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スキルス胃がんとは|特徴・初期症状・原因・治療の考え方を医学博士が解説

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スキルス胃がんとは|特徴・初期症状・原因・治療の考え方を専門医が解説

胃がんのなかでも「スキルス胃がん」という言葉を耳にしたことがある方は多いかもしれません。見つかりにくく、進行が速いというイメージを持たれがちな一方で、その実態については十分に知られていないことも多いです。本記事では、消化器外科専門医の立場から、スキルス胃がんの特徴・原因・症状・検査・治療の考え方について、医学的根拠に基づき解説します。なお、診断や治療の判断は必ず医師の診察のもとで行ってください。


スキルス胃がんとは

スキルス胃がん(硬性胃がん)は、胃がんの一種です。がん細胞が胃の粘膜の表面よりも胃壁の深い層(粘膜下層・筋層など)に沿って広く浸潤しながら広がっていくという特徴があります。「スキルス(scirrhous)」はギリシャ語で「硬い」を意味し、胃壁が線維化して硬くなることからその名がつけられています。

胃がん全体のなかでの割合は比較的少ないとされていますが、早期発見が難しく、発見時にすでに進行していることが少なくないため、臨床上の注意が必要ながんの一つです。


スキルス胃がんの特徴

一般的な胃がんは粘膜表面に隆起や潰瘍を形成することが多いのに対し、スキルス胃がんはびまん性(びまん=広範囲に広がること)に胃壁内へ浸潤していくため、胃の内腔(内側の空間)の表面変化が乏しい場合があります。

このため、内視鏡検査(胃カメラ)で粘膜の色調変化や凸凹が目立ちにくく、見逃されるリスクが他の型の胃がんと比べて高いとされています。胃全体が硬くなり、X線検査では「皮革胃(ひかくい)」と呼ばれる特徴的な所見が認められることもあります。


スキルス胃がんの原因と関連が指摘される要因

スキルス胃がんの原因がひとつに特定されているわけではありません。現時点では、以下のような要因との関連が報告されています。

家族歴や遺伝との関係

胃がんは家族に複数の罹患者がいる場合、遺伝的要因が関与している可能性が指摘されています。特にスキルス胃がんでは、CDH1遺伝子(E-カドヘリン遺伝子)の変異との関連が一部のケースで報告されています。ただし、遺伝子変異があれば必ず発症するというわけではなく、また家族歴がない方でも発症することがあります。

家族に胃がん(特に若い年齢での発症や複数名の罹患)がいる場合は、受診の際に医師に申告し、検査の必要性について相談することが勧められます。詳しくはスキルス胃がん なりやすい人も参考にしてください。

ヘリコバクター・ピロリ感染との関係

ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)感染は、胃がん全般のリスク要因のひとつとして、国内外の多くの研究や日本ヘリコバクター学会のガイドラインで言及されています。ただし、スキルス胃がんとピロリ菌感染の関連については、ピロリ菌非感染例での発症も一定数報告されており、必ずしも感染があれば発症するわけではありません。

ピロリ菌の検査・除菌の適応は個人差があるため、自己判断ではなく医療機関での相談が必要です。

生活習慣との関係

胃がん全般のリスクとして、以下のような生活習慣が関連する可能性が報告されています。

  • 喫煙:国立がん研究センターの研究でも、喫煙と胃がんリスクの関連が示されています
  • 塩分の過剰摂取:塩蔵食品の多い食事との関連
  • 過度な飲酒
  • 野菜・果物の摂取不足

これらは胃がん全体のリスク要因であり、スキルス胃がんに限定したエビデンスではありませんが、生活習慣の見直しは一般的な健康管理の観点からも有益です。


スキルス胃がんになりやすい人の傾向

特定の条件に当てはまる方が「必ず発症する」というわけではありませんが、以下のような特徴がある場合は、医療機関への相談を検討してよいとされています。

  • 比較的若い世代(40歳代以下)でも発症する事例が報告されている
  • 女性に多いという報告がある(ただし個人差が大きい)
  • 家族歴がある(特に若い年齢での発症や複数名)
  • ピロリ菌感染が確認されている、または未検査
  • 胃の不快感が長期間続いている

見逃しやすい初期症状・前兆

スキルス胃がんは、早期には症状がほとんど現れないことも多いです。症状が出始めるころには、すでにある程度進行していることがあります。

よく報告される症状には以下のものがあります。

  • 食欲の低下、食事量の減少
  • 胃もたれ、膨満感
  • みぞおちの不快感や鈍い痛み
  • 吐き気
  • 体重の減少

これらは非特異的な症状であり、他の消化器疾患でも起こりえます。スキルス胃がん 発覚 きっかけでは、実際にどのような経緯で発覚するケースが多いかについても解説しています。

胃がん以外でも起こる症状との違い

上記の症状は、胃炎・胃潰瘍・機能性ディスペプシアなどでも類似した症状が現れることがあります。症状だけで疾患を判断することは困難であり、症状が続く場合は医療機関での検査が必要です。


受診の目安

以下のような状況が続く場合は、消化器内科・胃腸科への受診を検討してください。

  • 食欲不振・体重減少が続いている
  • 食事後の強い不快感が2週間以上続く
  • 原因不明の貧血を指摘された
  • みぞおちの痛みが繰り返す

すぐに医療機関へ相談したいサイン

以下の症状は緊急性が高い可能性があります。速やかに医療機関を受診してください。

  • 吐血(血を吐く)
  • 黒色便・タール便(消化管出血のサイン)
  • 食事がほとんどとれない状態が続く
  • 急激な体重減少(数週間で数kg以上)
  • 強い腹痛・腹部膨満

スキルス胃がんの検査と診断

スキルス胃がんの診断には、複数の検査を組み合わせて総合的に判断します。

  1. 問診・身体診察:症状の経過、家族歴、生活習慣などを確認します
  2. 血液検査:貧血の有無、腫瘍マーカー(CEA・CA19-9など)を確認することがあります
  3. 上部消化管内視鏡検査(胃カメラ):粘膜の状態を直接観察します
  4. 生検(組織検査):疑わしい部位の組織を採取し、病理検査を行います
  5. CT検査・PET検査:転移の有無や病変の広がりを評価します

胃カメラでわかりにくい場合がある理由

スキルス胃がんは粘膜表面の変化が乏しいことがあるため、胃カメラだけでは明確な異常が確認しにくい場合があります。胃壁の伸展不良(空気を入れても胃が広がりにくい)など、間接的な所見から疑われることもあります。X線検査や超音波内視鏡との組み合わせが有用なことがあります。

生検で診断がつかないことがあるケース

病変が粘膜深部に存在する場合、表面の生検では採取できないことがあります。診断がつかない場合は、部位や方法を変えた再生検や、超音波内視鏡下生検(EUS-FNA)などの追加検査が検討されます。


治療の考え方

スキルス胃がんの治療方針は、病期(進行度)・部位・全身状態・患者さんの希望などを総合的に評価したうえで決定されます。日本胃癌学会の「胃癌治療ガイドライン」が基本的な根拠となります。

手術が検討される場合

腫瘍が胃内に限局しており、転移がないと判断された場合には、胃の切除術が検討されます。ただし、スキルス胃がんは発見時にすでに広範囲に及んでいることもあり、手術適応の判断は慎重に行われます。

薬物療法が検討される場合

手術が難しい進行例や再発例では、化学療法(抗がん薬治療)が中心となります。近年は、HER2(ハーツー)遺伝子の発現状況や免疫チェックポイント阻害薬の適応なども検討されるようになっており、治療の選択肢は個別の状況に応じて異なります。

緩和ケアの位置づけ

緩和ケアは終末期だけのものではありません。がん治療の早い段階から、痛みや吐き気などの身体症状を和らげ、生活の質(QOL)を支えることを目的に並行して行われます。治療の選択肢の一つとして、担当医と積極的に話し合うことが推奨されます。


予防・早期発見のためにできること

胃がん検診を受ける目安

厚生労働省は、対策型検診として50歳以上を対象とした胃内視鏡検査(胃カメラ)または胃部X線検査を推奨しています(自治体により対象年齢・方法が異なる場合があります)。症状がなくても、対象年齢の方は自治体・職域の検診制度を確認し、定期的な受診を検討してください。

ピロリ菌検査・除菌の相談

ピロリ菌の検査・除菌の適応は、既往歴・年齢・消化器症状などによって異なります。「自分はピロリ菌がいるか不安」と感じる方は、自己判断ではなく、まず医療機関でご相談ください。


日常生活で気をつけたいこと

特別に厳しい制限が必要というわけではありませんが、以下のような習慣は一般的な健康管理の観点から推奨されます。

  • 禁煙:喫煙は胃がん全般のリスク要因として報告されています
  • 塩分を控えた食事:加工食品・塩蔵食品の過剰摂取を避ける
  • 野菜・果物を適度に摂る
  • 過度な飲酒を避ける
  • 体調の変化を記録する:気になる症状が続く場合は、いつから・どんな症状かをメモしておくと受診時に役立ちます

よくある質問

スキルス胃がんは若い人でもなりますか?

はい、年齢が若い方でも発症することがあります。むしろ、スキルス胃がんは比較的若い世代に多いという報告もあります。「若いから大丈夫」と症状を放置せず、食欲低下・体重減少・胃の不快感が続く場合は年齢に関わらず受診を検討してください。

胃カメラで異常なしと言われても安心できますか?

胃カメラは非常に有用な検査ですが、スキルス胃がんの場合は粘膜表面の変化が乏しいため、見逃されることがゼロではありません。「異常なし」の結果であっても症状が続く場合は、再受診や追加検査を検討することが重要です。

スキルス胃がんは遺伝しますか?

一部に遺伝的要因(CDH1遺伝子変異など)が関係するケースが報告されていますが、遺伝のみで発症が決まるわけではありません。家族に若い年齢での胃がん患者さんが複数いる場合は、医師に相談することをお勧めします。

健康診断で見つかりますか?

健康診断の胃部検査で発見されるケースもありますが、必ず発見されるとは限りません。特に症状がある場合は、健診のタイミングを待たず、別途医療機関への受診をご検討ください。


受診のまとめ

以下のような状況がある方は、消化器内科・胃腸科・消化器外科への相談を検討してください。

  • 胃の不快感・食欲低下・体重減少が続いている
  • 家族に胃がん(特に若年発症・複数名)の方がいる
  • ピロリ菌感染が未確認・未治療
  • 原因不明の貧血を指摘された
  • 健康診断で胃の精密検査を勧められた

症状があっても「たいしたことないだろう」と様子をみてしまいがちですが、気になることがあれば早めに相談することが、早期発見への第一歩となります。


まとめ

スキルス胃がんは、胃壁の深部にびまん性に広がる性質から、早期には症状が乏しく、内視鏡でも見つかりにくい場合があります。食欲低下・体重減少・胃の不快感などが続く場合は、年齢を問わず医療機関への相談をお勧めします。また、定期的な胃がん検診の受診やピロリ菌検査の相談など、予防・早期発見に向けた行動が大切です。

詳しい病態についてはスキルス性胃がんの解説もあわせてご参照ください。


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本記事の監修医師

佐藤 靖郎(さとう やすお)
医師(医学博士)/AIプラスクリニックたまプラーザ 理事長
専門:消化器外科

福島県立医科大学大学院 外科学修了。NTT東日本関東病院や国立病院機構横浜医療センター等で外科医長・救命救急センター副部長を歴任。厚生労働省の地域連携クリティカルパスモデル開発の班研究員、神奈川県がん診療連携協議会相談役などを務める。


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