胃がんとは何か 症状や治療の基本
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胃がん(胃癌)は、日本において罹患数の多いがんのひとつです。初期には自覚症状が乏しいケースが多い一方、早期に発見できれば内視鏡治療や手術によって根治を目指せる可能性があります。本記事では、胃がんの基礎知識・症状・原因・検査・治療の全体像を、消化器外科専門医の監修のもとわかりやすく解説します。気になる症状がある方は、まず医療機関への受診をご検討ください。
なお、胃がんに関する詳しい情報は胃がんの基礎知識・全体像|押さえておきたい要点を医師監修で解説もあわせてご覧ください。
胃がんとは何か
胃がん(胃癌)とは、胃の内側を覆う粘膜の細胞ががん化して増殖する疾患です。国立がん研究センターの統計(2019年)では、胃がんの罹患数は男性で第2位、女性で第4位を占めており、依然として日本人に多いがんのひとつです。
胃がんと胃癌の違いはあるのか
「胃がん」と「胃癌」は医学的に同一の疾患を指します。「癌」は漢字表記、「がん」はひらがな表記であり、意味の違いはありません。一般的な文章では「胃がん」、医療文書や診断書では「胃癌」と記載されることが多いですが、本記事では「胃がん」に統一しています。
胃のどこにできるがんか
胃は上部(噴門部)・中部(胃体部)・下部(幽門部)に大きく分かれます。胃がんの多くは胃体部や幽門部(特に胃の出口付近)の粘膜に発生しますが、部位によって症状の出方や治療方針が異なることがあります。
胃がんの主な症状
初期は症状が出にくい理由
胃の粘膜はもともと食べ物の刺激にさらされているため、早期のがん病変があっても「少し胃が重い」程度の違和感にとどまるか、まったく自覚症状がないことも少なくありません。これが、胃がんの早期発見に定期検診が重要とされる理由のひとつです。
受診のきっかけになりやすい症状
以下の症状が続く場合は、胃がんを含む消化器疾患の可能性を念頭に受診を検討してください。
- みぞおちあたりの不快感・痛み
- 食欲の低下
- 体重の減少(意図しない減少)
- 黒色便・血便(消化管出血のサイン)
- 吐血
胃の不調と見分けにくい症状
胸やけ、げっぷ、胃もたれなどは胃炎や胃潰瘍でも起こるため、胃がんとの鑑別は自己判断では困難です。これらの症状が繰り返す場合や、市販薬を使っても改善しない場合は、内視鏡検査(胃カメラ)による確認が推奨されます。
胃がんの主な原因とリスク要因
ピロリ菌感染との関係
ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)感染は、胃がんの最大のリスク要因として知られています。国立がん研究センターの情報によると、胃がんの多くはピロリ菌が引き起こす慢性胃炎を背景に発生するとされています。ピロリ菌の除菌治療によって胃がん発症リスクを下げる効果が期待されていますが、除菌後もゼロになるわけではなく、定期的な内視鏡フォローが引き続き重要です。
塩分の多い食事や喫煙などの生活習慣
塩分摂取量の多い食事(塩辛・漬物・加工肉など)、喫煙は胃がんのリスクを高める生活習慣として挙げられています。また、野菜・果物の摂取不足もリスク要因のひとつです。
家族歴や年齢との関係
胃がんは50歳代以降で罹患率が上がり、特に60〜70歳代の男性に多い傾向があります。一親等に胃がんの家族歴がある場合はリスクが高まる可能性が指摘されており、早めの検診が勧められます。
胃がんの種類
胃がんの多くを占める腺がん
胃がんの90%以上は「腺がん」と呼ばれるタイプです。胃の内壁(粘膜)にある腺細胞から発生します。腺がんはさらに、がん細胞が整然と並ぶ「分化型」と、不規則に増殖する「未分化型(低分化型)」に大別され、進行のしかたや予後の傾向が異なります。
詳しくは胃がんの種類と特徴をわかりやすく整理もご参照ください。
スキルス胃がん・スキルス性胃がんとは
スキルス胃がん(スキルス性胃がん)は、未分化型の腺がんに分類される特殊な形態です。がん細胞が胃壁の深部(粘膜下層より深い層)に広がりながら増殖するため、胃の内腔の変化が目立ちにくく、内視鏡検査でも見つかりにくいという特徴があります。胃全体が硬く収縮したように見える「革袋胃」の形状になることがあります。進行が速い傾向があり、発見時にすでに腹膜播種(腹腔内へのがんの広がり)を伴うケースも少なくありません。
スキルス胃がんについてより詳しくはスキルス胃癌とは 特徴と受診の目安をご覧ください。
胃がんの種類で治療や経過はどう変わるか
分化型は内視鏡治療(ESD)の適応になりやすく、未分化型・スキルス型は手術や薬物療法が主体となる場合が多いです。種類と進行度を組み合わせて治療方針が決まるため、病理診断の結果を主治医とともに確認することが大切です。
胃がんの検査と診断
胃カメラ検査でわかること
内視鏡検査(胃カメラ)は、胃の粘膜を直接観察できる最も確実な検査法です。色調の変化・粘膜の隆起・陥凹などの所見から、がんを疑う病変を早期に発見できます。
生検と病理診断の流れ
内視鏡検査中に疑わしい組織の一部を採取する「生検(せいけん)」を行い、顕微鏡でがん細胞の有無や種類を確認する「病理診断」が行われます。この病理診断の結果が確定診断の根拠となります。
画像検査や血液検査の役割
| 検査 | 目的 |
|---|---|
| CT検査 | リンパ節・他臓器への転移の評価 |
| PET検査 | 全身の転移巣の把握(適応は限られる) |
| 腹部超音波検査 | 肝転移など腹部臓器の評価 |
| 血液検査(腫瘍マーカー) | CEA・CA19-9などの補助的評価(確定診断には使用しない) |
腫瘍マーカーは補助的な指標であり、数値だけでがんの有無を判断することはできません。
胃がんの進行度とステージ
ステージで何が決まるのか
胃がんのステージ(病期)はI〜IVの4段階で分類され(日本胃癌学会「胃癌取扱い規約」に基づく)、腫瘍の深さ(T因子)・リンパ節転移の有無(N因子)・遠隔転移の有無(M因子)の組み合わせで決まります。ステージは治療方針の選択において重要な指標です。
早期胃がんと進行胃がんの違い
| 区分 | 定義 | 主な治療 |
|---|---|---|
| 早期胃がん | がんが粘膜・粘膜下層にとどまる(T1) | 内視鏡治療または手術 |
| 進行胃がん | 固有筋層より深く浸潤している(T2以上) | 手術・薬物療法・放射線治療の組み合わせ |
公的データでみる胃がんの基本的な見方
国立がん研究センターの統計データ(がん統計)によると、ステージ別の5年相対生存率には大きな幅があります。ただし、生存率はあくまで統計的な集団のデータであり、個々の患者さんに直接当てはまるものではありません。年齢・全身状態・がんの組織型など、さまざまな要因が経過に影響します。数値だけで一喜一憂せず、主治医と具体的な治療方針を話し合うことが大切です。
胃がんの治療の基本
手術療法
胃の一部または全部を切除する手術が基本となります。近年は腹腔鏡手術(おなかに小さな穴を開けてカメラで行う手術)も広く行われており、身体への負担を軽減できるケースがあります。ただし、適応は病変の状態や患者さんの全身状態によって判断されます。
薬物療法
抗がん薬(化学療法)、分子標的薬(がん細胞の特定の標的を狙う薬)、免疫チェックポイント阻害薬などが用いられます。手術の前後に組み合わせる場合や、手術が難しい進行・再発がんに対して主体的に使用する場合があります。薬の選択は、HER2(タンパクの過剰発現)・PD-L1発現・MSI(マイクロサテライト不安定性)などの検査結果にもとづいて行われます。
放射線治療が使われる場面
胃がんに対して放射線治療が単独で行われることは少ないですが、出血や痛みなどの症状緩和(緩和的放射線療法)や、一部の局所再発に対して用いられることがあります。
治療はステージと全身状態で決まる
最終的な治療方針は、ステージ・がんの種類・患者さんの年齢・体力・合併症・本人の希望を総合して、主治医と患者さんが話し合いながら決定します。一つの方法が万人に当てはまるわけではなく、個別に検討することが重要です。
受診・相談の目安
こんな症状が続くときは受診を検討する
- みぞおちの痛みや不快感が2週間以上続く
- 食欲がなく、体重が意図せず減っている
- 食後の胃もたれ・膨満感が繰り返す
- 市販薬を使っても改善しない消化器症状
すぐ受診したほうがよい症状
- 黒色便(タール便)・吐血
- 急な激しい腹痛
- 極端な体重減少・強い倦怠感
これらの症状がある場合は、速やかに医療機関を受診してください。
健診や内視鏡検査を受ける目安
胃がん検診(バリウム検査または内視鏡検査)は、市区町村の住民検診として50歳以上を対象に2年に1回実施されています(厚生労働省「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針」)。ただし、ピロリ菌感染歴のある方・家族歴のある方・喫煙者などリスクが高い方は、かかりつけ医に検診の頻度や方法を相談されることをお勧めします。
受診・検査のご相談はこちらからご予約いただけます。
当院での診療から
当院(AIプラスクリニックたまプラーザ)は消化器内視鏡センターを備え、鎮静薬を使用した負担の少ない胃内視鏡検査(胃カメラ)を日常的に実施しています。検査中に早期がんを疑う所見が確認された場合は、速やかに基幹病院(連携する高次医療機関)へご紹介し、専門的な治療へつなげています。治療後は地域連携クリティカルパスの枠組みを活用して術後フォローアップを担当し、患者さんが安心して地域で療養を続けられるよう支援しています。また、在宅療養支援診療所として在宅での緩和ケアや看取りにも対応しており、病期を問わず患者さんとご家族に寄り添った診療を心がけています。「受診すべきか迷っている」という段階でのご相談も歓迎しています。
よくある質問(FAQ)
胃がんは治る病気ですか
早期に発見された胃がん(粘膜内や粘膜下層にとどまる段階)は、内視鏡治療や手術によって根治を目指せる可能性があります。ただし、治療の結果は個々の状態によって大きく異なります。「治る」かどうかを一概にお答えすることは難しく、詳細は主治医にご確認ください。
胃がんは遺伝しますか
一部の胃がんは遺伝性の素因(CDH1遺伝子変異による遺伝性びまん性胃がんなど)が関係する場合がありますが、大多数の胃がんは遺伝性ではなく、ピロリ菌感染・生活習慣・加齢などの複合的な要因で発生します。家族に胃がんの方がいる場合は、一度かかりつけ医に相談されることをお勧めします。
スキルス胃がんは見つかりにくいのですか
スキルス胃がん(スキルス性胃がん)は胃壁の深部に広がりやすいため、内視鏡検査で粘膜面の変化が目立ちにくく、発見が遅れるケースがあります。バリウム検査でも発見が難しい場合があります。特定の症状や家族歴がある方は、専門医に相談のうえ適切な検査を受けることが大切です。
胃がん検診はどのような人が対象ですか
厚生労働省の指針では、50歳以上を対象に胃内視鏡検査(または胃部X線検査)を2年に1回受けることが推奨されています。ただし、自治体によって対象年齢や方法が異なる場合があります。リスクが高い方(ピロリ菌陽性歴・喫煙・家族歴など)は、指針の年齢を問わず検診を検討することをお勧めします。詳細はお住まいの市区町村の窓口やかかりつけ医にご確認ください。
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参考文献・出典
- 国立がん研究センター がん情報サービス「胃がん」
- 国立がん研究センター がん統計
- 厚生労働省 がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針
- 日本癌治療学会 がん診療ガイドライン(胃癌)
- Minds ガイドラインライブラリ(日本医療機能評価機構)
本記事の監修医師
佐藤 靖郎(さとう やすお)
医師(医学博士)/AIプラスクリニックたまプラーザ 監修医
専門: 消化器・内科(消化器外科/内視鏡/一般内科)
略歴
1988年 福島県立医科大学医学部卒業、医師免許取得。1997年 同大学大学院修了、博士号取得。国立国際医療研究センター、東京新宿メディカルセンター、NTT東日本関東病院、横浜市立大学関連病院、国立病院機構横浜医療センター外科医長・救命救急センター副部長、済生会若草病院(横浜市)外科部長・内視鏡センター・診療部長を歴任。丸亀医療センター・佐々木病院副理事長、日立おおみか病院理事を経て現在に至る。
公的役割
厚生労働省「地域連携クリティカルパスモデルの開発」班研究員、全国保健所長会 地域連携パス推進班アドバイザー、神奈川県がん診療連携協議会 地域連携クリティカルパス部会 相談役。
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本記事は一般的な医学情報の提供を目的としており、個別の診断・治療方針を示すものではありません。症状や治療についての判断は、必ず主治医・専門医にご相談ください。記載内容は公開時点の公的情報・診療ガイドラインに基づいており、最新情報は国立がん研究センター「がん情報サービス」等でご確認ください。
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