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腸閉塞(イレウス)とは何か|原因・症状・診断・治療を医学博士が解説

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腸閉塞(イレウス)とは何か|原因・症状・診断・治療を消化器外科専門医が解説

腸閉塞(イレウス)は、何らかの理由によって腸の内容物が正常に流れなくなる状態です。消化器外科を受診される患者さんのなかでも、緊急入院や手術につながるケースが少なくない疾患のひとつです。本記事では、腸閉塞の基本的な知識から、原因・症状・診断・治療・受診の目安まで、医学的根拠に基づいてわかりやすく解説します。

腸閉塞(イレウス)とは

腸閉塞とは、小腸や大腸の内腔が何らかの原因で塞がれたり、腸の動きが著しく低下したりすることで、消化された食物や液体・ガスが腸管内で滞留する状態を指します。

日本では「イレウス」という言葉が腸閉塞と同義のように使われることがありますが、近年の医学的定義では、「機械的腸閉塞(mechanical obstruction)」と「機能的腸閉塞(paralytic ileus:麻痺性イレウス)」を区別することが一般的です。いずれも腸の通過障害という点では共通しており、放置すると脱水・電解質異常・腸管壊死など重篤な合併症につながる可能性があるため、早期の診断と適切な対応が重要とされています。

腸閉塞の種類

機械的腸閉塞

腸管内部や外部からの物理的な障害により、腸の通り道が塞がれるタイプです。代表的な原因としては、腹部手術後の癒着ヘルニア嵌頓腫瘍(大腸がんなど)、糞便による閉塞(糞便塞栓)などが挙げられます。

さらに、腸管への血流が障害された「絞扼性腸閉塞(こうやくせいちょうへいそく)」は特に緊急度が高く、腸管壊死や腹膜炎に進行するリスクがあります。

機能的腸閉塞(麻痺性イレウス)

腸管自体に物理的な閉塞はないものの、腸の動き(蠕動運動)が著しく低下または停止することで内容物が滞る状態です。腹部手術後・腹膜炎・重症感染症・特定の薬剤(オピオイド系鎮痛薬、抗コリン薬など)・電解質異常(低カリウム血症など)が主な原因として知られています。

腸閉塞の主な原因

手術後の癒着

腸閉塞の原因として最も頻度が高いとされるのが、腹部手術後の腸管癒着です。手術創が治癒する過程で、腸管と腹壁や周囲の臓器が線維性組織によって癒着することがあります。術後数ヵ月以内に発症するケースもある一方で、数年・数十年後に突然発症する例もみられます。虫垂切除術、婦人科手術、大腸手術など、あらゆる腹部手術後にリスクが生じうる点に注意が必要です。

ヘルニア

腹壁の弱い部分(鼠径部、臍部、手術瘢痕部など)から腸管が飛び出すと、その出口で腸が締め付けられ(嵌頓)、腸閉塞を起こすことがあります。嵌頓した腸管は血流が障害されやすく、早急な対応が求められます。

腫瘍・炎症・便秘など

大腸がんは、腸管の内腔を徐々に狭窄させることで閉塞を引き起こす原因のひとつです。大腸がん 原因大腸癌 症状についても事前に知っておくことは、早期発見の一助となります。また、クローン病・潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患、大腸憩室炎による腸管狭窄、慢性的な便秘による糞便塞栓なども原因となりえます。大腸の構造や働きを理解しておくと、これらの疾患との関連が把握しやすくなります。

腸閉塞の症状

腸閉塞の症状は、閉塞の種類・部位・重症度によって異なりますが、主な症状は以下のように整理されます。

初期にみられる症状

  • 間欠的な腹痛(差し込むような痛みが繰り返す)
  • 吐き気・嘔吐
  • 腹部の張り(膨満感)
  • 食欲低下
  • 排ガスの減少

小腸の閉塞では嘔吐が比較的早期から現れやすく、大腸の閉塞では腹部膨満が目立つ傾向があります。

受診を急ぐべき症状

以下の症状がある場合は、速やかに医療機関を受診することが重要です。

  • 急激に増強する強い腹痛
  • 繰り返す嘔吐(特に便臭を伴う場合)
  • 排便・排ガスの完全な停止
  • 腹部全体の強い張りと圧痛
  • 発熱
  • 冷汗・脈が速くなる・ぐったりする状態

これらは腸管壊死や腹膜炎などへの進行を示唆する場合があり、救急対応が必要になることがあります。

腸閉塞の診断

問診と身体診察

症状が出現した時期・経緯、手術歴・既往歴・服用薬、腹部の圧痛・腸蠕動音の有無などを丁寧に確認します。腹部手術歴がある方は、その旨を必ず医師に伝えてください。

画像検査

腹部X線検査(単純撮影)では、腸管ガスの分布や拡張した腸管の状態を確認します。腹部CT検査はより詳細な情報が得られ、閉塞部位の推定・原因の特定(癒着か腫瘍かなど)・腸管血流の評価に有用とされています。日本消化器病学会のガイドラインでも、CTは腸閉塞の原因特定と重症度評価において重要な検査として位置づけられています。

血液検査

脱水や電解質異常(ナトリウム・カリウムなど)、炎症反応(白血球数・CRP)、腸管虚血を示す指標(乳酸値・LDHなど)を評価します。血液検査の結果は治療方針の決定にも影響します。

腸閉塞の治療

治療は原因・部位・重症度・全身状態によって選択されます。詳しくは腸閉塞の治療の解説もご参照ください。

保存的治療

比較的軽症の場合や、癒着による単純性腸閉塞の場合には、まず保存的治療が選択されることがあります。

  • 絶食:腸管への刺激を避けます
  • 補液(点滴):脱水や電解質異常を改善します
  • 胃管・イレウス管:鼻から胃や小腸にチューブを挿入し、腸管内のガスや液体を減圧します
  • 薬物療法:腸管運動を促進する薬や鎮痙薬が用いられることがあります

手術が検討される場合

以下のような状態では、外科的手術が必要となることがあります。

  • 嵌頓ヘルニア
  • 腸管壊死・腹膜炎の疑い(絞扼性腸閉塞)
  • 保存的治療で改善がみられない場合
  • 腫瘍性閉塞(大腸がんなど)

手術の方法は原因により異なり、癒着剥離・ヘルニア修復・腸管切除・人工肛門造設などが行われます。

治療中の注意点

腸閉塞の治療中は、自己判断で食事を再開することは避けてください。また、市販の下剤や鎮痛薬を自己判断で使用することも、症状を悪化させる可能性があります。服薬の再開・変更はすべて担当医の指示に従ってください。

腸閉塞になりやすい人・注意したい背景

以下のような背景がある方は、腸閉塞が発症しやすいリスク因子を持つ可能性があります。

  • 腹部手術歴がある方(虫垂切除、開腹手術など)
  • 高齢者(腸管の動きが低下しやすく、便秘も重なりやすい)
  • 鼠径ヘルニアや腹壁ヘルニアがある方
  • 慢性的な便秘がある方
  • 大腸がんや炎症性腸疾患など基礎疾患がある方

これらの背景がある場合、腹部に違和感や変化を感じたら早めの相談が推奨されます。

腸閉塞の予防と再発対策

生活で気をつけること

  • 便秘の放置を避ける:水分摂取・食物繊維の適切な摂取、排便習慣の維持が基本です
  • 脱水に注意する:特に夏季・体調不良時は腸管機能の低下につながりやすいです
  • 症状がある際は無理に食べない:嘔吐・腹部膨満がある場合は食事を中断し、速やかに受診を検討してください

術後に意識したいこと

腹部手術後は、退院後も腹痛・嘔吐・腹部膨満などの症状が現れた場合は速やかに主治医に相談することが大切です。術後の食事再開の手順や、定期受診のスケジュールは医師の指示を守ってください。大腸憩室憩室炎 原因なども術後の腸管に影響することがあります。

腸閉塞でよくある質問

何科を受診すべきですか

腹痛・嘔吐・腹部膨満が続く場合は、消化器内科または消化器外科の受診をお勧めします。急激な腹痛・発熱・ぐったりするような症状があるときは、救急外来への受診が適切です。

食べてはいけないものはありますか

腸閉塞が疑われる状態では、自己判断で食事を継続することは避けてください。「少量なら大丈夫」という判断は症状を悪化させる可能性があります。食事再開のタイミングと内容は、必ず医師の指示に従ってください。

市販薬や下剤を使ってもよいですか

腸閉塞が疑われる場合、市販の下剤・浣腸・鎮痛薬などを自己判断で使用することは推奨されません。下剤は腸管内圧を上昇させ、穿孔(腸管に穴があくこと)のリスクになりうるため、医師の診察を受けてから判断してください。

どのくらいで改善しますか

回復にかかる期間は、原因・重症度・治療法によって大きく異なります。保存的治療で数日以内に改善するケースもある一方で、手術が必要となる場合や、入院が長期化することもあります。「症状が少し落ち着いた」と感じても、医師の評価なしに治癒を判断することは避けてください。

受診の目安

以下の症状がある場合は、なるべく早めに医療機関を受診されることをお勧めします。

  • 急激または繰り返す腹痛
  • 嘔吐が止まらない、または便臭がある
  • 丸1日以上、排便・排ガスがない
  • 腹部全体が強く張っている
  • 発熱・冷汗・脈が速い・顔色が悪い
  • ぐったりして動けない

上記の複数が重なる場合は、救急受診をご検討ください。腸閉塞は自己判断による経過観察が危険につながることがあります。気になる症状があれば、まず専門医にご相談ください。

まとめ

腸閉塞(イレウス)は、原因・種類・重症度によって対応が大きく異なる疾患です。癒着・ヘルニア・腫瘍・麻痺性など、それぞれの背景に応じた診断と治療が必要であり、自己判断で経過観察を続けることはリスクを伴います。腹痛・嘔吐・腹部膨満・排便停止などの症状が続く場合は、早めに消化器外科や消化器内科を受診し、専門医による評価を受けることが重要です。

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本記事の監修医師

佐藤 靖郎(さとう やすお)
医師(医学博士)/AIプラスクリニックたまプラーザ 理事長
専門:消化器外科

福島県立医科大学大学院 外科学修了。NTT東日本関東病院や国立病院機構横浜医療センター等で外科医長・救命救急センター副部長を歴任。厚生労働省の地域連携クリティカルパスモデル開発の班研究員、神奈川県がん診療連携協議会相談役などを務める。

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