寝たきりの親を自宅で介護するとき、通院負担を減らすには
寝たきりの親を自宅で介護していると、受診のたびに「どう連れて行くか」が大きな負担になります。結論からいうと、通院を減らす方法は一つではありません。介護タクシー、往診、訪問診療、退院支援の活用を組み合わせることで、家族の負担を下げられる場合があります。まずは全体像をつかみたい方は、通院が難しくなったときの選択肢もあわせてご覧ください。
まず押さえたい基本
寝たきりの在宅介護では、通院そのものが体力面・移動面の両方で重い負担になります。とくに、移乗が必要な方、点滴や酸素、胃ろう、褥瘡(床ずれ)管理がある方は、一般的な外来受診が難しくなりがちです。
通院負担を減らす基本は、次の3つです。
| 方法 | 向いている場面 | 注意点 |
|---|---|---|
| 介護タクシー | 移動は必要だが、家族だけでは難しいとき | 料金は距離や介助内容で変わるため、事前確認が大切 |
| 往診 | 急な体調変化で、医師の訪問が必要なとき | 継続的な管理には向かないことがあります |
| 訪問診療 | 定期的に自宅で診てもらいたいとき | 入院治療が必要な場面は対応できません |
制度面では、厚生労働省も在宅医療の推進を進めています。介護保険や医療保険の使い分けは複雑なので、訪問診療・在宅医療を知るためのまとめを早めに確認しておくと整理しやすいです。
こう調べ始める方が多いきっかけ
「まだ通院できるかもしれない」と思いながらも、次のような場面で情報収集を始める方が多いです。
- 受診のたびに家族が半日以上つぶれている
- 玄関から車までの移動だけでかなり疲れてしまう
- 病院での待ち時間が長く、本人の負担が大きい
- 退院日が急に決まり、在宅療養の準備が間に合わない
- かかりつけ医への通院を続けるか迷っている
とくに退院支援は、訪問診療の大きな導入経路です。病院からは「自宅か施設か」の二択で話が進みやすいのですが、在宅医療が入ると自宅療養の難易度が下がることがあります。退院前カンファレンスに在宅医が加わると、病院側の情報を引き継ぎやすくなります。AIプラスクリニックたまプラーザでも、地域連携室や医療ソーシャルワーカーからの紹介で退院前から相談を受けています。
見分け方・判断の目安
「通院を減らした方がよいか」を考える目安は、移動のつらさだけではありません。医療面の必要性も大切です。
| 状況 | 考え方 |
|---|---|
| 月に何回も通院が必要 | 自宅で診療を受ける方が負担軽減につながる可能性があります |
| 体位変換や移乗に複数人の手が要る | 介護タクシーや在宅医療の導入を検討しやすいです |
| 食事量低下、むせ、脱水がある | 嚥下評価や栄養管理の相談が役立つことがあります |
| 酸素、胃ろう、褥瘡などの管理がある | 在宅で継続管理できるか確認が必要です |
| 退院直後で状態が不安定 | 早めに訪問診療を組み込むと安心材料になります |
厚生労働省の人生会議(ACP)の考え方も参考になります。ACPとは、将来の医療やケアについて、本人・家族・医療者で話し合うことです。状態が落ち着いている段階で整理しておくと、急変時の迷いを減らしやすくなります。
混同しやすいものとの違い
通院負担を減らす方法は似て見えて、役割が異なります。
| 項目 | 目的 | 向いている人 |
|---|---|---|
| 介護タクシー | 移動を支える | 受診先は病院のままでよい方 |
| 往診 | 必要時に医師が訪問する | その場の診察が必要な方 |
| 訪問診療 | 継続的に自宅で診療する | 定期管理が必要な方 |
| かかりつけ医の継続 | これまでの関係を保つ | 病院受診を一部続けたい方 |
ここで大切なのは、現在のかかりつけ医との関係を切る必要はないことです。併診や引き継ぎは可能です。ご本人が来院できない場合でも、家族だけで相談することはできます。
家族が見落としがちなポイント
寝たきりの親を自宅で介護していると、家族は「送迎できるかどうか」に目が向きやすいのですが、実際には次の点も大切です。
- 退院後の療養先を決める時間は意外と短い
- 地域包括ケア病棟の入院期間には上限があり、原則60日を意識して逆算する必要があります
- 退院当日から訪問診療を開始できる場合がある
- 夜間・休日の急変に備えた連絡体制があると安心しやすい
- 施設入居や転院が適する場合もあり、自宅一択ではありません
在宅医療は「最期まで自宅で過ごせる」と保証するものではありません。状態によっては入院が必要になることもあります。ただ、早い段階で情報収集をしておくと、選べる手段は広がりやすくなります。
在宅医療とのつながり
通院負担を減らしたいとき、訪問診療は有力な選択肢の一つです。とくに退院直後は、状態が不安定で受診調整が難しいことがあります。そうした時期こそ、訪問診療・在宅医療の相談窓口で話を聞いておくと、先の見通しが立てやすくなります。
また、介護タクシーの利用が必要かどうか迷う段階では、通院困難の見極め方も参考になります。「まだ早いのでは」と感じる方は少なくありませんが、在宅医療は状態が悪化してからでは選択肢が狭まりがちです。情報だけ聞いてみる、という使い方で構いません。
当院の在宅診療の現場から
当院では、病院の地域連携室や医療ソーシャルワーカーからの紹介を受け、退院前カンファレンスに参加しています。退院当日から訪問診療を開始することもあり、24時間の連絡体制で退院直後の不安定な時期の急変にも夜間・休日対応しています。消化器内視鏡やエコーの経験を生かし、栄養管理、嚥下評価、胃ろう管理、在宅酸素にも対応します。たまプラーザ・あざみ野・美しが丘・新石川など横浜市青葉区を中心に、隣接する都筑区・川崎市宮前区のご相談にも応じています。
受診・相談の目安
次のようなときは、訪問診療や在宅医療の相談を検討しやすいです。
- 週1回以上の通院が、家族の仕事や介護体制の面で難しい
- 退院日が近いのに、在宅療養の準備が整っていない
- 体力低下や移乗困難で、外来受診のたびに大きな負担がある
- 点滴、酸素、胃ろう、褥瘡などの管理が必要になってきた
- 本人は家にいたいが、家族だけでは医療面の対応に不安がある
この段階では「まだ相談するほどでは」と感じる方が多いのですが、在宅医療は状態が悪化してからでは選択肢が狭まります。情報だけ聞いてみる、という使い方で構いません。まずはご予約・お問い合わせから、相談の入口を作っておくと安心です。
よくある質問
Q. かかりつけ医がいるのですが、訪問診療を追加できますか?
はい、可能なことがあります。併診や引き継ぎで進める場合もあり、今の関係を無理に切る必要はありません。
Q. 家族だけで相談してもよいですか?
はい。ご本人が来院できない場合でも、家族のみで相談できることがあります。まずは状況整理の場として使ってください。
Q. 介護タクシーだけで通院を続けるべきですか?
状態や通院頻度によります。移動の問題だけでなく、診療の必要性や退院直後の不安定さも合わせて考えると判断しやすいです。
Q. 施設入居を考えた方がよい場合もありますか?
あります。自宅介護が難しいときは、施設入居や転院も大切な選択肢です。どれがよいかは、本人の状態と家族の体制で変わります。
本記事の監修医師
佐藤 靖郎(さとう やすお)/医師(医学博士)/AIプラスクリニックたまプラーザ 監修医
専門: 消化器外科・消化器内視鏡/一般内科/在宅医療・高齢者医療・がん緩和ケア・心不全・呼吸不全。
略歴: 1988年 福島県立医科大学医学部卒業、医師免許取得。1997年 同大学大学院修了、博士号取得。国立国際医療研究センター、東京新宿メディカルセンター、NTT東日本関東病院、横浜市立大学関連病院、国立病院機構横浜医療センター外科医長・救命救急センター副部長、済生会若草病院(横浜市)外科部長・内視鏡センター・診療部長を歴任。丸亀医療センター・佐々木病院副理事長、日立おおみか病院理事を経て現在に至る。
公的役割: 厚生労働省『地域連携クリティカルパスモデルの開発』班研究員、全国保健所長会 地域連携パス推進班アドバイザー、神奈川県がん診療連携協議会 地域連携クリティカルパス部会 相談役。
AIプラスクリニックたまプラーザのご案内
ご家族の通院が難しくなってきた、退院後の療養先に迷っている、自宅でどこまで医療が受けられるか知りたい——そうしたご相談を、たまプラーザで承っています。ご予約・お問い合わせ からご連絡ください。TEL 045-909-0117(横浜市青葉区)。ご相談の際は、お薬手帳または薬剤情報提供書/医療保険証・各種受給者証/介護保険証・介護保険負担割合証/(お持ちであれば)診療情報提供書(紹介状)や退院時サマリーをご用意いただくとスムーズです。ご本人が来院できない場合のご相談も承ります。
免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個々の患者さんの診断・治療を代替するものではありません。症状や治療方針の判断は、必ず主治医にご相談ください。制度・費用は改定される場合があります。最新の情報は各自治体・保険者の窓口でご確認ください。