大腸がんの原因と予防のために知りたいポイント
大腸がんとは|症状・検査・治療・生活までを医師監修で解説する総合ガイド › 大腸がんの検診・予防・リスク|押さえておきたい要点を医師監修で解説 › (本記事)
大腸がんは日本で最も罹患数の多いがん種のひとつです。「なぜ大腸がんになるのか」と気になる方は多いですが、その原因は1つではなく、年齢・生活習慣・体質・既往歴などが複合的に絡み合っています。本記事では、大腸がんの原因として考えられる主なリスク要因を整理しつつ、日常生活でできる予防の工夫と検診の活用法を、公的情報をもとにわかりやすく解説します。診断や治療の判断は必ず主治医・専門医にご相談ください。
大腸がんの原因を知る前に:結論から押さえたいこと
大腸がんは「1つの原因」で起こるわけではない
大腸がんは、大腸の粘膜細胞に遺伝子変異が蓄積することで発生します。この変異は一夜にして起こるものではなく、長い年月をかけて少しずつ積み重なります。「○○だけが原因」という単純な構図ではなく、複数のリスク要因が重なることで発症リスクが高まる病気です。
年齢・体質・生活習慣・既往歴が重なってリスクが高まる
大腸がんのリスクに関わる要素は大きく分けて「変えられないもの(年齢・遺伝など)」と「変えられるもの(食事・運動・喫煙など)」に分類できます。前者があるからといって必ず発症するわけではなく、後者を見直すことでリスクを低下させる可能性があります。
大腸がんの主な原因・リスク要因
加齢と大腸がんの関係
国立がん研究センターのデータによると、大腸がんの罹患率は50歳代以降に急増し、60〜70歳代にピークを迎える傾向があります(国立がん研究センター がん情報サービス「大腸がん」2024年)。加齢とともに細胞の修復機能が低下し、遺伝子変異が蓄積しやすくなることが主な理由と考えられています。
食生活の影響:赤身肉・加工肉、食物繊維不足、飲酒
世界保健機関(WHO)傘下のIARCは、加工肉(ハム・ソーセージなど)を大腸がんにおける「グループ1(ヒトへの発がん性あり)」、赤身肉を「グループ2A(ほぼ確実)」に分類しています。また、食物繊維の摂取不足も大腸がんリスクと関連するとされ、飲酒は摂取量に応じてリスクが上昇することが複数の研究で示されています。日本人は欧米と比べて食物繊維摂取量が少ない傾向があることも、リスク要因の一つとして指摘されています。
運動不足・肥満・喫煙との関連
身体活動量の低下や肥満(BMI 25以上)は、大腸がんリスクを高める要因として知られています。肥満はインスリン抵抗性(インスリンが効きにくい状態)や慢性炎症を促進し、大腸粘膜の異常な細胞増殖につながる可能性があります。喫煙は大腸ポリープ(良性の隆起性病変)の発生リスクを高め、長期的な大腸がんリスクとも関連が示されています。
大腸ポリープや炎症性腸疾患などの既往
腺腫性ポリープ(がんに変化しうるタイプのポリープ)を切除した経験がある方は、再発・がん化のリスクがあるため定期的な内視鏡検査が推奨されます。また、潰瘍性大腸炎やクローン病など炎症性腸疾患(IBD)では、慢性的な炎症が遺伝子変異を引き起こしやすい環境をつくり、長期的に大腸がんリスクが上昇するとされています。
家族歴・遺伝が関係するケース
大腸がん全体の約5〜10%は、特定の遺伝性疾患が背景にあるとされています。代表的なものとして、Lynch症候群(リンチ症候群)や家族性大腸腺腫症(FAP)が挙げられます。また、血縁者に大腸がん患者がいる場合(家族歴)は、そうでない方と比べてリスクが高まることが知られています。
直腸がんの原因は大腸がんと何が違うのか
直腸がんは大腸がんの一種(大腸の末端部分に発生するもの)であり、リスク要因は基本的に大腸がん全般と共通しています。ただし、直腸は肛門に近いため、症状(血便・排便困難感など)が比較的早期に現れやすい特徴があります。直腸がんの原因について詳しく知りたい方は、大腸がんの原因は?なりやすい人の特徴も解説もご覧ください。
公的データで見る大腸がんの傾向
日本で大腸がんが多いとされる背景
日本では食の欧米化(動物性脂肪・加工食品の増加)が進んだ1970年代以降、大腸がんの罹患率が上昇傾向をたどってきました。国立がん研究センターの最新統計では、大腸がんは男女ともにがん罹患数の上位に位置しています。
がん情報サービスやがん統計で確認できること
国立がん研究センター がん情報サービスでは、大腸がんの罹患率・生存率・治療成績などの統計データが公開されています。またがん統計(ganjoho.jp)では、年齢別・部位別のデータを確認することができます。
統計は「個人の予後」ではなく傾向として見る
公表されている生存率や罹患率はあくまで集団の統計値です。個々の患者さんの経過は、がんの進行度・体の状態・治療内容などによって異なります。統計は大まかな傾向を把握するための参考情報としてご活用ください。
大腸がんを予防するために今日からできること
食事で意識したいポイント
| 取り入れたいもの | 控えたいもの |
|---|---|
| 野菜・果物・豆類(食物繊維) | 加工肉(ハム・ソーセージなど) |
| 全粒穀物(玄米・全粒粉パンなど) | 赤身肉の過剰摂取 |
| 乳製品(カルシウム) | 高脂肪・高塩分食品 |
| 魚類(不飽和脂肪酸) | アルコールの過剰摂取 |
食物繊維は腸内通過時間を短縮し、発がん物質が腸粘膜に触れる時間を減らす効果が期待されています。1日の野菜摂取量350g以上を目標にすることが、厚生労働省の指針でも推奨されています。
体を動かす習慣をつくる
週150分以上の中等度の有酸素運動(早歩き・水泳・自転車など)が、大腸がんリスクの低下と関連するとする研究があります。まずは毎日30分のウォーキングから始めることも効果的です。
禁煙と節酒の考え方
禁煙は大腸がんに限らず多くのがん種のリスク低下につながります。飲酒は「1日に純アルコール20g程度まで」(日本酒約1合、ビール中瓶1本程度)を目安に節制することが推奨されます(厚生労働省「健康日本21」より)。
体重管理と便通異常への注意
適正体重(BMI 18.5〜24.9)の維持を心がけましょう。また、血便・黒色便・便が細くなった・腹痛が続くなどの便通異常は、大腸がんの初期サインである可能性があります。「様子を見ようと思っているうちに進行した」という事例は少なくないため、こうした症状は早めに医療機関を受診することをお勧めします。女性特有のリスク要因については女性の大腸がんの原因と注意したいリスク要因もあわせてご参照ください。
大腸がん検診で早く見つけることの重要性
検診の目的は「原因を探すこと」ではなく早期発見
大腸がん検診は、原因を突き止めるためのものではなく、自覚症状が出る前にがんや前がん病変(ポリープなど)を早期発見することを目的としています。早期発見・早期治療を行うことで、治癒が期待できる可能性が高まります。
便潜血検査でわかること・わからないこと
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 検査方法 | 便を2日分採取して血液の混入を確認 |
| わかること | 便に微量の血液が混じっているか否か |
| 陽性の意味 | 大腸内に出血源(ポリープ・炎症・がん等)がある可能性 |
| 限界 | 早期がんや出血の少ないがんは陰性になる場合がある |
検診で異常があったときに次に行う検査
便潜血検査が陽性(要精検)となった場合は、大腸内視鏡検査(大腸カメラ)が推奨されます。内視鏡検査では大腸の内壁を直接観察し、ポリープの発見・切除や組織の採取(生検)が可能です。大腸がんの全体的な検査・治療の流れについては、大腸がんの全体像はこちらをご覧ください。
受診・相談の目安
こんな症状があれば早めに医療機関へ
以下のような症状が続く場合は、早めに医療機関を受診することをお勧めします。
- ✓血便・粘血便(便に血や粘液が混じる)
- ✓便が細くなった、形が変わった
- ✓排便後も残便感がある
- ✓理由のない体重減少、倦怠感が続く
- ✓腹部の張りや慢性的な腹痛
家族歴がある人やポリープ指摘歴がある人の相談目安
一親等(親・兄弟姉妹・子)に大腸がんの罹患歴がある方や、過去に腺腫性ポリープを指摘・切除された経験がある方は、定期的な内視鏡検査のスケジュールを主治医と相談することをお勧めします。一般的な検診間隔より短い頻度でのフォローが推奨される場合があります。
検診結果の見方で迷ったときの受診先
「便潜血陽性と言われたが、どこに行けばよいか」「ポリープがあると言われたが精密検査は必要か」など、検診結果の解釈に迷った際は、消化器内科・消化器外科に相談することが適切です。ご予約・お問い合わせからもお気軽にご連絡ください。
当院での診療から
大腸がんリスクが気になる方への相談内容
当院(AIプラスクリニックたまプラーザ)では、消化器内視鏡センターを備えており、鎮静下(眠った状態)での大腸内視鏡検査を日常的に実施しています。「便潜血が陽性だった」「ポリープを指摘されたが精密検査を受けていない」「家族に大腸がんがいる」といった方からのご相談を多くお受けしています。
検診結果や症状に応じた受診の流れ
初診時には症状・既往歴・家族歴などを丁寧にお聞きし、内視鏡検査が必要かどうかを含めた受診方針をご案内します。検査当日は鎮静剤を用いるため、痛みや不快感を軽減した状態での検査が可能です。
必要に応じて連携する専門医療機関
内視鏡検査の結果、早期がんを疑う所見が認められた場合は、速やかに基幹病院(がん診療連携拠点病院)へご紹介します。手術・化学療法後は、地域連携クリティカルパスの仕組みを通じて当院が術後フォローを継続して担当します。また、在宅療養支援診療所として在宅緩和ケア・看取りにも対応しており、がん治療の各フェーズで継続した支援を行っています。
よくある質問(FAQ)
大腸がんは生活習慣を改善すれば防げますか?
生活習慣の改善はリスクを低下させる効果が期待できますが、すべての大腸がんを確実に予防できるものではありません。加齢や遺伝など変えられない要因も存在するためです。「予防できる可能性を高める」という観点で、食事・運動・禁煙・節酒などに取り組むことが重要です。
家族に大腸がんがあると必ず発症しますか?
家族歴があるとリスクは高まりますが、必ず発症するわけではありません。特にLynch症候群などの遺伝性大腸がんでは、遺伝子検査による確認や専門機関でのカウンセリングが選択肢になります。気になる場合は主治医にご相談ください。
便潜血検査が陰性なら大腸がんの心配はありませんか?
陰性でも大腸がんが完全に否定されるわけではありません。便潜血検査は出血量が少ない早期のがんや、出血していない時期のがんは検出できないことがあります。リスクの高い方(家族歴・ポリープ歴など)は、陰性でも内視鏡検査を検討することを医師に相談することをお勧めします。
若い人でも大腸がんになりますか?
大腸がんは高齢者に多い疾患ですが、20〜30歳代での発症例もあります。若年発症の大腸がんでは遺伝的要因が背景にある場合もあります。年齢に関わらず、気になる症状がある場合や家族歴がある場合は医療機関にご相談ください。大腸がんの原因を整理してリスクを確認するも参考にしてください。
関連記事
- ✓大腸がんの検診・予防・リスク|押さえておきたい要点を医師監修で解説(親サブハブ)
- ✓大腸がんとは|症状・検査・治療・生活までを医師監修で解説する総合ガイド(がん種ピラー)
- ✓大腸がんの原因は?なりやすい人の特徴も解説
- ✓女性の大腸がんの原因と注意したいリスク要因
- ✓大腸がんの原因を整理してリスクを確認する
参考文献・出典
- ✓国立がん研究センター がん情報サービス「大腸がん」 ※正しいURL: https://ganjoho.jp/public/index.html
- ✓国立がん研究センター がん統計
- ✓厚生労働省 がん対策
- ✓日本癌治療学会 がん診療ガイドライン
- ✓Minds ガイドラインライブラリ(日本医療機能評価機構)
本記事の監修医師
佐藤 靖郎(さとう やすお)
医師(医学博士)/AIプラスクリニックたまプラーザ 監修医
専門:消化器・内科(消化器外科/内視鏡/一般内科)
略歴:
1988年 福島県立医科大学医学部卒業、医師免許取得。1997年 同大学大学院修了、博士号取得。国立国際医療研究センター、東京新宿メディカルセンター、NTT東日本関東病院、横浜市立大学関連病院、国立病院機構横浜医療センター外科医長・救命救急センター副部長、済生会若草病院(横浜市)外科部長・内視鏡センター・診療部長を歴任。丸亀医療センター・佐々木病院副理事長、日立おおみか病院理事を経て現在に至る。
公的役割:
厚生労働省「地域連携クリティカルパスモデルの開発」班研究員、全国保健所長会 地域連携パス推進班アドバイザー、神奈川県がん診療連携協議会 地域連携クリティカルパス部会 相談役。
AIプラスクリニックたまプラーザのご案内
たまプラーザで内科・消化器の気になる症状がある方へ。便潜血陽性・ポリープ指摘・家族歴など、大腸がんに関する受診の目安や検査についてお気軽にご相談ください。
TEL:045-909-0117(横浜市青葉区・たまプラーザ)
初診の際は、保険証・お薬手帳・(お持ちであれば)健診結果や紹介状をご用意いただくとスムーズです。ご予約はWebまたはお電話で承ります。
免責事項
本記事は一般的な医学情報の提供を目的としており、個別の診断・治療方針を示すものではありません。症状や治療についての判断は、必ず主治医・専門医にご相談ください。記載内容は公開時点の公的情報・診療ガイドラインに基づいており、最新情報は国立がん研究センター「がん情報サービス」等でご確認ください。