大腸憩室出血とは?原因・症状・対処を内科医が解説
大腸憩室出血は、大腸の壁にできた小さなくぼみ(憩室)から出血が起こる疾患で、突然の血便として現れることが多く、痛みが少ないまま大量出血に至ることがある点が特徴です。多くのケースでは自然に止血しますが、出血量によっては輸血や内視鏡治療が必要になるため、血便を認めたときは早めに医療機関を受診することが大切です。
大腸憩室出血とは
大腸憩室とは何か
大腸憩室とは、大腸の粘膜がその外側へ袋状に突出した状態を指します。腸管内の圧力が繰り返しかかることなどで生じ、加齢とともに増加することが知られています。日本人では右側(上行結腸・盲腸側)に多い傾向がありますが、食の欧米化に伴って左側(S状結腸・下行結腸側)の発症も増えています。憩室自体は無症状のことが多く、健診や内視鏡検査で偶然発見されるケースも少なくありません。
なお、憩室全般について詳しく知りたい方は 憩室とは?原因・症状・対処を内科医が解説【たまプラーザ】 もあわせてご参照ください。
大腸憩室出血と憩室炎の違い
憩室に関連する疾患には、大きく憩室出血と憩室炎の2つがあります。
| 憩室出血 | 憩室炎 | |
|---|---|---|
| 主な症状 | 血便(痛みは少ないことが多い) | 腹痛・発熱・下痢 |
| 原因 | 憩室内の細い血管が破綻 | 憩室内での細菌繁殖・炎症 |
| 緊急度 | 大量出血になることがある | 穿孔・腹膜炎のリスク |
憩室炎についての詳細は 大腸憩室炎とは?原因・症状・対処を内科医が解説【たまプラーザ】 をご覧ください。
大腸憩室出血が起こる原因
憩室で出血しやすくなる仕組み
憩室の壁は正常な大腸壁より薄く、底部には粘膜下層の細い血管(直血管)が露出しやすい状態にあります。この血管が何らかの刺激で損傷・破綻すると、消化管内へ出血が起こります。特に直血管が憩室の開口部や底部で引き伸ばされている部位で破綻しやすいとされています。
起こりやすい背景・関連する要因
- 加齢:50歳以上から憩室の有病率が高まり、出血リスクも上昇します
- 低食物繊維食・便秘:腸管内圧の上昇が憩室形成を促進します
- 動脈硬化:血管が脆くなることで出血リスクが高まるとされています
- 肥満・運動不足:腸管への負担が増加します
薬の影響で注意したいもの
以下の薬剤は憩室出血のリスクを高める可能性があります。
- 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs):アスピリン・ロキソプロフェンなど。腸管粘膜への直接刺激や血小板機能への影響があります
- 抗凝固薬・抗血小板薬:ワルファリン、直接経口抗凝固薬(DOAC)など、止血機能に影響する薬剤は出血が長引くリスクがあります
- ステロイド薬:粘膜修復を遅らせることがあります
これらの薬を服用中の方は、自己判断で中止せず、担当医にご相談ください。
大腸憩室出血でみられる症状
代表的な症状
- 血便:赤色〜暗赤色の血が便に混じる、または血液のみが出る
- 下血:鮮血が肛門から排出される
- めまい・立ちくらみ:出血量が多い場合
痛みが少ない、またはないことが多い理由
憩室出血は炎症を伴わないことが多く、粘膜の知覚が乏しい部位で血管が破綻するため、腹痛をほとんど感じないまま血便が出るという点が特徴です。「突然、血だけが出た」という訴えが典型的です。
出血量が多いときに注意したいサイン
- 血便が続く・量が増える
- 顔色が青白くなる、冷や汗が出る
- 動悸・息切れ
- 血圧低下・意識が遠のく感覚
このような症状があるときは速やかに医療機関を受診してください。
大腸憩室出血を疑ったときの対処
まず自分でできること
- 排便の状態(血の色・量・混じり方)を記録・観察する
- 水分を摂り安静にする
- NSAIDsなどの服用は担当医に確認するまで慎重に
受診を急ぐべき症状
- 血便が2回以上続く
- 便が血液だけになる
- 腹痛・発熱を伴う
- めまい・立ちくらみがある
救急受診の目安
大量の血便が出て動悸・冷や汗・意識の変容を伴う場合は、救急車(119番)を呼ぶか、救急対応できる医療機関へ速やかに向かってください。
医療機関ではどのように診断するか
問診で確認する内容
血便の色・量・頻度、服薬歴(特にNSAIDs・抗凝固薬)、既往歴(憩室の指摘・痔・大腸がんなど)を確認します。
血液検査・便の確認
貧血の程度(ヘモグロビン値)、凝固機能、腎機能などを確認します。便潜血検査よりも目視・問診で確認することが多いです。
大腸内視鏡検査やCT検査の役割
出血源の特定には大腸内視鏡検査が有用で、出血部位の確認と同時に内視鏡治療を行えることがあります。出血が多く内視鏡の前処置が困難な場合は、CT血管造影(CTA)で出血部位を推定することもあります。
大腸憩室出血の治療
保存的治療で経過を見る場合
大腸憩室出血の多くは自然止血します。安静・輸液管理・絶食または食事制限で経過観察します。
内視鏡治療が行われる場合
出血が持続・再燃する場合は内視鏡下で以下の処置が行われます。
- クリップ止血法:出血血管をクリップで把持・閉鎖
- 高周波凝固法:熱で止血
- 局所注射法:止血剤・血管収縮薬の粘膜下注射
輸血や入院が必要になることがあるケース
貧血が高度な場合は輸血が必要になります。また内視鏡や保存的治療で止血できない場合は、血管造影(IVR)による動脈塞栓術や外科的手術が検討されることもあります。
再発しやすいのか
再発リスクについて
大腸憩室出血は約20〜40%の方で再出血が起こるとされています(国内外のガイドラインより)。初回止血後も経過観察が重要です。
再発予防のために意識したいこと
- 定期的な消化器内科での経過観察
- 担当医の指示のもとで抗凝固薬・NSAIDsを適切に管理
- 食生活・排便習慣の改善
日常生活で気をつけたいこと
食事や水分摂取で意識すること
食物繊維を含む野菜・果物・豆類を積極的に摂り、1日1.5〜2L程度の水分を目安に摂取することで便を柔らかく保つことが大切です。
便秘を防ぐための生活習慣
- 毎日一定の時間にトイレに行く習慣をつける
- 適度な運動(ウォーキング等)で腸管の動きを促す
- トイレでのいきみを控える
受診中・治療後に確認したい薬の管理
服用中のNSAIDsや抗凝固薬・抗血小板薬は、自己判断で中止しないことが重要です。変更や調整が必要な場合は必ず担当医に相談してください。
大腸憩室出血と紛らわしい病気
痔出血との違い
痔出血は便器が真っ赤に染まる鮮血で排便後に確認されることが多く、肛門の痛みを伴うことがあります。一方、憩室出血は暗赤色〜赤色で腹痛が少ないことが多いですが、色だけでは判断が難しいため、医師による確認が必要です。
虚血性腸炎との違い
虚血性腸炎は腸管の血流低下による炎症で、左下腹部痛に続く血便が典型的です。憩室出血は痛みが少ないことが多い点で異なりますが、症状が重複することもあり、内視鏡検査で鑑別します。
大腸がんなど他疾患との鑑別が必要な理由
血便は大腸がん・ポリープ・炎症性腸疾患など多くの疾患でも起こります。自己判断は危険なため、血便が続く場合は必ず消化器内科を受診し、原因を確認することが重要です。
受診の目安と、どの科を受診すべきか
消化器内科を受診する目安
- 血便・下血が1回でも確認された
- 以前に憩室を指摘されている
- 便が赤みがかっている・黒色便がある
- 抗凝固薬・NSAIDsを服用中で血便が出た
すぐに救急受診が必要なケース
- 大量の血便が出て止まらない
- 動悸・めまい・冷や汗・意識の変容を伴う
- 顔色が著しく悪くなる
症状が軽くても、「血便が出た」と感じたときはためらわず受診することをお勧めします。ご予約・お問い合わせ からお気軽にご相談ください。
また、腸の病気全般については親ピラー記事 腸閉塞とは?原因・症状・治し方まで内科医が解説【たまプラーザ】 もご参照ください。
まとめ
大腸憩室出血のポイント整理
- 大腸の壁にできた憩室の血管が破綻することで起こる
- 突然の血便・下血が主な症状で、腹痛が少ないことが多い
- 自然止血することが多いが、大量出血・再出血に注意が必要
- 内視鏡検査で出血源を確認し、必要に応じて止血処置を行う
- NSAIDs・抗凝固薬との関連に注意
症状があれば早めに医師へ相談を
血便は「痔だろう」と自己判断されがちですが、憩室出血をはじめ複数の疾患が考えられます。症状が軽くても、気になる場合は消化器内科を早めに受診し、正確な原因を確認することが大切です。
よくある質問(FAQ)
大腸憩室出血は自然に止まることがありますか
多くの場合(約70〜80%)は安静・保存的管理で自然に止血します。ただし再出血の可能性があるため、止血後も医師の指示のもとで経過観察を続けることが大切です。
大腸憩室出血は痛みがありますか
憩室出血は炎症を伴わないことが多く、腹痛がほとんどない状態で血便が出ることが典型的です。ただし、個人差があり、軽い腹部不快感を感じる方もいます。
再び出血することはありますか
約20〜40%の方で再出血が報告されています。再発予防のために、服薬管理・食生活の改善・定期的な受診が推奨されます。
どのくらいの血便なら受診すべきですか
血便が1回でも確認された場合は受診を検討してください。特に血液だけが出る・量が多い・繰り返す場合は早急な対応が必要です。動悸・めまいを伴う場合は救急受診を検討してください。
憩室出血があると食事制限は必要ですか
急性期(出血中・直後)は医師の指示のもとで絶食または流動食になることがあります。回復後は低食物繊維食を避け、野菜・果物・水分をしっかり摂ることが再発予防に役立ちます。具体的な食事内容は担当医にご確認ください。
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本記事の監修医師
佐藤 靖郎(さとう やすお)
医師(医学博士)/AIプラスクリニックたまプラーザ 監修医
専門:消化器・内科(消化器外科/内視鏡/一般内科)
略歴
1988年 福島県立医科大学医学部卒業、医師免許取得。1997年 同大学大学院修了、博士号取得。国立国際医療研究センター、東京新宿メディカルセンター、NTT東日本関東病院、横浜市立大学関連病院、国立病院機構横浜医療センター外科医長・救命救急センター副部長、済生会若草病院(横浜市)外科部長・内視鏡センター・診療部長を歴任。丸亀医療センター・佐々木病院副理事長、日立おおみか病院理事を経て現在に至る。
公的役割
厚生労働省「地域連携クリティカルパスモデルの開発」班研究員/全国保健所長会 地域連携パス推進班アドバイザー/神奈川県がん診療連携協議会 地域連携クリティカルパス部会 相談役
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