大腸の主な病気と症状からみる受診の目安を総まとめ
大腸の病気は、腹痛・血便・便通異常など日常的な症状から発見されることが多く、放置すると重篤な状態につながる場合があります。本記事では、なかでも患者数が多い大腸憩室を中心に、大腸の主な病気の特徴・原因・検査・治療・日常生活での注意点を、消化器専門医の監修のもと分かりやすくまとめました。「自分の症状はどのくらい急ぐべきか」を判断する目安として、ぜひお役立てください。
大腸の主な病気を知る前に:受診の目安とこの記事の読み方
こんな症状があるときは早めに医療機関へ
以下のような症状が続く場合は、症状が軽くても早めに消化器内科への受診をお勧めします。
・数日以上続く腹痛や腹部不快感
・繰り返す下痢・便秘
・便に血が混じる(血便・黒色便)
・原因のわからない体重減少
まずは何科を受診する?内科・消化器内科の目安
腹痛・便通異常・血便などの症状は、まず内科または消化器内科を受診するのが基本です。大腸の病気が疑われる場合、CT検査や大腸内視鏡検査など専門的な検査が行える消化器内科が適しています。
緊急受診を考える症状
下記に該当する場合は、ためらわず救急受診を検討してください。
・突然始まる激しい腹痛
・大量の血便やめまい・ふらつきを伴う出血
・お腹が板のように硬くなる
大腸のはたらきと、病気が起こるしくみ
大腸の役割と消化管のどこにあるか
大腸は小腸の終わりから肛門までをつなぐ約1.5メートルの管状の臓器で、盲腸・結腸(上行・横行・下行・S状)・直腸に分かれます。主な役割は水分・電解質の吸収と便の形成・貯留・排出です。
大腸の病気で起こりやすい症状の共通点
炎症・腫瘍・機能異常など、大腸の病気はさまざまですが、共通して現れやすい症状は「腹痛」「排便習慣の変化」「血便」「腹部膨満感」です。症状だけで病気を特定することは難しいため、医師による診察と検査が重要です。
大腸憩室とは
大腸憩室の定義と「憩室症」との違い
大腸憩室とは、大腸の腸管壁の一部が袋状に外側へ突き出た状態を指します。こうした袋状の突出(憩室)が1つ以上存在する状態を憩室症と呼び、炎症や出血などの合併症を起こした状態が憩室炎・憩室出血です。憩室症の多くは無症状であることも特徴のひとつです。詳しくは大腸憩室症の症状と注意したい合併症をわかりやすく解説もご参照ください。
大腸のどこにできやすいか
日本人ではS状結腸(左側)と右側結腸(盲腸・上行結腸)の両方に比較的よく見られます。欧米では左側(S状結腸)に多いとされる一方、日本人は右側にも多い点が特徴として知られています。
年齢や生活習慣との関係
加齢とともに発症率は上昇し、60歳以上では多くの割合に認められるとされています。食物繊維の摂取量の減少や排便習慣の変化も関係すると考えられています。
大腸憩室でみられる主な症状
無症状のこともある
憩室症の大部分は無症状であり、大腸がん検診や他の目的で行った大腸内視鏡検査・CT検査で偶然発見されることが少なくありません。
腹痛・発熱・便通異常がある場合
憩室に炎症(憩室炎)が生じると、腹痛(特に左下腹部または右下腹部)・発熱・吐き気・下痢または便秘といった症状が現れます。発熱を伴う腹痛は、特に早めの受診が望まれます。
血便や下血がある場合
憩室の血管が破れると、血便・下血(鮮血または暗赤色の便)が突然現れることがあります。痛みを伴わないことも多く、大量出血となる場合もあるため、血便が出た際には速やかに医療機関を受診してください。
大腸憩室で起こる代表的な病態
大腸憩室炎
憩室内に便が詰まり細菌が増殖することで炎症が起こります。軽症から腹膜炎・膿瘍形成まで重症度はさまざまです。
大腸憩室出血
憩室の近くを走る細動脈が破れて出血する状態で、腸管出血の原因として頻度が高いとされています。多くは自然に止血しますが、再出血リスクがあります。
再発しやすさと経過の考え方
憩室炎は一定の割合で再発します。とくに若年発症例や基礎疾患がある場合、生活習慣の見直しや定期的な経過観察が重要です。
大腸憩室の原因とリスク因子
加齢と腸管壁の変化
加齢に伴い腸管壁の筋層が弱くなり、腸内圧が上昇すると壁が突出しやすくなります。
食物繊維不足・便秘との関係
食物繊維が不足すると便が硬くなり、腸内圧の上昇につながります。慢性的な便秘は大腸憩室の形成リスクを高める要因とされています。
肥満、運動不足、喫煙、飲酒との関係
肥満・運動不足・喫煙・過度の飲酒は消化管全体の機能に影響を及ぼし、憩室症のリスク因子として報告されています。
既往歴や薬剤で注意したいこと
非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)や抗凝固薬の使用は、憩室出血のリスクを高めることが知られています。内服中の薬がある場合は、受診の際に必ずお伝えください。
大腸憩室の検査と診断
問診・診察で確認するポイント
腹痛の場所・性質・発症のタイミング、発熱の有無、排便状況、服薬歴などを確認します。
血液検査・便検査
炎症の程度を示すCRP・白血球数などを確認します。便潜血検査は出血の有無のスクリーニングに活用されます。
CT検査・大腸内視鏡検査の役割
CT検査は憩室炎の診断・重症度評価に有用です。大腸内視鏡検査は憩室の位置・数の確認や出血源の特定、他の疾患との鑑別に用いられます。ただし、急性期の炎症中は内視鏡検査を避ける場合があります。
症状が似る他の病気との鑑別
大腸がん・虚血性腸炎・感染性腸炎・炎症性腸疾患など、類似した症状を示す疾患との鑑別が必要です。
大腸憩室の治療
大腸憩室炎の治療
軽症の場合は安静・食事制限・抗菌薬(抗生物質)による外来治療が行われることがあります。発熱や腹痛が強い場合、腹膜炎や膿瘍を疑う場合は入院治療が必要となります。
大腸憩室出血の治療
自然止血することも多いですが、止血しない場合は内視鏡的止血術・血管造影による塞栓術などが行われます。
手術が検討されるケース
腹膜炎・膿瘍・瘻孔形成など重篤な合併症、または内科的治療に反応しない憩室炎・出血の繰り返しがある場合に、外科手術が検討されます。
自己判断で様子を見ないほうがよい場面
発熱を伴う腹痛や血便が続く場合は、自己判断で我慢せず早めに受診することが重要です。症状が気になる方はご予約・お問い合わせよりご相談ください。
日常生活で気をつけたいこと
食事で意識したいポイント
食物繊維(野菜・豆類・海藻・果物など)を積極的に摂ることで、便の形成を助け腸内圧の上昇を抑えることにつながります。急性期(炎症中)は消化の良い食事が勧められます。
便秘予防と排便習慣
水分を十分に摂り、規則正しい排便習慣を整えることが基本です。排便時の過度のいきみは腸内圧を高めるため、便秘が続く場合は医師に相談してください。
再発予防に役立つ生活習慣
適度な運動・禁煙・節酒・適切な体重管理は、消化器疾患全般のリスク低減に寄与します。
痛みや血便があるときの過ごし方
腹痛・血便が出た際は安静にし、食事を控えめにして早めに医療機関を受診してください。自己判断で市販薬を服用し続けることは、診断の遅れにつながる場合があります。
大腸憩室と似た症状を起こす大腸の病気
大腸がん
血便・便通異常・体重減少などが主な症状です。早期発見のためにも大腸がん検診の定期受診が重要です。
潰瘍性大腸炎・クローン病
潰瘍性大腸炎の症状と直腸型の特徴をわかりやすく解説でも詳述していますが、慢性の血便・下痢・腹痛を繰り返す炎症性腸疾患です。若い世代にも多く見られます。
感染性腸炎
細菌・ウイルスなどによる腸の感染症で、急激な下痢・腹痛・発熱が現れます。食中毒との関連も多いです。詳しくは大腸炎とは何かを症状と原因からわかりやすく解説をご覧ください。
虚血性腸炎
腸管への血流が低下することで腹痛・血便が生じます。高齢者・動脈硬化のある方に多い疾患です。
過敏性腸症候群
腹痛・下痢・便秘を繰り返しますが、器質的な病変は認められない機能性疾患です。過敏性大腸症候群の症状と受診の目安をわかりやすく解説もご参照ください。
症状からみる受診の目安
腹痛が続くとき
2〜3日以上腹痛が続く場合、または強い痛みがある場合は消化器内科を受診してください。
発熱を伴うとき
腹痛と発熱が同時にある場合は、憩室炎・腹膜炎・感染性腸炎などが疑われ、速やかな受診が望まれます。
血便・黒色便があるとき
鮮血の血便は憩室出血・大腸がん・炎症性腸疾患など、黒色便は上部消化管出血の可能性があります。いずれも早めの受診をお勧めします。
便秘と下痢を繰り返すとき
過敏性腸症候群・大腸がんなど複数の疾患が考えられます。症状が続く場合は過敏性大腸炎の症状と受診の目安をわかりやすく解説も参考にしながら、医師への相談をご検討ください。
体重減少や貧血があるとき
意図しない体重減少・貧血・疲労感が続く場合は、大腸がんなど重篤な疾患の可能性を除外するために検査が必要です。
大腸の病気を早く見つけるための検診・定期受診
大腸がん検診との関係
大腸がんは日本人のがん罹患数の上位であり(国立がん研究センター統計)、40歳以上を対象とした大腸がん検診(便潜血検査)が推奨されています。憩室症がある方は定期的な経過観察も重要です。
便潜血検査で異常が出たら
便潜血検査で陽性となった場合は、必ず大腸内視鏡検査などの精密検査を受けることが重要です。陽性でも必ずしも大腸がんとは限りませんが、確認が必要です。
胃カメラや他の検査を勧められることがある理由
消化器症状は大腸だけでなく、胃・食道など上部消化管に原因がある場合もあります。たとえば逆流性食道炎の精査で胃カメラ(上部消化管内視鏡)を受けた際に、消化器全体の状態を総合的に評価することがあります。上部・下部消化管の検査を組み合わせることで、症状の原因をより正確に特定できます。
こんなときは救急受診を検討する
激しい腹痛がある
突然始まる激しい腹痛・お腹が板のように硬くなる(腹膜刺激症状)がある場合は、腸穿孔などの緊急事態の可能性があり、救急受診が必要です。
大量の血便やふらつきがある
大量出血によるショック状態(ふらつき・冷や汗・意識の変化)を伴う場合は、ただちに救急搬送が必要です。
お腹の張りが強い、吐き気・嘔吐がある
腸閉塞や重篤な感染症の可能性があります。嘔吐・腹部膨満が著しい場合は早急に医療機関へ連絡してください。
よくある質問(FAQ)
大腸憩室は自然に治ることがありますか?
一度形成された憩室(腸壁の突出)は、基本的に自然に消えることはないとされています。ただし、炎症(憩室炎)が軽症であれば、安静・食事管理・抗菌薬などで症状が改善することがあります。憩室そのものとうまく付き合いながら、再発予防の生活習慣を継続することが大切です。
大腸憩室があっても普段通りの食事でよいですか?
無症状の憩室症の場合、極端な食事制限は必要ありません。ただし食物繊維を積極的に摂り、便秘を予防する食生活を心がけることが再発予防につながります。炎症が起きている急性期は消化の良いものを選ぶことが望まれます。具体的な食事の指導は医師・管理栄養士にご相談ください。
大腸憩室炎は再発しやすいですか?
再発率は報告によって異なりますが、一定の割合で再発することが知られています。特に若年発症や免疫抑制状態にある方では再発リスクが高いとされます。生活習慣の改善と定期的な受診で経過を管理することが重要です。
大腸憩室と大腸がんは関係がありますか?
大腸憩室があること自体が大腸がんの直接的な原因になるとは現時点では考えられていませんが、血便などの症状は大腸がんとの鑑別が必要です。憩室症と診断されていても、定期的な大腸がん検診や内視鏡フォローは引き続き重要です。
症状がない場合も検査は必要ですか?
無症状でも、40歳以上であれば大腸がん検診(便潜血検査)の受診が推奨されています。また、便潜血陽性や症状がある場合は大腸内視鏡検査が検討されます。定期的な健康チェックを継続することが早期発見につながります。
逆流性食道炎で胃カメラを勧められた場合、大腸の検査も必要になりますか?
逆流性食道炎の診断・経過観察を目的に胃カメラ(上部消化管内視鏡)を受ける際、消化器全体の症状を評価して、必要に応じて大腸内視鏡検査が追加で勧められる場合があります。これは「胃の症状と思っていたものが大腸に原因があった」ケースを見逃さないための判断であり、医師が総合的に検討して提案するものです。検査の必要性については担当医とよくご相談ください。
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本記事の監修医師
佐藤 靖郎(さとう やすお)
医師(医学博士)/AIプラスクリニックたまプラーザ 監修医
専門:消化器・内科(消化器外科/内視鏡/一般内科)
略歴:
1988年 福島県立医科大学医学部卒業、医師免許取得。1997年 同大学大学院修了、博士号取得。国立国際医療研究センター、東京新宿メディカルセンター、NTT東日本関東病院、横浜市立大学関連病院、国立病院機構横浜医療センター外科医長・救命救急センター副部長、済生会若草病院(横浜市)外科部長・内視鏡センター・診療部長を歴任。丸亀医療センター・佐々木病院副理事長、日立おおみか病院理事を経て現在に至る。
1988年 福島県立医科大学医学部卒業、医師免許取得。1997年 同大学大学院修了、博士号取得。国立国際医療研究センター、東京新宿メディカルセンター、NTT東日本関東病院、横浜市立大学関連病院、国立病院機構横浜医療センター外科医長・救命救急センター副部長、済生会若草病院(横浜市)外科部長・内視鏡センター・診療部長を歴任。丸亀医療センター・佐々木病院副理事長、日立おおみか病院理事を経て現在に至る。
公的役割:
厚生労働省『地域連携クリティカルパスモデルの開発』班研究員、全国保健所長会 地域連携パス推進班アドバイザー、神奈川県がん診療連携協議会 地域連携クリティカルパス部会 相談役。
厚生労働省『地域連携クリティカルパスモデルの開発』班研究員、全国保健所長会 地域連携パス推進班アドバイザー、神奈川県がん診療連携協議会 地域連携クリティカルパス部会 相談役。
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