腹痛の治し方・治療法|内科医がわかりやすく解説【たまプラーザ】
腹痛は、一時的な胃腸の不調から緊急性の高い病気まで、原因がきわめて幅広い症状です。「とりあえず安静にしていればよいケース」もあれば、「すぐに救急受診が必要なケース」もあるため、まず”どんな腹痛か”を把握することが、正しい対処への第一歩です。本記事では、消化器専門医の監修のもと、腹痛の治し方・対処法を原因別・部位別にわかりやすく解説します。
腹痛全般の原因・症状については、親ピラーページお腹痛いとは?原因・症状・治し方まで内科医が解説【たまプラーザ】もあわせてご参照ください。
腹痛の「治し方」を考える前に知っておきたいこと
腹痛は原因によって対処法が異なる
腹痛の原因には、過食・便秘・ガスだまりなどの消化器系の一時的な不調から、胃炎・胃腸炎・過敏性腸症候群(IBS)・機能性ディスペプシア、さらには虫垂炎・腸閉塞・婦人科疾患など手術が必要な疾患まで多岐にわたります。原因によって対処法はまったく異なるため、「腹痛全般に効く万能な治し方」はありません。症状を丁寧に観察することが重要です。
まず確認したい危険な症状
以下の症状がある場合は、自己判断で様子を見ることは避け、速やかに医療機関を受診することが推奨されます。
- 突然始まった激しい痛み(特に「今まで経験したことがない」レベル)
- 痛みが30分以上続き、だんだん悪化する
- 発熱・嘔吐・血便・黒い便を伴う
- お腹が板のように硬い、歩くと響く
- 冷や汗・顔面蒼白・失神しそうな感覚
すぐできる腹痛の対処法
安静にして体を休める
軽度の腹痛であれば、まず無理な活動をやめ、楽な姿勢で横になることが基本です。腸の動きを落ち着かせることで、痛みが和らぐ場合があります。
お腹を冷やさない・温める
冷えは腸の蠕動(ぜんどう)運動を乱し、痛みを悪化させることがあります。腹巻きや温かいタオルなどで腹部を穏やかに温めると、ガスだまりや軽いけいれん性の痛みには効果が期待できます。ただし、虫垂炎など炎症が疑われる場合は温めると悪化することがあるため注意が必要です。
水分を少しずつ補給する
嘔吐や下痢を伴う場合は脱水に注意が必要です。水・経口補水液・薄いスポーツドリンクなどを一口ずつゆっくり補給しましょう。一度に大量に飲むと胃腸への負担になることがあります。
食事は無理せず消化のよいものを選ぶ
食欲がない場合は無理に食べる必要はありません。食べられる場合は、おかゆ・うどん・豆腐・白身魚など消化のよいものを少量ずつ摂るようにしましょう。
腹痛のときに避けたい行動・食べ物
刺激の強い食べ物や飲み物を控える
香辛料(唐辛子・わさびなど)や酸味の強い食品は胃粘膜を刺激し、症状を悪化させることがあります。
カフェインで腹痛が悪化することがある
コーヒー・緑茶・エナジードリンクなどに含まれるカフェインは、胃酸分泌を促進し、腸の蠕動運動を亢進させる作用があります。胃炎・過敏性腸症候群・下痢傾向の方は、腹痛期間中はカフェインを控えることが望ましいといわれています。
生玉ねぎなどでお腹が痛くなる場合がある
玉ねぎ・ネギ・ニンニクなどには、腸内でガスを発生させやすいフルクタンやFODMAP(発酵性の糖質)が含まれます。特に過敏性腸症候群の方はこれらの食品でお腹の痛みや張りが生じやすいとされています(低FODMAP食の考え方)。生の状態は加熱時より刺激が強いため、腹痛時は避けることをおすすめします。
アルコールや脂っこい食事は控える
アルコールは胃粘膜を直接刺激し、胃炎・胃潰瘍のリスクを高めます。高脂肪食は消化に時間がかかり、胃もたれや痛みを起こしやすくなります。腹痛中は特に注意が必要です。
「食べたらすぐお腹が痛くなる」場合に考えられること
胃腸炎や胃炎などの一時的な不調
ウイルス・細菌による感染性胃腸炎や急性胃炎では、食事をきっかけに痛みや吐き気が起きやすくなります。多くは数日以内に自然軽快しますが、高熱・血便・激しい嘔吐が続く場合は受診が必要です。
乳製品や特定の食べ物が合わない場合
乳糖不耐症(牛乳に含まれる乳糖を分解する酵素が不足している状態)では、乳製品を摂ると腹痛・下痢・腹部膨満が起きやすくなります。特定の食品に心当たりがある場合は、一定期間除去して症状の変化を観察することが参考になります。
機能性ディスペプシアや過敏性腸症候群の可能性
検査をしても明らかな異常が見つからないにもかかわらず、食後の腹痛・胃もたれ・腸の不調が繰り返される場合、機能性ディスペプシア(FD)や過敏性腸症候群(IBS)が疑われます。これらは日本消化器病学会のガイドラインにおいても、食事療法・生活習慣の見直し・薬物療法の組み合わせが推奨されています。
くわしくは下腹部痛みとは?原因・症状・対処を内科医が解説【たまプラーザ】もご参照ください。
便やガスが関係する腹痛の対処法
便秘が原因の腹痛の特徴
下腹部(特に左下)の鈍痛やお腹の張りが主な症状で、排便後に楽になる場合は便秘が原因の腹痛と考えられます。水分・食物繊維の摂取増加、適度な運動が基本的な対処法です。
ガスだまりでお腹が痛いときのポイント
腸内にガスがたまると、腹部全体の張り感や刺すような痛みが生じることがあります。消化に時間のかかる食品(豆類・炭酸飲料・チューインガムなど)を控え、ウォーキングなど軽い運動で腸の動きを促すことが助けになります。
お腹の張りが強いときに確認したいこと
数日間にわたる強い腹部膨満・排ガス・排便がまったくない場合は、腸閉塞などの可能性も否定できないため、速やかな受診が必要です。
腹痛の場所で考えられる主な原因
みぞおちの痛み
胃炎・胃潰瘍・逆流性食道炎・機能性ディスペプシアなどが代表的です。食事との関連(食後に悪化するか、空腹時に悪化するかなど)を記録しておくと診察時に役立ちます。
右下腹部の痛み
虫垂炎を最初に考える必要があります。発熱を伴い、歩くと響く・押すと痛みが強くなる場合は救急受診が必要です。
左下腹部・左側の痛み
便秘・過敏性腸症候群・大腸憩室炎・女性では卵巣・子宮の疾患なども考えられます。左下腹部の痛みについては下腹部痛とは?原因・症状・対処を内科医が解説【たまプラーザ】で詳しく解説しています。
右側・左側で痛み方が違うときの注意点
尿管結石は腰から下腹部にかけて激しい痛みが突然起き、波のように強弱があることが特徴です。膵炎は上腹部から背中にかけて持続する強い痛みが特徴で、いずれも速やかな受診が必要です。
自宅で様子を見てよい腹痛の目安
痛みが軽く、時間とともに改善している
食べ過ぎや軽い疲れなど明らかな原因があり、痛みが少しずつ和らいでいる場合は、安静・食事制限で様子を見てもよいとされます。
発熱や嘔吐などの症状が強くない
37℃台前半程度の微熱で、嘔吐が一時的であれば、自宅療養が可能な場合もあります。
食事や水分が少しとれる
少量でも水分や食事が摂れている場合は、脱水リスクが低く、緊急性が比較的低いと考えられます。
受診を急いだほうがよい腹痛
強い痛みが続く・だんだん悪化する
1〜2時間経過しても改善しない、または徐々に強くなる痛みは、消化器の炎症・閉塞・穿孔など緊急性の高い疾患の可能性があります。
発熱、嘔吐、血便、黒い便がある
血便(鮮血・暗赤色)は消化管からの出血、黒い便(タール便)は上部消化管出血を示す可能性があり、いずれも早期の精査が必要です。
お腹が硬い、歩くと響く、冷や汗が出る
腹膜炎など腹腔内の重篤な状態を示すサインです。ためらわず救急受診を検討してください。
妊娠の可能性がある場合や高齢者・子どもの腹痛
子宮外妊娠は腹痛・出血とともに急速に悪化することがあります。高齢者は症状が出にくいことがあるため、普段と違う様子があれば早めの受診が重要です。小児の腸重積は12時間以内の早期処置が予後に関係します。
医療機関ではどのように診断・治療する?
問診と身体診察で確認すること
いつから・どこが・どんな痛み(鈍痛・鋭痛・けいれん性)・食事との関係・便通の変化・発熱の有無などを確認します。
必要に応じて行う検査
血液検査(炎症・肝機能・膵酵素など)、尿検査、腹部超音波検査(エコー)、腹部X線・CT、内視鏡検査などが必要に応じて実施されます。
原因に応じた治療の考え方
胃炎・胃潰瘍には胃酸分泌抑制薬、感染性腸炎には整腸薬・抗菌薬(細菌性の場合)、IBSには食事療法と薬物療法、外科疾患には手術など、原因に応じた治療が選択されます。
腹痛を繰り返すときに見直したい生活習慣
食事内容と食べる速さ
早食い・まとめ食いは胃腸への負担を増やします。よく噛んでゆっくり食べることが消化器全体の負担軽減につながります。
ストレスや睡眠不足との関係
腸は「第二の脳」とも呼ばれ、ストレス・睡眠不足は腸の蠕動運動や内臓の感覚過敏に影響します。IBSや機能性ディスペプシアの症状悪化と強く関連することがわかっています。
便通を整えるための工夫
1日1.5〜2L程度の水分摂取、食物繊維(野菜・海藻・全粒穀物)の積極的な摂取、毎日一定の時刻に排便を試みる習慣が推奨されます。
何科を受診すべきか
まずは内科・消化器内科を検討
腹痛の多くは内科・消化器内科で診断・治療が可能です。原因不明の腹痛が続く場合や、血液検査・内視鏡などの精査を希望する場合も消化器内科への受診が適しています。
症状によっては救急受診を考える
激しい腹痛・発熱・血便など前述の緊急サインがある場合は、夜間・休日でも救急外来への受診をためらわないでください。
よくある質問(FAQ)
腹痛があるとき、市販薬を飲んでもよいですか?
軽い腹痛であれば整腸薬(乳酸菌製剤など)を活用できる場合があります。ただし、痛み止め(NSAIDs)は胃粘膜を傷つけるリスクがあり、原因が不明な腹痛への安易な使用は推奨されません。強い痛みや繰り返す腹痛は、医師に相談のうえで適切な薬を処方してもらうことが望ましいです。
すぐお腹が痛くなるのはストレスが原因ですか?
ストレスが腸の機能に影響することは医学的に確認されており、過敏性腸症候群や機能性ディスペプシアの発症・悪化に関与すると考えられています。ただし、器質的な疾患(炎症・ポリープ・腫瘍など)との鑑別が必要なため、繰り返す腹痛は一度消化器内科での検査を受けることをおすすめします。
左下腹部の痛みは何が考えられますか?
便秘・過敏性腸症候群・大腸憩室炎・女性では卵巣や子宮の疾患なども候補に挙がります。発熱を伴う場合や痛みが強い場合は早めの受診が必要です。詳しくは下腹部痛とは?原因・症状・対処を内科医が解説【たまプラーザ】をご覧ください。
カフェインをやめると腹痛は改善しますか?
カフェインが腹痛の誘因になっている場合(特に過敏性腸症候群や胃酸過多の方)は、カフェインを控えることで症状が和らぐ可能性があります。ただし、個人差があるため、まず1〜2週間カフェインを減らして症状の変化を観察するとよいでしょう。改善しない場合は医師へご相談ください。
生玉ねぎでお腹が痛くなるのは異常ですか?
玉ねぎに含まれるフルクタンなどのFODMAPは、腸内でガス産生を促し、過敏な腸を持つ方では腹痛・腹部膨満を引き起こすことがあります。加熱すれば症状が軽減される場合もあるため、まずは加熱した玉ねぎから試してみてください。特定の食品で繰り返し症状が出る場合は消化器内科に相談することをおすすめします。
受診までに食べてもよいものはありますか?
強い腹痛で手術の可能性がある場合は、受診前の飲食を控えることが安全です。軽症であれば、おかゆ・スープ・経口補水液など消化に優しいものを少量摂ることは問題ありません。迷った場合は受診時に医師へ確認してください。
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本記事の監修医師
佐藤 靖郎(さとう やすお)
医師(医学博士)/AIプラスクリニックたまプラーザ 監修医
専門:消化器・内科(消化器外科/内視鏡/一般内科)
略歴:
1988年 福島県立医科大学医学部卒業、医師免許取得。1997年 同大学大学院修了、博士号取得。国立国際医療研究センター、東京新宿メディカルセンター、NTT東日本関東病院、横浜市立大学関連病院、国立病院機構横浜医療センター 外科医長・救命救急センター副部長、済生会若草病院(横浜市)外科部長・内視鏡センター・診療部長を歴任。丸亀医療センター・佐々木病院副理事長、日立おおみか病院理事を経て現在に至る。
公的役割:
厚生労働省「地域連携クリティカルパスモデルの開発」班研究員、全国保健所長会 地域連携パス推進班アドバイザー、神奈川県がん診療連携協議会 地域連携クリティカルパス部会 相談役。
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