スキルス性胃がんとは?原因・症状・対処を内科医が解説
スキルス性胃がんは、胃壁の深部に広がりやすく初期症状が乏しいため、発見が遅れやすい胃がんの一種です。「症状がないから大丈夫」と思っていても、気づいたときには進行しているケースが少なくありません。本記事では、スキルス性胃がんの特徴・原因・症状・受診の目安・治療の考え方を、消化器専門医の監修のもとわかりやすく解説します。気になる症状がある方は、まずかかりつけの消化器内科・胃腸内科へご相談ください。
スキルス性胃がんとは?まず知っておきたい基本
スキルス性胃がんの定義
スキルス性胃がん(スキルス胃がん)とは、がん細胞が胃壁の粘膜下層から筋層・漿膜にかけて広範囲にしみ込むように浸潤し、胃壁全体が硬く厚くなる特殊な進行様式をもつ胃がんです。「皮革胃(ひかくい)」とも呼ばれ、内視鏡で観察すると胃壁の伸展性(のびやわらかさ)が失われているように見えることがあります。
一般的な胃がんとの違い
一般的な胃がんの多くは、胃の粘膜表面に塊(腫瘤)や潰瘍として現れます。そのため内視鏡検査で比較的見つけやすい傾向があります。一方、スキルス性胃がんは表面的な変化が乏しく、がん細胞が胃壁の内部を這うように広がるため、内視鏡検査でも見落としが生じることがあります。
なぜ「早期発見が難しい」といわれるのか
スキルス性胃がんが発見しにくい最大の理由は、初期の段階では胃の内側(粘膜面)の形態変化が目立たないことです。内視鏡やバリウム検査では異常が指摘されにくく、発見時にはすでに進行している場合があります。胃の不調を感じにくいまま病状が進むことから「サイレントキラー」とも表現されることがあります。
スキルス性胃がんの原因・発症に関わる要因
明確な原因がわかっていない理由
スキルス性胃がんの発症メカニズムはまだ完全には解明されていません。一般的な胃がんと共通するリスク因子もありますが、スキルス型に特有の分子生物学的背景(がん細胞の増殖・浸潤に関わる遺伝子変異など)が関与していると考えられています。
胃炎・ヘリコバクター・ピロリ菌感染との関係
ヘリコバクター・ピロリ菌(Hp)感染は胃がん全体の主要なリスク因子として広く知られています。日本ヘリコバクター学会のガイドラインでも、Hp感染と慢性萎縮性胃炎が胃がんリスクを高めることが示されています。ただしスキルス性胃がんはHp非感染者にも発症することがあり、Hp感染だけが原因とは言い切れません。
家族歴や体質が関係することはあるか
近親者(特に一親等)に胃がんの方がいる場合、リスクが高まる可能性があると報告されています。また後述するように、一部の遺伝性疾患との関連も指摘されています。家族歴がある方は定期的な検診を検討する価値があります。
生活習慣との関係はどこまでわかっているか
塩分の多い食事、喫煙、過度の飲酒は胃がん全般のリスク因子として知られています。ただし、これらを避ければ必ずスキルス性胃がんを予防できるという根拠はなく、生活習慣の改善はあくまでリスク低減の一助と考えてください。
スキルス性胃がんになりやすい人の特徴
どのような人が注意すべきか
- ヘリコバクター・ピロリ菌感染歴がある方
- 一親等に胃がんの家族歴がある方
- 慢性萎縮性胃炎と診断されている方
- 喫煙習慣・高塩分食が多い方
ただし、これらに該当しない方にも発症することがあります。
若年者や女性にもみられることがあるのか
スキルス性胃がんは、一般的な胃がんと比較して比較的若い年代(30〜50代)や女性に多いとされる特徴があります。「若いから大丈夫」「女性だから胃がんは関係ない」という思い込みは避けることが大切です。
遺伝性乳がん・卵巣がん症候群との関連が話題になる理由
BRCA2遺伝子変異を背景とする遺伝性乳がん・卵巣がん症候群(HBOC)では、胃がんリスクが上昇する可能性が指摘されています。また、CDH1遺伝子変異に関連した「遺伝性びまん性胃がん(HDGC)」はスキルス性胃がんのリスクと関連するとされ、欧米のガイドラインでも言及されています。遺伝的リスクが気になる場合は、専門医への相談をご検討ください。
初期症状と進行時にみられる症状
初期は症状が目立ちにくい
スキルス性胃がんは初期段階での自覚症状がほとんどない場合が多く、これが早期発見を難しくしています。
胃もたれ・食欲低下・みぞおちの違和感
比較的早い段階で現れることがある症状として、食後の胃もたれ感、食欲の低下、みぞおちあたりの鈍い違和感などが挙げられます。ただしこれらは機能性ディスペプシアや胃炎でもみられる症状であり、スキルス性胃がんに特有ではありません。機能性ディスペプシアとの違いについては機能性ディスペプシアとは?原因・症状・治し方まで内科医が解説【たまプラーザ】もあわせてご参照ください。
体重減少・腹部膨満感・吐き気
胃の容量が低下することで、少量の食事でも満腹感(早期飽満感)を感じやすくなり、体重減少が生じることがあります。腹水が貯留すると腹部膨満感が出ることもあります。
吐血・黒色便など受診を急ぐ症状
吐血(血を吐く)、黒色便(タール便)、強い腹痛が突然現れた場合は、速やかに医療機関を受診してください。夜間・休日であれば救急外来への受診が必要です。
スキルス性胃がんと他の胃の病気との違い
胃炎や胃潰瘍との違い
びらん性胃炎とは?原因・症状・対処を内科医が解説【たまプラーザ】でも触れているように、胃炎や胃潰瘍による胃もたれ・痛みは比較的短期間で改善することが多いです。一方、スキルス性胃がんの場合は症状が持続・悪化する傾向があります。
機能性ディスペプシアとの違い
機能性ディスペプシアは検査で器質的疾患が見当たらないにもかかわらず胃の不快感が続く状態です。スキルス性胃がんとの鑑別には内視鏡検査・生検が欠かせません。
逆流性食道炎との見分けで注意したい点
胸やけ・みぞおちの不快感は逆流性食道炎でもみられます。「逆流性食道炎だろう」と自己判断せず、症状が続く場合は内視鏡検査で確認することが重要です。
受診の目安と、何科を受診すべきか
どんな症状があれば受診を検討するか
- 食欲低下・体重減少が2〜4週間以上続く
- 食後の胃もたれ・みぞおちの不快感が改善しない
- 少量の食事でも早期に満腹になる
消化器内科・胃腸内科で相談する流れ
上記のような症状がある場合は、消化器内科・胃腸内科を受診してください。問診・身体診察のうえ、必要に応じて胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)が行われます。
救急受診を考えるべきケース
吐血・黒色便・突然の激しい腹痛は、救急受診の対象となります。
診断の流れ
問診と身体診察
症状の経過・家族歴・ピロリ菌感染歴などを確認します。
胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)
スキルス性胃がんの診断に最も重要な検査です。胃壁の伸展性の低下、粘膜のひだの異常、色調の変化などが観察されます。
生検(組織検査)で確認すること
内視鏡で疑わしい部位から組織を採取し、病理検査でがん細胞の存在を確認します。
CT検査などで広がりを調べること
腹膜播種(がんが腹膜に広がること)、リンパ節転移、他臓器転移の有無を評価するためにCT検査などの画像検査が行われます。
健診やバリウム検査だけではわかりにくい理由
バリウム検査(胃透視)はスキルス性胃がんの早期発見には限界があることが知られています。胃の伸展性低下を観察する「二重造影法」でも、専門医による丁寧な読影が求められます。
治療の考え方
治療方針は進行度や全身状態で決まる
スキルス性胃がんの治療方針は、がんの進行度(ステージ)・患者さんの全身状態・年齢・合併症などを総合的に判断して決定されます。日本胃癌学会の「胃癌治療ガイドライン」が治療の標準的な指針となっています。
手術治療が行われる場合
切除可能と判断された場合は、胃切除術(幽門側胃切除・胃全摘など)が行われます。ただしスキルス性胃がんは手術適応となる段階での発見が難しいとされます。
抗がん剤治療・薬物療法が選択される場合
腹膜播種や遠隔転移があり手術困難な場合は、抗がん剤(化学療法)が中心的な治療となります。HER2陽性の場合は分子標的薬が、PD-L1陽性などの場合は免疫チェックポイント阻害薬が適応される場合があります(各薬剤の適応は専門医が判断します)。
緩和ケアを含めた症状への対応
痛み・食欲不振・腹水などの症状を和らげる緩和ケアは、治療の早期から並行して行うことが重視されています。
予後・経過について知っておきたいこと
進行しやすいといわれる背景
スキルス性胃がんはリンパ管への浸潤や腹膜播種を起こしやすく、進行が速い傾向があります。
早期発見が重要な理由
ごく限られたケースではありますが、早期に発見・治療できた場合は治療選択肢が広がります。症状がなくても定期的な検診を受けることが大切です。
定期的な検査が大切な人
家族歴がある方・ピロリ菌感染歴がある方・慢性萎縮性胃炎がある方は、主治医と相談のうえ定期的な内視鏡検査を検討してください。
日常生活で気をつけたいこと
気になる症状を我慢しない
「たかが胃もたれ」と思わず、2〜4週間以上続く消化器症状は受診の目安とすることをお勧めします。
胃の不調が続くときの記録の取り方
症状が出たタイミング・食事との関係・体重変化などをメモしておくと、受診時の問診がスムーズになります。
ピロリ菌検査・除菌を勧められた場合の考え方
ピロリ菌陽性と判明した場合、除菌治療は胃がんリスク低減に有効とされています(ただし除菌後も定期検査は継続を推奨)。除菌の方法・費用・保険適用については主治医にご確認ください。
内科医が伝えたい、早期受診につながるチェックポイント
こんな症状が続くときは相談を
- 原因不明の体重減少(1〜2か月で体重の5%以上)
- 食後の強い胃もたれ・早期飽満感
- みぞおちの違和感・鈍痛が続く
健診で異常がなくても安心しすぎない
バリウム検査や胃カメラで「異常なし」と言われても、スキルス性胃がんの早期発見が保証されるわけではありません。気になる症状があれば、健診結果とは別に専門医へご相談ください。
迷ったときの受診目安
「受診すべきか迷う」という時点で、かかりつけの消化器内科に相談することをお勧めします。早めの受診が安心につながります。ご予約・お問い合わせからお気軽にどうぞ。
よくある質問(FAQ)
スキルス性胃がんは若い人でもかかりますか?
はい、スキルス性胃がんは一般的な胃がんと比べ30〜50代の比較的若い年齢層にみられることがあります。「若いから大丈夫」とは言い切れず、気になる症状があれば年齢に関わらず受診をご検討ください。
初期症状がほとんどないのは本当ですか?
初期段階では自覚症状が乏しいことが多く、発見が遅れやすい特徴があります。ただし、胃もたれや食欲低下など「胃の不調」として現れることもあるため、長引く症状は軽視しないことが大切です。
胃カメラを受ければ見つけられますか?
胃カメラ(内視鏡)はスキルス性胃がんの診断に最も有効な検査ですが、初期では変化が乏しく発見が難しい場合があります。専門医による丁寧な観察と、疑われる場合には生検(組織検査)の実施が重要です。
ピロリ菌がいなければ安心ですか?
ピロリ菌陰性でもスキルス性胃がんが発症することがあります。ピロリ菌感染がないことは一定のリスク低減になりますが、それだけで安心できるわけではありません。気になる症状がある場合は受診をお勧めします。
胃もたれが続くだけでも受診したほうがよいですか?
はい、2〜4週間以上続く胃もたれや食欲低下は、消化器内科・胃腸内科への受診を検討する目安の一つです。胃炎や機能性ディスペプシアなど他の疾患の可能性もありますが、専門医が適切に鑑別します。
健診で異常なしでも胃がんの可能性はありますか?
健診の結果が「異常なし」であっても、スキルス性胃がんの可能性が完全に除外されるわけではありません。健診の検査方法や精度には限界があります。気になる症状が続く場合は、健診結果にかかわらずご相談ください。胃がんの症状全般については胃がんの症状|内科医がわかりやすく解説【たまプラーザ】もご参照ください。
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本記事の監修医師
佐藤 靖郎(さとう やすお)
医師(医学博士)/AIプラスクリニックたまプラーザ 監修医
専門:消化器・内科(消化器外科/内視鏡/一般内科)
略歴:
1988年 福島県立医科大学医学部卒業、医師免許取得。1997年 同大学大学院修了、博士号取得。国立国際医療研究センター、東京新宿メディカルセンター、NTT東日本関東病院、横浜市立大学関連病院、国立病院機構横浜医療センター外科医長・救命救急センター副部長、済生会若草病院(横浜市)外科部長・内視鏡センター・診療部長を歴任。丸亀医療センター・佐々木病院副理事長、日立おおみか病院理事を経て現在に至る。
公的役割:
厚生労働省「地域連携クリティカルパスモデルの開発」班研究員、全国保健所長会 地域連携パス推進班アドバイザー、神奈川県がん診療連携協議会 地域連携クリティカルパス部会 相談役。
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TEL:045-909-0117(横浜市青葉区・たまプラーザ)
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