 手術 という流れが一般的です。詳細は大腸がんの手術方法と術後に知りたいこともあわせてご確認ください。
大腸がん手術の方法と選択肢
開腹手術と腹腔鏡手術の違い
| 項目 | 開腹手術 | 腹腔鏡手術 |
|---|---|---|
| 切開 | 腹部を大きく切開 | 数か所の小切開(ポート挿入) |
| 出血量 | やや多い傾向 | 少ない傾向 |
| 術後回復 | 時間がかかる場合がある | 早い傾向 |
| 適応 | 進行例・癒着が強い例にも対応 | 比較的早期例が主体 |
| 視野 | 術者が直視 | カメラによる拡大視野 |
腹腔鏡手術(大腸癌腹腔鏡手術)は傷が小さく術後回復が早い一方、すべての症例に適応できるわけではありません。がんの進行度や部位、施設の経験によって判断されます。
ロボット支援手術が用いられることがある場面
骨盤内の手術(直腸がんなど)では、狭い空間での精細な操作が求められるため、ロボット支援手術(ダ・ヴィンチ等)が導入されている施設があります。ロボット支援手術は手ぶれが少なく精度が高い一方、保険適用の範囲や施設基準があります。主治医に確認することをおすすめします。
腸を切除してつなぎ直す手術の基本
がんを含む腸管を切除した後、残った腸管を縫い合わせて消化管を再建します(吻合〔ふんごう〕)。切除範囲は、がんの部位とリンパ節の郭清(かくせい=周囲のリンパ節をまとめて取り除くこと)範囲によって決まります。
ストーマ(人工肛門)が必要になることがある場合
肛門に近い直腸がんや、術後の縫合部の安静が必要な場合には、一時的または永久的なストーマ(人工肛門)が造設されることがあります。永久ストーマとなるのは、主に括約筋を温存できない場合です。ストーマの管理については医療チームと事前に相談しておくことが大切です。
上行結腸癌の手術方法と入院後の流れ
上行結腸癌で行われることが多い切除範囲
上行結腸(右側の大腸)にがんが発生した場合、右半結腸切除術が行われることが多いです。右の結結腸(盲腸・上行結腸・横行結腸の右半分)とリンパ節を一括して切除し、回腸(小腸の末端)と横行結腸をつなぎ直します。詳しくは上行結腸癌の手術方法と入院後の流れをご覧ください。
手術前の準備と入院中の検査
入院後は、血液検査・心電図・胸部X線・呼吸機能検査などが行われ、麻酔科医との術前面談も実施されます。腸管の洗浄(腸管前処置)を行う施設もあります。
術後の食事再開と退院までの流れ
術後は腸の動きが回復するまで絶食・点滴管理が続きます。排ガス(おなら)の確認後から水分・流動食・軟食と段階的に食事が再開されます。上行結腸切除後の平均在院日数は施設によって異なりますが、腹腔鏡手術では1〜2週間程度が目安となる場合があります。
直腸がん手術の特徴
直腸がんで手術が難しくなりやすい理由
直腸は骨盤内に位置し、膀胱・前立腺(男性)・子宮(女性)・排尿・性機能に関わる神経が密集しています。このため腫瘍の完全切除と機能温存の両立が難しく、専門的な術者の経験が求められます。
直腸がんの術式の考え方
低位前方切除術(肛門を温存できる術式)や腹会陰式直腸切断術(APR:肛門ごと切除し永久ストーマを造設)などが選択されます。どちらを選ぶかはがんの位置・深さ・括約筋への影響などを総合的に判断します。術前化学放射線療法(術前の放射線+抗がん剤)を組み合わせることもあります。
骨盤内の手術で注意されるポイント
直腸がんの手術では、全直腸間膜切除(TME)と呼ばれる、直腸を包む膜ごと取り除く術式が標準です(Heald RJ らの報告以降国際的に普及)。これにより局局所再発率の低下が期待されます。
直腸がん手術後の経過と後遺症への備え
直腸がん手術後に起こりうる合併症
縫合不全(吻合部の漏れ)・感染・出血・腸閉塞(腸が詰まること)などが起こりうる合併症として知られています。縫合不全は直腸がん手術で特に注意が必要な合併症のひとつです。詳細は直腸がん手術後の経過と後遺症への備えをご参照ください。
排便の変化や頻便への備え
直腸を大きく切除すると、便をためるスペースが小さくなるため、頻便・便失禁・残便感などが起こることがあります(低位前方切除後症候群、LARS)。症状は時間とともに改善することが多いですが、食事や生活の工夫が必要になるケースもあります。
性機能・排尿機能に関する注意点
骨盤内の神経(自律神経)が手術中に影響を受けることがあり、男性では勃起障害・射精障害、女性では腟乾燥・性交痛、共通して排尿障害(尿漏れ・排尿困難)が生じる場合があります。術前に主治医からの説明を受け、疑問点を解消しておくことが大切です。
直腸がん手術後の後遺症と、主治医に相談したい症状
後遺症は患者さんによって大きく異なります。「直腸がん手術後の生活」については直腸がん手術後の生活で気をつけたいことで詳しく解説しています。気になる症状があれば、遠慮なく主治医に相談することをおすすめします。
大腸がん手術後に知っておきたい合併症
出血・感染・縫合不全などの基本的な合併症
| 合併症 | 主な症状の目安 |
|---|---|
| 縫合不全 | 発熱・腹痛・排液の混濁 |
| 創感染 | 創部の発赤・腫れ・膿 |
| 出血 | 腹痛の急激な増悪・血圧低下 |
| 腸閉塞 | 嘔吐・腹部膨満・排ガスなし |
| 肺合併症 | 発熱・咳・呼吸苦 |
上行結腸癌の術後に考えられる合併症はどれか
上行結腸癌の術後に起こりうる合併症として、縫合不全・腸閉塞・出血・感染(腹腔内膿瘍)などが挙げられます。右半結腸切除では回腸-横行結腸吻合部の縫合不全が主な注意事項です。また吻合部に近い腸管の血行障害にも注意が必要です。
受診を急ぐべき症状の見分け方
以下の症状がみられた場合は、速やかに主治医または救急外来に連絡してください:
- 急な高熱(38.5℃以上)
- 激しい腹痛・腹部の硬直感
- 多量の出血(便・創部からの出血)
- 嘔吐が続き飲食できない
- 息切れ・胸痛・意識の変容
大腸がん手術後の生活で気をつけたいこと
食事再開の目安と食べ方の工夫
術後は消化に良い食品から少量ずつ始め、食物繊維の多い食品・脂質の多い食品は腸の回復を見ながら徐々に増やします。食事制限の具体的な内容は病院・栄養士の指示に従ってください。
大腸がん手術後のアルコール摂取で注意したいこと
大腸がん手術後のアルコール摂取については、術後の腸管回復・薬物療法の副作用・肝機能への影響などを考慮する必要があります。飲酒再開の可否・時期は必ず主治医に確認してください。術後の化学療法中は、多くの場合アルコールは控えることが勧められます。
仕事復帰・運動再開の考え方
デスクワーク中心の仕事であれば退院後1〜2か月、重労働・腹圧のかかる仕事では3〜6か月以上かかることもあります。ウォーキングなどの軽い運動は早期から推奨されますが、腹部に強い負荷のかかる運動は回復状況を見ながら段階的に始めます。
退院後の通院と再発チェック
大腸がんの術後は定期的な通院が必要です。外来での経過観察の間隔や検査内容は、ステージや治療内容によって異なります。
大腸がん手術後のフォローアップ
病理結果で確認されること
手術で切除した標本は病理検査に回され、がんの深さ(T因子)・リンパ節転移(N因子)・切除断端の状態などが確認されます。これらの結果をもとに、術後補助化学療法の必要性が判断されます。
再発リスクに応じた通院計画
一般的に、術後2〜3年間は再発が起きやすい時期とされています。ステージⅢでは術後補助化学療法(フッ化ピリミジン系薬剤など)が推奨されています(大腸癌研究会 大腸癌治療ガイドライン参照)。
採血・CT・大腸内視鏡などの検査の位置づけ
- 腫瘍マーカー(CEA・CA19-9):再発の早期発見に役立てられますが、正常値でも再発がないわけではなく、逆に高値でもがんとは限りません。
- CT検査:肺・肝臓など遠隔転移の確認に用いられます。
- 大腸内視鏡検査:吻合部の確認と異時性(べつの時期に発生する)多発がんの発見のため、術後1年以内の実施が推奨される場合があります。
公的データでみる大腸がん治療の考え方
国立がん研究センターなどの情報の読み解き方
国立がん研究センター がん情報サービスでは、大腸がんの統計・治療法・相談窓口などが公開されています。信頼性の高い公的情報を活用して情報を集めることが大切です。
生存率・余命の数字を見るときの注意点
公開されている生存率(例:ステージⅡの5年生存率など)は、多数の患者さんのデータに基づく統計値です。個々の患者さんに当てはまるものではありません。年齢・合併症・がんの性質など個人差が大きく、数字だけで予後を判断することはできません。詳しくは大腸がんの生存率・予後・余命についてをご参照ください。
個人差が大きい理由と、主治医に確認したい項目
「自分のステージでの再発率は?」「補助化学療法は必要か?」「経過観察の頻度は?」などは、主治医に直接確認することが最も確実です。セカンドオピニオンの活用も有効な選択肢です。
当院での診療から
当院(AIプラスクリニックたまプラーザ)は消化器内視鏡センターを備え、鎮静下での大腸内視鏡検査を日常的に実施しています。大腸がんを疑う所見や、内視鏡的切除が困難と判断された病変については、速やかに基幹病院(手術実施施設)への紹介を行います。
紹介後も地域連携クリティカルパスを活用した術後フォローを担い、採血・再発チェックのための定期通院、術後の体調変化への対応など、患者さんが安心して経過観察を続けられる環境を整えています。監修医の佐藤靖郎医師は、厚生労働省「地域連携クリティカルパスモデルの開発」研究班員として地域連携の仕組みづくりに携わった経験を持ち、当院でも手術を終えた患者さんとそのご家族の相談に対応しています。在宅療養が必要になった場合の緩和ケア支援にも対応しています。
手術適応の考え方と診療方針
大腸内視鏡で早期がんが疑われる場合、切除の方法(内視鏡か手術か)の判断を含め、ご相談をお受けしています。
他院で診断された方のご相談の流れ
他院で大腸がんと診断された方・手術を勧められた方も、セカンドオピニオンや紹介状の準備についてご相談いただけます。
セカンドオピニオンで確認したいポイント
- 提案された術式は自分の病状に合っているか
- ストーマの必要性・一時的か永久的か
- 術後の補助化学療法の必要性
- 手術のリスクと回復の見通し
受診・相談の目安
血便、便通異常、腹痛が続くとき
血便・黒色便・便が細くなる・便秘と下痢を繰り返すといった症状が2週間以上続く場合は、早めに消化器科を受診してください。
健診で異常を指摘されたとき
便潜血検査陽性(健診の大腸がん検診で要精密検査)と指摘された場合、大腸内視鏡検査による精密検査が必要です。放置は禁物です。
手術後にすぐ相談したい症状
- 退院後の急な発熱・腹痛
- 創部からの浸出液・膿
- 排便・排尿ができない
- 手足のしびれ・息切れ
早めに受診したほうがよいケース
上記の症状に加え、体重減少・食欲不振・倦怠感が続く場合は主治医への連絡を優先してください。当院へのご予約・ご相談はこちらのページからどうぞ。
よくある質問(FAQ)
大腸がんの手術は腹腔鏡で受けられますか
腹腔鏡手術(大腸癌腹腔鏡手術)はステージや部位によって適応が異なります。早期〜一部の進行がんでは標準的に行われていますが、腫瘍の大きさや癒着の程度、施設の設備・経験によって開腹手術が選ばれることもあります。主治医・担当施設にご確認ください。
入院期間はどのくらいですか
腹腔鏡手術では術後7〜14日程度、開腹手術では10〜21日程度が目安となる場合がありますが、合併症の有無・術後の回復状況により個人差があります。あくまで目安としてお考えください。
ストーマは必ず必要ですか
すべての大腸がん手術でストーマが必要なわけではありません。ストーマが必要になるのは、主に肛門に極めて近い直腸がんや、術後の吻合部を一時的に安静にする必要がある場合などです。術前に担当医から詳しい説明があります。
手術後はいつから食事や仕事を再開できますか
食事は術後数日〜1週間程度で段階的に再開されます。仕事復帰は業務内容によって異なり、デスクワークで1〜2か月、重労働では3〜6か月以上かかることもあります。個別の状況は主治医にご相談ください。
直腸がん手術後の生活で気をつけることは何ですか
頻便・便失禁・排尿障害・性機能への影響などが起こりうるため、生活の工夫が必要なことがあります。詳しくは直腸がん手術後の生活で気をつけたいことをご覧ください。担当医・看護師・リハビリスタッフと連携して対応することが大切です。
手術後の合併症が心配です。どんな症状で受診すべきですか
高熱・激しい腹痛・創部からの膿・排便排尿困難・多量出血・息切れ・胸痛などの症状が現れた場合は、速やかに主治医または救急外来に連絡してください。「少し様子を見よう」と思わず、早めの相談を心がけてください。
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参考文献・出典
- 国立がん研究センター がん情報サービス「大腸がん」
- 国立がん研究センター がん統計
- 厚生労働省 がん対策
- 日本癌治療学会 がん診療ガイドライン
- Minds ガイドラインライブラリ(日本医療機能評価機構)
本記事の監修医師
佐藤 靖郎(さとう やすお)
医師(医学博士)/AIプラスクリニックたまプラーザ 監修医
専門:消化器・内科(消化器外科/内視鏡/一般内科)
1988年 福島県立医科大学医学部卒業、医師免許取得。1997年 同大学大学院修了、博士号取得。国立国際医療研究センター、東京新宿メディカルセンター、NTT東日本関東病院、横浜市立大学関連病院、国立病院機構横浜医療センター外科医長・救命救急センター副部長、済生会若草病院(横浜市)外科部長・内視鏡センター・診療部長を歴任。丸亀医療センター・佐々木病院副理事長、日立おおみか病院理事を経て現在に至る。
公的役割: 厚生労働省「地域連携クリティカルパスモデルの開発」班研究員/全国保健所長会 地域連携パス推進班アドバイザー/神奈川県がん診療連携協議会 地域連携クリティカルパス部会 相談役
AIプラスクリニックたまプラーザのご案内
たまプラーザで大腸がんの手術後のフォローアップや、消化器の気になる症状がある方へ。術後の定期通院・セカンドオピニオン・内視鏡検査など、お気軽にご相談ください。
TEL: 045-909-0117(横浜市青葉区・たまプラーザ)
初診の際は、保険証・お薬手帳・(お持ちであれば)健診結果や紹介状をご用意いただくとスムーズです。ご予約はWebまたはお電話で承ります。
免責事項
本記事は一般的な医学情報の提供を目的としており、個別の診断・治療方針を示すものではありません。症状や治療についての判断は、必ず主治医・専門医にご相談ください。記載内容は公開時点の公的情報・診療ガイドラインに基づいており、最新情報は国立がん研究センター「がん情報サービス」等でご確認ください。