膵臓の形と働きを図解でわかりやすく解説
膵臓は「細長い形」をした臓器で、胃の裏側・背骨の前方に横たわっています。その位置の深さと形の特徴が、膵臓がんが発見されにくい理由の一つとして挙げられます。本記事では、膵臓の形・位置・働きを整理したうえで、膵臓がんの基礎知識や受診の目安までをわかりやすく説明します。膵臓の基本を理解することは、早めの気づきにつながる第一歩です。
膵臓がんについてより広く知りたい方は、まず膵臓がんの基礎知識・全体像もあわせてご覧ください。
膵臓はどこにある?まずは位置と「形」を図でイメージしよう
背中側にある細長い臓器
膵臓は、おへその少し上・みぞおちの奥深くに位置する細長い臓器です。長さは約15〜20cm、厚さは2〜3cm程度で、ちょうど人差し指を横に並べたような細長い形をしています。体の正面からは胃や腸が重なっており、腹部超音波(エコー)検査でも視認しにくい場所にあります。
位置の深さゆえに自覚症状が出にくく、また画像でも映りにくいことが、膵臓がんの早期発見を難しくしている大きな要因です。
たんぱく質分解・血糖調節に関わる「膵臓の形」と役割の関係
膵臓の細長い形は、その働きと密接に関係しています。膵臓の中央を「膵管(すいかん)」と呼ぶ細い管が通っており、この管を通じて消化液(膵液)が十二指腸へ送り出されます。また、形の各部位に散在する「ランゲルハンス島」と呼ばれる細胞群がインスリンなどのホルモンを分泌します。
膵臓の全体像:頭部・体部・尾部の3つの部分
膵臓は大きく頭部・体部・尾部の3つに区分されます。この区分はがんの発生部位を表す際にも使われる重要な言葉です。
| 部位 | 位置 | 特徴 |
|---|---|---|
| 頭部(とうぶ) | 十二指腸のカーブに沿う | 胆管との合流部に近い。がんができると黄疸が出やすい |
| 体部(たいぶ) | 胃の裏側を横切る | 症状が出にくく、発見が遅れがちな部位 |
| 尾部(びぶ) | 脾臓(ひぞう)側 | 末端部。症状が乏しいことが多い |
十二指腸のカーブに沿う「頭部」
頭部は十二指腸(胃の出口に続く小腸の最初の部分)のC字型カーブに包まれるように位置しています。胆管(胆汁の通り道)がここで合流するため、頭部にがんができると胆管が圧迫されて黄疸(皮膚や白目が黄色くなる状態)が比較的早い段階で現れることがあります。
胃のうしろを横切る「体部」
体部は膵臓のほぼ中央で、胃の真裏を横切るように走っています。周囲に目立った管状構造が少なく、がんができても症状が表れにくいため、発見が遅れやすい部位です。
ひ臓に近い「尾部」
尾部は左側にある脾臓のすぐそばまで伸びています。この部位も症状が出にくいことが多く、偶然の画像検査などで発見されるケースが少なくありません。
膵臓の働きは何?消化を助ける「外分泌」と血糖を調節する「内分泌」
消化液(膵液)をつくる働き
膵臓の約98%の体積を占める外分泌(がいぶんぴつ)細胞は、1日あたり約1〜1.5Lの膵液を産生します。膵液にはたんぱく質・脂質・糖質をそれぞれ分解する消化酵素(プロテアーゼ、リパーゼ、アミラーゼなど)が含まれており、十二指腸に分泌されて食物の消化を助けます。
インスリンなどのホルモンを分泌する働き
膵臓内に点在するランゲルハンス島(膵島)は、血糖値を下げるインスリンと血糖値を上げるグルカゴンを血液中に直接分泌します(内分泌)。膵臓の機能が障害されると、糖尿病の発症・悪化につながることがあります。
膵臓の形を知ると、なぜ膵臓がんの理解に役立つのか
膵臓がんの全体像については膵臓がんとは|症状・検査・治療・生活までを医師監修で解説する総合ガイドで詳しく確認できます。
どの場所にできるかで症状や見つかり方が変わることがある
頭部のがんは黄疸が比較的早く現れることがある一方、体部・尾部のがんは症状が乏しいまま進行することが多いとされています。部位によって「気づきやすさ」に差があることを理解しておくと、受診のきっかけになることがあります。
膵管・胆管との位置関係を簡単に整理
膵管と胆管は膵臓頭部で合流し、十二指腸乳頭部(ファーター乳頭)という一点で腸内に開口します。がんがこの周辺に生じると胆汁の流れが妨げられ、黄疸・褐色尿・灰白色便などの症状につながります。
膵臓がんはなぜ見つかりにくいのか
初期は自覚症状が少ないことがある
膵臓は体の深部にあるため、小さながんでは腹痛・背部痛などの症状が出にくいとされています。国立がん研究センター「がん情報サービス」(2024年版)によれば、膵臓がんは早期発見が難しいがんの一つとして位置づけられています。
症状が出るころには周囲に広がっている場合がある
症状が現れた段階では、すでに周囲の血管や臓器に浸潤していたり、リンパ節・肝臓などに転移していたりするケースが少なくないとされています。そのため、リスク因子を持つ方の定期的な画像検査が重要とされています。
こんな症状があれば一度相談を
黄疸、腹痛、背中の痛み、体重減少など
次のような症状が続く場合は、早めに医療機関への相談を検討してください。
- 皮膚・白目が黄色くなる(黄疸)
- みぞおちや背中に鈍い痛みがある
- 原因不明の体重減少が続く
- 食欲不振・消化不良感が長引く
- 便の色が白っぽくなる、尿の色が濃くなる
糖尿病の悪化や急な発症がきっかけになることもある
これまでコントロールできていた糖尿病が急に悪化した、あるいは糖尿病のリスク因子がないのに突然発症したという場合には、膵臓の状態を確認する検査が行われることがあります。
膵臓がんの年齢・性別は?40代女性や10代の確率が気になる方へ
膵臓がんは高齢になるほど増える傾向
国立がん研究センター がん統計(最新集計・2019年罹患データ)によると、膵臓がんの罹患率は50代後半から上昇し始め、60〜70代以降で急激に増加します。男女ともにこの傾向は共通しています。
40代女性や10代は「ゼロではないが、一般にはまれ」と考える
40代女性の膵臓がんは、全体の罹患数に占める割合は低いとされています。ただし「40代での発症がゼロ」ではなく、心配な症状がある場合は年齢にかかわらず受診が大切です。10代(膵臓癌 10代)の発症は統計上きわめてまれであり、若年者に膵臓腫瘍が見つかる場合は、成人とは異なる腫瘍の種類(充実性偽乳頭状腫瘍など)が含まれることもあります。いずれも専門医による評価が不可欠です。
なお、膵臓がんの発症リスクには喫煙・糖尿病・慢性膵炎・家族歴・肥満などが関係するとされており、これらを複数持つ方はより注意が必要とされています(日本癌治療学会 がん診療ガイドライン参照)。
統計は個人の発症を決めるものではないこと
罹患率や生存率はあくまで集団の統計値であり、個人の発症・予後を断定するものではありません。数字を参考にしつつも、体の変化や不安については主治医に相談することが大切です。
膵臓の写真や画像を見るときの注意点
CT・MRI・超音波・内視鏡で見え方が異なる
膵臓がんの検査には、腹部超音波・CT(造影CT)・MRI・EUS(超音波内視鏡)・ERCP(内視鏡的逆行性胆管膵管造影)などが用いられます。それぞれ描出できる情報が異なり、どの検査を選ぶかは症状やリスクに応じて医師が判断します。
「膵臓がん 写真」として検索画像を閲覧する際には、画像の条件(検査の種類・造影の有無・撮影時期など)によって見え方が大きく変わることを理解しておきましょう。
インターネット上の画像だけで自己判断しないこと
インターネット上に掲載されている医療画像は、患者さん個人の状態とは背景が異なります。画像のみで自己診断を行うことは困難であり、不安を高めるだけになることがあります。気になる症状や検査結果がある場合は、必ず医師の診察を受けてください。
受診・相談の目安
早めに受診を検討したい症状
以下に当てはまる症状が2週間以上続く場合は、早めの受診をお勧めします。
- 黄疸(皮膚・白目の黄変)
- 原因不明の体重減少(1か月で2kg以上など)
- 持続する上腹部痛・背部痛
- 尿が濃くなる、便が白っぽくなる
健診異常や家族歴がある場合の相談先
健診でCA19-9(腫瘍マーカーの一つ)の上昇や膵管拡張を指摘された場合、または家族に膵臓がんの患者さんがいる場合は、消化器内科・外科に相談することをお勧めします。
ご予約・お問い合わせはこちらからもお気軽にご相談ください。
診断は主治医の診察と検査が前提であること
本記事はあくまで一般的な情報提供を目的としています。診断・治療方針の決定は、必ず担当医による診察と適切な検査のうえで行われます。
公的データでみる膵臓がんの基礎知識
がん情報サービスで確認できる情報
国立がん研究センター「がん情報サービス」では、膵臓がんの罹患数・死亡数・生存率・標準治療などを公開しています。日本全国のデータに基づく信頼性の高い情報源です。
統計の見方と、数字をそのまま当てはめない注意点
5年生存率などの統計数値は、過去の多くの患者さんのデータから算出された集計値です。治療法は年々進歩しており、また個々の状態(病期・体力・合併症など)によって経過は大きく異なります。数字をそのまま自分に当てはめることは適切ではなく、主治医に直接確認することが重要です。
当院での診療から
当院(AIプラスクリニックたまプラーザ)は消化器内視鏡センターを院内に備え、鎮静下での胃・大腸内視鏡検査を日常的に実施しています。膵臓の評価が必要と判断した場合には、腹部超音波検査を迅速に行うとともに、CT・MRI・EUS(超音波内視鏡)などが必要なケースは速やかに基幹病院への紹介を行っています。紹介後も地域連携クリティカルパスの枠組みのなかで術後フォローを担当し、患者さんが慣れ親しんだ地域で継続的なケアを受けられる体制を整えています。また、在宅療養支援診療所として在宅での緩和ケア・看取りにも対応しており、治療の各段階で患者さんとご家族に寄り添える医療を目指しています。「健診で膵臓の異常を指摘された」「腹部の違和感が続いている」など、どのような段階でも受診の流れをわかりやすくご説明します。
膵臓の位置や役割についてもっと詳しく知りたい方は、膵臓の位置と役割をやさしく解説もご参照ください。また、膵臓がんが見つかるきっかけについては膵臓がんの発覚きっかけとは?症状と検査を解説で詳しくまとめています。
よくある質問(FAQ)
膵臓の形は人によって違いますか?
基本的な細長い形は共通していますが、個人差(走行の曲がり・膵管の太さなど)があります。また、膵臓が輪状十二指腸を取り囲む「輪状膵」などの先天的なバリエーションも知られています。いずれも画像検査で評価されます。
膵臓がんはどこにできやすいですか?
国立がん研究センターのデータでは、膵臓がんの発生部位は頭部が最も多く約60〜70%を占め、次いで体部・尾部の順とされています。頭部のがんは黄疸が出やすいため比較的早期に発見される場合もありますが、一般的には発見が難しいがんです。
40代女性で膵臓がんになる確率は高いですか?
40代女性の膵臓がん罹患率は全体の中では低い水準です。ただし「低い=ゼロ」ではなく、喫煙・糖尿病・家族歴などのリスク因子がある場合は年齢を問わず注意が必要です。気になる症状があれば年齢にかかわらず相談してください。
10代で膵臓がんになることはありますか?
10代(若年者)での膵臓がん(腺がん)はきわめてまれです。ただし、若年者に発生する膵臓腫瘍として「充実性偽乳頭状腫瘍(SPN)」など、成人の膵臓がんとは異なる種類のものが報告されています。腹部症状や腫瘤を指摘された場合は小児科・消化器外科への相談を検討してください。
膵臓の写真だけでがんかどうか分かりますか?
画像だけで「がんかどうか」を判断することは、専門医でも難しい場合があります。CT・MRI・EUS・組織生検など複数の検査を組み合わせて総合的に診断されます。インターネット上の画像で自己判断することは避け、必ず医療機関で評価を受けてください。
まとめ:膵臓の形と働きを知ることが、早めの気づきにつながることがある
膵臓は細長い形をした臓器で、頭部・体部・尾部に分かれています。深い位置にあることが早期発見を難しくしており、消化酵素の分泌(外分泌)と血糖調節ホルモンの産生(内分泌)という二重の役割を担っています。膵臓がんは部位によって現れる症状が異なり、40代女性や10代での発症はまれながらもゼロではありません。心配な症状がある場合は、早めに医療機関を受診することをお勧めします。
また、膵臓とは?がんとの関係もわかる基礎知識では、膵臓の構造とがんとの関連をさらに詳しく解説しています。
参考文献・出典
本記事の監修医師
佐藤 靖郎(さとう やすお)
医師(医学博士)/AIプラスクリニックたまプラーザ 監修医
専門:消化器・内科(消化器外科/内視鏡/一般内科)
略歴:
1988年 福島県立医科大学医学部卒業、医師免許取得。1997年 同大学大学院修了、博士号取得。国立国際医療研究センター、東京新宿メディカルセンター、NTT東日本関東病院、横浜市立大学関連病院、国立病院機構横浜医療センター外科医長・救命救急センター副部長、済生会若草病院(横浜市)外科部長・内視鏡センター・診療部長を歴任。丸亀医療センター・佐々木病院副理事長、日立おおみか病院理事を経て現在に至る。
公的役割:
厚生労働省「地域連携クリティカルパスモデルの開発」班研究員、全国保健所長会 地域連携パス推進班アドバイザー、神奈川県がん診療連携協議会 地域連携クリティカルパス部会 相談役。
AIプラスクリニックたまプラーザのご案内
たまプラーザで内科・消化器の気になる症状がある方へ。膵臓の異常を健診で指摘された場合や、腹部症状・背部痛が続いている場合なども、受診の目安や検査についてお気軽にご相談ください。
TEL: 045-909-0117(横浜市青葉区・たまプラーザ)
初診の際は、保険証・お薬手帳・(お持ちであれば)健診結果や紹介状をご用意いただくとスムーズです。ご予約はWebまたはお電話で承ります。
免責事項
本記事は一般的な医学情報の提供を目的としており、個別の診断・治療方針を示すものではありません。症状や治療についての判断は、必ず主治医・専門医にご相談ください。記載内容は公開時点の公的情報・診療ガイドラインに基づいており、最新情報は国立がん研究センター「がん情報サービス」等でご確認ください。