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胃がんとは?原因・症状・検査・治療まで消化器外科専門医が解説

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胃がんとは?原因・症状・検査・治療まで消化器外科専門医が解説

胃がんは日本人にとって身近ながんのひとつです。国立がん研究センターの統計によると、胃がんは男女ともに罹患数が多いがん種に含まれており、早期発見・早期治療が予後に大きく関わるとされています。本記事では、消化器外科専門医の立場から、胃がんの基礎知識・原因・症状・検査・治療・予防まで、わかりやすく整理してお伝えします。なお、個別の診断や治療方針については、必ず担当医にご相談ください。


胃がんとは

胃がんは、胃の内側を覆う「粘膜」の細胞が異常に増殖することで生じるがんです。発生部位は胃の出口に近い「幽門部」や「胃体部」が比較的多く、まず粘膜の最も表面に近い層(粘膜層)から始まり、時間とともに粘膜下層・筋層・漿膜へと深く浸潤していきます。また、リンパ節や肝臓・腹膜などへの転移も起こりえます。

胃がんの多くは「腺がん」と呼ばれるタイプで、形態によって分化型と未分化型に大きく分けられます。未分化型の一種がいわゆる「スキルス胃がん」で、胃壁にびまん性に広がりやすく早期発見が難しい特徴があります。スキルス胃がんについては、こちらの記事「スキルス胃がん」でくわしく解説しています。


胃がんの原因・リスク要因

胃がんの発症に関与する主なリスク要因は以下のとおりです(国立がん研究センター・日本胃癌学会のガイドラインを参考)。

  • ヘリコバクター・ピロリ(H. pylori)感染:胃がんとの関連が最も強いとされる細菌です。感染が長期間続くと慢性胃炎や萎縮性胃炎を引き起こし、がんの発生リスクが高まるとされています。
  • 萎縮性胃炎・腸上皮化生:ピロリ菌感染などによって胃粘膜が萎縮し、腸の粘膜に似た変化(腸上皮化生)が生じると、がん化しやすい土台になることが知られています。
  • 喫煙:喫煙は胃がんのリスクを高める要因として複数の研究で指摘されています。
  • 塩分の多い食生活:塩蔵食品(漬物、塩干魚など)の過剰摂取は胃粘膜を傷つける可能性があるとされています。
  • 家族歴:近親者に胃がん患者がいる場合はリスクがやや高くなる傾向があります。ただし遺伝的要因だけで発症が決まるわけではありません。

胃がんの症状

胃がんの厄介な点は、早期の段階では自覚症状がほとんどないことです。胃もたれや胸やけ、軽度の食欲不振といった症状は胃がん以外の疾患(胃炎・潰瘍・機能性ディスペプシアなど)でもみられるため、症状だけで胃がんを区別することは困難です。

進行するにつれ、以下のような症状が現れることがあります。

  • 食欲の低下や体重の減少
  • みぞおちの持続的な痛みや不快感
  • 嘔気・嘔吐
  • 黒色便(タール便)——出血が疑われるサイン
  • 貧血による倦怠感・動悸

これらの症状が続く場合は、自己判断せず医療機関への受診をご検討ください。


胃がんの検査・診断

上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)

胃がんの確定診断において中心的な役割を果たすのが、胃カメラ(上部消化管内視鏡)検査です。口または鼻からカメラを挿入し、胃の内部を直接観察します。疑わしい病変があれば、その場で組織を採取して病理検査(生検)を行い、がん細胞の有無を調べます。

画像検査

がんの広がりや転移の有無を調べるために、CT検査・超音波検査・PET検査などを組み合わせます。手術や薬物療法の計画を立てる際の重要な情報になります。

ヘリコバクター・ピロリ検査

内視鏡検査と同時、またはそれとは別に、血液・尿・便・呼気などを用いたピロリ菌感染の確認検査が行われます。


胃がんの病期(ステージ)

胃がんの病期は、がんの深達度(T)・リンパ節転移(N)・遠隔転移(M)の組み合わせによってステージI〜IVに分類されます(日本胃癌学会「胃癌取扱い規約」)。

ステージ 概要
ステージI 粘膜または粘膜下層にとどまる、もしくはリンパ節転移が限定的
ステージII 筋層以深への浸潤またはリンパ節転移が中等度
ステージIII 漿膜や隣接臓器への浸潤またはリンパ節転移が広範
ステージIV 遠隔臓器(肝臓・腹膜等)への転移あり

ステージが治療方針の選択に大きく影響するため、診断時の正確な病期診断が重要です。


胃がんの治療

治療方法は、病期・腫瘍の位置や大きさ・患者さんの全身状態などを総合的に判断して決定されます。

内視鏡治療が検討される場合

ステージI(早期)で、一定の条件(腫瘍径・深達度・組織型など)を満たす場合に検討されるのが、内視鏡を用いた治療です。

  • 内視鏡的粘膜切除術(EMR):粘膜を一括または分割して切除する方法
  • 内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD):粘膜下層を剥離して病変を一括切除する方法

開腹や全身麻酔を必要とせず、胃を温存できるという特徴があります。ただし適応は条件により異なるため、担当医との十分な相談が必要です。

手術が検討される場合

内視鏡治療の適応外となる場合や、進行したステージでは外科的切除が主な治療の選択肢になります。

  • 胃切除の範囲:腫瘍の位置やステージに応じて、幽門側胃切除・胃全摘・噴門側胃切除などが選択されます。
  • リンパ節郭清:胃周囲のリンパ節を系統的に切除するD2郭清が標準的です。
  • 術後の生活への影響:胃の容量が減少するため、少量頻回食への移行・ダンピング症候群の予防・鉄やビタミンB12の補給など、食事や栄養面での工夫が必要になる場合があります。

薬物療法が検討される場合

薬物療法は主に以下の場面で用いられます。

  • 術後補助化学療法:手術後に再発リスクを下げることを目的に行われます(S-1単剤療法など)。
  • 切除不能・進行例での化学療法:フッ化ピリミジン系薬剤・白金製剤を中心とするレジメンが用いられます。
  • 分子標的薬:HER2陽性の胃がんではトラスツズマブが、抗血管新生薬(ラムシルマブ)も適応があります。
  • 免疫チェックポイント阻害薬:PD-L1発現状況などに応じて使用が検討されます。

治療の目的(根治・補助・緩和)や副作用管理について、担当医・薬剤師・看護師と連携して進めることが大切です。


治療後の生活と再発フォロー

胃がん治療後は、定期的な外来フォローが欠かせません。再発が疑われるサインを早期に把握するため、内視鏡・CT・血液検査などを計画的に行います。

生活面では以下の点に注意が必要です。

  • 少量頻回食:一度に多く食べると不快感が生じやすいため、1日4〜6回に分けて食事をとることが推奨されます。
  • 体重管理と栄養:術後は体重が減少しやすく、たんぱく質・鉄・ビタミンB12・カルシウムの補給が重要です。
  • 貧血の管理:胃全摘後は内因子が失われ、ビタミンB12が吸収されなくなるため、定期的な補充が必要になります。

胃がんを予防するには

  • ピロリ菌の検査と除菌:ピロリ菌感染を確認し、陽性の場合は除菌治療を検討します。ただし除菌後も定期検査を続けることが推奨されています。
  • 禁煙:喫煙はリスク要因のひとつです。禁煙支援外来の活用もご検討ください。
  • 食生活の見直し:塩分を控え、野菜・果物を適切に摂取するバランスの取れた食事が望ましいとされています。
  • 定期的な胃がん検診:自治体が実施する胃がん検診(内視鏡検査またはバリウム検査)を定期的に受診することで、早期発見の機会が広がります。

よくある質問

胃がんは遺伝しますか?

家族歴がある場合は、そうでない場合と比べてリスクがやや高くなるとされています。ただし、胃がんの発症は遺伝的要因だけで決まるものではなく、ピロリ菌感染・生活習慣など複数の要因が絡み合っています。家族に胃がん患者がいる場合は、より積極的に検診やピロリ菌検査を受けることが勧められます。

胃がんは早期発見できますか?

胃カメラや胃がん検診を活用することで、症状が現れる前の早期段階で発見できることがあります。特に自覚症状がない時期でも定期的に受診することが、早期発見につながります。

胃がん検診は何歳から受けるべきですか?

自治体によって対象年齢や検査方法(内視鏡またはバリウム)が異なります。厚生労働省の指針では50歳以上を対象とした内視鏡検診が推奨されていますが、実施状況は地域差があります。まずお住まいの自治体の案内をご確認ください。

ピロリ菌がいれば胃がんになりますか?

ピロリ菌に感染していても、必ずしも胃がんを発症するわけではありません。ただし、感染者は未感染者と比べてリスクが高いとされています。除菌治療によりリスクを下げることができるとされていますが、除菌後も胃がんが発生する場合があるため、定期的な経過観察が重要です。


受診の目安

以下のような症状が続く場合は、消化器内科・消化器外科への受診をご検討ください。

  • 食欲不振・体重減少が2週間以上続く
  • みぞおちの不快感や痛みが繰り返す
  • 黒い便(タール便)が出た
  • 貧血症状(倦怠感・動悸・顔色の悪さ)が続く
  • 飲み込みにくさを感じる

これらの症状は胃がん以外の疾患でも現れることがありますが、いずれも医療機関での検査が必要なサインです。心配な場合は、ためらわずご相談ください。


まとめ

胃がんは初期段階で自覚症状が乏しいため、定期検診やピロリ菌検査の活用が早期発見に重要な役割を果たします。また、ヘリコバクター・ピロリ感染・喫煙・食生活などのリスク要因を知り、生活習慣を見直すことも有用です。気になる症状がある方や、ご家族に胃がんの方がいる方は、消化器専門医への相談をお勧めします。

なお、スキルス胃がんの発覚のきっかけや経緯について詳しく知りたい方は「スキルス胃がん 発覚 きっかけ」も合わせてご覧ください。スキルス性胃がんの詳しい解説は「スキルス性胃がん」でも取り上げています。


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本記事の監修医師

佐藤 靖郎(さとう やすお)
医師(医学博士)/AIプラスクリニックたまプラーザ 理事長
専門:消化器外科

福島県立医科大学大学院 外科学修了。NTT東日本関東病院や国立病院機構横浜医療センター等で外科医長・救命救急センター副部長を歴任。厚生労働省の地域連携クリティカルパスモデル開発の班研究員、神奈川県がん診療連携協議会相談役などを務める。


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