認知症の暴力がつらいとき、家族が抱え込まないために
認知症の方の暴力や強い怒りは、家族の努力不足ではありません。病気の進み方、痛みや不安、環境の変化が重なって起こることがあり、家族だけで耐え続ける必要はありません。まずは「何が起きているか」を整理し、支援につながることが大切です。
- 暴力には、叩く、つねる、物を投げる、強い暴言、介護拒否などが含まれます。
- 認知症そのものだけでなく、痛み、便秘、感染、睡眠不足、薬の影響、環境変化が背景にあることがあります。
- 家族の安全や休息が保てないときは、早めに医療・介護・在宅医療へつなぐことが大切です。
叩く、押す、物を投げる行為が続くときは、無理に制止し続けず、距離を取り、けがの危険を減らすことが先です。急な混乱や強い興奮では、せん妄など別の病気が隠れていることもあります。
認知症の暴力が起きたときに、まず知っておきたいこと
暴力という言葉には、叩く、つねる、物を投げる、強い暴言、介護拒否などが含まれます。認知症では、記憶障害だけでなく、見当識障害(時間や場所が分かりにくくなること)や不安の強まりから、急に攻撃的に見えることがあります。
厚生労働省の認知症施策でも、本人の困りごとに周囲が気づき、早めに相談先を持つことが大切とされています。
暴力や強い怒りは、家族の接し方だけで起きるものではありません。病状、身体の不調、環境の負担が重なっていることがあります。
認知症の暴力で調べ始める家族に多いきっかけ
よくあるのは、以下のような場面です。
日常介護の中で起こりやすいこと
- 介護のたびに怒鳴られる、手が出る
- 入浴や服薬、着替えのときだけ強く拒否される
- 夜間に興奮して家族が眠れない
今後の暮らし方に迷う場面
- デイサービスや施設で「対応が難しい」と言われた
- 退院後に自宅へ戻るかどうか迷っている
- 付き添いや見守りが家族だけでは限界に近い
「まだ相談するほどでは」と感じやすい段階ですが、状態が悪化してからでは選択肢が狭まることがあります。まずは情報だけでも整理しておくと、判断しやすくなります。
在宅医療の基本は、
訪問診療・在宅医療の相談先を整理した案内
や、
在宅医療とは何かをまとめたガイド
も参考になります。
暴力が認知症によるものかを見分ける目安
認知症の暴力は、単独の症状というより「何かがつらい」というサインのことがあります。たとえば、痛み、便秘、尿路感染、睡眠不足、薬の副作用、環境変化などです。
| きっかけ | みられやすい様子 | 家族が確認したい点 |
|---|---|---|
| 入浴・着替え | 叩く、逃げる、怒鳴る | 恥ずかしさ、寒さ、痛みがないか |
| 食事・服薬 | 拒否、吐き出す | 口の渇き、飲み込みにくさ |
| 夜間 | 徘徊、興奮、暴言 | 昼夜逆転、せん妄の可能性 |
| 受診・通院 | 強い拒否、興奮 | 移動の負担、待ち時間の負担 |
「いつ、どこで、何をしたときに起きるか」をメモすると、受診時の重要な手がかりになります。
特に、顔つきやふるまいが急に変わったように見えるときは、
認知症で顔つきが変わった気がする…家族が見たい変化
も合わせて読むと整理しやすいです。
混同しやすい状態との違い
認知症の暴力に見えても、別の原因が隠れていることがあります。特に大切なのは、せん妄(急に意識や注意が乱れる状態)です。せん妄は感染症や脱水、薬の影響などで起こり、急変として扱う必要があります。
また、レビー小体型認知症では、幻視(実際にはないものが見えること)や日内変動(時間帯で状態が変わりやすいこと)が目立つことがあり、興奮や拒否が強くなることがあります。進行期には、歩行の不安定さや飲み込みの低下も問題になります。
発熱、脱水、便秘、痛み、薬の変更などが重なると、普段より強い興奮や暴力につながることがあります。
家族が見落としがちな大事なポイント
暴力が続くとき、家族は「接し方が悪いのでは」と自分を責めやすいのですが、原因は本人の意思だけではありません。
確認したい点は次の3つです。
- 身体の不調:痛み、便秘、発熱、脱水、口内炎
- 生活環境:騒音、まぶしさ、介護者の交代、予定変更
- 介護負担:家族の疲弊、睡眠不足、見守りの限界
このような時期は、家族だけで抱え込まず、在宅医療や訪問看護を含めて役割を分けると負担が下がることがあります。相談先を早めに持つことは、本人を急に変えるためではなく、家族の消耗を減らすためにも役立ちます。
家族がけがをする、眠れない、介護を続けられない状態は「我慢すべき状況」ではありません。早めの支援調整が必要です。
在宅医療を使うと何が変わるのか
在宅医療は「最期まで自宅で過ごすための制度」と決めつける必要はありません。通院が難しい、退院後の不安が強い、家族の付き添いが限界、という段階でも相談できます。
退院前から在宅医が関わると、病院・家族・地域の支援者で引き継ぎやすくなります。退院日は急に決まることもあるため、前もって情報を集めておくと動きやすくなります。厚生労働省の
在宅医療の推進
や
人生会議(ACP)
の考え方も、こうした早めの準備を支えます。
| 相談の場面 | 在宅医療で期待できること | 限界・注意点 |
|---|---|---|
| 通院がつらい | 自宅で診察、処方調整 | 検査や入院が必要な場合は病院対応 |
| 退院直後 | 生活に合わせた療養設計 | 急変時は救急搬送が必要なことがある |
| 介護が限界 | 訪問看護やケアマネと連携 | 施設入居が適する場合もある |
当院の在宅診療の現場から
病院の地域連携室や医療ソーシャルワーカーから紹介を受け、退院前カンファレンスに参加して在宅への引き継ぎを行うことがあります。退院当日から訪問診療を始めることもあり、退院直後の不安定な時期には24時間の連絡体制で夜間・休日の急変に対応しています。消化器内視鏡やエコーの経験を活かし、栄養管理、嚥下評価、胃ろう管理、在宅酸素にも対応します。たまプラーザ・あざみ野・美しが丘・新石川など横浜市青葉区を中心に、隣接する都筑区・川崎市宮前区もご相談を承っています。
「自宅に戻せるか不安」「施設を含めて整理したい」という段階でも、情報を整理することで次の動きが決めやすくなります。
受診・相談の目安
次のような場合は、相談の目安になります。
- 叩く、押す、物を投げるなどの行為が繰り返される
- 夜間の興奮や不眠で、家族の休息が保てない
- 入浴・服薬・食事のたびに強い拒否が起こる
- 通院の付き添いが難しくなってきた
- 退院後の療養先を急いで決める必要がある
この段階では「まだ相談するほどでは」と感じる方が多いのですが、在宅医療は状態が悪化してからでは選択肢が狭まります。情報だけ聞いてみる、という使い方で構いません。
ご相談はご予約・お問い合わせからどうぞ。
よくある質問
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参考文献・出典
本記事の監修医師
佐藤 靖郎(さとう やすお)/医師(医学博士)/AIプラスクリニックたまプラーザ 監修医
略歴: 1988年 福島県立医科大学医学部卒業、医師免許取得。1997年 同大学大学院修了、博士号取得。国立国際医療研究センター、東京新宿メディカルセンター、NTT東日本関東病院、横浜市立大学関連病院、国立病院機構横浜医療センター外科医長・救命救急センター副部長、済生会若草病院(横浜市)外科部長・内視鏡センター・診療部長を歴任。丸亀医療センター・佐々木病院副理事長、日立おおみか病院理事を経て現在に至る。
公的役割: 厚生労働省「地域連携クリティカルパスモデルの開発」班研究員、全国保健所長会 地域連携パス推進班アドバイザー、神奈川県がん診療連携協議会 地域連携クリティカルパス部会 相談役。
AIプラスクリニックたまプラーザのご案内
ご家族の通院が難しくなってきた、退院後の療養先に迷っている、自宅でどこまで医療が受けられるか知りたい――そうしたご相談を、たまプラーザで承っています。
- 横浜市青葉区を中心に、たまプラーザ・あざみ野・美しが丘・新石川などの地域でご相談に応じています。
- ご相談の際は、お薬手帳または薬剤情報提供書/医療保険証・各種受給者証/介護保険証・介護保険負担割合証/(お持ちであれば)診療情報提供書(紹介状)や退院時サマリーをご用意いただくとスムーズです。
- ご本人が来院できない場合のご相談も承ります。
免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個々の患者さんの診断・治療を代替するものではありません。症状や治療方針の判断は、必ず主治医にご相談ください。制度・費用は改定される場合があります。最新の情報は各自治体・保険者の窓口でご確認ください。