大腸がんの原因を整理してリスクを確認する
大腸がんとは|症状・検査・治療・生活までを医師監修で解説する総合ガイド › 大腸がんの検診・予防・リスク|押さえておきたい要点を医師監修で解説 › (本記事)
大腸がんは、日本人のがん罹患数で男女ともに上位に位置する、身近な悪性腫瘍です(国立がん研究センター がん統計 2023年データ)。しかし「何が原因なのか」「自分はリスクが高いのか」と聞かれると、漠然としたまま検診を後回しにしてしまう方も少なくありません。本記事では、大腸がんの原因やリスク因子を公的情報に基づいて整理し、生活習慣の見直しや受診のタイミングを考える参考にしていただくことを目的としています。診断・治療方針については、必ず主治医・専門医にご相談ください。
大腸がんの予防や検診全体については、大腸がんの検診・予防・リスク|押さえておきたい要点を医師監修で解説もあわせてご参照ください。
大腸がんの原因とは?まず押さえたい考え方
「1つの原因」ではなく、複数の要因が重なって起こる
大腸がんは、1つの明確な「原因」によって生じるわけではなく、遺伝的な素因・食生活・身体活動量・既往歴など、複数の要因が積み重なることで発症リスクが高まると考えられています。国立がん研究センター がん情報サービスでも、「確実なリスク要因」「ほぼ確実なリスク要因」「可能性のあるリスク要因」といった科学的根拠のレベル分けで整理されており、すべてが同等のエビデンス(科学的証拠)をもつわけではありません。
結腸がん・直腸がんで原因や関連しやすい要因は少し異なることがある
大腸は結腸(上行・横行・下行・S状結腸)と直腸に分けられ、それぞれ「結腸がん」「直腸がん(直腸癌)」と呼ばれます。直腸がんの原因・リスク因子の大部分は結腸がんと共通していますが、解剖学的な位置(骨盤内という狭い空間にある)や排便との関係から、便通異常が症状として現れやすいなど、臨床的な特徴が異なる点があります。
大腸がんの主なリスク因子
年齢とともにリスクが高まる傾向
大腸がんの罹患率は40代から上昇し始め、60〜70代でピークに達する傾向があります。細胞の遺伝子変異は長年にわたって蓄積されるため、加齢そのものがリスク上昇に関わると考えられています。
食生活の影響:赤肉・加工肉、食物繊維不足、過食・肥満
国立がん研究センターの多目的コホート研究(JPHC研究)など複数の疫学研究から、赤肉(牛・豚・羊など)や加工肉(ハム・ソーセージ・ベーコンなど)の過剰摂取が大腸がんリスクを高める可能性が示されています。また、食物繊維の摂取不足や高カロリー・高脂肪の食生活も関連が指摘されています。
喫煙と飲酒
喫煙は大腸がんを含む多くのがんのリスク因子として確立されています。飲酒についても、アルコール摂取量が多いほど大腸がんリスクが高まることが複数の研究で示されており、「ほぼ確実なリスク要因」として位置づけられています(国立がん研究センター がん情報サービス)。
運動不足と座りっぱなしの生活
身体活動量の低下(いわゆる「座りっぱなし」の生活)は、結腸がんリスク上昇との関連が報告されています。運動は腸の蠕動(ぜんどう:腸が内容物を送り出す動き)を促し、発がん物質が腸管粘膜に接触する時間を短縮する効果があると考えられています。
糖尿病や肥満などの生活習慣病
肥満(とくに内臓脂肪型肥満)や2型糖尿病は、インスリン抵抗性を介して大腸がんリスクを高める可能性が指摘されています。BMI(体格指数)が高いほど大腸がんリスクが上昇する傾向を示した研究もあります。
炎症性腸疾患の既往
潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患(IBD)を長年患っている方は、腸管粘膜の慢性的な炎症により、大腸がんの発症リスクが一般の方と比べて高くなることが知られています。
家族歴・遺伝的要因
一親等(親・兄弟姉妹・子ども)に大腸がん患者がいる場合、リスクがやや高まるとされています。また、「家族性大腸腺腫症(FAP)」や「リンチ症候群(遺伝性非ポリポーシス大腸がん:HNPCC)」などの遺伝性疾患では、大腸がん発症リスクが著しく高くなります。これらは遺伝子検査や専門医への相談が推奨されます。
大腸ポリープの既往
大腸ポリープ(とくに腺腫)は、放置すると一部ががん化する可能性があります。過去に腺腫性ポリープを指摘された方は、定期的な大腸内視鏡検査によるフォローが重要です。
直腸がんの原因・リスクで知っておきたいこと
直腸がんと結腸がんで違いがみられる背景
直腸がん(直腸癌)の原因・リスク因子の大部分は結腸がんと共通していますが、骨盤内という解剖学的な位置から、手術や放射線治療の影響が隣接臓器(膀胱・子宮・前立腺など)に及びやすい点が治療上の特徴として挙げられます。
便通異常や生活習慣との関わり
直腸は肛門に近いため、出血・残便感・便が細くなるといった症状が比較的早期から現れることがあります。これらの症状は痔や過敏性腸症候群と混同されやすいため、注意が必要です。
直腸癌原因としてよく挙げられる要因の整理
直腸がんの原因として挙げられる要因は、食生活(赤肉・加工肉・食物繊維不足)、喫煙、飲酒、肥満、炎症性腸疾患、遺伝的素因など、大腸がん全体と共通するものが中心です。詳しくは直腸がんを含む大腸がん全体の原因と予防のポイントもご覧ください。
大腸がんになりやすい人の特徴
生活習慣からみたリスクが高い人
| リスク因子 | 科学的根拠のレベル(目安) |
|---|---|
| 赤肉・加工肉の過剰摂取 | 確実/ほぼ確実 |
| 飲酒 | ほぼ確実 |
| 喫煙 | 確実(多くのがんと共通) |
| 肥満・運動不足 | ほぼ確実 |
| 食物繊維不足 | 可能性あり |
| 糖尿病 | 可能性あり |
※国立がん研究センター がん情報サービス(2023年時点の情報)を参考に作成。根拠レベルは今後の研究で更新される可能性があります。
家族に大腸がんの人がいる場合
一親等に大腸がんの方がいる場合、通常より早めに(40歳前後から)大腸がん検診や内視鏡検査を始めることを検討してください。リンチ症候群などの遺伝性疾患が疑われる場合は、遺伝専門外来への相談が推奨されます。詳しくは家族歴がある方の大腸がんリスクと対策もご参照ください。
40代以降で気をつけたい理由
大腸がんの発症率は40代から上昇します。日本では40歳から便潜血検査(FOB検査)による大腸がん検診が推奨されており、市区町村の健診で毎年受けることができます。
既往歴がある人が確認したいポイント
腺腫性ポリープや炎症性腸疾患の既往がある方は、主治医と相談しながら定期的な大腸内視鏡検査のスケジュールを決めておくことが重要です。
公的データで見る大腸がんのリスクと検診の重要性
国立がん研究センターの情報から分かること
国立がん研究センター がん統計によると、大腸がんは日本人の罹患数で男性2位・女性1位(2019年データ)に位置しており、決して「まれながん」ではありません。
年齢別・性別の傾向をどう読むか
50代以降で急激に罹患率が上昇する傾向があります。性別では男性のほうが罹患率・死亡率ともにやや高い傾向がありますが、女性も例外ではなく、特に60代以降は注意が必要です。なお、女性特有のリスク要因については女性の大腸がんの原因と注意したいリスク要因で詳しく解説しています。
統計は「個人の予後」ではないことに注意する
統計上の生存率や罹患率はあくまで集団のデータであり、個々の患者さんに直接当てはまるものではありません。ご自身の状態については、必ず主治医・専門医にご相談ください。
大腸がんの原因を減らすためにできる予防
食事で意識したいこと
運動・体重管理で意識したいこと
喫煙・飲酒の見直し
禁煙は大腸がんを含む多くのがんのリスク低減に有効です。飲酒は節酒(1日あたり日本酒換算1合程度を目安に)または禁酒を検討してください。
検診を受けることの意味
大腸がんは早期発見・早期治療により、予後の改善が期待できるがんの一つです。40歳以上の方は年1回の便潜血検査を、リスクが高い方は大腸内視鏡検査を検討することをお勧めします。
こんなときは早めに受診・相談を
血便、便が細い、便通の変化が続くとき
血便(とくに暗赤色の血が混じる)、便が細くなる、便秘と下痢を繰り返す、残便感が続くといった症状が2週間以上続く場合は、早めに医療機関を受診してください。
便潜血陽性を指摘されたとき
健診で便潜血検査が陽性だった場合、必ずその後の精密検査(大腸内視鏡検査)を受けてください。「症状がないから大丈夫」と放置しないことが重要です。
家族歴があり不安なとき
一親等に大腸がんの方がいる場合、あるいはリンチ症候群・家族性大腸腺腫症が疑われる場合は、症状がなくても専門医への相談をお勧めします。
検診の年齢に達していない若年でも気になる症状があるとき
20〜30代であっても、血便・腹痛・体重減少などの症状が続く場合は受診を躊躇わないでください。若年性大腸がんは発症頻度こそ低いものの、存在します。
当院での診療から
大腸がんリスクの整理と受診の流れ
当院(AIプラスクリニックたまプラーザ)は消化器内視鏡センターを備え、鎮静下(うとうとした状態)での大腸内視鏡検査を日常的に実施しています。「便潜血陽性だったが精密検査を受けていない」「家族歴があるが何から始めればいいかわからない」「生活習慣を見直したいが自分のリスクを知りたい」といったご相談を多くいただきます。
検査が必要かどうかの考え方
初診時には問診や身体診察、必要に応じて血液検査などを組み合わせ、大腸内視鏡検査の適応かどうかを医師がご説明します。検査に対する不安や疑問は遠慮なくお聞かせください。
主治医・専門医へつなぐ必要があるケース
内視鏡検査で早期がんを疑う所見が見つかった場合や、進行がんが疑われる場合は、速やかに連携する基幹病院(消化器外科・腫瘍内科)へご紹介します。その後の術後フォローや在宅緩和ケアについても、地域連携クリティカルパスを活用しながら当院が継続的に関わります。
受診・相談の目安
検診で相談するタイミング
生活習慣の見直しを始めるタイミング
すぐ受診を考えたい症状の目安
上記に当てはまる方は、お早めにご予約・お問い合わせからご相談ください。
よくある質問(FAQ)
大腸がんは食べ物だけが原因ですか?
いいえ、食生活はリスク因子の1つですが、年齢・遺伝的素因・既往歴・生活習慣(喫煙・飲酒・運動不足)など、複数の要因が絡み合っています。「食事さえ気をつければ絶対に防げる」とは言えず、定期的な検診も重要です。
若い人でも大腸がんになりますか?
なります。頻度は中高年と比べて低いものの、20〜40代でも発症します。遺伝性疾患(リンチ症候群・家族性大腸腺腫症)がある場合は若年発症のリスクが高まります。血便や便通異常などの症状があれば、年齢に関わらず受診してください。
便秘があると大腸がんの原因になりますか?
現時点では、便秘そのものが大腸がんの直接的な原因になるという確実なエビデンスはありません。ただし、長期的な便秘は腸内環境に影響を与える可能性があり、また大腸がんの症状として便秘が現れることもあります。便秘が続く場合は一度医師に相談することをお勧めします。
直腸がんの原因は大腸がんと違いますか?
基本的なリスク因子(食生活・喫煙・飲酒・肥満・遺伝的素因など)は大腸がん全体と共通しています。直腸がんに特有の原因があるわけではありませんが、肛門に近いため症状(血便・残便感など)が現れやすく、早期発見につながりやすい部位でもあります。
家族に大腸がんがいると必ず遺伝しますか?
家族に大腸がんの方がいても、必ず遺伝するわけではありません。一親等に患者がいるとリスクがやや高まるとされていますが、多くの大腸がんは遺伝性ではなく、生活習慣や加齢が主な背景です。ただし、リンチ症候群や家族性大腸腺腫症などの遺伝性疾患では、遺伝子変異が家族内で引き継がれるため、遺伝専門外来での相談をお勧めします。
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参考文献・出典
本記事の監修医師
佐藤 靖郎(さとう やすお)
医師(医学博士)/AIプラスクリニックたまプラーザ 監修医
専門: 消化器・内科(消化器外科/内視鏡/一般内科)
略歴
1988年 福島県立医科大学医学部卒業、医師免許取得。1997年 同大学大学院修了、博士号取得。国立国際医療研究センター、東京新宿メディカルセンター、NTT東日本関東病院、横浜市立大学関連病院、国立病院機構横浜医療センター外科医長・救命救急センター副部長、済生会若草病院(横浜市)外科部長・内視鏡センター・診療部長を歴任。丸亀医療センター・佐々木病院副理事長、日立おおみか病院理事を経て現在に至る。
公的役割
厚生労働省「地域連携クリティカルパスモデルの開発」班研究員、全国保健所長会 地域連携パス推進班アドバイザー、神奈川県がん診療連携協議会 地域連携クリティカルパス部会 相談役。
AIプラスクリニックたまプラーザのご案内
たまプラーザで大腸がんのリスクや検診について気になる方は、お気軽にご相談ください。便潜血陽性の精密検査、家族歴に関するご相談、大腸内視鏡検査のご予約なども承っております。
TEL: 045-909-0117(横浜市青葉区・たまプラーザ)
初診の際は、保険証・お薬手帳・(お持ちであれば)健診結果や紹介状をご用意いただくとスムーズです。ご予約はWebまたはお電話で承ります。
免責事項
本記事は一般的な医学情報の提供を目的としており、個別の診断・治療方針を示すものではありません。症状や治療についての判断は、必ず主治医・専門医にご相談ください。記載内容は公開時点の公的情報・診療ガイドラインに基づいており、最新情報は国立がん研究センター「がん情報サービス」等でご確認ください。