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上行結腸癌とは?症状や見つかりにくい理由を解説

上行結腸癌とは?症状や見つかりにくい理由を解説

大腸がんとは|症状・検査・治療・生活までを医師監修で解説する総合ガイド大腸がんの基礎知識・全体像|押さえておきたい要点を医師監修で解説 › (本記事)


上行結腸癌は、大腸のうち「右側」に位置する上行結腸に発生するがんです。初期段階では自覚症状が乏しく、健康診断の便潜血検査や大腸内視鏡検査で偶然発見されることも少なくありません。「右側の大腸は便がまだ水分を多く含むため変形しにくく、閉塞症状が出にくい」という解剖学的な特性が、発見の遅れにつながることがあります。本記事では、上行結腸癌の基礎知識・症状・検査・治療の概要を整理し、受診の目安をわかりやすくお伝けします。

大腸がんの全体像については、大腸がんの基礎知識・全体像|押さえておきたい要点を医師監修で解説もあわせてご覧ください。


上行結腸癌とは

上行結腸は大腸のどの部分か

大腸は全長約1.5mで、盲腸・結腸(上行・横行・下行・S状)・直腸に分かれます。上行結腸は、右の下腹部(盲腸のすぐ上)から右の上腹部(肝臓の下あたり)まで縦に走る部分です。小腸から送られてきた消化物(まだ水分を多く含む粥状の状態)を受け取り、水分の吸収を行う役割を担っています。

上行結腸癌と結腸癌・直腸癌の違い

「大腸がん」は結腸がんと直腸がんの総称です。上行結腸癌は結腸がんの一部に分類されます。結腸がんの特徴と大腸がんとの違いについてはこちらもご参照ください。

部位 分類 主な特徴
上行結腸 結腸がん(右側大腸がん) 便が水様〜粥状のため閉塞症状が出にくい。貧血・便潜血が手がかりになりやすい
S状結腸 結腸がん(左側大腸がん) 便が固まり始めており、便の変形・閉塞症状が出やすい
直腸 直腸がん 血便・排便困難・残便感が比較的早期から現れやすい

上行結腸癌で起こりやすい症状

初期は症状が出にくいことがある

上行結腸は管腔(かんくう:管の内側の空間)が広く、多少腫瘍が大きくなっても便の通過が妨げられにくいため、初期にはほとんど自覚症状がないことがあります。

便潜血陽性、貧血、腹部の違和感など

症状 背景
便潜血(便に微量の血が混じる) 腫瘍表面からのにじむような出血
鉄欠乏性貧血(疲れやすい・動悸・めまい) 慢性的な微小出血が続くことで起こる
右側腹部の鈔い違和感・不快感 腫瘍の局所的な炎症や腸管への刺激
体重減少・食欲低下 全身への影響(進行例で目立つ)

貧血を主訴に内科を受診し、精査の結果として上行結腸癌が見つかるケースは臨床上けっして珍しくありません。

進行するとみられる症状

腫瘍が大きくなると、腸閉塞(イレウス)に近い腹部膨満・腹痛・嘔吐が現れることがあります。また、肝臓・腹膜・肺などへの転移が生じると、その部位に応じた症状(黄疸・腹水・呼吸困難など)が加わる場合があります。


見つかりにくい理由

右側の大腸は症状が目立ちにくい

S状結腸癌や直腸癌と比べ、上行結腸癌は「症状が出てから受診するまでの期間が長くなりがち」という特徴があります。これは管腔が広いことと、腫瘍の位置が体の奥深くにあることが主な理由です。

便がまだ水分を多く含むため変化に気づきにくい

小腸から送られてきた直後の消化物は水分が多く、腫瘍があっても便の形状や太さに変化が生じにくいです。これに対し、S状結腸や直腸では便が固形化しているため、腫瘍による圧迫が便の変形・血便として現れやすくなります。大腸がんで起こる便の変化や体のサインについてはこちらもあわせてご覧ください。

健診や内視鏡検査で偶然見つかることがある

上行結腸癌の発見の多くは、①職場・市区町村の健診での便潜血検査陽性、②貧血の原因精査、③別の疾患で行ったCT検査での偶発的発見、のいずれかをきっかけとすることが少なくありません。定期的な検診の受診が重要である理由がここにあります。


上行結腸癌の主な検査

便潜血検査

便の中に目に見えない微量の血液が混じっていないかを調べる検査です。2日間採取した便を提出する「2日法」が標準とされています(国立がん研究センター がん情報サービス参照)。陽性でもがんとは限りませんが、必ず精密検査を受ける必要があります。

大腸内視鏡検査

内視鏡(カメラ)を肛門から挿入し、大腸全体を直接観察する検査です。病変の位置・大きさ・形状を確認でき、同時に組織を採取して病理診断(顕微鏡でがん細胞を確認すること)を行うことができます。確定診断には不可欠な検査です。

CT検査や血液検査

CTは腫瘍の大きさや深さ、リンパ節転移・遠隔転移の有無を調べるために用います。血液検査では腫瘍マーカー(CEA・CA19-9)が参考値として測定されますが、これだけで診断はできません。

公的データでみる大腸がん検診の考え方

厚生労働省は40歳以上を対象に、年1回の便潜血検査を推奨しています(厚生労働省「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針」)。大腸がんは日本人に最も多いがんのひとつであり(国立がん研究センター がん統計 2022年罹患数推計)、定期的な検診が早期発見に有効とされています。


診断後にまず確認すること

がんの広がりと病期(ステージ)

大腸がんの病期は、TNM分類(T:腫瘍の深さ/N:リンパ節転移の有無/M:遠隔転移の有無)に基づき、ステージI〜IVに分類されます。

ステージ 概要
I 腸の壁の比較的浅い層にとどまる
II 腸の壁を越えるが、リンパ節転移なし
III リンパ節への転移あり
IV 肝臓・肺など遠隔臓器への転移あり

※この表は概略です。実際の分類は専門医による詳細な評価に基づきます。統計上の生存率は集団データであり、個々の患者さんの予後を示すものではありません。

治療方針を決めるうえで確認する項目

病期のほかに、①全身状態(体力・基礎疾患)、②腫瘍の遺伝子変異(RAS・BRAF変異など)、③患者さん本人の希望と生活状況、が治療選択に影響します。主治医・専門医と十分に相談することが大切です。


上行結腸癌の主な治療

手術

上行結腸癌の根治を目指す治療の中心は外科手術(右半結腸切除術)です。腫瘍とその周囲のリンパ節を含む腸管を切除します。近年は腹腔鏡手術(おなかに小さな穴を開けてカメラと器具で行う低侵襲手術)が多くの施設で実施されています。

薬物療法

ステージIIの高リスク例・ステージIIIでは術後補助化学療法(手術後に再発リスクを下げるための薬物治療)が検討されます。ステージIVでは切除不能な場合に化学療法が治療の中心となります。使用される主な薬剤にはフッ化ピリミジン系薬(5-FUなど)・オキサリプラチン・分子標的薬(抗VEGF抗体・抗EGFR抗体など)があります。

病期や体の状態によって治療は異なる

治療方針は一律ではなく、病期・年齢・全身状態・遺伝子変異の種類などによって個別に検討されます。日本癌治療学会および日本大腸癌研究会の診療ガイドラインに基づいて治療が行われます。


上行結腸癌と他の大腸がんとの違い

S状結腸癌との違い

S状結腸癌(シグモイド結腸がん)は大腸がんの中で最も多い部位のひとつで、左側の大腸に発生します。便が固形化しているため、便が細くなる・血便・便秘といった症状が比較的早期から現れやすいとされます。上行結腸癌に比べると症状での早期発見につながりやすい面があります。大腸がんの症状や特徴の基本についてはこちらもご参照ください。

直腸癌との違い

直腸癌は肛門に近い直腸に発生し、血便・残便感・排便困難といった症状が出やすいです。外科手術においては肛門温存の可否や、術後の排便機能への影響が重要な検討事項となる点が結腸がんとの大きな違いです。また、放射線治療が治療に組み込まれることがあります。


🏥 当院での診療から

当院(AIプラスクリニックたまプラーザ)は消化器内視鏡センターを備え、鎮静剤(眠くなる薬)を使用した楽な状態での大腸内視鏡検査を日常的に実施しています。便潜血陽性や貧血を契機に受診された患者さんに対して、速やかに精密検査を行い、上行結腸癌を含む大腸がんの早期発見に努めています。

内視鏡検査で早期がんや精査が必要な所見が確認された場合は、連携する基幹病院(高次医療機関)へ速やかにご紹介します。手術後は地域連携クリティカルパス(地域の医療機関が役割を分担して継続的に診療する仕組み)を活用し、術後フォローアップを当院が担当します。監修医の佐藤靖郎医師はこのパス体制の研究・普及にも携わっており、患者さんが安心して地域で療養を続けられる体制づくりを重視しています。また、在宅療養支援診療所として在宅緩和ケアや看取りにも対応しており、治療の各段階に応じた継続的なサポートを提供しています。


受診・相談の目安

早めに受診したい症状

  • 原因不明の貧血(疲れやすい・動悸・めまい)が続く
  • 便に血が混じっている、または黒っぽいタール状の便が出る
  • 右側の腹部に繰り返す違和感・鈍痛がある
  • 体重が意図せず減少している

健診異常を指摘されたとき

便潜血検査で「要精密検査」と判定された場合は、症状がなくても必ず大腸内視鏡検査などの精密検査を受けてください。陽性だからといってがんが確定しているわけではありませんが、放置せず早めに消化器科・内科を受診することが重要です。

迷ったときに相談したいケース

「症状はないが、家族に大腸がんの方がいる」「以前の検査から数年間、大腸内視鏡を受けていない」といった場合も、まずはご相談ください。ご予約・お問い合わせはこちらからご利用いただけます。


❓ よくある質問(FAQ)

上行結腸癌は健康診断で見つかりますか?

はい、発見の重要なきっかけのひとつです。市区町村・職場の健診で行われる便潜血検査が陽性となり、精密検査(大腸内視鏡)で見つかるケースがあります。ただし、便潜血検査は出血のないタイミングには陰性になることもあるため、定期的な受診が大切です。

上行結腸癌は痛みが出ますか?

初期には痛みがないことが多いです。進行すると右腹部の鈍痛や腹部膨満感が現れることがあります。痛みが強くなる前に発見するためにも、定期的な検診と便潜血陽性時の精密検査が重要です。

便潜血陽性なら必ずがんですか?

いいえ、必ずしもがんではありません。痔・腸のポリープ・炎症性腸疾患などでも陽性となることがあります。ただし、大腸がんの可能性を否定するためには大腸内視鏡検査による精密検査が不可欠です。陽性の場合は自己判断せず、医療機関を受診してください。

上行結腸癌はどんな人に多いですか?

大腸がん全体のリスクとして、①50歳以上、②高脂肪・低繊維食、③肥満、④運動不足、⑤喫煙・過度の飲酒、⑥大腸がんの家族歴、⑦炎症性腸疾患の既往、などが挙げられています(国立がん研究センター がん情報サービスより)。特定の部位(上行結腸)に限定した詳細なリスク統計は限られていますが、こうした背景をお持ちの方は定期検診を心がけることが勧められます。


まとめ

早期発見のために大切なこと

上行結腸癌は右側の大腸という解剖学的な特性から、症状が出にくく発見が遅れやすいがんです。主なポイントをまとめます。

  • 症状が乏しい段階からの検診受診が最も重要。便潜血検査は40歳以上に年1回推奨されている
  • 便潜血陽性・原因不明の貧血は、速やかに精密検査(大腸内視鏡)を受ける
  • 診断後の治療方針は病期・全身状態・遺伝子変異などを総合的に評価して決定される
  • 手術・薬物療法いずれも、主治医・専門医と十分に相談したうえで選択することが大切

「おかしいかも」と感じたら、一人で抱え込まずに医療機関へご相談ください。


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参考文献・出典


👨‍⚕️ 本記事の監修医師

佐藤 靖郎(さとう やすお)

医師・医学博士/AIプラスクリニックたまプラーザ 監修医

専門:消化器外科/内視鏡/一般内科

略歴:

1988年 福島県立医科大学医学部卒業、医師免許取得。1997年 同大学大学院修了、博士号取得。国立国際医療研究センター、東京新宿メディカルセンター、NTT東日本関東病院、横浜市立大学関連病院、国立病院機構横浜医療センター外科医長・救命救急センター副部長、済生会若草病院(横浜市)外科部長・内視鏡センター・診療部長を歴任。丸亀医療センター・佐々木病院副理事長、日立おおみか病院理事を経て現在に至る。

公的役割:

厚生労働省「地域連携クリティカルパスモデルの開発」班研究員、全国保健所長会 地域連携パス推進班アドバイザー、神奈川県がん診療連携協議会 地域連携クリティカルパス部会 相談役。


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⚠️ 免責事項

本記事は一般的な医学情報の提供を目的としており、個別の診断・治療方針を示すものではありません。症状や治療についての判断は、必ず主治医・専門医にご相談ください。記載内容は公開時点の公的情報・診療ガイドラインに基づいており、最新情報は国立がん研究センター「がん情報サービス」等でご確認ください。

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