訪問診療・在宅医療とは|対象・費用・依頼の流れを医師が解説する完全ガイド › 訪問診療・在宅医療を知る|費用と手続きを確認するためのまとめ › (本記事)
「医師が自宅に来てくれると聞いたけれど、いったい何の保険が使えて、費用はどのくらいかかるのだろう」——在宅医療を検討し始めたとき、多くのご家族がこの疑問にぶつかります。とりわけ居宅療養管理指導は、訪問診療と並んで在宅での療養を支える重要なサービスですが、「どの保険が使われるのか」「訪問診療と何が違うのか」が分かりにくく、費用の見通しが立てづらい制度です。
本記事では、居宅療養管理指導の仕組みと介護保険との関係を、親の費用目線で整理します。制度・費用の数値はいずれも2024年度介護報酬改定時点の目安です。改定のたびに変わる可能性がありますので、最新の情報は横浜市介護保険の案内ページや各保険者の窓口でご確認ください。費用の詳しい全体像については訪問診療・在宅医療を知る|費用と手続きを確認するためのまとめもあわせてご覧ください。
居宅療養管理指導という制度の全体像
居宅療養管理指導とは、医師・歯科医師・薬剤師・管理栄養士などの専門職が、通院困難な利用者の自宅を訪問して、療養上の管理や助言を行うサービスです。介護保険法に基づく「居宅サービス」の一つとして位置づけられており、費用は介護保険から給付されます(一部を除く)。
訪問診療と混同しやすいのですが、両者の根拠法が異なる点が重要です。
| 比較項目 | 訪問診療 | 居宅療養管理指導 |
|---|---|---|
| 根拠となる保険 | 医療保険(健康保険) | 介護保険 |
| 主な実施者 | 医師 | 医師・薬剤師・管理栄養士など |
| 目的 | 診察・治療・処方 | 管理・助言・指導 |
| 区分支給限度基準額 | 対象外(医療保険の自己負担のみ) | 対象外(限度額に含まれない) |
重要なのは、居宅療養管理指導は介護保険の区分支給限度基準額(いわゆる「介護保険の支給上限」)の枠外であることです。つまり、デイサービスや訪問介護などで限度額を使い切っていても、居宅療養管理指導の費用は別に給付されます(出典:厚生労働省 介護保険制度の概要)。
自己負担の目安:医師の訪問による場合の費用内訳
居宅療養管理指導の自己負担は、介護保険の負担割合(1〜3割)によって決まります。2024年度時点の介護報酬(医師が実施する場合)を1割負担で換算すると、概ね以下が目安です。
※1単位=約10円(地域により異なる)として計算。上記は単身または2人以上の在宅・単一建物の区分の一例で、実際の単位数は訪問する専門職の種別・同一建物かどうか・訪問回数により変わります。必ず担当ケアマネジャーや事業者にご確認ください。
ご注意:薬剤師・管理栄養士等による居宅療養管理指導の単位数は医師の場合と異なります。また、医療保険と介護保険が同時に適用される場面(医師が訪問診療と居宅療養管理指導を同日に行う場合など)は算定ルールが複雑になるため、クリニックやケアマネジャーへの確認を推奨します。
医療保険と介護保険の使い分け:費用に直結するポイント
在宅医療では「同じ医師が訪問しても、何の保険が使われるかが場面によって変わる」という点が費用の見通しを立てにくくします。
- 訪問診療(医療保険):計画的・定期的な診察・処方。自己負担は高額療養費制度の対象。
- 居宅療養管理指導(介護保険):診察の延長で行う管理・指導。自己負担は介護保険の負担割合で決まる。
- 往診(医療保険):急変時など臨時の訪問。計画外のため訪問診療とは算定が異なる。
このうち、高額療養費制度の対象になるのは医療保険の自己負担分のみです(厚生労働省 在宅医療の推進)。介護保険の自己負担は高額療養費の対象外ですが、同じく軽減制度(高額介護サービス費)があります。詳細は後述します。
医療保険と介護保険を組み合わせた費用の考え方については、訪問診療の料金表を見る前に知りたい医療保険と介護保険で詳しく整理していますので、あわせてご参照ください。
負担を軽くする制度:高額介護サービス費と負担限度額
介護保険にも自己負担の上限を設ける制度があります。
高額介護サービス費は、同一月に支払った介護保険の自己負担額が一定額を超えた場合に、超過分が払い戻される制度です(2024年度時点)。
※上記は概算です。所得区分の判定方法や上限額は改定・変更される場合があります。詳細は市区町村の介護保険担当窓口へご確認ください。
また、医療保険の高額療養費と介護保険の自己負担を合算して上限を設ける「高額医療・高額介護合算療養費制度」もあります。在宅医療を利用すると医療保険・介護保険の両方に自己負担が発生するケースが多いため、この合算制度の活用が費用軽減につながることがあります。在宅医療における高額療養費制度の詳しい活用法は在宅医療の費用は高額療養費でどう抑えられる?でも解説しています。
手続きの流れと準備に必要なもの
居宅療養管理指導を利用するには、原則として要介護(要支援)認定を受けていることが前提です。
退院時は「退院日が急に決まり、数日で療養先を整える必要がある」というケースも少なくありません。病院の医療ソーシャルワーカー(MSW)や退院調整看護師を早めに頼り、退院前カンファレンス(退院前に在宅医・ケアマネ・家族が集まって情報共有する場)への参加を依頼することで、引き継ぎが円滑になります。地域包括ケア病棟に入院している場合は原則60日という在院期間の上限があるため、逆算した準備が必要です。
準備書類:医療保険証・介護保険証・介護保険負担割合証・診療情報提供書(お持ちの場合)・お薬手帳。
準備の逆算:いつまでに何をすれば間に合うか
「まだ早いのでは」と感じるご家族は多いのですが、要介護認定の申請から結果が出るまで通常1か月程度かかります。退院後すぐに在宅サービスを使いたい場合は、入院中から申請を進めることが現実的です。
- 退院が1か月以内に見込まれる → 入院中に要介護認定を申請し、MSWへ在宅医の選定を相談する
- 退院後の通院が不安になってきた → かかりつけ医に相談しつつ、在宅医療の情報収集を始める
- 現在は通院できているが将来に備えたい → まず地域包括支援センターへ相談、情報のみ収集しておく
なお、現在のかかりつけ医との関係を断つ必要はありません。併診や引き継ぎの形での移行が可能ですので、焦らず段階的に検討できます。
当院の在宅診療の現場から
AIプラスクリニックたまプラーザでは、病院の地域連携室や医療ソーシャルワーカーからのご紹介を受け、退院前カンファレンスに在宅医として参加することがあります。そこでご家族と顔を合わせ、退院当日からの訪問診療開始に備えることで、退院直後の不安定な時期を切れ目なく支えられるよう努めています。
24時間の連絡体制を設け、退院後まもない急変時の夜間・休日対応も行っています。消化器外科・消化器内視鏡の経験を活かし、胃ろう管理・嚥下評価・栄養管理・在宅酸素への対応も可能です。地域の訪問看護ステーション・居宅介護支援事業所とも連携し、医師だけでなく多職種でご自宅での療養を支える体制を整えています。対応エリアはたまプラーザ・あざみ野・美しが丘・新石川など横浜市青葉区を中心とした地域で、隣接する都筑区・川崎市宮前区についてもご相談に応じます。
受診・相談の目安
以下に当てはまる場合は、在宅医療の利用を具体的に検討するタイミングといえます。
- 週に1回以上の通院が体力的・移動面で難しくなってきた
- 退院後の療養先が決まっておらず、「自宅に帰れるか」の見通しが立たない
- 病院から「自宅か施設か」の判断を急かされているが、在宅医療という選択肢を検討したい
- 介護保険の申請をどこから始めればよいか分からない
- 現在通院中だが、今後の通院継続が家族の負担になっていると感じる
費用は制度の使い方で大きく変わります。ご家族の状況に当てはめた概算をお伝えできますので、ご予約・お問い合わせよりお気軽にご相談ください。ご本人が来院できない場合のご家族だけのご相談も承っています。
在宅医療に関する相談の進め方は訪問診療・在宅医療を知る|相談・依頼するためのまとめでも整理しています。
よくある質問
Q. 要介護認定を受けていなくても居宅療養管理指導は使えますか?
介護保険の居宅療養管理指導は、要介護1〜5または要支援1〜2の認定を受けていることが原則です。認定前の方や自立(非該当)の方は医療保険の訪問診療の枠組みで対応することになります。まず主治医またはお住まいの市区町村の介護保険担当窓口にご相談ください。
Q. 居宅療養管理指導の費用は介護保険の支給限度額に含まれますか?
含まれません。居宅療養管理指導は介護保険の区分支給限度基準額の対象外のため、他のサービスで限度額を使い切っていても別途利用できます。ただし自己負担は発生しますので、総額で見た費用確認はケアマネジャーにご相談ください。
Q. 訪問診療と居宅療養管理指導は同じ日に受けられますか?
同一医師が同じ日に訪問診療(医療保険)と居宅療養管理指導(介護保険)を行う場合、算定できる報酬の組み合わせにルールがあります。どちらがどの場面で算定されるかはクリニックが判断しますが、費用の見込みをあらかじめ確認しておくことをお勧めします。
Q. 薬剤師による居宅療養管理指導とはどのようなサービスですか?
薬剤師が自宅を訪問し、処方された薬の飲み合わせの確認・服薬指導・残薬管理などを行います。複数の薬を服用している高齢者では薬の管理が難しくなることも多く、薬剤師の訪問が安全な服薬につながるケースがあります。単位数・自己負担額は医師による指導とは異なります。
Q. 家族だけでクリニックに相談することはできますか?
はい。AIプラスクリニックたまプラーザでは、ご本人が来院できない状況でもご家族だけでの相談をお受けしています。お薬手帳や診療情報提供書などをお持ちいただくと、状況をより具体的にお伝えしやすくなります。
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参考文献・出典
本記事の監修医師
佐藤 靖郎(さとう やすお) 医師(医学博士)/AIプラスクリニックたまプラーザ 監修医 専門:消化器外科・消化器内視鏡/一般内科/在宅医療・高齢者医療・がん緩和ケア・心不全・呼吸不全
略歴 1988年 福島県立医科大学医学部卒業、医師免許取得。1997年 同大学大学院修了、博士号取得。国立国際医療研究センター、東京新宿メディカルセンター、NTT東日本関東病院、横浜市立大学関連病院、国立病院機構横浜医療センター外科医長・救命救急センター副部長、済生会若草病院(横浜市)外科部長・内視鏡センター・診療部長を歴任。丸亀医療センター・佐々木病院副理事長、日立おおみか病院理事を経て現在に至る。
公的役割 厚生労働省「地域連携クリティカルパスモデルの開発」班研究員、全国保健所長会 地域連携パス推進班アドバイザー、神奈川県がん診療連携協議会 地域連携クリティカルパス部会 相談役。
AIプラスクリニックたまプラーザのご案内
ご家族の通院が難しくなってきた、退院後の療養先に迷っている、自宅でどこまで医療が受けられるか知りたい——そうしたご相談を、たまプラーザで承っています。
ご予約・お問い合わせ TEL:045-909-0117(横浜市青葉区)
ご相談の際は、お薬手帳または薬剤情報提供書/医療保険証・各種受給者証/介護保険証・介護保険負担割合証をご用意いただくとスムーズです。お持ちであれば診療情報提供書(紹介状)や退院時サマリーもお持ちください。ご本人が来院できない場合のご相談も承ります。
免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個々の患者さんの診断・治療を代替するものではありません。症状や治療方針の判断は、必ず主治医にご相談ください。制度・費用は改定される場合があります。最新の情報は各自治体・保険者の窓口でご確認ください。