急性胃腸炎とは?|内科医がわかりやすく解説【たまプラーザ】
急性胃腸炎は、突然の下痢・嘔吐・腹痛を主な症状とする消化器系の炎症性疾患です。多くの場合は数日以内に自然回復しますが、脱水が進む場合や特定の細菌感染が疑われる場合は医療機関での診察が必要になります。本記事では、急性胃腸炎の定義から原因・症状・治療・予防まで、内科医監修のもとわかりやすく解説します。
本記事は医療情報の提供を目的としており、特定の診断・治療を保証するものではありません。症状が気になる場合は、医師の診察を受けることをお勧めします。
急性胃腸炎とは?まずは病気の概要を押さえよう
急性胃腸炎の定義
急性胃腸炎とは、胃や小腸・大腸などの消化管に急速な炎症が生じ、下痢・嘔吐・腹痛・発熱などの症状が急に現れる状態の総称です。「急性」とは症状が突然発症し、短期間(通常1〜2週間以内)で経過することを意味します。
「感染性胃腸炎」との違い
急性胃腸炎の多くはウイルスや細菌などの病原体が原因で起こるため、「感染性胃腸炎」とほぼ同義で使われることがあります。一方、薬剤・アルコール・ストレスなど感染以外の原因で生じるものも広義の「急性胃腸炎」に含まれます。なお、ストレス性胃腸炎とは?原因・症状・対処を内科医が解説【たまプラーザ】でも関連する情報をまとめていますので、あわせてご参照ください。
どんな人に起こりやすいか
年齢を問わず誰にでも発症しうる疾患ですが、乳幼児・高齢者・免疫機能が低下している方は重症化しやすい傾向があります。また、冬季はノロウイルスが流行しやすく、夏季は細菌性食中毒が増加する季節的な特徴があります。
急性胃腸炎の主な原因
ウイルスによる急性胃腸炎
国内で最も多い原因はノロウイルスで、厚生労働省の食中毒統計でも感染者数の多くを占めます。そのほかロタウイルス(特に乳幼児)、アデノウイルス、アストロウイルスなども原因となります。
細菌による急性胃腸炎
カンピロバクター・サルモネラ・腸炎ビブリオ・病原性大腸菌(O157など)・黄色ブドウ球菌などが代表的な原因菌です。食肉・生卵・生魚・井戸水などを介して感染するケースが多くみられます。
食中毒との関係
細菌性急性胃腸炎の多くは食中毒として届け出の対象となります。食中毒についてはアニサキスの症状|内科医がわかりやすく解説【たまプラーザ】でも解説していますのでご覧ください。
まれに感染以外が原因となるケース
NSAIDs(解熱鎮痛薬)などの薬剤、過度のアルコール摂取、ストレスや自己免疫疾患が原因となることもあります。感染が否定された場合は、より詳しい検査が必要になることがあります。
急性胃腸炎の主な症状
下痢
水様性〜軟便が繰り返され、1日に何度も起こることがあります。通常は粘液便や血便を伴わないケースが多いですが、細菌性の場合は血便が出ることもあります。
嘔吐
特にウイルス性胃腸炎(ノロウイルスなど)では突然の嘔吐で発症することが多く、食事や水分の摂取直後に嘔吐してしまうケースもあります。
腹痛・腹部の不快感
へその周囲や下腹部を中心とした痛みや、腸が動く際のけいれん性の痛みが現れることがあります。
発熱
ウイルス性では軽度(37〜38℃台)の発熱が多く、細菌性ではより高い発熱を伴うことがあります。
脱水に注意が必要なサイン
下痢・嘔吐が続くと水分・電解質が失われ脱水状態になりやすくなります。口の渇き・尿量の減少・皮膚の弾力低下・ぐったりするなどのサインが現れたら早めの対応が必要です。
急性胃腸炎の診断はどう行うか
医療機関で確認するポイント
問診では症状の始まり・経過・食事内容・周囲の感染状況などを確認します。腹部診察(触診・聴診)で腸の動きや圧痛部位を評価します。
必要に応じて行う検査
通常の急性胃腸炎では血液検査や便検査が行われます。重症例や原因菌の特定が必要な場合は便培養・迅速抗原検査(ノロウイルス等)・腹部エコーなどが選択されます。
受診時に伝えるとよい情報
- 症状が始まった日時と経過
- 最後に食べたもの・飲み物(外食・生食の有無)
- 周囲に同様の症状がいる人がいるか
- 現在服用中の薬(お薬手帳をご持参ください)
急性胃腸炎の治療の基本
まずは水分補給が重要
脱水予防のため、経口補水液(ORS)などを少量ずつこまめに摂取することが基本です。スポーツドリンクは電解質バランスが異なるため、可能であれば経口補水液が推奨されます。
食事はどうするか
嘔吐が落ち着いてきたら、消化のよいもの(おかゆ・うどん・豆腐など)から少量ずつ再開します。脂っこいものや繊維の多いものは回復後しばらく控えるのが無難です。
薬物治療について
整腸薬(乳酸菌製剤など)は腸内環境を整える目的で使われることがあります。止瀉薬(下痢止め)は、感染性胃腸炎では病原体の排出を妨げる可能性があるため、自己判断での使用には注意が必要です。
抗菌薬が必要となる場合
ウイルス性胃腸炎には抗菌薬は効果がありません。カンピロバクターや重症のサルモネラ感染など一部の細菌性胃腸炎では、医師の判断のもと抗菌薬が使用されることがあります。自己判断での服薬は避けてください。
自宅での過ごし方と注意点
休養のとり方
十分な休息をとり、体力の回復を優先します。下痢・嘔吐が続く間は無理に食事をとらず、水分補給を優先しましょう。
水分補給のコツ
一度に大量に飲もうとすると嘔吐を誘発することがあります。スプーン1〜2杯程度を5〜10分おきに少しずつ摂取することが有効です。
食事再開の目安
嘔吐が6〜8時間程度止まり、水分が問題なく摂取できるようになってきたら、消化のよい食品から少量ずつ試します。
家族や周囲への感染対策
ノロウイルスなどは感染力が非常に強いため、トイレ・ドアノブ・洗面台などの共用部分の消毒(次亜塩素酸ナトリウム液が有効)と、徹底した手洗いが重要です。嘔吐物・便の処理時は使い捨て手袋とマスクを使用し、換気を行ってください。
こんな症状があれば早めに受診を
脱水が疑われる場合
尿が出ない・目がくぼむ・ぐったりして動けないなどの症状は重篤な脱水のサインです。速やかに医療機関を受診してください。
高熱が続く場合
38.5℃以上の高熱が2〜3日以上続く場合は、細菌感染や別の疾患の可能性もあります。
血便や強い腹痛がある場合
便に血が混じる、腹痛が非常に強い・持続するといった症状は、虚血性大腸炎とは?原因・症状・対処を内科医が解説【たまプラーザ】でも取り上げているような別の疾患が隠れている可能性があります。早めの受診をお勧めします。
高齢者・乳幼児・基礎疾患がある場合
免疫機能が低い方は症状が急速に悪化しやすいため、早めに医師へご相談ください。
急性胃腸炎を予防するには
手洗いの重要性
食事前・トイレ後は石けんと流水で30秒以上しっかり手洗いを行います。アルコール消毒はノロウイルスには効果が低いため、流水での手洗いが基本です。
食品の十分な加熱
食肉・魚介類は中心部まで十分に加熱(75℃・1分以上が目安)します。カキなどの二枚貝は特に注意が必要です。
調理器具・環境の衛生管理
まな板・包丁・スポンジなどの定期的な消毒・乾燥を行い、生肉と野菜を切るまな板は分けることが推奨されます。
感染を広げないための工夫
感染者の嘔吐物・便は素手で触れず、適切に処理します。症状がある間は食品の調理を避け、できる限り家族と隔離して生活することが感染拡大防止につながります。
急性胃腸炎と似た病気との違い
ただの食あたりとの違い
「食あたり」は食中毒の俗称であり、細菌や毒素によって起こる急性胃腸炎の一形態です。特定の食品摂取後に短時間で発症する点が特徴です。
ほかの消化器疾患との見分け方
虫垂炎(盲腸)・腸閉塞・炎症性腸疾患・腸管虚血なども腹痛・下痢・嘔吐を呈することがあります。右下腹部の強い痛み、血便の持続、症状の改善が乏しい場合などは急性胃腸炎以外の疾患を疑い、医師の診察が必要です。
たまプラーザ周辺で受診を考えるときのポイント
内科を受診する目安
下痢・嘔吐が丸1〜2日以上続く、水分が摂れない、高熱がある、症状が回復傾向にないといった場合は内科を受診することをお勧めします。
早めの受診が望ましいケース
乳幼児・高齢者・妊娠中の方・免疫抑制薬や抗がん剤を使用中の方、血便・強い腹痛・高熱を伴う方は、症状の経過を自己判断せず早めにご予約・お問い合わせよりご相談ください。
よくある質問(FAQ)
急性胃腸炎は何日くらいで治りますか?
ウイルス性胃腸炎の多くは、適切な水分補給と休養により3〜7日程度で症状が改善します。細菌性の場合は原因菌によって異なり、1〜2週間かかることもあります。症状が長引く場合は医師にご相談ください。
下痢や嘔吐があるとき、食べない方がよいですか?
嘔吐が激しい時期は無理に食べる必要はありませんが、水分補給は継続することが重要です。嘔吐が落ち着いてきたら、おかゆや豆腐など消化のよいものから少量ずつ試してみましょう。
市販薬を使ってもよいですか?
整腸薬(ビオフェルミン等)は比較的安全に使用できるとされています。一方、下痢止め薬は感染性胃腸炎では病原体の体外への排出を妨げる可能性があるため、自己判断の使用には注意が必要です。症状が強い場合は薬局での相談または受診をお勧めします。
急性胃腸炎はうつりますか?
ウイルス性(特にノロウイルス)の感染性胃腸炎は感染力が非常に強く、人から人への飛沫・接触感染が起こります。手洗い・環境の消毒・嘔吐物の適切な処理を徹底してください。細菌性の多くは食品を介した感染が主ですが、一部は人から人にも感染します。
何科を受診すればよいですか?
内科または消化器内科が適しています。小児は小児科を受診してください。下痢・嘔吐・腹痛の程度が強い、または改善しない場合はためらわず受診を検討してください。
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本記事の監修医師
佐藤 靖郎(さとう やすお)
医師(医学博士)/AIプラスクリニックたまプラーザ 監修医
専門:消化器・内科(消化器外科/内視鏡/一般内科)
略歴: 1988年 福島県立医科大学医学部卒業、医師免許取得。1997年 同大学大学院修了、博士号取得。国立国際医療研究センター、東京新宿メディカルセンター、NTT東日本関東病院、横浜市立大学関連病院、国立病院機構横浜医療センター外科医長・救命救急センター副部長、済生会若草病院(横浜市)外科部長・内視鏡センター・診療部長を歴任。丸亀医療センター・佐々木病院副理事長、日立おおみか病院理事を経て現在に至る。
公的役割: 厚生労働省「地域連携クリティカルパスモデルの開発」班研究員、全国保健所長会 地域連携パス推進班アドバイザー、神奈川県がん診療連携協議会 地域連携クリティカルパス部会 相談役。
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