下腹部の痛みは、消化器・泌尿器・生殖器など多くの臓器が集まる部位だからこそ、原因が多岐にわたります。軽い便秘や生理痛から、虫垂炎・尿路結石・婦人科疾患まで幅広く、自己判断だけでは見極めが難しいケースも少なくありません。本記事では「下腹部が痛い」と感じたときに知っておきたい原因・症状・受診の目安・自己対処のポイントを、医学的根拠をもとにわかりやすく解説します。なお、症状の診断・治療は必ず医師の診察を前提としています。
腹痛全般については、親ピラーページ「お腹痛いとは?原因・症状・治し方まで内科医が解説【たまプラーザ】」も合わせてご覧ください。
「下腹部が痛い」とは、おへそより下・鼠径部(そけいぶ)より上のエリアに不快感・圧迫感・鋭い痛みが生じている状態を指します。痛みの発生には、①臓器が伸展・収縮するときの内臓痛、②炎症や腹膜への刺激による体性痛、③遠い部位から神経経路を介して感じる関連痛の三種類があり、これらが混在することもあります。
みぞおち(上腹部)の痛みは主に胃・十二指腸・膵臓の問題が疑われ、脇腹は腎臓・側結腸などが関わります。一方、下腹部は大腸(S状結腸・直腸)・膀胱・子宮・卵巣・虫垂などが主な痛みの発生源です。痛む場所の違いが診断の重要なヒントになります。
便秘・過敏性腸症候群(IBS)・胃腸炎・虫垂炎・大腸憩室炎(だいちょうけいしつえん)などが代表的です。大腸は下腹部全体にわたって存在するため、腸の蠕動(ぜんどう)異常や炎症が下腹部痛として現れやすい特徴があります。
膀胱炎・尿道炎・尿路結石・腎盂腎炎(じんうじんえん)などが挙げられます。排尿と関連して痛みが変動する場合は泌尿器疾患を疑う一つの手がかりとなります。
月経痛・子宮内膜症・子宮筋腫・卵巣嚢腫(らんそうのうしゅ)・卵巣茎捻転(けいねんてん)・骨盤内炎症性疾患(PID)・子宮外妊娠などがあります。女性の下腹部痛は婦人科的な原因を常に念頭に置く必要があります。
精巣捻転(せいそうねんてん)・精巣上体炎(せいそうじょうたいえん)・前立腺炎などが該当します。陰部や鼠径部への放散痛を伴うことがあります。
過食・暴飲・冷え・ストレスによる腸の過活動など、生活習慣の乱れが一時的な下腹部痛の誘因になることもあります。
虫垂炎が代表的で、初期はおへそ周囲から始まり右下腹部に移動するのが典型的な経過です。ほかに卵巣疾患(女性)・大腸憩室炎・鼠径ヘルニアも考えられます。
S状結腸の憩室炎・過敏性腸症候群・便秘が多く見られます。女性では左卵巣の嚢腫や子宮内膜症も原因になります。
膀胱炎・尿路結石・子宮疾患・便秘・IBSなどが考えられます。排尿時の痛みや頻尿と重なる場合は膀胱炎の可能性があります。
鈍い持続痛は慢性的な炎症や便秘、差し込むような周期的な強い痛み(疝痛(せんつう))は尿路結石・腸管の強い収縮を示すことがあります。
ガスの貯留・便秘・腸閉塞(まれ)のほか、腹水(ふくすい)貯留でも腹部膨満感が生じます。
感染性胃腸炎・虫垂炎・腸炎などの炎症性疾患が疑われます。高熱が続く場合は早めの受診が勧められます。
尿路感染症や尿路結石を示す可能性があります。
子宮内膜症・骨盤内炎症性疾患・子宮外妊娠などを念頭に、婦人科の受診が勧められます。
消化管穿孔(せんこう)・腸閉塞・卵巣茎捻転など、緊急対応を要する疾患の可能性があります。
ショック状態を示すサインです。ただちに救急車の利用を検討してください。
38℃以上の高熱と嘔吐が重なる場合は、重篤な感染症の可能性があります。
大腸疾患・消化管出血・尿路疾患などが疑われ、速やかな受診が望まれます。
子宮外妊娠は生命にかかわる場合があり、妊娠の可能性がある女性の強い下腹部痛は急いで受診してください。
数日以上痛みが続く、または徐々に強くなっている場合は自己判断で様子をみることは勧められません。
| 状況 | 受診科の目安 |
|---|---|
| 原因が特定できない・まず相談したい | 内科 |
| 下痢・便秘・血便など腸の症状が主 | 消化器内科 |
| 排尿時痛・血尿・頻尿が主 | 泌尿器科 |
| 月経異常・おりもの変化が主 | 婦人科 |
| 激しい痛み・ショック症状 | 救急外来 |
迷う場合や複数の症状が重なる場合は、まず内科または消化器内科への相談が一つの目安です。ご予約・お問い合わせからお気軽にご連絡ください。
発症のタイミング(急に始まったか・じわじわ始まったか)は診断の重要な情報です。
場所(右・左・真ん中)・痛みの性質(鈍痛・鋭痛・締め付け感)・持続か間欠かを整理しておきましょう。
発熱・吐き気・下痢・血尿・月経との関係などを伝えてください。
NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)など薬の種類が診断や処方方針に影響することがあります。
腹部の触診・打診で圧痛・筋緊張・腸音を確認します。
炎症反応(CRP・白血球数)・腎機能・尿沈渣(にょうちんさ)などを調べます。
腹部超音波(エコー)・CT・MRIなどが状況に応じて使われます。特にCTは虫垂炎・尿路結石の診断に有用です。
経腟超音波・妊娠反応検査・膀胱鏡などが行われることがあります。
痛みが強い場合は無理な活動を控え、楽な姿勢で安静にしましょう。
脱水を防ぐため水分を少量ずつ補給し、消化の良い食事を心がけてください。
市販の鎮痛薬は一時的な緩和に用いられることがありますが、痛みの原因を隠してしまい診断を遅らせるリスクがあります。服用する際は用法・用量を守り、症状が改善しない場合は早めに受診してください。
患部を強く温める・揉むなどの行為は、虫垂炎や卵巣茎捻転などの炎症を悪化させる可能性があるため避けてください。
最も頻度が高いグループです。過敏性腸症候群(IBS)はローマ基準に基づき診断され、ストレス・食習慣との関連が指摘されています。詳しくは「腹痛の治し方・治療法|内科医がわかりやすく解説【たまプラーザ】」も参考にしてください。
右下腹部痛・発熱・吐き気が典型的な三主徴です。炎症が進行すると穿孔・腹膜炎に至るため、疑いがある場合は速やかな受診が必要です。
女性に多く、排尿時痛・頻尿・残尿感が主症状です。適切な抗菌薬治療が必要です。
突然の激しい側腹部〜下腹部痛が特徴です。CT検査が診断に有効です。
子宮内膜症・卵巣嚢腫・子宮外妊娠などは女性特有の下腹部痛の原因となります。月経周期との関連を把握することが大切です。詳しくは「下腹部痛とは?原因・症状・対処を内科医が解説【たまプラーザ】」もご覧ください。
食物繊維・水分の十分な摂取、規則正しい排便習慣がIBSや便秘による下腹部痛の予防に役立ちます。
腸は自律神経の影響を受けやすい臓器です。適度な運動・十分な睡眠・冷え対策はコンディションの維持に有用とされています。
同じ症状が繰り返す場合は、背景に慢性疾患が隠れている可能性があります。自己判断で放置せず、医師に相談することをお勧めします。
軽度で短時間に治まる場合は経過観察も選択肢ですが、痛みが強い・長く続く・他の症状を伴う場合は受診をお勧めします。「何となく痛い」が続く場合も、一度医師に相談してください。
はい。便の貯留により腸管が伸展されることで下腹部の圧迫感や痛みが生じることがあります。排便後に改善する場合は便秘が関与している可能性があります。
S状結腸の便秘・過敏性腸症候群・大腸憩室炎が比較的多い原因です。女性では左側卵巣の疾患も考えられます。
月経痛・月経不順・おりものの変化など婦人科的症状を伴う場合は婦人科が適切です。消化器・泌尿器症状が主であれば内科や消化器内科が入口になります。判断に迷う場合はまず内科へ相談するのも一つの方法です。
痛みが2〜3日以上続く場合や、短期間でも発熱・嘔吐・血便・血尿・強い痛みを伴う場合は早めに受診してください。「少し様子を見ようか」と感じる状況でも、迷ったら受診を検討することをお勧めします。
一時的な対症療法として使用されることはありますが、痛みを和らげることで受診が遅れ、虫垂炎などの重篤な疾患の診断が遅くなるリスクがあります。強い痛みや繰り返す痛みには自己判断での使用を控え、まず医師に相談してください。
佐藤 靖郎(さとう やすお)
医師(医学博士)/AIプラスクリニックたまプラーザ 監修医
専門:消化器・内科(消化器外科/内視鏡/一般内科)
略歴:
1988年 福島県立医科大学医学部卒業、医師免許取得。1997年 同大学大学院修了、博士号取得。国立国際医療研究センター、東京新宿メディカルセンター、NTT東日本関東病院、横浜市立大学関連病院、国立病院機構横浜医療センター外科医長・救命救急センター副部長、済生会若草病院(横浜市)外科部長・内視鏡センター・診療部長を歴任。丸亀医療センター・佐々木病院副理事長、日立おおみか病院理事を経て現在に至る。
公的役割:
厚生労働省「地域連携クリティカルパスモデルの開発」班研究員、全国保健所長会 地域連携パス推進班アドバイザー、神奈川県がん診療連携協議会 地域連携クリティカルパス部会 相談役。
たまプラーザで内科・消化器の気になる症状がある方へ。下腹部痛をはじめとする腹部症状の受診の目安や検査について、お気軽にご相談ください。
TEL:045-909-0117(横浜市青葉区・たまプラーザ)
初診の際は、保険証・お薬手帳・(お持ちであれば)健診結果や紹介状をご用意いただくとスムーズです。ご予約はWebまたはお電話で承っております。