萎縮性胃炎とは?|内科医がわかりやすく解説
萎縮性胃炎とは、胃の粘膜が長期間の炎症によって薄くなり、胃液を分泌する細胞の数が減少した状態です。自覚症状に乏しいケースも多い一方で、進行すると胃がんのリスク因子になることが知られており、早期発見・適切な管理が重要です。本記事では、原因・症状・診断・治療・日常生活の注意点まで、消化器専門医の監修のもとでわかりやすくご説明します。
萎縮性胃炎とは?まずは簡単に説明
胃の粘膜が薄くなる状態
胃の内側を覆う粘膜には、胃酸や消化酵素を分泌する細胞が多数存在しています。萎縮性胃炎では、慢性的な炎症によってこれらの細胞が減少・変性し、粘膜全体が薄く(萎縮)なります。粘膜が萎縮すると、胃本来の消化機能が低下するほか、粘膜バリアも弱まります。
慢性胃炎との関係
胃炎は大きく急性と慢性に分けられます。萎縮性胃炎は慢性胃炎の一形態であり、炎症が長期間持続した結果として生じる状態です。慢性胃炎のすべてが萎縮を伴うわけではありませんが、特にヘリコバクター・ピロリ菌(以下、ピロリ菌)感染を背景とした慢性胃炎では、時間をかけて萎縮が進行することがあります。
どんな人に多いのか
萎縮性胃炎は中高年以降に多くみられます。国内ではピロリ菌の感染率が比較的高い世代(現在50〜70代以上)で有病率が高く、年齢が上がるほど萎縮の程度も進みやすい傾向があります。一方、若い世代でもピロリ菌感染がある場合には注意が必要です。
萎縮性胃炎の主な原因
ピロリ菌感染との関係
萎縮性胃炎の最も主要な原因はピロリ菌(Helicobacter pylori)感染です。ピロリ菌は胃の酸性環境でも生息でき、持続的に胃粘膜を刺激・傷害します。日本消化器病学会・日本ヘリコバクター学会のガイドラインでも、ピロリ菌感染が萎縮性胃炎の主要な原因として位置づけられています。
長く続く胃の炎症
ピロリ菌以外にも、胃への持続的な刺激や炎症が原因となりえます。胃酸の過剰分泌、十二指腸からの胆汁逆流なども、長期間にわたって粘膜にダメージを与え、萎縮を促進する場合があります。
年齢や生活習慣との関連
加齢そのものも粘膜の萎縮に関与するとされています。また、喫煙・飲酒・塩分の多い食事・ストレスといった生活習慣は、胃粘膜の防御機能を弱め、炎症を慢性化させる要因として挙げられます。
薬やその他の要因との関係
非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の長期使用、自己免疫性の胃炎(自己免疫性萎縮性胃炎)なども原因となりえます。自己免疫性の場合はビタミンB12の吸収障害(悪性貧血)を引き起こすことがあるため、専門医への相談が勧められます。
萎縮性胃炎で起こりやすい症状
胃もたれ・胃の不快感
食後に胃が重く感じられる「胃もたれ」や、みぞおちあたりの不快感は比較的よくみられます。胃酸の分泌量が変化し、消化機能が低下することで起こりやすくなります。
みぞおちの痛み
みぞおちの鈍痛や締め付け感が生じることがあります。症状は食事のタイミングや内容によって変動する場合があります。
食欲低下・吐き気
胃の機能低下に伴い、食欲がわきにくくなったり、食後に吐き気を感じたりすることがあります。
症状が出ないこともある
萎縮性胃炎は自覚症状がほとんどない「無症状」の場合も少なくありません。健診や別の検査をきっかけに発見されるケースもあります。症状がないからといって放置せず、医師の指示に従った経過観察を続けることが大切です。
萎縮性胃炎はどのように診断するのか
問診で確認すること
受診時には、症状の内容・持続期間、生活習慣、服薬歴、ピロリ菌感染歴や除菌治療歴などを確認します。
胃カメラ(内視鏡)でわかること
胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)は、胃粘膜の状態を直接観察できる最も信頼性の高い検査です。粘膜の色調変化・薄さ・血管透見像(血管が透けて見える所見)などで萎縮の範囲や程度を評価します。必要に応じて組織の一部を採取して病理検査を行います。
血液検査・ピロリ菌検査
血液検査では、ペプシノゲン法(胃粘膜の萎縮度を間接的に反映する指標)やピロリ菌の抗体検査が実施されることがあります。また、尿素呼気試験・便中ピロリ菌抗原検査など複数のピロリ菌検査法があります。
必要に応じて行う追加検査
自己免疫性胃炎が疑われる場合は、抗内因子抗体・抗壁細胞抗体などの血液検査が追加されることがあります。
萎縮性胃炎といわれたら注意したい病気
胃潰瘍・十二指腸潰瘍との違い
胃潰瘍・十二指腸潰瘍は粘膜が深くえぐれた状態で、より強い痛みや出血を生じやすい点が異なります。症状が似ていることもあるため、内視鏡で鑑別することが重要です。
機能性ディスペプシアとの違い
胃もたれや痛みがあっても内視鏡で明らかな器質的異常が見つからない場合を機能性ディスペプシアと呼びます。萎縮性胃炎と症状が重なるため、内視鏡検査による区別が必要です。
胃がんとの関連
萎縮性胃炎は胃がんの発生リスクと関連することが、複数の研究・ガイドラインで指摘されています。萎縮の範囲が広いほどリスクが高まるとされており、定期的な内視鏡検査が重要です。詳しくは胃がんとは?原因・症状・対処を内科医が解説もご参照ください。
受診を急ぐべき症状
黒いタール状の便、血を吐く、急激な体重減少、高度の貧血などがある場合は、速やかに医療機関を受診してください。
萎縮性胃炎の治療・対処法
ピロリ菌陽性の場合の除菌治療
ピロリ菌が陽性の場合、除菌治療(抗菌薬と胃酸分泌抑制薬の組み合わせ)が行われます。除菌に成功すると胃炎の進行抑制が期待でき、日本消化器病学会ガイドラインでも除菌療法が推奨されています。ただし、すでに生じた萎縮が完全に元に戻るわけではないため、除菌後も定期的な経過観察が必要です。
症状に応じた薬物治療
胃もたれ・痛みなどの症状に対しては、プロトンポンプ阻害薬(PPI)・H2ブロッカー・消化管運動機能改善薬・粘膜保護薬などが使用されることがあります。薬の選択は症状や状態に応じて医師が判断します。
胃に負担をかけにくい食生活
- 塩分・刺激物(香辛料・アルコール・炭酸飲料)を控えめにする
- 規則正しい食事時間を守り、過食を避ける
- 新鮮な野菜・果物(抗酸化物質を含む)を積極的に摂取する
- 早食いや食後すぐに横になることを避ける
日常生活で気をつけたいこと
禁煙・節酒、ストレスの管理、適切な睡眠の確保なども胃粘膜の保護に役立つとされています。NSAIDsを長期服用している場合は、医師に相談したうえで薬の見直しを検討することがあります。
放置するとどうなる?
症状が軽くても経過観察が必要な理由
症状が軽度・無症状であっても、萎縮が進行している可能性があります。適切な管理を行わないまま放置すると、粘膜の変化が進んでしまうことがあります。
胃がんリスクとの関係
萎縮性胃炎が広範囲に及ぶほど、また腸上皮化生(胃粘膜が腸の粘膜に似た性質に変化する状態)を伴う場合は、胃がんリスクが高まるとされています。胃がんの症状については別記事でも解説していますので、あわせてご参照ください。
定期的な内視鏡検査が勧められる場合
萎縮の範囲・程度・ピロリ菌感染の有無・腸上皮化生の有無などを考慮し、担当医が内視鏡検査の間隔を提案します。一般的に1〜3年ごとの検査が推奨されるケースがありますが、個人差がありますので医師にご確認ください。
受診の目安
胃もたれや痛みが続くとき
2週間以上続く胃もたれ・みぞおちの不快感・食欲低下がある場合は、一度内科または消化器内科を受診することをお勧めします。
黒い便・体重減少・貧血があるとき
これらの症状は、より重篤な消化器疾患のサインである可能性があります。早めに医療機関へご相談ください。
すぐに医療機関を受診したほうがよい症状
- 突然の激しい腹痛
- 吐血・血便・黒色タール便
- 急激な体重減少(1〜2か月で数kg以上)
- 高度の倦怠感・立ちくらみ
当院でご相談いただけること
胃の不調の原因を整理する診察
「なんとなく胃が重い」「食後に気持ち悪い」など、漠然とした胃の不調でもお気軽にご相談ください。問診・検査を通じて、症状の原因を丁寧に整理します。
必要に応じた検査のご案内
ピロリ菌検査・血液検査・内視鏡検査など、状態に応じた検査についてご説明します。検査に不安がある方も、まずは受診時にご相談ください。
たまプラーザ周辺で内科受診を考えている方へ
AIプラスクリニックたまプラーザでは、消化器専門医の知見をもとに、胃の不調に関する診察・検査・生活指導を行っています。受診を迷われている方も、ご予約・お問い合わせよりお気軽にご連絡ください。
よくある質問(FAQ)
萎縮性胃炎は治りますか?
ピロリ菌が原因の場合、除菌治療によって炎症の進行を抑えることが期待できます。ただし、すでに萎縮した粘膜が完全に元の状態に戻ることは難しいとされています。進行を防ぎ、適切に管理することが重要です。
萎縮性胃炎と慢性胃炎は同じですか?
萎縮性胃炎は慢性胃炎の一種です。慢性胃炎の中でも、粘膜の萎縮が生じているタイプを特に「萎縮性胃炎」と呼びます。慢性胃炎すべてが萎縮を伴うわけではありません。
ピロリ菌がいないのに萎縮性胃炎になることはありますか?
あります。自己免疫性萎縮性胃炎(自己免疫が胃の壁細胞を攻撃するタイプ)や、長期的なNSAIDsの使用、加齢による変化などがピロリ菌感染なしに萎縮を引き起こすことがあります。
萎縮性胃炎があると食事で気をつけることはありますか?
塩分・アルコール・香辛料を控え、規則正しい食事を心がけることが大切です。新鮮な野菜や果物を積極的に取り入れることも勧められています。ただし、食事制限については個々の状態によって異なりますので、担当医にご確認ください。
内視鏡検査はどのくらいの頻度で必要ですか?
萎縮の範囲・程度・腸上皮化生の有無・ピロリ菌の除菌状況などにより、担当医が適切な検査間隔を判断します。一般的には1〜3年に1回程度の検査が推奨されることがありますが、個人差がありますので必ず医師にご相談ください。
萎縮性胃炎と診断されたら、すぐに胃がんになるのですか?
萎縮性胃炎があるからといって、直ちに胃がんになるわけではありません。ただし、萎縮性胃炎は胃がんのリスク因子の一つとされており、定期的な内視鏡検査による経過観察が重要です。過度に心配せず、主治医の指示に従った管理を続けることが大切です。
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本記事の監修医師
佐藤 靖郎(さとう やすお)
医師(医学博士)/AIプラスクリニックたまプラーザ 監修医
専門:消化器・内科(消化器外科/内視鏡/一般内科)
略歴:
1988年 福島県立医科大学医学部卒業、医師免許取得。1997年 同大学大学院修了、博士号取得。国立国際医療研究センター、東京新宿メディカルセンター、NTT東日本関東病院、横浜市立大学関連病院、国立病院機構横浜医療センター外科医長・救命救急センター副部長、済生会若草病院(横浜市)外科部長・内視鏡センター・診療部長を歴任。丸亀医療センター・佐々木病院副理事長、日立おおみか病院理事を経て現在に至る。
公的役割:
厚生労働省『地域連携クリティカルパスモデルの開発』班研究員、全国保健所長会 地域連携パス推進班アドバイザー、神奈川県がん診療連携協議会 地域連携クリティカルパス部会 相談役。
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