下痢が緑色になるのはなぜ?原因・受診の目安・自宅での対応を医師が解説
トイレで便を確認したとき、普段と異なる緑色の便や下痢が出ると、「何か悪い病気では?」と驚かれる方も少なくありません。結論から申し上げると、緑色の下痢は必ずしも重篤な疾患を示すわけではなく、食事内容や腸の通過速度など、比較的身近な原因で起こることがあります。一方で、発熱・腹痛・血便・脱水症状などを伴う場合は、早めに医療機関を受診することが大切です。
本記事では、下痢の基本的な知識を踏まえながら、緑色の下痢が起こる仕組みや主な原因、自宅での対応、そして受診を検討すべきサインについて、医学的根拠に基づいて解説します。なお、ここに記載した内容はあくまで一般的な情報であり、診断・治療は医師の診察が前提となります。
下痢が緑になるのはなぜ?まず知っておきたい基本
便の色と胆汁の関係
便の色は主に「胆汁」に含まれる色素によって決まります。胆汁は肝臓で産生され、胆嚢に蓄えられた後、十二指腸へ分泌されます。胆汁に含まれる「ビリルビン」という色素は、もともと黄緑色をしており、腸内を移動する過程で腸内細菌の働きや酸化によって徐々に変化し、最終的に茶褐色の便となります。
食べたものや腸の状態、腸内細菌のバランスによっても便の色は変化するため、黄色・茶色・緑がかった色など、ある程度の幅があることは自然なことです。
下痢で緑色になりやすい理由
通常、食べ物が口から肛門まで移動するのに24〜72時間程度かかります。腸の蠕動(ぜんどう)運動が速くなると、腸内容物が短時間で通過してしまい、ビリルビンが十分に変化しきれないまま排出されます。その結果、胆汁の黄緑色がそのまま残り、便が緑色に見えることがあります。下痢のときは腸の通過時間が短くなりやすいため、緑色の便が出やすい状況にあります。
下痢が緑色になる主な原因
食べ物や飲み物の影響
ほうれん草・小松菜・ブロッコリーなどの緑黄色野菜を大量に摂取した場合、青汁・抹茶・クロロフィルを多く含む食品を摂った場合、あるいは食品や飲料に含まれる緑色の着色料(食用色素)が影響して、便が緑色になることがあります。この場合は体の異常ではなく、食事との関連が明確であれば比較的心配が少ないとされています。
胃腸炎・食中毒などの感染症
ウイルス性胃腸炎(ノロウイルス・ロタウイルスなど)や細菌性食中毒(サルモネラ菌・カンピロバクターなど)が原因となる場合があります。感染によって腸の蠕動運動が活発になり、胆汁が十分に変化しないまま排出されることで緑色の下痢が生じることがあります。腹痛・発熱・嘔吐を伴う場合は感染症を念頭に置き、症状が強い場合や続く場合は受診を検討してください。
ストレスや自律神経の乱れ
自律神経のバランスが崩れると腸の動きが乱れ、便の通過時間が変化することがあります。過敏性腸症候群(IBS)などでも便の性状や色が変化することが知られていますが、ストレスのみで必ず緑色の下痢が起こるわけではありません。生活習慣の変化や精神的ストレスが重なるタイミングで症状が出る場合は、その可能性の一つとして考慮されます。
薬やサプリメントの影響
抗生物質は腸内細菌のバランスを変化させるため、便の色が緑色になることがあります。また、鉄剤は便を黒っぽくする一方で、過剰な場合に緑がかることもあります。サプリメントに含まれるクロロフィル(葉緑素)なども便色に影響することがあります。服薬中に便色の変化に気づいた場合は、処方医や薬剤師に相談することをお勧めします。
胆汁の流れや消化吸収の異常
まれなケースとして、胆道疾患・膵臓疾患・小腸の吸収障害などにより、胆汁の分泌量や腸内での変化に異常が生じ、便色が変わることがあります。この場合は他の症状(黄疸・体重減少・持続する腹痛など)を伴うことが多く、単独で緑色の便だけが現れることは少ないとされています。
症状から考える見分け方
食事後に一時的に緑色の下痢が出た場合
直前に緑黄色野菜・青汁・着色料を含む食品を多く摂取していた場合、それが原因の可能性があります。1〜2回で治まり、発熱・腹痛・血便などの他症状がなければ、食事との関連を確認しながら様子を見ることも一つの選択肢です。
何度も続く、または腹痛を伴う場合
緑色の下痢が複数日にわたって続く場合や、強い腹痛を伴う場合は、感染症や炎症性疾患なども念頭に置く必要があります。大人の緑色の下痢について詳しくはこちらもご参照ください。
血便、黒い便、白っぽい便がある場合
緑色以外の便色異常、とくに血便(赤い便)・黒いタール状の便・白っぽい灰白色の便は、消化管出血や胆道閉塞など別の疾患が疑われることがあります。これらが見られた場合は、早めに医療機関を受診してください。
発熱、嘔吐、脱水症状を伴う場合
高熱・激しい嘔吐・水分がまったく摂れない状態は脱水症状につながります。夏場の緑色の下痢に発熱や倦怠感を伴う場合は熱中症と下痢の関係も確認しておくと参考になります。水分補給が十分にできない場合は、医療機関への相談を検討してください。
自宅でできる対応
水分補給の基本
下痢のときは水分・電解質が失われやすいため、脱水予防が最優先です。一度に大量に飲もうとすると嘔吐を誘発することがあるため、少量(スプーン1〜2杯から)をこまめに摂取することが基本とされています。経口補水液(ORS)は水と塩分・糖分のバランスが整っており、脱水予防に適した飲み物として知られています。スポーツドリンクは糖分が多いため、医療機関で推奨される経口補水液の使用が望ましい場合があります。
食事の調整
下痢が続く間は、消化の良い食事(おかゆ・うどんなど)を少量ずつ摂ることが一般的に勧められています。脂質の多い食事・香辛料・アルコール・乳製品は腸への刺激となる可能性があるため、症状が落ち着くまで一時的に控えることが推奨されます。
市販薬を使う前の注意
下痢止め(止瀉薬)については、感染性腸炎(細菌・ウイルスによる下痢)の場合、安易に使用すると腸内の病原体や毒素の排出を妨げ、症状が長引く可能性があることが指摘されています。市販の下痢止め薬の選び方・注意点についても事前にご確認ください。自己判断での連用は避け、受診時に医師へ相談することをお勧めします。
受診を検討すべきサイン
診断・治療は医師の診察が前提です。以下はあくまで目安であり、ご自身の状態に不安がある場合は早めにご相談ください。
早めに受診したい症状
- 下痢が2〜3日以上続いている
- 強い腹痛・腹部の張りがある
- 38℃以上の発熱がある
- 血便(赤い・黒い便)がある
- 水分が摂れず、尿量が明らかに減っている
- 体重が急激に減っている
すぐ受診・救急相談を考える症状
- 意識がぼんやりする・ろれつが回らない
- 腹部に非常に強い痛みがある
- 長時間まったく排尿がない
- 激しい嘔吐が止まらない
このような症状がある場合は、救急相談(#7119)への電話や救急医療機関への受診を検討してください。
医療機関では何を確認するのか
問診で聞かれること
受診の際は、以下の情報を事前に整理しておくとスムーズです。
- 下痢の始まった時期・回数・便の色や形状
- 直前に食べたもの・飲んだもの
- 発熱・腹痛・嘔吐の有無と程度
- 現在服用中の薬・サプリメント
- 海外渡航歴(最近の旅行など)
- 周囲に同様の症状の方がいるか
必要に応じて行う検査
症状に応じて、便検査(細菌・ウイルスの検出)、血液検査(炎症反応・脱水の程度・肝機能など)、腹部超音波検査や画像検査などが行われることがあります。いずれも症状や問診結果をもとに医師が判断します。
よくある質問
緑の下痢は食べ物が原因なら放置してよい?
食事内容との関連が明らかで、1〜2回で自然に治まり、他の症状(発熱・腹痛・血便など)がない場合は、様子を見ることもあります。ただし、数日続く場合や他の症状が出てきた場合は医療機関への受診をご検討ください。
子どもや高齢者で緑の下痢が出たら?
乳幼児や高齢者は体内の水分量が少なく、短時間で脱水症状に陥るリスクがあります。成人に比べて早めに医師へ相談することが望ましい場合があります。とくに乳幼児の場合は、かかりつけ小児科医への早期相談をお勧めします。
緑の下痢が続くときは何科を受診する?
まずは内科・消化器内科が適切な窓口となります。症状が非常に強い場合や緊急性が疑われる場合は、救急診療の利用も検討してください。
緑の下痢は感染する?
感染性胃腸炎が原因の場合、原因となるウイルスや細菌が感染するリスクがあります。排便後の丁寧な手洗い・アルコール消毒(ノロウイルスには次亜塩素酸ナトリウムが有効)、タオルの共用を避けるなど、基本的な衛生管理が重要です。
まとめ・受診の目安
緑色の下痢は、食事内容や腸の通過時間の短縮など比較的身近な原因で起こることがあり、それだけで直ちに重篤な疾患を示すわけではありません。しかし、発熱・強い腹痛・血便・嘔吐・脱水症状を伴う場合、あるいは症状が数日以上続く場合は、早めに医療機関を受診することが大切です。ご自身での判断が難しいと感じたときは、遠慮なく専門医にご相談ください。
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本記事の監修医師
佐藤 靖郎(さとう やすお)
医師(医学博士)/AIプラスクリニックたまプラーザ 理事長
専門:消化器外科
福島県立医科大学大学院 外科学修了。NTT東日本関東病院や国立病院機構横浜医療センター等で外科医長・救命救急センター副部長を歴任。厚生労働省の地域連携クリティカルパスモデル開発の班研究員、神奈川県がん診療連携協議会相談役などを務める。
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