吐血の原因|内科医がわかりやすく解説
吐血は、口から血液または血液を含む内容物が出ることを指し、消化管(食道・胃・十二指腸など)からの出血が主な原因です。量が少なくても、消化器系の重篤な疾患が背景にある場合があるため、「一度だけだから大丈夫」と自己判断せず、早めに医療機関を受診することが重要です。本記事では、吐血の原因・症状・対応方法について、消化器専門医の監修のもとわかりやすく解説します。
吐血とは?まず知っておきたい基礎知識
吐血と喀血・鼻血の違い
「血を口から出す」症状には、吐血・喀血・鼻血の3種類があります。それぞれ出血部位が異なります。
吐血は嘔吐に伴って出ることが多く、喀血は咳に伴って出ることが多い点も区別の目安になります。
「血を吐いた」ときに考えられる状況
吐血が起こる状況は多岐にわたります。胃潰瘍や食道静脈瘤のように緊急性の高いものから、少量の出血で自然に止まるケースまであります。いずれの場合も原因の確認が必要です。
吐血の主な原因
胃・十二指腸からの出血
上部消化管出血の多くを占めるのが、胃・十二指腸からの出血です。胃粘膜が傷つくと血管が露出し、出血につながります。
食道からの出血
食道粘膜の損傷や、血管の異常拡張(静脈瘤)が原因となります。
胃炎・胃潰瘍・十二指腸潰瘍
胃炎や消化性潰瘍はピロリ菌(Helicobacter pylori)感染、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の長期使用、ストレスなどが引き金となります。日本消化器学会のガイドラインでも、ピロリ菌除菌は潰瘍の再発予防に有効とされています。潰瘍が深くなると血管を傷つけ、吐血を引き起こすことがあります。
食道静脈瘤
肝硬変などにより門脈圧が上昇すると、食道の静脈が瘤状に拡張します(食道静脈瘤)。破裂すると大量出血を起こすことがあり、生命に関わる緊急事態となる場合があります。
マロリーワイス症候群
激しい嘔吐・乾嘔(えずき)の繰り返しにより、食道と胃の接合部付近の粘膜が裂けて出血する状態です。アルコール多飲後に多く見られます。多くの場合は自然止血しますが、出血量が多い場合は処置が必要です。
胃がん・食道がんなどの消化管腫瘍
消化管に腫瘍が形成されると、その部位から出血が起こることがあります。がんによる吐血は慢性的な経過をたどることもあるため、貧血や体重減少を伴う場合は注意が必要です。
薬の副作用や血液をサラサラにする薬の影響
NSAIDs(ロキソプロフェンなど)や、アスピリン・ワーファリン・DOACといった抗凝固薬・抗血小板薬は、消化管粘膜への影響や血液が固まりにくくなることで出血を助長する場合があります。
吐血のときに見られやすい症状
コーヒー残渣様の吐物
胃酸で酸化された血液は、コーヒーのかすのような暗褐色・粒状の外観になります。これは胃内で血液が時間をかけて変性したサインであり、消化管出血を示します。
真っ赤な血を吐く場合
鮮紅色の血液を吐く場合は、出血量が多いか、出血部位が食道に近く時間をかけずに吐き出されている可能性があります。緊急性が高いことが多いです。
腹痛・胸やけ・黒色便を伴う場合
腹痛や胸やけは胃・食道の炎症・潰瘍のサインです。黒色便(タール便)は、上部消化管で出血した血液が腸を通過する際に変化したもので、吐血とセットで現れることがあります。
詳しくは吐血とは?原因・症状・対処を内科医が解説【たまプラーザ】もあわせてご参照ください。
めまい・ふらつき・動悸を伴う場合
これらは出血量が多く、循環血液量が不足しているサインです。失血性ショックの前段階であることもあり、速やかな対応が必要です。
受診を急ぐべき危険なサイン
以下のいずれかに当てはまる場合は、すぐに救急外来を受診するか、救急車を呼ぶことを検討してください。
出血量が多い、繰り返す
吐血が大量・反復する場合は、緊急内視鏡処置が必要なことがあります。
意識がもうろうとする、冷や汗が出る
ショック状態を示す症状です。直ちに救急対応が必要です。
強い腹痛や胸痛がある
消化管穿孔など、より重篤な疾患が隠れている可能性があります。
黒色便や血便を伴う
上部消化管出血が持続していることを示すサインです。
抗凝固薬・抗血小板薬を内服している
これらの薬を服用中の方は出血が止まりにくい場合があり、少量の吐血でも早めの受診が推奨されます。
吐血したときの正しい対応
まず安静にして横になる
体を動かすと血流が促進され出血が増える可能性があります。楽な体勢で安静にしてください。
水や食事を無理にとらない
内視鏡検査が必要になる場合、飲食すると検査の妨げになります。医師の指示があるまで控えましょう。
出血の様子を確認して受診先を検討する
吐物の色・量・頻度を確認し、医師に伝えられるよう準備しましょう。スマートフォンで写真を撮っておくことも参考になります。
救急車を呼ぶ目安
意識障害・大量出血・ショック症状がある場合は迷わず119番を。自分で歩ける・出血が少量で止まっているなら、かかりつけ医や消化器内科への受診を検討してください。
医療機関では何を調べるのか
問診で確認すること
内服薬・飲酒歴・症状の経過・吐血の量と色・既往歴(肝疾患・潰瘍など)を確認します。
血液検査
貧血の程度・肝機能・凝固能・炎症所見などを確認します。
胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)
吐血の原因精査における最重要検査です。出血部位の特定と、同時に止血処置(クリッピング・凝固処置など)を行うことができます。
必要に応じた画像検査や追加検査
CTや腹部エコーで腫瘤・肝臓病変・腹水などを確認する場合もあります。
吐血の原因ごとの治療の考え方
胃・十二指腸潰瘍の治療
プロトンポンプ阻害薬(PPI)などによる酸分泌抑制療法が基本です。ピロリ菌陽性であれば除菌治療を行います。内視鏡的止血術が必要な場合もあります。
食道静脈瘤の治療
内視鏡的静脈瘤結紮術(EVL)や硬化療法、緊急性が高い場合はバルーンタンポナーデが選択されます。根本治療として肝疾患の管理も重要です。
マロリーワイス症候群の治療
多くは安静・制酸薬で自然止血しますが、出血が多い場合は内視鏡的止血処置を行います。
腫瘍が疑われる場合の対応
組織生検による病理診断を経て、外科手術・化学療法・放射線療法などを検討します。専門施設への紹介が必要な場合があります。
薬の調整が必要な場合
抗凝固薬・NSAIDsが原因に関与している場合は、処方医と連携して薬剤の中断・変更・胃粘膜保護薬の追加などを検討します。自己判断での中断は避けてください。
吐血を繰り返さないための予防と再発対策
胃を荒らしやすい要因を減らす
空腹時の喫煙・過食・不規則な食事は胃粘膜への負担となります。規則正しい食生活を心がけることが大切です。
アルコールや刺激物との付き合い方
アルコールは胃粘膜を直接刺激し、嘔吐誘発によるマロリーワイス症候群のリスクも高めます。適量を守り、一気飲みは避けましょう。
服薬中の注意点
NSAIDsや抗凝固薬を服用中の方は、定期的に医師に消化器症状を伝え、必要に応じて胃粘膜保護薬の併用を相談してください。
定期受診が大切なケース
ピロリ菌感染後・潰瘍治療後・肝疾患をお持ちの方は、定期的な胃カメラや血液検査で状態を確認することが再発予防につながります。消化不良とは?原因・症状・対処を内科医が解説【たまプラーザ】もあわせてご覧ください。
何科を受診すればよい?
消化器内科を受診する目安
少量の吐血・一度限りの吐血で全身状態が安定している場合は、消化器内科への受診をお勧めします。胃カメラなどの精密検査を行うことができます。
夜間・休日に救急外来を考えるケース
大量出血・意識障害・ショック症状がある場合や、症状が急激に悪化している場合は、夜間・休日でも救急外来を受診してください。
たまプラーザ近辺で消化器症状が気になる方は、ご予約・お問い合わせからお気軽にご相談ください。
まとめ|吐血は原因の確認が重要です
吐血の原因は、胃・十二指腸潰瘍・食道静脈瘤・マロリーワイス症候群・消化管腫瘍・薬の影響など多岐にわたります。量が少なくても自己判断は危険であり、特にショック症状・大量出血・薬の内服中の方は速やかな受診が重要です。医療機関では問診・血液検査・胃カメラによって原因を特定し、状態に応じた治療を行います。定期的な検査と生活習慣の見直しが、再発予防の第一歩となります。
よくある質問(FAQ)
少量の血でも受診したほうがよいですか?
はい、少量であっても受診をお勧めします。出血の背景に潰瘍や腫瘍などの疾患が隠れている場合があり、量の多少だけでは重症度を判断できません。
一度だけ吐血して止まった場合も検査は必要ですか?
原則として必要です。自然止血していても、原因疾患が残っている可能性があります。胃カメラによる確認が推奨されます。
胃液に少し血が混じる程度でも危険ですか?
ごく微量でも、繰り返す場合や腹痛・体重減少・貧血を伴う場合は早めに消化器内科を受診してください。一度限りで全身状態が良好でも、原因の確認のために受診することが望ましいです。
吐血と黒い便があるときは何が考えられますか?
上部消化管(胃・十二指腸など)での出血が疑われます。黒色便(タール便)は、血液が消化・酸化されながら腸を通過したことを示します。早めに消化器内科を受診してください。悪心とは?原因・症状・対処を内科医が解説【たまプラーザ】も参考になる場合があります。
ストレスで吐血することはありますか?
強いストレスが胃粘膜の防御機能を低下させ、急性胃粘膜病変(AGML)や胃潰瘍を引き起こし、吐血につながることがあります。ストレス管理も消化器疾患予防の一環として重要です。
たまプラーザ周辺では何科に相談すべきですか?
消化器内科への受診をお勧めします。AIプラスクリニックたまプラーザでは、消化器・内科の専門的な診察・検査に対応しています。受診の目安に迷う場合も、お気軽にご相談ください。
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本記事の監修医師
佐藤 靖郎(さとう やすお)
医師(医学博士) / AIプラスクリニックたまプラーザ 監修医
専門:消化器・内科(消化器外科/内視鏡/一般内科)
略歴:
1988年 福島県立医科大学医学部卒業、医師免許取得。1997年 同大学大学院修了、博士号取得。国立国際医療研究センター、東京新宿メディカルセンター、NTT東日本関東病院、横浜市立大学関連病院、国立病院機構横浜医療センター外科医長・救命救急センター副部長、済生会若草病院(横浜市)外科部長・内視鏡センター・診療部長を歴任。丸亀医療センター・佐々木病院副理事長、日立おおみか病院理事を経て現在に至る。
公的役割:
厚生労働省『地域連携クリティカルパスモデルの開発』班研究員 / 全国保健所長会 地域連携パス推進班アドバイザー / 神奈川県がん診療連携協議会 地域連携クリティカルパス部会 相談役
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