胃がんステージ3の特徴と治療の考え方
胃がんステージ3とは、がんが胃壁の深い層まで広がったり周囲のリンパ節へ転移していたりする一方で、肝臓・肺などへの遠隔転移は確認されていない段階です。進行している状態ではありますが、手術や薬物療法を組み合わせた根治を目指す治療が検討されるステージでもあります。本記事では、ステージ3の定義・TNM分類・症状・治療の考え方を、監修医師の見解とともに解説します。診断・治療方針の最終判断は、必ず主治医とご相談ください。
胃がんステージ3とは?まず押さえたい基本
ステージ3は「がんが進行しているが、遠隔転移は明らかでない」状態
胃がんのステージ(病期)は、がんの広がり方に応じてⅠ〜Ⅳに分けられます。ステージ3は、がんが胃壁の深い部分まで浸潤していたり、多数のリンパ節へ転移していたりするものの、肝・肺・腹膜などへの遠隔転移(M1)がない(M0)段階です。進行がんに分類されますが、手術による切除が可能と判断されるケースも少なくありません。
ステージの全体像については、胃がんのステージの見方と進行度の基本もあわせてご参照ください。
胃がんステージ3と胃癌ステージ3の呼び方の違い
「胃がん」「胃癌」はどちらも同じ疾患を指します。医療機関や論文では漢字表記の「胃癌」が用いられることが多く、患者向けの説明では「胃がん」が一般的です。本記事では「胃がん」に統一して説明します。
胃がんステージ3の判定に使うTNM分類
胃がんのステージはTNM分類をもとに決定されます(日本胃癌学会『胃癌取扱い規約第15版』および国際的なUICC TNM分類に準拠)。
T(がんの深達度)とは
Tはがんが胃壁のどの層まで達しているかを示します。
| 記号 | 意味 |
|---|---|
| T1a | 粘膜層まで |
| T1b | 粘膜下層まで |
| T2 | 固有筋層まで |
| T3 | 漿膜下組織まで |
| T4a | 漿膜(腹膜)を突き破っている |
| T4b | 隣接臓器に直接浸潤 |
N(リンパ節転移)とは
Nはリンパ節への転移個数を示します。
| 記号 | 意味 |
|---|---|
| N0 | リンパ節転移なし |
| N1 | 転移リンパ節1〜2個 |
| N2 | 転移リンパ節3〜6個 |
| N3a | 転移リンパ節7〜15個 |
| N3b | 転移リンパ節16個以上 |
M(遠隔転移)とは
Mは肝臓・肺・腹膜・骨など、胃から離れた臓器への転移の有無を示します。ステージ3はM0(遠隔転移なし)が条件です。
ステージ3になりやすいTNMの組み合わせ
ステージ3はサブステージ(3A・3B・3C)に細分されます。代表的な組み合わせは以下のとおりです。
| サブステージ | 主なTNMの組み合わせ例 |
|---|---|
| 3A | T3N2M0 / T4aN1M0 など |
| 3B | T3N3aM0 / T4aN2M0 / T4bN0〜1M0 など |
| 3C | T4aN3a〜3bM0 / T4bN2〜3bM0 など |
(出典:国立がん研究センター がん情報サービス、日本癌治療学会ガイドライン)
胃がんステージ3でみられやすい症状
初期は自覚症状が乏しいことがある
ステージ3になっても、明確な症状を感じない方は少なくありません。胃の不快感・膨満感・食欲低下などが出始めることがありますが、胃炎や他の消化器疾患と区別しにくい場合もあります。
進行に伴って出やすい症状
- 体重減少(食欲低下・消化吸収障害による)
- みぞおちや胃の周辺の持続的な痛み・不快感
- 食事をとると早く満腹になる(腫瘍が胃内腔を狭めている場合)
- 嘔気・嘔吐
- 貧血(倦怠感・めまい・息切れ)
受診を急いだほうがよい症状
以下の症状がある場合は速やかに消化器内科や外科を受診してください。
- 黒い便(タール便):胃や十二指腸からの出血が疑われます
- 血を吐く(吐血):消化管出血の可能性があります
- 急激な体重減少(1か月で数kg以上)
- 強い腹痛・急な腹部膨満
胃がんステージ3の治療の考え方
手術が治療の中心になる場合
ステージ3では、がんが完全に切除できると判断されれば外科手術(胃切除術+リンパ節郭清)が治療の中心となります。胃の切除範囲は腫瘍の位置や大きさにより、幽門側胃切除・胃全摘・噴門側胃切除などが選択されます。
術前・術後の薬物療法を行うことがある
ステージ3では再発リスクが高いため、手術単独ではなく薬物療法を組み合わせる方針が一般的です。
- 術後補助化学療法:手術後に微小転移を抑制する目的で行われます(S-1単剤療法やCapeOX療法など)。
- 術前化学療法(ネオアジュバント):切除の成功率を高める目的で手術前に実施される場合があります。
具体的な薬剤・レジメンは、日本癌治療学会のガイドライン(がん診療ガイドライン)に基づき、担当医が検討します。
再発リスクを踏まえて治療方針を決める
ステージ3はリンパ節転移の程度が広い場合があり、術後の再発リスクが高い患者さんもいます。術後は定期的な画像検査・血液検査を組み合わせたフォローアップが重要です。
体力や合併症で治療内容が変わることがある
高齢・心疾患・腎機能低下など全身状態に課題がある場合、手術適応や薬物療法の強度を調整することがあります。治療の可否・内容は画一的ではなく、個々の状態を踏まえて判断されます。
胃がんステージ4の抗がん剤治療との違い
ステージ3とステージ4では治療の目的が異なる
ステージ3の治療は根治(がんを取り切ること)を目指すことが基本です。一方、遠隔転移が確認されたステージ4では、抗がん剤治療(薬物療法)が中心となり、生存期間の延長・症状の緩和(QOL維持)を目的とすることが多くなります。
詳しくは胃がんステージ4の考え方と治療の基本をご参照ください。
遠隔転移の有無で治療方針が変わる
| 項目 | ステージ3(M0) | ステージ4(M1) |
|---|---|---|
| 主な治療目的 | 根治を目指す | 延命・QOL維持 |
| 手術の位置づけ | 治療の中心になりうる | 原則として限定的 |
| 薬物療法 | 補助・補完的な役割 | 治療の中心 |
| フォローアップ | 再発早期発見を重視 | 継続的な全身管理 |
胃がんステージ3の予後を見るときの注意点
生存率は統計であり、個々の患者さんにそのまま当てはまらない
国立がん研究センターのがん統計データなどで示される5年生存率は、多くの患者さんのデータをまとめた統計値です。個々の患者さんの予後は、腫瘍の性質・治療内容・全身状態などによって大きく異なり、統計値がそのまま当てはまるわけではありません。
年齢・全身状態・腫瘍の性質で見通しは変わる
同じステージ3でも、T・Nのサブステージ、組織型(分化型・未分化型)、HER2発現や遺伝子変異の有無、患者さんの体力・合併症の状況によって、治療方針と予後は異なります。
公的データの読み方
生存率に関する公的データは、国立がん研究センター がん情報サービスやがん統計で確認できます。数値を参照する際は、データの調査年・対象集団・治療法の変遷を踏まえて解釈することが重要です。主治医に「自分の場合はどう考えるか」を直接聞くことが最も信頼できる情報収集の方法です。
当院での診療から
当院(AIプラスクリニックたまプラーザ)は消化器内視鏡センターを備え、鎮静下の胃・大腸内視鏡検査を日常的に実施しています。内視鏡検査で早期がんが疑われる所見を認めた場合や、胃がんの診断・治療方針の確認が必要と判断した場合には、速やかに地域の基幹病院へご紹介しています。術後は地域連携クリティカルパスを活用した定期フォローアップを当院が担当し、患者さんが自宅に近い環境で継続的なケアを受けられるよう支援しています。また、在宅療養支援診療所として、在宅緩和ケア・看取りにも対応しており、病院と地域をつなぐ役割を担っています。ステージ3と診断された後の生活上の不安・仕事との両立・家族へのサポートについても、遠慮なくご相談ください。
受診・相談の目安
胃痛、体重減少、黒い便、貧血がある場合
みぞおちの痛み・持続する胃の不快感・原因不明の体重減少・黒い便・めまいや倦怠感(貧血の可能性)がある場合は、早めに消化器内科を受診してください。
健診異常や内視鏡で精密検査を勧められた場合
健康診断でバリウム検査の異常や、内視鏡検査で「要精密検査」と指摘された場合は、放置せずに専門医への受診をお勧めします。
治療方針に迷ったとき、説明が十分に理解できないとき
診断後、治療の選択肢・リスク・生活への影響について疑問や不安がある場合はセカンドオピニオンをご活用ください。当院でも相談の窓口となることができます。ご予約・お問い合わせはこちらからお気軽にどうぞ。
よくある質問(FAQ)
ステージ3であっても、遠隔転移がなく全身状態が許す場合には手術(胃切除+リンパ節郭清)が検討されます。ただし、腫瘍の位置・サイズ・周囲臓器への浸潤の程度、患者さんの体力によって手術の適応や方法は異なります。主治医が画像検査・内視鏡・全身評価をもとに総合的に判断します。
ステージ3は根治(がんを取り切る)を目指して治療が行われるステージです。ただし「必ず完治する」と保証できるものではなく、再発リスクを踏まえた術後管理が重要です。個々の状況によって見通しは異なりますので、担当医に詳しく確認してください。
内視鏡検査・CT・PET・腹腔鏡検査などの結果をもとに術前診断が行われます。最終的なTNM分類(病理病期)は手術後に切除した検体を病理学的に調べることで確定されます。術前の画像診断による分類(臨床病期)と、術後の病理診断による分類(病理病期)が異なる場合もあります。
最大の違いは遠隔転移(M)の有無です。ステージ3はM0(遠隔転移なし)、ステージ4はM1(遠隔転移あり)が条件です。この違いにより、治療の目的(根治か延命・QOL維持か)も異なります。詳しくは胃がんのステージの見方と進行度の基本をご覧ください。
手術・薬物療法を始める前に、①病理診断結果(組織型・HER2など)、②画像診断で確認した転移の有無、③手術の切除範囲と再建方法、④術後の補助化学療法の有無・期間・副作用について担当医に確認することをお勧めします。疑問点はメモにまとめて診察時に持参すると伝え漏れが減ります。
参考文献・出典
本記事の監修医師
佐藤 靖郎(さとう やすお)
医師・医学博士 / AIプラスクリニックたまプラーザ 監修医
専門:消化器外科・内視鏡・一般内科
略歴
1988年 福島県立医科大学医学部卒業、医師免許取得。1997年 同大学大学院修了、博士号取得。国立国際医療研究センター、東京新宿メディカルセンター、NTT東日本関東病院、横浜市立大学関連病院、国立病院機構横浜医療センター外科医長・救命救急センター副部長、済生会若草病院(横浜市)外科部長・内視鏡センター・診療部長を歴任。丸亀医療センター・佐々木病院副理事長、日立おおみか病院理事を経て現在に至る。
公的役割
厚生労働省「地域連携クリティカルパスモデルの開発」班研究員、全国保健所長会 地域連携パス推進班アドバイザー、神奈川県がん診療連携協議会 地域連携クリティカルパス部会 相談役。
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