大腸炎とは何かを症状と原因からわかりやすく解説
「大腸炎」とは、大腸に炎症が生じている状態を指す総称です。原因や種類はさまざまで、急性のものから慢性のものまで幅広く存在します。本記事では、大腸炎の基本的な知識から症状・原因・検査・治療の考え方まで、わかりやすく解説します。気になる症状がある場合は、まず消化器内科や内科を受診して医師に相談することをおすすめします。
大腸炎とは?まず押さえたい基本
大腸のどこに起こる炎症なのか
大腸は盲腸・結腸・直腸から構成される消化器官で、水分の吸収や便の形成を担っています。大腸炎は、これらの部位のいずれか、あるいは全体にわたって炎症が起こった状態を指します。炎症が起きる場所によって症状の現れ方や重症度が異なることがあります。
「大腸炎」は病名ではなく状態を指すことがある
「大腸炎」という言葉は、ひとつの病名というよりも「大腸に炎症が起きている状態」を広く指す用語として用いられます。その背景にある原因は感染・免疫・血流障害・薬剤など多岐にわたるため、診断では原因の特定が重要です。
大腸炎でみられる主な症状
下痢
最もよくみられる症状のひとつです。炎症により腸の水分吸収が妨げられ、便が軟らかくなったり水様になったりします。回数が増えることもあります。
腹痛・腹部の不快感
下腹部を中心としたけいれん様の痛みや、鈍い不快感が現れることがあります。排便前に強まり、排便後にやや楽になるケースも少なくありません。
血便・粘液便
腸の粘膜が傷つくと、便に血液や粘液が混じることがあります。血便は潰瘍性大腸炎や虚血性大腸炎、感染性腸炎などで認められます。血便が続く場合は早めに医療機関を受診してください。
発熱・だるさ・食欲低下
感染が関与している場合や炎症が強い場合には、38℃以上の発熱、全身のだるさ、食欲の低下を伴うことがあります。
大腸炎の主な原因
感染による大腸炎
細菌(カンピロバクター・サルモネラ・腸管出血性大腸菌O157など)、ウイルス、寄生虫などが腸内に侵入して炎症を引き起こします。食中毒や海外渡航後に発症するケースも多くみられます。
炎症性腸疾患による大腸炎
免疫系の異常が腸の慢性的な炎症を招く疾患群です。潰瘍性大腸炎やクローン病が代表的で、厚生労働省が指定難病として認定しています(潰瘍性大腸炎は指定難病97)。繰り返す下痢や血便、腹痛が特徴です。詳しくは潰瘍性大腸炎の症状と直腸型の特徴をわかりやすく解説もあわせてご参照ください。
薬剤や血流の低下などが関係する大腸炎
抗菌薬の使用後に腸内細菌のバランスが崩れて起こる偽膜性腸炎(クロストリディオイデス・ディフィシル感染症)や、大腸への血流が低下することで粘膜が傷つく虚血性大腸炎も知られています。動脈硬化を基盤とする高齢者に虚血性大腸炎は多い傾向があります。
ストレスや食生活との関わり
過剰なストレス・睡眠不足・偏った食生活は腸の環境を乱す要因になりえます。ただし、これらは大腸炎の直接的な「原因」というより、症状を悪化させる誘因として捉えるのが適切です。腸の不調とストレスの関係については過敏性大腸症候群の症状と受診の目安をわかりやすく解説もご覧ください。
大腸炎の種類
感染性腸炎
細菌・ウイルス・寄生虫などが原因の急性の炎症です。多くは数日〜1週間程度で回復しますが、症状が重い場合や原因菌によっては医療機関での対応が必要です。
潰瘍性大腸炎
大腸の粘膜に慢性的な炎症・潰瘍が生じる疾患で、指定難病のひとつです。寛解と再燃を繰り返すことが多く、長期にわたる管理が必要になります。
虚血性大腸炎
大腸への血流が一時的に低下し、粘膜が傷つく疾患です。左側結腸に起こりやすく、突然の腹痛と血便が特徴的です。高齢者や動脈硬化のある方に多くみられます。
薬剤性大腸炎
抗菌薬・NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)・免疫チェックポイント阻害薬など、さまざまな薬剤が大腸の炎症を引き起こすことがあります。原因薬剤の中止が治療の基本です。
その他の大腸炎
放射線治療後に起こる放射線性大腸炎、膠原線維が異常沈着するコラーゲン性大腸炎、リンパ球性大腸炎なども知られています。
こんな症状があるときは受診を検討
血便が続く
便に血液が混じる状態が続く場合は、炎症や粘膜の損傷のサインです。大腸がんなど他の疾患との鑑別も必要なため、早めの受診が勧められます。
強い腹痛や発熱がある
38℃以上の発熱や強い腹痛を伴う場合は、感染の可能性や炎症の急性増悪が考えられます。
下痢が長引く
2週間以上続く下痢は「慢性下痢」と定義されます。慢性的な炎症性疾患の可能性もあるため、受診の目安とすることをおすすめします。
脱水が疑われる
激しい下痢や嘔吐が続くと脱水を招くことがあります。口の渇き・尿量の減少・めまいなどが続く場合は注意が必要です。
体重減少や貧血がある
意図しない体重の減少や、顔色が悪い・息切れなどの貧血症状は、慢性疾患を示唆することがあります。
医療機関で行う検査
問診と診察
症状の経過・食事内容・服薬歴・海外渡航歴などの確認が診断の第一歩です。
血液検査
白血球数・CRP(炎症マーカー)・ヘモグロビン値などで炎症の程度や貧血の有無を評価します。
便検査
便培養で原因菌を特定したり、便潜血検査で出血の有無を確認したりします。
画像検査
腹部CTや腹部超音波検査で腸の炎症範囲や合併症の有無を調べます。
大腸内視鏡検査
大腸の粘膜を直接観察できる最も重要な検査のひとつです。生検(組織の一部を採取する検査)を組み合わせることで、より詳細な診断が可能になります。
大腸炎の治療の考え方
原因に応じた治療が基本
大腸炎の治療は原因によって異なります。自己判断での治療は適切でない場合があるため、必ず医師の診察を受けてください。
感染性大腸炎の対応
多くは安静・水分補給で回復しますが、原因菌によっては抗菌薬の投与が必要です。
潰瘍性大腸炎の治療
5-アミノサリチル酸製剤(5-ASA)を中心とした薬物療法が行われます。重症例にはステロイドや生物学的製剤も使用されます。
虚血性大腸炎の治療
多くは絶食・点滴・安静で回復しますが、重症例では外科的対応が必要なこともあります。
薬剤性大腸炎の対応
原因と考えられる薬剤を中止または変更することが基本的な対応です。主治医に必ず相談してください。
自宅でできる対処と注意点
水分補給のポイント
下痢が続く際は水分とともに塩分も失われます。経口補水液(OS-1など)を活用し、こまめに少量ずつ補給することが重要です。
食事で気をつけたいこと
症状が強い時期は消化の良い食事(お粥・うどんなど)を心がけ、脂っこい食事・香辛料・アルコールは控えましょう。
市販薬を使う前の注意
下痢止め(ロペラミド)は感染性腸炎では症状を長引かせる可能性があるため、安易に使用しないことが大切です。受診前に市販薬を使用する場合は、薬剤師にご相談ください。
受診までに避けたい行動
脱水を悪化させるカフェインやアルコールの摂取、消化管を刺激する食品の摂取は避けてください。
予防のために意識したいこと
手洗い・食品管理
感染性大腸炎の予防には、こまめな手洗い・食品の適切な加熱・生食の注意が有効です。
薬の使い方に注意する
抗菌薬は医師の処方に従い、自己判断で中断・追加しないことが大切です。
再発予防につながる生活習慣
十分な睡眠・バランスのとれた食事・適度な運動・ストレス管理が腸の健康維持に役立つとされています。潰瘍性大腸炎などの慢性疾患は定期的な通院と薬の継続が再発予防の基本です。
受診先の選び方
まずは内科・消化器内科へ
血便・長引く下痢・腹痛がある場合は、内科または消化器内科への受診が適しています。大腸の主な病気と症状からみる受診の目安を総まとめもあわせて参考にしてください。
緊急受診が必要なケース
大量の血便・激しい腹痛・高熱・意識の変容などがある場合は、救急受診または救急車の要請をご検討ください。
よくある質問(FAQ)
大腸炎は自然に治ることがありますか?
感染性腸炎など一部の急性大腸炎は、安静と水分補給で数日〜1週間程度で回復することがあります。ただし、症状が強い場合や長引く場合は医師の診察が必要です。自己判断で放置することは避けてください。
大腸炎と大腸がんはどう違いますか?
大腸炎は大腸に炎症が起きた状態であり、大腸がんは大腸に悪性腫瘍が生じた疾患です。血便・腹痛・下痢などの症状は両者で重なることがあるため、内視鏡検査による鑑別が重要です。
大腸炎でも仕事や学校に行けますか?
症状の程度によって異なります。発熱や強い腹痛・頻回の下痢がある場合は無理をせず休養を取ることが勧められます。感染性腸炎では周囲への感染拡大防止の観点からも医師に相談することをおすすめします。
潰瘍性大腸炎との違いは何ですか?
「大腸炎」は原因を問わず大腸に炎症が起きた状態の総称であるのに対し、「潰瘍性大腸炎」は免疫の異常による慢性の炎症性腸疾患で、指定難病に分類される特定の疾患です。
大腸炎は再発しますか?
原因によって異なります。感染性腸炎は治癒後に再発することは少ない一方、潰瘍性大腸炎は寛解と再燃を繰り返す慢性疾患であり、継続的な管理が必要です。
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本記事の監修医師
佐藤 靖郎(さとう やすお) 医師(医学博士)
AIプラスクリニックたまプラーザ 監修医
専門:消化器・内科(消化器外科/内視鏡/一般内科)
略歴: 1988年 福島県立医科大学医学部卒業、医師免許取得。1997年 同大学大学院修了、博士号取得。国立国際医療研究センター、東京新宿メディカルセンター、NTT東日本関東病院、横浜市立大学関連病院、国立病院機構横浜医療センター外科医長・救命救急センター副部長、済生会若草病院(横浜市)外科部長・内視鏡センター・診療部長を歴任。丸亀医療センター・佐々木病院副理事長、日立おおみか病院理事を経て現在に至る。
公的役割: 厚生労働省「地域連携クリティカルパスモデルの開発」班研究員、全国保健所長会 地域連携パス推進班アドバイザー、神奈川県がん診療連携協議会 地域連携クリティカルパス部会 相談役。
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