介護と病院付き添いの負担が重いとき、在宅医療を考える
介護と病院付き添いが重なり、仕事や家事との両立が苦しくなってきたら、通院の回数や方法を見直す時期かもしれません。「まだ早いのでは」と感じる段階でも、在宅医療の情報を知っておくことは選択肢を広げる助けになります。
通院が難しくなったときの整理はこちら から全体像も確認できます。
まず押さえたい基本
介護の中でも負担が大きくなりやすいのが、定期受診や検査のための病院付き添いです。移動、待ち時間、診察の同席、会計や薬の受け取りまで含めると、1回の通院でも半日以上かかることがあります。
とくに高齢の方は、通院そのものが体力を消耗し、転倒やせん妄(混乱しやすくなる状態)のきっかけになることもあります。こうしたときに役立つのが、医師が自宅や施設を訪ねる在宅医療です。厚生労働省も在宅医療の推進を掲げており、通院が難しい人の療養を支える仕組みとして位置づけています。
参考: 厚生労働省 在宅医療の推進、介護保険制度
こう調べ始める方が多い(よくあるきっかけ)
次のような場面で、「このまま通院を続けるのは難しいかもしれない」と気づく方が多いです。
- 受診のたびに家族が仕事を休み、付き添いが回らない
- 付き添いがないと転倒や受診漏れが心配
- 退院後の通院日程が急に増えた
- 待合室で長く座っているだけでも本人が疲れてしまう
- 家族が遠方に住んでいて、毎回の付き添いが難しい
この段階では、まだ「在宅医療は早い」と思われがちです。ただ、状態が悪化してからでは選べる支援が限られるため、早めに情報収集しておく価値があります。
見分け方・判断の目安
通院の負担が「一時的な大変さ」か「見直しが必要な段階」かは、次の観点で考えると整理しやすくなります。
| 観点 | 目安 |
|---|---|
| 通院頻度 | 月1回でも付き添いが毎回つらい、臨時受診が増えている |
| 移動の負担 | 車いすや介護タクシーが必要、乗降だけで疲れてしまう |
| 本人の状態 | 痛み、息切れ、認知機能低下、食事量低下で外来受診が負担 |
| 家族の負担 | 仕事調整が続く、夜間対応で睡眠不足が強い |
「寝たきりにならないために何を優先するか」を考える場面でも、通院だけにこだわらず、生活と医療の両立方法を見直すことがあります。病状によっては、寝たきりの状態を早めに評価する視点 が参考になります。
混同しやすいものとの違い
在宅医療は「もう外来に行けない人だけの医療」ではありません。ここを誤解すると、導入が遅れやすくなります。
| 項目 | 在宅医療 | 介護タクシー | 入院 |
|---|---|---|---|
| 主な役割 | 医師が自宅等で診療する | 移動手段を確保する | 集中的に治療・観察する |
| 向いている場面 | 通院困難、退院後の療養 | 通院自体は必要だが移動が大変 | 病状が不安定、検査や治療が必要 |
| 限界 | 検査や急変対応には制約がある | 医療行為はできない | 家での生活継続はできない |
介護タクシーで通院を続ける選択が合う方もいます。いっぽうで、受診のたびに家族の負担が大きいなら、在宅医療の相談と並行して検討すると判断しやすくなります。
家族が見落としがちなポイント
家族が見落としやすいのは、「本人が我慢していること」より「通院のたびに療養全体が崩れていないか」です。たとえば、通院後に強く疲れて食事量が落ちる、受診の翌日から寝て過ごす時間が増える、服薬管理が不安定になる場合は注意が必要です。
また、家族が付き添えないことで受診そのものが先延ばしになり、結果として症状が悪化することもあります。国民生活基礎調査でも、高齢期には通院や介護が日常生活に与える影響が大きいことがうかがえます。
参考: 国民生活基礎調査(厚生労働省)
在宅医療とのつながり
在宅医療は、単に「家で診てもらう」だけではありません。退院後の療養設計、薬の整理、栄養や嚥下(飲み込み)の確認、急変時の連絡体制づくりまで含めて支えます。
とくに退院支援では、病院の地域連携室や医療ソーシャルワーカーが関わり、退院前カンファレンスに在宅医が入ると引き継ぎが円滑になります。退院日が急に決まることも多く、数日で療養先を決める現実があります。病院から「自宅か施設か」の二択で説明されがちでも、在宅医療を組み合わせると自宅療養の難易度は下がることがあります。
| 進め方 | 家族が確認したいこと |
|---|---|
| 退院前に相談 | 退院後の薬、栄養、酸素、褥瘡(床ずれ)の有無 |
| 在宅医へ引き継ぎ | いつから訪問開始できるか、夜間連絡の方法 |
| 介護保険の調整 | ケアマネジャー、訪問看護との役割分担 |
在宅医療の費用や依頼の流れは、在宅医療の基本と相談の進め方 で全体像を確認できます。
当院の在宅診療の現場から
当院では、病院の地域連携室や医療ソーシャルワーカーからの紹介で、退院前カンファレンスに参加することがあります。退院当日から訪問診療を開始したケースもあり、退院直後の不安定な時期は、24時間の連絡体制で夜間・休日の急変に備えています。消化器内視鏡やエコーの経験を生かし、栄養管理、嚥下評価、胃ろう管理、在宅酸素にも対応しています。たまプラーザ・あざみ野・美しが丘・新石川など横浜市青葉区を中心に、隣接する都筑区・川崎市宮前区のご相談にも応じています。
受診・相談の目安
次のような場合は、在宅医療の相談を考えてよいタイミングです。
- 週に1回以上の通院が負担になっている
- 退院が近いのに、療養先や通院方法が決まっていない
- 家族の付き添いが限界に近い
- 本人が通院後に強く疲れてしまう
- 介護保険や訪問看護の使い方もまとめて知りたい
この段階では「まだ相談するほどでは」と感じる方が多いのですが、在宅医療は状態が悪化してからでは選択肢が狭まります。情報だけ聞いてみる、という使い方で構いません。
ご相談は、通院が難しくなったときの相談窓口 や ご予約・お問い合わせ から承っています。
よくある質問
Q. まだ歩けるのですが、在宅医療を相談してもよいですか?
はい、相談して構いません。歩けるかどうかだけでなく、通院に付き添いが必要か、受診後に疲れ切ってしまうかも大切な判断材料です。
Q. かかりつけ医をやめる必要はありますか?
必要はありません。併診や引き継ぎができる場合があります。現在の主治医と関係を保ちながら在宅医療を検討できます。
Q. 本人が来院できない場合、家族だけで相談できますか?
はい、家族のみの相談も可能です。状況整理のために、診療情報提供書や退院時サマリーがあると話が進みやすくなります。
Q. 施設入居を考えている場合でも相談できますか?
はい。自宅療養だけを前提にせず、施設入居や転院も含めて比較しながら考えることが大切です。
Q. 退院が急に決まった場合でも間に合いますか?
状況によりますが、早めに連絡いただくほど調整しやすくなります。退院前カンファレンスに在宅医が入ると、薬や医療処置の引き継ぎがしやすくなります。
本記事の監修医師
佐藤 靖郎(さとう やすお)/医師(医学博士)/AIプラスクリニックたまプラーザ 監修医/専門: 消化器外科・消化器内視鏡/一般内科/在宅医療・高齢者医療・がん緩和ケア・心不全・呼吸不全。略歴: 1988年 福島県立医科大学医学部卒業、医師免許取得。1997年 同大学大学院修了、博士号取得。国立国際医療研究センター、東京新宿メディカルセンター、NTT東日本関東病院、横浜市立大学関連病院、国立病院機構横浜医療センター外科医長・救命救急センター副部長、済生会若草病院(横浜市)外科部長・内視鏡センター・診療部長を歴任。丸亀医療センター・佐々木病院副理事長、日立おおみか病院理事を経て現在に至る。 公的役割: 厚生労働省『地域連携クリティカルパスモデルの開発』班研究員、全国保健所長会 地域連携パス推進班アドバイザー、神奈川県がん診療連携協議会 地域連携クリティカルパス部会 相談役。
AIプラスクリニックたまプラーザのご案内
ご家族の通院が難しくなってきた、退院後の療養先に迷っている、自宅でどこまで医療が受けられるか知りたい——そうしたご相談を、たまプラーザで承っています。 ご予約・お問い合わせ はこちらです。TEL 045-909-0117(横浜市青葉区)。ご相談の際は、お薬手帳または薬剤情報提供書/医療保険証・各種受給者証/介護保険証・介護保険負担割合証/(お持ちであれば)診療情報提供書(紹介状)や退院時サマリーをご用意いただくとスムーズです。ご本人が来院できない場合のご相談も承ります。
免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個々の患者さんの診断・治療を代替するものではありません。症状や治療方針の判断は、必ず主治医にご相談ください。制度・費用は改定される場合があります。最新の情報は各自治体・保険者の窓口でご確認ください。