大腸とは?原因・症状・対処を内科医が解説
大腸は、消化・吸収の最終段階を担う重要な臓器です。便秘や下痢、腹痛、血便など日常的な症状の多くが大腸と関連しており、なかには潰瘍性大腸炎や大腸がんなど早期対応が大切な疾患が背景にある場合もあります。この記事では、大腸の基本的な構造・はたらきから、よくみられる疾患・症状・検査・対処法まで、消化器外科専門医の監修のもとわかりやすく解説します。気になる症状がある場合は、自己判断せずまず医師にご相談ください。
大腸とは?まず知っておきたい役割と位置
大腸の主なはたらき
大腸の主なはたらきは、小腸から送られてきた消化物から水分・電解質を吸収し、便を形成・蓄積・排出することです。また、腸内細菌が有機酸やビタミンを産生する場としても機能しています。
小腸との違い
小腸が栄養素を消化・吸収する器官であるのに対し、大腸は主に水分の吸収と便の形成を担います。長さは小腸(約6〜7m)よりも短く約1.5mですが、直径は太く(約5〜8cm)、ひだが少ない点が特徴です。
大腸の構造と部位(盲腸・結腸・直腸)
大腸は大きく盲腸・結腸・直腸・肛門管から構成されます。結腸はさらに上行結腸・横行結腸・下行結腸・S状結腸に分かれ、腹腔内をぐるりと囲むように位置しています。直腸は骨盤内に位置し、便を一時的に貯留して排便を調節します。
大腸の不調で起こりやすい原因
便秘や下痢
食事内容・水分摂取量・運動不足・ストレスなど、生活習慣の乱れが大腸の蠕動運動(ぜんどううんどう)に影響し、便秘や下痢を引き起こします。
腸内環境の乱れ
腸内細菌のバランス(腸内フローラ)が崩れると、ガスの産生が増えたり、便の性状が変化したりすることがあります。抗菌薬の使用や食生活の偏りが一因となる場合もあります。
感染性腸炎
食中毒菌(サルモネラ・カンピロバクターなど)やウイルス(ノロウイルスなど)の感染により、急性の腹痛・下痢・発熱が現れることがあります。
炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・クローン病)
潰瘍性大腸炎は大腸の粘膜に炎症・潰瘍が生じる疾患で、血便・下痢・腹痛を繰り返します。クローン病は消化管全体に炎症が起こりうる疾患です。いずれも国が指定する難病であり、専門医による継続的な管理が重要です。
大腸憩室症・憩室炎
大腸の壁の一部が袋状に外側へ突出した状態を憩室(けいしつ)といい、炎症を起こした状態が憩室炎です。腹痛・発熱などの症状が現れることがあります。詳しくは大腸憩室炎とは?原因・症状・対処を内科医が解説【たまプラーザ】もご参照ください。
大腸がん
日本人に多いがんの一つです。初期は無症状のことが多く、進行とともに血便・便通異常・腹痛などが現れます。早期発見が予後に大きく関わるため、定期的な検診が推奨されています。
大腸の不調でみられる主な症状
腹痛・腹部膨満感
大腸の蠕動運動の異常や炎症により、腹部全体または局所の痛み・張り感が生じます。
下痢・便秘
便通異常は大腸疾患で最もよくみられる症状の一つです。2週間以上続く場合は医師への相談をお勧めします。
便に血が混じる、黒い便
鮮血が混じる場合は大腸・直腸付近の出血が、黒色タール便の場合は上部消化管からの出血が疑われます。いずれも放置せず早めに受診してください。
細い便、便が残る感じ
便が細くなる、残便感があるなどの症状は、直腸や肛門付近の通過障害が関係することがあります。大腸がんとの関連が話題になることもありますが、後述するように単一の症状だけで判断はできません。
おならが増える、においが気になる
腸内環境の乱れや蠕動運動の異常、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎など)でもガスの産生・排出が増えることがあります。
体重減少・貧血・発熱
慢性的な出血や炎症が続くと、体重減少・鉄欠乏性貧血・発熱が現れることがあります。これらが便通異常と同時にみられる場合は特に注意が必要です。
こんな症状は早めに受診を
- 強い腹痛やお腹の張りが急に起こり、改善しない
- 血便や黒い便が出た
- 2週間以上続く下痢・便秘・腹痛
- 発熱・体重減少・倦怠感を伴う消化器症状
- 腸閉塞が疑われる症状(嘔吐・排便・排ガスが止まるなど)
腸閉塞(イレウス)は腸管が詰まる状態で、緊急対応が必要な場合もあります。詳しくは腸閉塞の症状|内科医がわかりやすく解説【たまプラーザ】をご覧ください。また、腸閉塞全般については親ピラー記事腸閉塞とは?原因・症状・治し方まで内科医が解説【たまプラーザ】もあわせてご参照ください。
大腸がんで注意したい症状と検査の考え方
大腸がんでみられる症状の特徴
血便・便通の変化(下痢と便秘の繰り返し)・腹痛・貧血・体重減少などが代表的ですが、初期段階では無症状のことが多いため、定期検診が特に重要です。
細い便だけで判断できない理由
細い便は過敏性腸症候群・直腸疾患・肛門の緊張など様々な要因で起こりえます。細い便のみで大腸がんと断定することはできず、総合的な評価が必要です。
大腸がん検診でわかること
厚生労働省が推奨する便潜血検査(2日法)は、便に混じった微量の血液を検出し、大腸がんや大腸ポリープを発見する手がかりになります。40歳以上は年1回の受診が目安です。
便潜血検査と大腸内視鏡検査の違い
便潜血検査は簡便なスクリーニング検査ですが、陽性の場合は大腸内視鏡検査(大腸カメラ)による精密検査が必要です。内視鏡検査は大腸内を直接観察し、ポリープの切除や組織採取(生検)も同時に行える精度の高い検査です。
大腸の検査にはどんなものがある?
| 検査 | 概要 |
|---|---|
| 問診・診察 | 症状の経過・家族歴・腹部触診など |
| 便検査 | 便潜血・細菌培養など |
| 血液検査 | 炎症反応・貧血・腫瘍マーカーなど |
| 腹部X線・CT検査 | 腸管の形状・閉塞・穿孔などの評価 |
| 大腸内視鏡検査 | 粘膜の直接観察、生検・ポリープ切除 |
| 生検(組織検査) | 採取した組織を顕微鏡で詳しく調べる |
大腸検査の費用が気になる方へ
保険診療と自費診療の違い
症状がある場合の検査は保険診療の対象となることが一般的です。健康診断目的の場合は自費診療になる場合があります。
検査費用の目安
保険診療での大腸内視鏡検査費用は、3割負担の場合でおおよそ8,000〜15,000円程度が目安ですが、ポリープ切除の有無や使用する薬剤等により異なります。詳細は受診時にご確認ください。
事前に確認しておきたいこと
費用・前処置の内容・検査当日の注意事項などは、事前に医療機関に問い合わせておくと安心です。
大腸の病気が疑われたときの対処
自宅でできること
水分をしっかり摂り、消化に良い食事を心がけましょう。症状が軽度であれば、食事・生活習慣の改善から始めることが有効な場合もあります。ただし数日以上症状が続く場合や血便がある場合は自己判断で様子をみることは避けてください。
市販薬を使う際の注意点
市販の下痢止め・整腸剤・便秘薬は、一時的な症状緩和に役立つ場合がありますが、感染性腸炎では下痢止めが逆効果になることもあります。血便・発熱を伴う場合は市販薬の使用前に医師へご相談ください。
受診先の目安(内科・消化器内科)
腹痛・便通異常・血便などの症状は内科または消化器内科が窓口となります。たまプラーザ周辺の方は、AIプラスクリニックたまプラーザへお気軽にご相談ください。
緊急受診が必要なケース
- 突然の激しい腹痛・腹部全体の硬さ
- 大量の血便
- 嘔吐が続き排便・排ガスが止まっている
これらは救急受診が必要な可能性があります。
潰瘍性大腸炎や大腸がんの情報でよくある誤解
潰瘍性大腸炎は「完治した」と言えるのか
潰瘍性大腸炎は症状が落ち着く「寛解(かんかい)」の状態になっても、再燃リスクがあるため継続的な治療・管理が基本です。「完治」という表現は医学的には慎重に使われており、自己判断で治療を中断することは推奨されません。主治医と相談の上、治療方針を決めることが大切です。
おならや便通異常だけで病気を判断できない理由
おならの増加・便通の変化はさまざまな原因で起こります。一つの症状だけで特定の疾患を診断することはできず、問診・検査を組み合わせた総合的な評価が必要です。
ステージだけで治療内容は決まらない理由
大腸がんの治療方針は、ステージ(病期)のほかにも腫瘍の位置・組織型・患者さんの全身状態・合併症・患者さんの希望などを踏まえて決定されます。主治医から十分な説明を受けたうえで検討することが大切です。
大腸の病気を予防・早期発見するためにできること
食事・運動・生活習慣の見直し
食物繊維の摂取(野菜・海藻・豆類など)、適度な運動、十分な水分補給、過度なアルコール・加工食品の摂取を控えることが、大腸環境を整えるうえで参考にされています。
便通や便の状態を記録する
便の回数・形状・色・においの変化を日々記録しておくと、受診時に症状を正確に伝えやすくなります。
大腸がん検診を受けるタイミング
厚生労働省は40歳以上を対象に年1回の便潜血検査を推奨しています。家族に大腸がんの方がいる場合は、より若い年齢から専門医に相談することが望ましい場合があります。
受診の前に準備しておくとよいこと
症状の経過をまとめる
いつから・どんな症状が・どのくらい続いているかを整理しておくと診察がスムーズです。
服用中の薬を確認する
お薬手帳や処方薬の情報を持参してください。抗凝固薬など一部の薬は検査前に調整が必要な場合があります。
家族歴や既往歴を伝える
大腸がんや炎症性腸疾患などの家族歴は診断の参考になります。これまでにかかった病気や手術歴もあわせてお伝えください。
よくある質問(FAQ)
Q. 大腸の痛みはどのあたりに出ますか?
大腸はお腹全体をぐるりと囲むように位置しているため、痛みは下腹部・左右の側腹部・おへそ周りなど多様な部位に現れます。痛みの場所だけで原因を特定することは難しく、他の症状との組み合わせや検査が重要です。
Q. 細い便が続くと大腸がんの可能性がありますか?
細い便は過敏性腸症候群・直腸付近の緊張・肛門疾患など様々な要因で起こります。大腸がんの一症状として挙げられることはありますが、細い便だけで大腸がんと判断することはできません。数週間以上続く場合や血便・体重減少を伴う場合は、消化器内科への相談をお勧めします。
Q. 潰瘍性大腸炎でおならが増えることはありますか?
潰瘍性大腸炎では腸の炎症により、ガスの産生が増えたり腸の動きが変化したりすることがあります。おならが増える・においが変わるといった訴えは臨床でもみられます。ただし、おならの増加のみで潰瘍性大腸炎と判断することはできません。
Q. 大腸がん検診で異常があれば必ずがんですか?
便潜血検査が陽性(異常)であっても、必ずしも大腸がんを意味するわけではありません。痔(じ)や大腸ポリープ、炎症などでも陽性になることがあります。精密検査(大腸内視鏡)を受けて、原因を確認することが大切です。
Q. 大腸の症状があるときは何科を受診すればよいですか?
腹痛・便通異常・血便などは内科または消化器内科が適しています。かかりつけ医への相談から始めることも一つの方法です。
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本記事の監修医師
佐藤 靖郎(さとう やすお)
医師(医学博士)/AIプラスクリニックたまプラーザ 監修医
専門:消化器・内科(消化器外科/内視鏡/一般内科)
略歴
1988年 福島県立医科大学医学部卒業、医師免許取得。1997年 同大学大学院修了、博士号取得。国立国際医療研究センター、東京新宿メディカルセンター、NTT東日本関東病院、横浜市立大学関連病院、国立病院機構横浜医療センター外科医長・救命救急センター副部長、済生会若草病院(横浜市)外科部長・内視鏡センター・診療部長を歴任。丸亀医療センター・佐々木病院副理事長、日立おおみか病院理事を経て現在に至る。
公的役割
厚生労働省「地域連携クリティカルパスモデルの開発」班研究員 / 全国保健所長会 地域連携パス推進班アドバイザー / 神奈川県がん診療連携協議会 地域連携クリティカルパス部会 相談役
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