成年後見制度はいつ必要?親の判断が不安な私向けの基礎知識
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「最近、親が同じ話を何度もする」「銀行の手続きを一人でできなくなってきた」——そう感じ始めたとき、頭に浮かぶのが成年後見制度という言葉ではないでしょうか。とはいえ、「具体的に何をするものか」「いつから動けばよいのか」は、なかなか調べ方が分からないものです。
この記事では、成年後見制度の基本的な仕組みと、どのような場面で検討が必要になるのかを、在宅医療・高齢者医療に精通した佐藤靖郎医師(医学博士)の監修のもとで整理します。制度の入口を知るための情報提供を目的としており、個別の判断は専門家へのご相談が前提です。
介護手続き全体の流れを把握したい方は、介護保険と申請手続き|気づく・見極めるためのまとめもあわせてご覧ください。
成年後見制度の基本——まず何者かを理解する
成年後見制度とは、認知症・知的障害・精神障害などによって判断能力が低下した方を法律的に保護し、支援するための制度です(民法第7条以下)。家庭裁判所が関与し、「成年後見人」等が本人に代わって財産管理や契約行為を行います。
制度は大きく「法定後見」と「任意後見」の2種類に分かれます。
| 種類 | 特徴 | 開始のタイミング |
|---|---|---|
| 法定後見 | 家庭裁判所が後見人を選任する。本人の判断能力が低下してから申し立てる | 判断能力が低下した後 |
| 任意後見 | 本人が元気なうちに、信頼できる人と契約を結んでおく | 本人の判断能力があるうち |
法定後見にはさらに「後見」「保佐」「補助」という3段階があり、判断能力の程度に応じて適用範囲が異なります。厚生労働省の資料では、認知症・知的障害・精神障害などで判断能力が不十分な方を対象とすることが明記されており、加齢による物忘れのみでは直ちに対象になるわけではありません(出典:厚生労働省 認知症施策)。
多くの方が制度を調べ始めるきっかけ
ご家族が成年後見制度を調べ始めるのは、多くの場合、日常のある「瞬間」がきっかけです。
- 親が振り込め詐欺の被害に遭いかけた、または実際に遭ってしまった
- 施設への入居契約を本人が理解できていないようだった
- 不動産の売却や相続手続きに本人の署名・同意が必要なのに、その能力があるか不安になった
- 担当のケアマネジャーや病院の医療ソーシャルワーカーから「制度を検討してはどうか」と言われた
いずれも「急に対応を迫られた」状況が多く、調べ始めるのが遅かったと感じる方が少なくありません。任意後見は本人の判断能力があるうちにしか契約できないという点は、特に知っておきたい注意点です。
制度の対象かどうかを見極める目安
成年後見制度の対象となるかどうかは、最終的には医師の診断書と家庭裁判所の判断によります。ご家族が「もしかして」と気づくための目安として、以下のようなサインが挙げられます。
日常生活での変化(参考サイン)
- 公共料金の支払いを繰り返し忘れる
- 同じ商品を何度も購入し、家に大量にある
- 訪問販売や電話勧誘で高額契約を結んでしまった
- 入院・手術の同意書の内容を理解・判断できない場面がある
これらは認知症の進行とも関係することがあります。認知症の診断・評価は医師による診察が前提です。要介護認定の区分とも関連しますが、要介護1・2程度でも認知症の進行によって意思決定能力が低下している場合があり、逆に要介護3以上であっても意思表示がしっかりできる方もいます。要介護度と成年後見の必要性は、必ずしも一対一では対応しません。
要介護認定の状態像について詳しくは、障害高齢者の日常生活自立度をどう見ればよいか知りたい方へも参考にしてください。
混同しやすい制度・手続きとの違い
成年後見制度と似たような言葉がいくつかあり、混乱しがちです。
| 比較対象 | 成年後見制度との違い |
|---|---|
| 日常生活自立支援事業 | 社会福祉協議会が運営。判断能力がある程度残っている方向け。福祉サービスの利用援助・日常的な金銭管理を支援する。後見人制度より軽い位置づけ |
| 代理人・家族による手続き | 家族であっても法的な代理権は当然には生じない。銀行口座の凍結解除など、家族の意思だけでは動かせない手続きがある |
| 遺言書・相続手続き | 本人が亡くなった後の財産処分。成年後見は生存中の支援が目的であり別の制度 |
| 介護保険のケアプラン | 介護サービスの計画管理。財産管理や法的行為の代行は含まない |
特に「家族が代わりに銀行手続きをしようとして断られた」という経験から制度を知る方も多くいらっしゃいます。判断能力の低下が疑われる段階で口座が事実上凍結状態になると、生活費の確保にも支障が出るため、早めに法律の専門家(弁護士・司法書士)や地域包括支援センターへの相談が助けになります。
家族が見落としがちな制度利用のポイント
申し立てができるのは限られた人
法定後見の申し立ては、本人・配偶者・四親等内の親族・市区町村長などが行えます。子どもであれば申し立て可能ですが、後見人として選ばれるのが申立人(家族)とは限らないという点は、多くの方が驚かれます。家庭裁判所が財産管理の複雑さや親族間の争いの有無などを考慮し、弁護士・司法書士などの専門職後見人を選任することがあります。
後見人への報酬が継続的に発生する
専門職後見人が選任された場合、報酬が本人の財産から継続的に支払われます。月額2〜6万円程度が目安とされることが多いですが、財産額や業務の複雑さによって変わります(家庭裁判所が決定する金額であり、目安です。最新の情報は各地の家庭裁判所でご確認ください)。
制度の利用開始後は簡単に終了できない
一度後見が開始されると、本人が回復するか死亡するまで原則として継続します。「必要な手続きが終わったから終わりにしたい」という希望は、基本的には通りません。
任意後見は元気なうちに動く必要がある
任意後見契約は、本人が十分な判断能力を持つうちに公証人の立会いで締結します。「まだ大丈夫」と思っているうちに進めておくことが大切で、一度判断能力が低下してしまうと任意後見の選択肢は使えなくなります。
親の状態が変わり始めたと感じている方は、介護保険と申請手続き|相談・依頼するためのまとめで手続き全般の相談窓口についても確認してみてください。
在宅医療と成年後見制度のつながり
在宅医療の現場では、意思決定が必要な場面が繰り返し訪れます。
- 胃ろう(経管栄養)の造設・継続の判断
- 入院の同意
- 終末期における治療方針の選択
こうした場面で、本人がご自身の意思を表明できない状態になってから「誰が決めるのか」と困るご家族は少なくありません。後見人がいれば法的な代理権を持って対応できますが、後見人であっても延命治療の同意など一身専属的な医療行為の決定を代行できるかどうかは法的に整理されていない部分もあるため、在宅医・家族・後見人が連携して方針を話し合う体制が重要です。
また、在宅医療は「状態が悪化してから始めるもの」ではありません。要介護1〜2の段階であっても、通院が難しくなってきた・認知機能が低下しはじめたという時点で訪問診療を検討することで、選択肢が大きく広がります。在宅医療の概要については訪問診療・在宅医療とは|対象・費用・依頼の流れを医師が解説する完全ガイドもご参照ください。
厚生労働省は「人生会議(アドバンス・ケア・プランニング)」として、元気なうちから自分の医療・ケアの希望を話し合っておくことを推奨しています(出典:厚生労働省 人生会議(ACP))。成年後見と組み合わせて考えると、いざというときの備えがより充実します。
当院の在宅診療の現場から
AIプラスクリニックたまプラーザでは、病院の地域連携室や医療ソーシャルワーカーから紹介を受け、退院前カンファレンスに参加したうえで在宅への引き継ぎを受けるケースが多くあります。退院当日からの訪問診療開始にも対応しており、退院直後の不安定な時期の急変に備え、24時間の連絡体制を整えています。
認知機能が低下している患者さんの在宅療養では、ご家族や後見人・ケアマネジャーと連携しながら、胃ろう管理・嚥下評価・栄養管理を進める場面が実際にあります。意思決定の場面では、本人が意思を表示できる段階から少しずつ希望を確認し、記録しておくことを大切にしています。
たまプラーザ・あざみ野・美しが丘・新石川など横浜市青葉区を中心とした地域に加え、都筑区・川崎市宮前区のご相談にも応じています。地域の訪問看護ステーション・居宅介護支援事業所との連携体制を持ち、介護と医療が一体で動ける環境づくりをご支援しています。
受診・相談の目安
以下のいずれかが当てはまる場合は、かかりつけ医・地域包括支援センター・法律専門家などへの相談を検討するタイミングです。
- 親が契約書や振込などの手続きを一人で行うことが難しくなってきた
- 訪問販売・電話勧誘などで意図しない高額契約を結んでしまったことがある
- 施設入居・手術・入院の同意が必要な場面で、本人の判断能力に疑問が生じた
- 医師から認知症の診断を受けているが、財産管理の手立てをまだ講じていない
- 相続・不動産手続きが近々発生しそうで、本人の意思確認が困難になりつつある
「まだ相談するほどではないかも」と感じる方が多いのですが、任意後見は判断能力が残っているうちにしか準備できず、状態が進んでからでは選択肢が限られます。「情報だけ聞いてみる」という使い方で構いません。在宅医療に関する相談は、ご予約・お問い合わせからお気軽にどうぞ。ご本人が来院できない場合のご家族のみの相談も承っています。
よくある質問
Q. 成年後見人になれるのは家族だけですか?
いいえ。家族(配偶者・子・兄弟姉妹など)が後見人になることもありますが、家庭裁判所が財産の状況・親族間の関係・本人の意向などを考慮して判断します。複雑な財産管理が必要な場合や親族間で意見の相違がある場合には、弁護士・司法書士・社会福祉士などの第三者専門職が選ばれることが少なくありません。
Q. 要介護1や要介護2でも成年後見制度は必要になりますか?
必ずしも要介護度が高くないと利用できない、というわけではありません。要介護度は身体機能の自立度を主に反映しており、認知機能の低下とは別に評価されます。要介護1や2であっても、認知症の進行によって意思決定が難しい状態にある方がいる一方で、要介護4・5でも意思表示が明確な方もいます。判断能力の評価は医師の診断書を基に家庭裁判所が行います。
Q. 任意後見と法定後見はどちらを選べばよいですか?
本人に判断能力がある段階なら、本人が信頼できる人を後見人として指定できる任意後見の検討が優先されることが多いです。すでに判断能力が低下している場合は法定後見の申し立てになります。どちらが適切かは個別の状況によるため、司法書士・弁護士・地域包括支援センターへの相談をお勧めします。
Q. 成年後見制度の手続きはどこに相談すればよいですか?
地域包括支援センター(市区町村が設置)が最初の窓口として機能しています。法的手続きが必要な段階では司法書士・弁護士への相談が必要になります。費用負担が難しい場合は法テラス(日本司法支援センター)の利用も選択肢のひとつです。また要介護4の親を自宅で支える前に私が確認したいことのように、介護が重くなるほど並行して法的準備も求められます。
Q. 親本人が「後見人なんていらない」と言っています。どうすればよいですか?
本人が意思を持って反対している場合、法定後見の申し立て自体は申立権者が行えますが、本人の意向は家庭裁判所の審判でも考慮されます。まずは本人がどのような不安や抵抗を感じているかを丁寧に確認し、任意後見のような「自分で信頼できる人を選ぶ形」を説明するところから始めるのが現実的です。急がず段階的に、地域包括支援センターや専門家を交えた話し合いが助けになります。
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参考文献・出典
本記事の監修医師
佐藤 靖郎(さとう やすお)
医師(医学博士)/AIプラスクリニックたまプラーザ 監修医
専門:消化器外科・消化器内視鏡/一般内科/在宅医療・高齢者医療・がん緩和ケア・心不全・呼吸不全
略歴:
1988年 福島県立医科大学医学部卒業、医師免許取得。1997年 同大学大学院修了、博士号取得。国立国際医療研究センター、東京新宿メディカルセンター、NTT東日本関東病院、横浜市立大学関連病院、国立病院機構横浜医療センター外科医長・救命救急センター副部長、済生会若草病院(横浜市)外科部長・内視鏡センター・診療部長を歴任。丸亀医療センター・佐々木病院副理事長、日立おおみか病院理事を経て現在に至る。
公的役割:
厚生労働省「地域連携クリティカルパスモデルの開発」班研究員、全国保健所長会 地域連携パス推進班アドバイザー、神奈川県がん診療連携協議会 地域連携クリティカルパス部会 相談役。
AIプラスクリニックたまプラーザのご案内
ご家族の通院が難しくなってきた、退院後の療養先に迷っている、自宅でどこまで医療が受けられるか知りたい——そうしたご相談を、たまプラーザで承っています。ご本人が来院できない場合のご家族のみの相談も歓迎です。
TEL:045-909-0117(横浜市青葉区)
対応エリア:たまプラーザ・あざみ野・美しが丘・新石川など横浜市青葉区を中心とした地域(都筑区・川崎市宮前区もご相談ください)
ご相談の際にご用意いただくとスムーズなもの:
- お薬手帳または薬剤情報提供書
- 医療保険証・各種受給者証
- 介護保険証・介護保険負担割合証
- (お持ちであれば)診療情報提供書(紹介状)や退院時サマリー
免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個々の患者さんの診断・治療を代替するものではありません。症状や治療方針の判断は、必ず主治医にご相談ください。制度・費用は改定される場合があります。最新の情報は各自治体・保険者の窓口でご確認ください。