胸焼けとは?|内科医がわかりやすく解説【たまプラーザ】
胸焼けは、胸の中央からみぞおちにかけて「じりじりと焼けるような」「熱い」感覚が生じる症状で、胃酸が食道へ逆流することで起こるケースが多いとされています。一時的な不快感で収まることもありますが、繰り返す場合は逆流性食道炎などの消化器疾患が背景にある可能性があるため、適切に対処することが大切です。
この記事では、胸焼けの定義・原因・セルフケアの方法から、受診の目安までをわかりやすくまとめました。
胸焼けとは?まずは症状の意味を確認
胸焼けの定義
胸焼けとは、胸骨(むね)の裏側からみぞおちにかけて感じる灼熱感(じゃくねつかん)のことを指します。医学的には「heartburn(ハートバーン)」と呼ばれ、胃酸や胃の内容物が食道へ逆流することで食道粘膜が刺激され、焼けるような感覚が生じると考えられています。
「胸が痛い」「みぞおちが熱い」との違い
胸焼けは「熱い・焼ける」という感覚が中心ですが、「締め付けられる・押される」といった胸の痛みは狭心症や心筋梗塞など心臓疾患のサインである場合があります。また、みぞおちの灼熱感は胃炎や胃潰瘍でも起こります。似た症状でも原因が異なるため、自己判断には限界があります。
胸焼けでよくある症状
胸のあたりが焼けるような感じ
胸骨の裏側からみぞおちにかけて、じりじりと熱い・焼けるような感覚が最も典型的な症状です。
のどの違和感や酸っぱいものが上がる感じ
胃酸が食道の上部まで逆流すると、のどのイガイガ感や「酸っぱいものが口まで上がってくる(呑酸:どんさん)」という感覚を伴うことがあります。
食後や横になったときに起こりやすい症状
食後30分〜1時間以内や、就寝直前・横になったタイミングで症状が強くなる傾向があります。これは体位の変化や食後の胃内圧上昇によって逆流が起こりやすくなるためです。
胸焼けの主な原因
胃酸の逆流
食道と胃の境目にある「下部食道括約筋(かぶしょくどうかつやくきん)」が何らかの理由で緩むと、胃酸が食道へ逆流しやすくなります。食道粘膜は胃酸への耐性が低いため、逆流した胃酸が粘膜を刺激し、胸焼けとして感じられます。
逆流性食道炎との関係
胸焼けの代表的な原因疾患が「逆流性食道炎」です。胃酸の逆流が繰り返されることで食道粘膜に炎症が生じます。詳しくは親ページ 逆流性食道炎とは?原因・症状・治し方まで内科医が解説【たまプラーザ】 もあわせてご覧ください。
胸焼けを起こしやすい食生活や生活習慣
脂質の多い食事・過食・早食い・アルコール・コーヒー・チョコレート・柑橘類などは下部食道括約筋を緩めたり、胃酸分泌を増やしたりする作用があるとされています。
薬の影響や妊娠などで起こることもある
カルシウム拮抗薬・硝酸塩製剤・抗コリン薬など一部の薬剤が括約筋を弛緩させ、胸焼けを引き起こすことがあります。また、妊娠中はホルモン変化と子宮による腹圧上昇から胸焼けが生じやすくなります。
胸焼けと似た症状との違い
胃もたれとの違い
胃もたれは胃が「重い・もたれる」という不快感で、胃の消化機能の低下が主な原因です。一方、胸焼けは「熱い・焼ける」という感覚で、食道への酸逆流が主因という点が異なります。
胃痛との違い
胃痛はみぞおち周辺に生じる「痛み」が主体で、胃炎・胃潰瘍・機能性ディスペプシアなどが原因として挙げられます。胸焼けと同時に起こることもあるため、区別が難しい場合は医師に相談することをおすすめします。
心臓や食道の病気との見分けが必要な場合
胸の焼ける感覚が強い場合、狭心症や食道けいれん、好酸球性食道炎なども鑑別が必要です。とくに「胸の締め付け感」「冷や汗」「左腕への放散痛」を伴う場合は、速やかに医療機関を受診してください。
胸焼けが起こりやすいタイミング
食べすぎ・早食いのあと
一度に大量に食べると胃内圧が上がり、逆流が起こりやすくなります。
脂っこい食事や刺激物のあと
脂肪分の多い食事は胃の排出を遅らせ、下部食道括約筋を弛緩させる作用があるとされています。
就寝前や前かがみになったとき
重力の補助がなくなる横臥位や、前かがみの姿勢(腹圧上昇)は逆流を助長しやすい体勢です。
胸焼けを起こしやすい要因
肥満や腹圧の上昇
内臓脂肪が増えると腹腔内の圧力(腹圧)が上昇し、胃酸が逆流しやすくなります。
喫煙や飲酒
タバコは下部食道括約筋の圧を低下させ、アルコールは胃酸分泌を亢進させるとされています。
ストレスや睡眠不足
ストレスは胃酸分泌の増加や食道の知覚過敏に影響するとされており、睡眠不足も自律神経のバランスを乱し症状を悪化させる可能性があります。
便秘や姿勢の影響
便秘による腹圧上昇や、猫背・前傾姿勢も胃酸逆流のリスクを高める要因として知られています。
胸焼けのセルフチェック
受診を考えたい症状のチェックポイント
以下に当てはまる場合は、早めに消化器内科・内科を受診することをご検討ください。
- 胸焼けが週2回以上、2週間以上続いている
- 食事が飲み込みにくい(嚥下困難)
- 体重が急に減った
- 吐血・黒色便がある
- 市販薬を使っても改善しない
生活習慣の見直しで様子をみやすいケース
食べすぎや飲酒の翌日などに一時的に胸焼けが起きた場合は、食事内容や生活習慣を整えることで改善する可能性があります。ただし、症状が繰り返す場合は受診をおすすめします。
胸焼けを和らげるためにできること
食事の工夫
1回の食事量を少なめにし、よく噛んでゆっくり食べることが大切です。脂質の多い食事・チョコレート・コーヒー・アルコール・炭酸飲料・柑橘類は控えめにしましょう。
食後の過ごし方
食後すぐに横になるのは避け、少なくとも2〜3時間は上体を起こした状態を保つことが勧められています。
睡眠時の工夫
就寝時に上体(頭部側)を10〜15cm程度高くして寝ると、重力の効果で逆流を軽減できる場合があります。
市販薬を使う前に確認したいこと
市販の制酸薬やH₂ブロッカーで一時的に症状が和らぐことがあります。ただし、2週間以上使用しても改善しない場合や、症状が強い場合は自己判断を続けず医師に相談することをおすすめします。逆流性食道炎の市販薬 の選び方については関連記事もご参照ください。
受診の目安
早めに内科・消化器内科を受診したい症状
- 胸焼けが2週間以上続く
- 飲み込みにくさや声のかすれを伴う
- 胃酸の逆流感(呑酸)が強い
- 市販薬で改善しない
救急受診を考えるべき症状
「胸を締め付けられる」「冷や汗・息切れ・左腕の痛みを伴う」場合は、心筋梗塞など緊急性の高い疾患が疑われるため、速やかに救急車を呼ぶか救急外来を受診してください。
何科を受診すべきか
まずは内科または消化器内科を受診することをおすすめします。胃内視鏡(胃カメラ)による精密検査が必要と判断された場合も、消化器内科で対応可能です。
医療機関ではどんな検査や診察をする?
問診で確認すること
症状の出るタイミング・頻度・持続期間、食生活や服用薬、喫煙・飲酒習慣などを確認します。
必要に応じて行う検査
上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)が最も確実な検査で、食道粘膜の炎症・潰瘍・バレット食道の有無を直接確認できます。そのほか、ピロリ菌検査や食道内pH測定などが行われる場合もあります。
逆流性食道炎以外の病気を確認することもある
胸焼けに似た症状は、機能性胸焼け・食道アカラシア・好酸球性食道炎など、逆流性食道炎以外の病気で起こることもあります。検査で正確な診断を受けることが適切な治療への近道です。
胸焼けの治療はどのように進める?
生活習慣の改善
食事・体重管理・禁煙・節酒・睡眠姿勢の改善が治療の基本となります。詳しくは 逆流性食道炎を自力で治すには もご参照ください。
薬による治療
プロトンポンプ阻害薬(PPI)やカリウムイオン競合型アシッドブロッカー(P-CAB)が主に使われます。いずれも胃酸の分泌を抑える薬で、医師の処方のもと服用します。胃酸を抑える薬 の種類や特徴については関連記事で詳しく解説しています。
症状が続くときの対応
薬物療法でも改善が不十分な場合は、治療薬の変更・増量・追加が検討されます。まれに外科的治療(腹腔鏡下噴門形成術など)が適応となるケースもあります。
胸焼けを繰り返さないための予防
日常生活で意識したいポイント
- 腹八分目を意識し、規則正しい食事を心がける
- 食後2〜3時間は横にならない
- 適正体重を維持する
- 禁煙・節酒を継続する
- 猫背や前かがみ姿勢を改善する
再発しやすい人が気をつけたいこと
一度逆流性食道炎と診断された方は再発率が高いとされています。症状が落ち着いても生活習慣の改善を継続し、定期的に医師のフォローを受けることが大切です。
よくある質問(FAQ)
胸焼けは自然に治ることがありますか?
食べすぎや飲酒などが原因の一時的な胸焼けであれば、食事を控えて安静にすることで数時間〜1日程度で落ち着く場合があります。ただし、週に2回以上・2週間以上続く場合は自然に治ることは少なく、受診をおすすめします。
胸焼けのときに水を飲むのはよいですか?
少量の水を飲むことで食道に残った胃酸を洗い流す効果が期待でき、症状が和らぐことがあります。ただし、大量に飲むと胃内圧が上がって逆流を悪化させる場合もあるため、少量ずつにとどめましょう。
胸焼けが続くのは逆流性食道炎の可能性がありますか?
胸焼けが繰り返し起こる場合、逆流性食道炎の可能性があります。ただし、確定診断には胃カメラなどの検査が必要です。「症状があるから逆流性食道炎」と自己判断せず、消化器内科を受診して検査を受けることをおすすめします。
胸焼けとげっぷが一緒に出るのはなぜですか?
胃や食道に空気が溜まりやすい状態(空気嚥下症・炭酸飲料の多飲など)や、胃酸逆流が続いている場合に、げっぷと胸焼けが同時に起こることがあります。どちらも胃食道逆流の症状として関連していることが多いとされています。
妊娠中の胸焼けはどう考えればよいですか?
妊娠中はプロゲステロンの増加により下部食道括約筋が弛緩しやすくなること、また子宮が大きくなることで腹圧が上昇することが重なり、胸焼けが生じやすい状態になります。市販薬の使用には制限があるため、症状が強い場合や続く場合は産婦人科または内科医に相談してください。
市販薬で様子をみてもよいですか?
軽度の一時的な胸焼けであれば市販薬で対応できる場合があります。ただし、2週間使用しても改善しない場合・症状が週2回以上ある場合・飲み込みにくさや体重減少を伴う場合は、医師の診察を受けることをおすすめします。
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本記事の監修医師
佐藤 靖郎(さとう やすお)
医師(医学博士)/AIプラスクリニックたまプラーザ 監修医
専門:消化器・内科(消化器外科/内視鏡/一般内科)
略歴: 1988年 福島県立医科大学医学部卒業、医師免許取得。1997年 同大学大学院修了、博士号取得。国立国際医療研究センター、東京新宿メディカルセンター、NTT東日本関東病院、横浜市立大学関連病院、国立病院機構横浜医療センター外科医長・救命救急センター副部長、済生会若草病院(横浜市)外科部長・内視鏡センター・診療部長を歴任。丸亀医療センター・佐々木病院副理事長、日立おおみか病院理事を経て現在に至る。
公的役割: 厚生労働省「地域連携クリティカルパスモデルの開発」班研究員、全国保健所長会 地域連携パス推進班アドバイザー、神奈川県がん診療連携協議会 地域連携クリティカルパス部会 相談役。
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