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アニサキスの症状|みぞおちの激痛から受診の目安・予防まで消化器外科専門医が解説

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アニサキスの症状|みぞおちの激痛から受診の目安・予防まで消化器外科専門医が解説

生の魚介類を食べた後に突然おなかが痛くなった経験はありませんか?その痛みの原因のひとつとして近年注目されているのが「アニサキス症」です。本記事では、消化器外科専門医の立場から、アニサキスで起こる症状の特徴・受診の目安・予防策をわかりやすく解説します。なお、実際の診断・治療は必ず医師の診察のもとで行われるものであり、本記事は情報提供を目的としたものです。

アニサキスとは?まず知っておきたい基礎知識

アニサキス(Anisakis 属)は、クジラやイルカなどの海棲哺乳類を最終宿主とする寄生虫です。幼虫の段階でサバ・アジ・イカ・サンマ・サーモンなどの魚介類の内臓や筋肉に寄生しており、これらを生食または加熱が不十分な状態で食べると、ヒトの消化管に迷い込み、消化管壁に侵入しようとすることで症状を引き起こすことがあります。

厚生労働省の統計によると、アニサキスによる食中毒は国内で年間数百件以上が報告されており、寄生虫による食中毒の中では最多となっています。特に生食文化が根付いている日本では身近なリスクといえます。

アニサキスで起こる主な症状

アニサキス症で現れる症状は、寄生する部位(主に胃か腸か)や個人の体質によって異なります。代表的なものは強い腹痛・吐き気・嘔吐ですが、症状の出方や強さには個人差があります。また、消化管症状とは別にアレルギー反応として現れるケースもあります。

胃アニサキス症の症状

最も多くみられるのが胃アニサキス症です。魚介類を食べてから数時間以内(目安として1〜8時間程度)に、みぞおちを中心とした強い腹痛が生じることがあります。吐き気や嘔吐を伴うことも多く、症状が急激に現れるのが特徴のひとつです。

痛みが波のように繰り返す(間欠的)こともあれば、持続的に続くこともあります。症状の強さは個人によって幅があり、「刺すような鋭い痛み」と表現されることが少なくありません。

腸アニサキス症の症状

アニサキスが小腸に到達し寄生した場合、胃アニサキス症より症状の出現が遅れる傾向があります。食後数時間〜数日後に、下腹部の痛み・腹部膨満感・吐き気・嘔吐などが現れることがあります。

腸での炎症が強くなると腸閉塞(腸が詰まった状態)に似た症状を呈することがあり、腸アニサキス症は胃アニサキス症より診断が難しいとされています。症状が遅れて出現するため、「数日前の食事が原因」と気づきにくいケースもあります。

なお、急性腸炎との鑑別が必要になる場合もあるため、自己判断せず医師に相談されることをお勧めします。

アニサキスアレルギーの症状

アニサキスに対するアレルギー反応として、消化管症状とは別に皮膚や全身に症状が現れることがあります。じんましん・かゆみ・発疹・顔や唇のむくみなどが代表的です。

さらに重篤なケースでは、呼吸困難・血圧低下・意識の変容を伴うアナフィラキシーショックに至る場合もあります。アナフィラキシーは生命に関わる可能性があるため、呼吸の苦しさや急激な体調の変化を感じた場合は、ためらわず救急車を要請してください。

症状が出るまでの時間の目安

種類 症状が出るまでの目安
胃アニサキス症 食後1〜8時間程度
腸アニサキス症 食後数時間〜2日程度
アレルギー反応 食後比較的早期〜遅発性のケースも

胃アニサキス症は比較的早い時間に症状が出やすい一方で、腸アニサキス症では遅れて現れることがあります。「食べてからだいぶ時間が経っているから違うかも」と判断せず、魚介類の生食歴がある場合には受診時に必ず申告することが大切です。

また、急性胃腸炎の症状と類似する場合もあるため、原因の特定には医師による診察が必要です。

アニサキスが疑われるときの対処

強い腹痛や吐き気・嘔吐、あるいはアレルギー症状が現れた場合は、自己判断で様子を見続けるのではなく、早めに医療機関を受診されることをお勧めします。

自宅でできること

受診するまでの間に家庭で取れる基本的な対応は以下の通りです。

  • 食事を控える:追加の刺激を避けるため、受診まで飲食を控えましょう。
  • 無理に吐かせない:嘔吐を無理に誘発することは体への負担となることがあります。
  • 症状を記録する:いつ、何を食べたか、いつから症状が出たかをメモしておくと受診時の問診に役立ちます。
  • 楽な姿勢で安静にする:強い痛みがある場合は無理に動かず、楽な体勢で安静を保ちましょう。

やってはいけないこと

  • 市販の胃腸薬や鎮痛剤だけで対処を続ける:一時的に症状が和らいでも、根本的な原因の確認にはなりません。
  • 我慢して放置する:腸閉塞や重篤なアレルギー反応への進展を見逃す可能性があります。
  • 自己流で異物を取り出そうとする:危険であり、医師以外が行うべきことではありません。

医療機関で行う診断と治療

受診した際は、食事の内容・時間・症状の経過などを詳しく問診されます。その情報をもとに、必要に応じて内視鏡検査(胃カメラ・大腸カメラ)や画像検査が行われます。

急性胃腸炎など類似した病態との鑑別も含めて、総合的に判断されます。

胃アニサキス症の内視鏡治療

胃アニサキス症と診断された場合、上部消化管内視鏡(胃カメラ)を用いて虫体を摘除することがあります。ただし、内視鏡の適応や実施のタイミングは、症状の程度・経過・所見などを医師が総合的に判断して決定します。内視鏡で虫体を摘除することにより、症状が改善する場合があります。

腸アニサキス症の対応

腸アニサキス症では内視鏡での摘除が困難なことも多く、経過観察や絶食・点滴による管理が中心となります。症状や重症度によっては入院管理が必要となることもあり、治療方針は医師が個々の状態に応じて判断します。

アレルギー症状への対応

じんましんや皮膚症状にとどまらず、呼吸困難・血圧低下などが伴う場合はアナフィラキシーとして救急対応が必要です。自己判断で帰宅せず、速やかに救急外来へ受診してください。

受診の目安

以下のいずれかに当てはまる場合は、早めの受診または救急要請を検討してください。

  • 魚介類の生食後にみぞおちや腹部の強い痛みが出現した
  • 吐き気・嘔吐が続いている
  • じんましん、かゆみ、顔や唇のはれが出ている
  • 呼吸が苦しい、めまい、意識がぼんやりするなどがある
  • 症状が時間とともに悪化している

「少しくらいなら大丈夫だろう」と自己判断で様子を見続けることはリスクを高める可能性があります。

アニサキスを予防する方法

厚生労働省はアニサキスによる食中毒の予防策として、加熱・冷凍・目視による確認を推奨しています。

家庭でできる予防のポイント

  • 十分に加熱する:中心部まで70℃以上に加熱するか、60℃であれば1分以上の加熱でアニサキスは死滅するとされています(厚生労働省の情報に基づく)。
  • 冷凍する:−20℃以下で24時間以上(目安)冷凍することで感染リスクを下げることができます。家庭用冷凍庫の温度設定を確認してから行ってください。
  • 内臓を早めに取り除く:アニサキスは魚の内臓に多く寄生しており、鮮度が落ちると筋肉部位へ移行することがあるため、新鮮なうちに内臓を除去することが重要です。
  • 目視で確認する:捌いた際に半透明の糸状の虫体が見えることがあります(ただし目視だけでは完全に除去できない場合があります)。

外食や購入時の注意点

  • 生食用の表示や提供方法を確認し、信頼できる店舗を選びましょう。
  • 心配な場合は提供方法(冷凍歴の有無など)を店舗に確認することも選択肢のひとつです。
  • 「酢漬け」「塩漬け」「わさび」などの処理ではアニサキスは死滅しないとされているため、注意が必要です(厚生労働省の情報に基づく)。

よくある質問

アニサキスの症状は自然に治りますか?

アニサキスは時間の経過とともに死滅し、軽快する場合もあると報告されています。ただし、それまでの間に症状が強くなる・腸閉塞に進展するリスクもあります。「いつか自然に治るだろう」と自己判断で放置することは望ましくなく、特に強い痛みや嘔吐が続く場合は速やかに受診してください。

何科を受診すればよいですか?

消化器症状が中心であれば消化器内科・消化器外科が一般的な選択肢です。夜間や休日など受診が難しい場合は救急外来を利用してください。アレルギー症状(じんましん・呼吸困難など)が前面に出ている場合はアレルギー科や救急外来での対応が適しています。

どんな魚で注意が必要ですか?

アニサキスによる食中毒が多く報告されている魚介類としては、サバ・アジ・イワシ・サンマ・カツオ・イカ・サーモン(養殖以外)などが挙げられます(厚生労働省の情報に基づく)。ただし、これらに限らず海水魚一般に注意が必要とされています。

市販の胃薬で対応できますか?

市販の胃薬は症状を一時的に和らげることがあるかもしれませんが、アニサキス症の原因そのものに対処するものではありません。強い腹痛や嘔吐が続く場合は、市販薬だけで対応しようとせず、医療機関への受診を優先してください。

まとめ

アニサキス症は、生魚を食べた後に起こる強いみぞおちの痛みや吐き気が代表的な症状です。胃と腸では症状の出方や時間が異なり、アレルギー反応として全身症状が現れることもあります。予防には十分な加熱・冷凍が有効とされていますが、症状が現れた場合は自己判断での放置を避け、医師の診察を受けることが大切です。胃腸炎の治し方と混同されやすいケースもありますが、原因の確認には医師による診察が前提となります。

腹痛・嘔吐・アレルギー症状が気になる場合はお気軽にご相談ください。

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本記事の監修医師

佐藤 靖郎(さとう やすお)
医師(医学博士)/AIプラスクリニックたまプラーザ 理事長
専門:消化器外科

福島県立医科大学大学院 外科学修了。NTT東日本関東病院や国立病院機構横浜医療センター等で外科医長・救命救急センター副部長を歴任。厚生労働省の地域連携クリティカルパスモデル開発の班研究員、神奈川県がん診療連携協議会相談役などを務める。

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