上行結腸癌の手術方法と入院後の流れ
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上行結腸癌は、大腸の右側(上行結腸)に発生する悪性腫瘍です。治療の中心は外科的切除(手術)であり、適切な手術と術後管理によって根治を目指すことができます。本記事では、上行結腸癌の手術方法・入院から退院までの流れ・術後の合併症と注意点について、公的情報に基づきわかりやすく解説します。なお、実際の治療方針は必ず担当医にご確認ください。
大腸がんの手術全般については、大腸がんの手術方法と術後に知りたいこともあわせてご覧ください。
上行結腸癌の手術とは
上行結腸の位置と、手術の目的
上行結腸とは、盲腸から肝臓の下(肝彎曲)まで腹部右側を上向きに走る大腸の一部です。この部位に生じたがんを上行結腸癌と呼びます。手術の目的は、がんとその周囲の腸管・リンパ節を一括して切除し、がん細胞が体内に残らないようにすることです。
手術が検討される主なケース
手術が検討される主なケースは以下のとおりです(日本癌治療学会 大腸癌診療ガイドラインを参考)。
| 状況 | 手術が検討される主な理由 |
|---|---|
| ステージI〜III(局所進行まで) | 根治(がんの完全切除)を目指せる可能性が高い |
| ステージIV(遠隔転移あり) | 原発巣の切除+転移巣への対応で生存期間延長が期待される場合がある |
| 閉塞・出血・穿孔など緊急合併症 | 全身状態の悪化を防ぐための緊急手術 |
ステージ分類は「がんがどこまで広がっているか」を示す指標であり、治療方針の決定に用いられます。ただし、ステージが同じでも個々の状況は異なるため、方針は担当医と十分に話し合ったうえで決めることが大切です。
上行結腸癌で行われる手術方法
腹腔鏡下手術と開腹手術の違い
| 項目 | 腹腔鏡下手術 | 開腹手術 |
|---|---|---|
| 傷の大きさ | 小切開(数か所) | 腹部を大きく切開 |
| 術後の痛み | 比較的少ない | やや強い |
| 回復・入院期間 | 短い傾向がある | やや長い傾向がある |
| 視野の精度 | 拡大モニターで確認可能 | 直視下で広い視野 |
| 適応 | がんの進行度・患者状態による | 腹腔鏡が困難な場合に選択 |
腹腔鏡下手術は体への負担が少ない一方、すべての患者さんに適用できるわけではありません。がんの位置・大きさ・癒着の程度・全身状態などを総合的に判断して術式が選ばれます。
右半結腸切除術とは
上行結腸癌に対して標準的に行われる手術が右半結腸切除術です。上行結腸だけでなく、盲腸・回腸末端(小腸の終わり部分)・横行結腸の右半分も含めて切除します。これは血流とリンパ流の走行に合わせて切除範囲を決めるためで、がんを確実に取り切るうえで重要です。
どこまで切除し、どこをつなぎ直すのか
切除後は、残った小腸(回腸)と横行結腸を吻合(ふんごう)してつなぎ直します(回腸—横行結腸吻合)。消化・吸収機能は術後しばらくの間変化することがありますが、多くの場合は時間とともに安定していきます。
リンパ節郭清が必要になる理由
大腸がんはリンパ管を通じて周囲のリンパ節へ転移することがあります。がんの根治を目指すため、がんの主栄養血管の根部を結紮し(中枢側リンパ節まで含めた)リンパ節郭清が行われます。どの範囲を郭清するかは、がんの深達度や術前の画像所見をもとに判断されます。
手術前に行う検査と準備
血液検査・画像検査・内視鏡検査
術前には、全身状態の評価と手術範囲の確定のために複数の検査が行われます。
- 血液検査: 貧血・栄養状態・肝機能・腎機能・腫瘍マーカー(CEA・CA19-9など)
- 画像検査: CT・MRI・PETなどでがんの広がりや転移の有無を確認
- 内視鏡検査(大腸カメラ): がんの位置・形態・同時性病変の確認、生検による病理診断
これらの検査結果をもとに手術方法・切除範囲・麻酔方法が決定されます。
術前の説明で確認しておきたいこと
担当医からのインフォームドコンセント(十分な説明と同意)の場では、以下の点を確認しておくと安心です。
- 切除範囲・手術方法の理由
- 想定される合併症とその対応
- 術後の生活への影響(食事・排便・活動)
- 緊急時の連絡先
疑問点はメモに書いて持参し、遠慮なく質問しましょう。
入院してから手術当日までの流れ
入院前後の食事制限や下剤の使用
手術の2〜3日前から低残渣食(消化に良い食事)、前日から絶食となる場合が一般的です。腸管内をきれいにするために下剤(腸管洗浄液)の服用や浣腸が行われます。具体的なスケジュールは病院によって異なります。
手術当日の麻酔と手術時間の目安
手術は全身麻酔で行われます。腹腔鏡下右半結腸切除術の手術時間は、がんの状態・術式・患者さんの体格などにより異なりますが、おおむね2〜4時間程度が目安とされています(施設により差があります)。手術室への入室から麻酔導入・術後の覚醒確認まで含めると、家族の待機時間はさらに長くなることがあります。
術後の経過と入院中の流れ
痛みの管理と早期離床
術後の痛みは、硬膜外麻酔(背中から入れる管で痛み止めを持続投与)や静脈内鎮痛剤を使って管理します。痛みのコントロールができていれば、手術翌日から座位・起立・歩行と段階的に体を動かす早期離床が促されます。早期離床は血栓予防・腸の回復・肺炎予防に効果的とされています。
食事再開の進め方
腸の動きが戻り始めると(術後1〜3日程度)、水分→流動食→全粥→普通食と段階的に進みます。術後しばらくは下痢・軟便・頻便が出やすい時期があり、焦らず経過を見ることが大切です。
退院までに確認すること
腹腔鏡下手術の場合、経過が順調であれば術後7〜10日程度での退院が目安となりますが、個人差があります。退院前には傷の管理方法・食事の注意点・緊急連絡先・次回外来日を確認しましょう。
手術の合併症と注意点
出血・感染・腸閉塞・縫合不全
| 合併症 | 概要 |
|---|---|
| 術後出血 | 術後早期に腹腔内・消化管内の出血が起こることがある |
| 縫合不全 | 腸管のつなぎ目が十分に癒合しない状態。発熱・腹痛が目安 |
| 腸閉塞(イレウス) | 腸が癒着などで詰まり、腹痛・嘔吐・排ガス停止が起こる |
| 創感染 | 傷口の発赤・腫脹・膿の排出 |
| 深部静脈血栓症 | 長時間の手術・術後安静により足の静脈に血栓ができる |
生活への影響と、術後に相談が必要な症状
術後は排便習慣が変わることがあります。以下のような症状が続く場合は、速やかに担当医に相談してください。
- 38℃以上の発熱が続く
- 腹痛・腹部膨満感が悪化する
- 傷からの浸出液・膿
- 下血(血便)や嘔吐が続く
当院での診療から
当院(AIプラスクリニックたまプラーザ)は、消化器内視鏡センターを備え、鎮静下の大腸内視鏡検査を日常的に実施しています。検査中に早期がんを疑う所見が確認された場合は、速やかに専門の基幹病院へご紹介し、手術後のフォローアップは地域連携クリティカルパスを活用して当院が担当します。監修医の佐藤医師は、厚生労働省「地域連携クリティカルパスモデルの開発」班研究員および神奈川県がん診療連携協議会 地域連携クリティカルパス部会 相談役を務めており、地域全体でがん患者さんを継続的に支える体制を整えています。また、在宅療養支援診療所として在宅緩和ケアや看取りにも対応しているため、術後の療養生活においても幅広く相談いただける環境です。「便潜血が陽性だった」「腹部の症状が気になる」など、受診の入り口からお気軽にご相談ください。
受診・相談の目安
便潜血陽性や血便がある場合
大腸がん検診(便潜血検査)で陽性が出た場合や、便に血が混じっている場合は、大腸内視鏡検査による精密検査が推奨されます。自覚症状が軽くても、放置せずに早めに受診しましょう。
腹痛、体重減少、貧血などが続く場合
右側腹部の違和感・腹痛・原因不明の体重減少・貧血(めまい・倦怠感)が続く場合は、上行結腸癌を含む消化器疾患が原因の可能性があります。内科または消化器科への受診をご検討ください。
すでに上行結腸癌と診断され、手術を勧められている場合
手術方法・入院期間・術後の生活について疑問がある場合は、担当医への確認に加え、セカンドオピニオンを活用することも選択肢の一つです。ご予約・お問い合わせはこちらからお気軽にどうぞ。
上行結腸癌の手術と公的データの見方
生存率や再発率は統計であり個人差があること
国立がん研究センターのがん統計によると、大腸がん全体の5年生存率はステージによって大きく異なります。しかしこれらの数値は多数の患者データをもとにした統計値であり、個々の患者さんの予後を直接示すものではありません。同じステージでも、がんの性質・全身状態・治療への反応性などによって経過は異なります。担当医の説明をもとに、ご自身の状況を正確に理解することが重要です。
国立がん研究センターなどで確認できる情報
大腸がんの治療方針や生存率に関する公的情報は、以下で確認できます。
- 国立がん研究センター がん情報サービス: がんの種類・治療法・統計などをわかりやすく公開
- 日本癌治療学会 大腸癌診療ガイドライン: 専門医が用いる診療の標準的な指針
大腸がんの全体像については、大腸がんとは・症状から治療までの総合ガイドもご覧ください。
よくある質問(FAQ)
手術後はいつから食事や仕事に戻れますか?
食事は術後1〜3日から段階的に再開し、退院時(術後7〜10日程度)には軟らかい食事が取れるようになるケースが多いです。仕事復帰はデスクワークであれば退院後2〜4週間程度、力仕事・重労働は1〜2か月程度が目安ですが、個人差があるため担当医の指示に従ってください。
ストーマは必ず必要になりますか?
上行結腸癌の手術(右半結腸切除術)では、一般的に永久ストーマ(人工肛門)は必要ありません。腸管を回腸—横行結腸でつなぎ直すことができるため、多くの場合はストーマなしで術後の生活を送ることができます。ただし、緊急手術や癒着が強い場合など、一時的なストーマが必要になるケースもあります。
腹腔鏡手術は誰でも受けられますか?
腹腔鏡下手術はすべての患者さんに適用できるわけではありません。がんが他臓器に強く癒着している場合・腫瘍が非常に大きい場合・重篤な心肺疾患がある場合などは、開腹手術が選択されることがあります。適応かどうかは術前検査の結果と担当医の判断によります。
高齢でも手術は可能ですか?
年齢だけで手術の可否を決めることはありません。心臓・肺・腎臓などの機能、栄養状態、全身の体力(フレイルの有無)などを総合的に評価したうえで、手術のリスクとメリットを担当医と話し合います。高齢の方でも適切な準備と管理のもとで手術を受けているケースは多くあります。直腸がんの術後経過については直腸がん手術後の経過と後遺症への備えも参考になります。
術後に再発を防ぐためにできることはありますか?
術後の再発予防には、定期的な外来受診(フォローアップ)が最も重要です。腫瘍マーカーの測定・CT検査・大腸内視鏡検査が定期的に行われます。また、ステージIII以上では補助化学療法(抗がん剤治療)が推奨される場合があります。生活習慣については、禁煙・適正体重の維持・バランスの良い食事が一般的に勧められますが、個々の状況に応じて担当医にご相談ください。術後の生活全般については直腸がん手術後の生活で気をつけたいことも参考になります。
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- 直腸がん手術後の生活で気をつけたいこと
参考文献・出典
- 国立がん研究センター がん情報サービス「大腸がん」
- 国立がん研究センター がん統計
- 日本癌治療学会 がん診療ガイドライン(大腸癌)
- Minds ガイドラインライブラリ(日本医療機能評価機構)
- 厚生労働省 がん対策
本記事の監修医師
佐藤 靖郎(さとう やすお)
医師(医学博士)/AIプラスクリニックたまプラーザ 監修医
専門: 消化器・内科(消化器外科/内視鏡/一般内科)
略歴: 1988年 福島県立医科大学医学部卒業、医師免許取得。1997年 同大学大学院修了、博士号取得。国立国際医療研究センター、東京新宿メディカルセンター、NTT東日本関東病院、横浜市立大学関連病院、国立病院機構横浜医療センター外科医長・救命救急センター副部長、済生会若草病院(横浜市)外科部長・内視鏡センター・診療部長を歴任。丸亀医療センター・佐々木病院副理事長、日立おおみか病院理事を経て現在に至る。
公的役割: 厚生労働省「地域連携クリティカルパスモデルの開発」班研究員、全国保健所長会 地域連携パス推進班アドバイザー、神奈川県がん診療連携協議会 地域連携クリティカルパス部会 相談役。
AIプラスクリニックたまプラーザのご案内
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免責事項
本記事は一般的な医学情報の提供を目的としており、個別の診断・治療方針を示すものではありません。症状や治療についての判断は、必ず主治医・専門医にご相談ください。記載内容は公開時点の公的情報・診療ガイドラインに基づいており、最新情報は国立がん研究センター「がん情報サービス」等でご確認ください。