虚血性大腸炎の原因|内科医がわかりやすく解説【たまプラーザ】
虚血性大腸炎は、大腸への血流が一時的に不足することで炎症が生じる疾患で、突然の腹痛・血便を主な症状とします。便秘や脱水、動脈硬化といった日常的な要因が誘因になることが多く、特に中高年以降の方に多く見られます。本記事では、原因・症状・診断・治療・予防まで、消化器専門医の監修のもとわかりやすく解説します。
虚血性大腸炎とは
大腸に血流が一時的に不足して起こる炎症
虚血性大腸炎とは、大腸の一部に血液が十分に届かなくなる(虚血状態になる)ことで、腸の粘膜が傷つき、炎症や潰瘍が生じる疾患です。血流が滞りやすい左側の大腸(下行結腸・S状結腸)に好発します。多くの場合は一過性で数日以内に改善しますが、重症化すると入院治療が必要になるケースもあります。
詳しい病態の概要については、虚血性大腸炎とは?原因・症状・対処を内科医が解説【たまプラーザ】もあわせてご参照ください。
感染性腸炎や食中毒との違い
感染性腸炎・食中毒は、細菌やウイルスなどの病原体が腸内で増殖・毒素を産生することで起こる炎症です。一方、虚血性大腸炎は病原体の関与ではなく「血流障害」が根本的な原因である点が大きく異なります。発熱は虚血性大腸炎では比較的少なく、突然の腹痛に続いてすぐに血便が出るという経過が特徴的です。ただし、症状が重なる部分もあるため、診断には医療機関での検査が必要です。
感染性腸炎との比較をさらに知りたい方は、急性胃腸炎とは?原因・症状・治し方まで内科医が解説【たまプラーザ】をご覧ください。
虚血性大腸炎の主な原因
加齢や動脈硬化による血流低下
加齢とともに動脈硬化が進行すると、腸管を栄養する血管(腸間膜動脈など)が狭くなり、血流が低下しやすくなります。動脈硬化は高血圧・糖尿病・脂質異常症・喫煙などが危険因子となるため、これらの基礎疾患をお持ちの方は注意が必要です。
便秘や強いいきみによる腸管内圧の上昇
便秘が続いて腸管内の圧力が高まると、腸壁の血管が圧迫されて血流が妨げられることがあります。特に排便時の強いいきみは腸管内圧を急激に上昇させるため、便秘がちな方での発症リスクが高まると考えられています。
脱水や下痢による血流不足
脱水状態になると血液の循環量が低下し、腸管への血流も減少します。夏場の発汗や感染性腸炎による下痢・嘔吐が脱水のきっかけとなることがあるため、水分補給が重要です。
血管を収縮させる薬の影響
一部の薬剤は血管を収縮させる作用を持ち、腸管の虚血を誘発する可能性があります。代表的なものとして、便秘薬(特に刺激性下剤)、トリプタン系片頭痛薬、経口避妊薬(ピル)、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)などが挙げられます。ただし、これらの薬が「必ず虚血性大腸炎を引き起こす」わけではなく、他の危険因子と重なった場合に注意が必要です。服薬中に気になることがあれば、自己判断で中止せず医師や薬剤師にご相談ください。
低血圧や心疾患など全身状態の影響
心臓の機能低下や不整脈などにより全身の血圧・血流が低下すると、相対的に腸管への血流も不足しやすくなります。手術後やショック状態なども誘因になることがあります。
虚血性大腸炎になりやすい人
- 便秘がちの方:腸管内圧の上昇が繰り返されやすい
- 高齢者:動脈硬化が進みやすく、血管の弾力性が低下している
- 動脈硬化のある方:腸管血管が狭窄しやすい
- 糖尿病・高血圧・脂質異常症がある方:動脈硬化の進行リスクが高い
- 便秘薬や血管収縮に関わる薬を使用している方:薬の影響で腸管血流が低下することがある
症状の特徴
急な腹痛
突然の腹痛(特に左下腹部)が最初のサインとなることが多いです。痛みの程度は個人差があり、軽い不快感から激しい痛みまで幅があります。
血便や下血
腹痛が始まってから短時間(数時間以内)で血便が出ることが特徴です。鮮血が混じった便や、赤みを帯びた便として確認されます。
下痢、吐き気、腹部膨満感
腹痛・血便に加えて、下痢や吐き気、お腹の張りを伴う場合もあります。
症状の出方と経過
多くの軽症例では、安静・絶食・補液などの保存的治療で数日以内に症状が落ち着きます。ただし、一部で重症化したり腸管が狭くなる(狭窄)ケースもあるため、症状が続く場合は早期に医療機関を受診することが大切です。
受診が必要なサイン
以下の症状がある場合は、速やかに医療機関を受診してください。
- 血便がある場合:鮮血・暗赤色の血便は必ず受診の対象です
- 強い腹痛が続く場合:痛みが増強する・数時間以上続く場合は早めに受診を
- 発熱や嘔吐を伴う場合:重症化や他の疾患の可能性を考慮する必要があります
- 脱水が疑われる場合:口の渇き・尿量減少・めまいなどがあれば点滴治療が必要なことがあります
何科を受診するか
消化器内科を中心に受診する
腹痛や血便の症状がある場合は、まず消化器内科を受診することが推奨されます。内視鏡検査やCT検査などを通じて、虚血性大腸炎と他の消化器疾患との鑑別を行います。
夜間や症状が強いときの対応
夜間や休日に症状が強い場合は、救急外来を受診してください。強い腹痛や大量の出血、意識の変化がある場合は救急対応が必要です。
診断で行うこと
問診と腹部診察
症状の始まり方・腹痛の場所・血便の性状・服薬歴・既往歴などを詳しく確認します。
血液検査
炎症の程度を示すCRP・白血球数、貧血の有無などを調べます。
CT検査
大腸壁の肥厚や血流の状態を確認し、腹膜炎など緊急性の高い病態の除外にも役立ちます。
大腸内視鏡検査
虚血性大腸炎の確定診断には大腸内視鏡が最も有用です。粘膜の発赤・浮腫・びらん・潰瘍などの典型的な所見を確認し、病変の範囲を評価します。
感染性腸炎などとの鑑別
便培養検査などにより、細菌性腸炎・クローン病・潰瘍性大腸炎など他の疾患との区別を行います。
治療の基本
安静と腸を休めること
発症早期は絶食として消化管を安静に保つことが基本です。
水分補給と点滴
脱水を補正し、腸管への血流を維持するため、十分な水分補給または点滴(輸液)を行います。
食事の調整
症状が落ち着いてきたら、消化のよい食事から段階的に再開します。
必要に応じた薬物治療
腸内細菌の異常増殖を防ぐため、抗菌薬が使用される場合があります。痛みが強い場合は鎮痛薬を用いることもあります。
入院が必要になるケース
重症例・大量出血・腹膜炎を合併した場合や、高齢で全身状態が不安定な場合は入院管理が必要です。まれに外科的治療(手術)が選択されることもあります。
再発を防ぐためにできること
便秘対策
食物繊維の摂取・適度な水分補給・規則正しい排便習慣を心がけましょう。便秘薬を使用している場合は、種類や量について医師に相談することをお勧めします。
脱水予防
こまめな水分補給を習慣化し、夏場や運動後は特に意識して水分を補いましょう。
生活習慣の見直し
動脈硬化を予防するため、禁煙・塩分制限・適度な運動・バランスの取れた食事を継続することが大切です。糖尿病・高血圧・脂質異常症の管理も重要です。
服薬中の薬について相談する
血管収縮に関わる薬や刺激性下剤を使用中の方は、担当医に相談のうえ、必要に応じて薬の種類を検討してもらいましょう。自己判断での中止は避けてください。
放置するとどうなるか
多くは軽快するが注意が必要
虚血性大腸炎の多くは一過性(一時型)であり、適切な治療で数日〜1週間程度で症状が改善します。ただし、放置すると症状が悪化したり、腸管の炎症が深刻化する可能性があります。
腸管の狭窄や重症化の可能性
繰り返す炎症や重症の虚血では、腸管が瘢痕化して狭くなる「狭窄型」に移行することがあります。狭窄が進むと便通異常や腸閉塞のリスクが生じます。壊死型(壊疽型)では腸管壊死・腹膜炎が起こり、緊急手術が必要になる場合もあります。
早めの受診が大切な理由
血便・腹痛が出現した際に早期受診することで、適切な診断と治療方針の決定が可能になります。重篤化を防ぐためにも、症状が気になる場合は早めに消化器内科へご相談ください。
予後と回復の目安
軽症例の経過
一過性の虚血性大腸炎の多くは、安静・絶食・輸液などの保存的治療で1〜2週間程度で改善するとされています。
回復までに気をつけること
回復期は消化のよい食事を少量ずつ再開し、いきみを避け、便秘にならないよう生活習慣に気を配ることが重要です。再発のサインとして腹痛や血便が再び現れた場合は、速やかに受診してください。
医師に相談したいケース
- 初めて血便が出たとき:大腸がんやポリープ、炎症性腸疾患など他の疾患の可能性も含めて、必ず医師の診察を受けてください
- 便秘や薬の影響が気になるとき:服薬中の薬や便秘薬の種類について、担当医に相談することで予防策を検討できます
- 再発を繰り返すとき:繰り返す場合は背景にある動脈硬化や基礎疾患の精査・管理が重要です
よくある質問(FAQ)
虚血性大腸炎の原因で最も多いものは何ですか?
単一の原因というよりも、便秘・脱水・動脈硬化など複数の要因が重なることで発症するケースが多いとされています。日本では中高年の女性に多く、便秘との関連が指摘されています。
食中毒や感染性腸炎と見分けられますか?
症状が似ているため自己判断での区別は難しい場合があります。感染性腸炎では発熱・嘔吐が先行することが多い一方、虚血性大腸炎では腹痛に続いてすぐ血便が出る経過が比較的特徴的です。確定診断には大腸内視鏡検査や便培養検査など医療機関での検査が必要です。なお、ストレス性胃腸炎とは?原因・症状・対処を内科医が解説【たまプラーザ】も参考にしてください。
便秘だけで虚血性大腸炎になりますか?
便秘は虚血性大腸炎の重要な誘因の一つですが、通常は便秘単独ではなく、脱水・動脈硬化・薬の影響など複数の要因が重なって発症することが多いとされています。ただし、慢性的な便秘は腸管内圧を高めるリスク因子であるため、適切に対処することが望ましいです。
どのくらいで治りますか?
軽症の一過性虚血性大腸炎では、適切な治療を行うことで1〜2週間程度で症状が落ち着くことが多いです。ただし重症例や基礎疾患を抱える方では回復に時間がかかることがあります。個人差があるため、経過は担当医に確認してください。
何度も繰り返すことはありますか?
虚血性大腸炎は再発することがあります。背景にある動脈硬化・便秘・脱水・薬の影響などが改善されていない場合に再発リスクが高まります。再発予防のためにも、生活習慣の見直しや基礎疾患の管理が重要です。
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本記事の監修医師
佐藤 靖郎(さとう やすお)
医師(医学博士)/AIプラスクリニックたまプラーザ 監修医
専門:消化器・内科(消化器外科/内視鏡/一般内科)
略歴: 1988年 福島県立医科大学医学部卒業、医師免許取得。1997年 同大学大学院修了、博士号取得。国立国際医療研究センター、東京新宿メディカルセンター、NTT東日本関東病院、横浜市立大学関連病院、国立病院機構横浜医療センター外科医長・救命救急センター副部長、済生会若草病院(横浜市)外科部長・内視鏡センター・診療部長を歴任。丸亀医療センター・佐々木病院副理事長、日立おおみか病院理事を経て現在に至る。
公的役割: 厚生労働省「地域連携クリティカルパスモデルの開発」班研究員、全国保健所長会 地域連携パス推進班アドバイザー、神奈川県がん診療連携協議会 地域連携クリティカルパス部会 相談役。
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