女性の左上腹部の痛みとは? 原因・症状・対処を医学博士解説【たまプラーザ】
左上腹部の痛みは、胃・膵臓・大腸・脾臓・腎臓など複数の臓器が関与する可能性があります。女性の場合は婦人科系の疾患が痛みに関係することもあるため、痛みの部位・タイミング・随伴症状を整理したうえで適切な科を受診することが大切です。本記事では、消化器・内科の観点から左上腹部痛の原因・特徴・受診の目安をわかりやすく解説します。
左上腹部が痛むときに考えられること
左上腹部とはどの範囲か
腹部はおおまかに「右・中央・左」と「上・中・下」の9区画に分けて考えます。左上腹部(左季肋部〜左側腹部にかけた領域)は、おへその上・左側のあたりを指します。この部位には胃の大部分、膵体尾部、脾臓、左腎臓・左尿管、大腸の脾弯曲部などが位置しています。
痛みの感じ方で考え方が変わる理由
「締め付けられる」「刺すような」「鈍くうずく」「波状に強くなる」など痛みの性状は、原因臓器によって異なることがあります。痛みが食事と関係するか・体位で変わるか・周期的に出現するかなどの情報が、原因を絞り込むうえで重要です。
女性で左上腹部痛が気になるときの主な背景
女性は月経周期・排卵・子宮内膜症・卵巣疾患などが腹痛に関連することがあります。また、妊娠初期に気づかないまま腹痛を経験するケースもあるため、下腹部痛との違いを把握しておくことが役立ちます。下腹部痛との比較については下腹部痛みとは?原因・症状・対処を内科医が解説【たまプラーザ】もあわせてご参照ください。
左上腹部痛の主な原因
胃・十二指腸の不調による痛み
胃炎・胃潰瘍・機能性ディスペプシアは左上腹部に鈍痛・灼熱感をもたらす代表的な疾患です。ヘリコバクター・ピロリ菌感染、NSAIDs(痛み止め)の使用、過度の飲酒・喫煙などがリスク因子となります。
大腸や便秘による痛み
大腸の脾弯曲部にガスが貯まると左上腹部が張るように痛むことがあります(脾弯曲症候群)。便秘・過敏性腸症候群(IBS)もこの部位の痛みと関連します。
膵臓の病気が関係する痛み
膵炎(急性・慢性)や膵臓の腫瘍では、左上腹部から背中へ抜けるような痛みが生じることがあります。膵炎は飲酒・胆石が主な誘因であり、強い痛みが続く場合は速やかな受診が必要です。
脾臓の異常による痛み
脾腫(脾臓の腫れ)や脾梗塞では左上腹部に持続的な痛みが出現することがあります。血液疾患・感染症(特に伝染性単核球症など)が背景にある場合もあります。
腎臓・尿路の病気による痛み
左腎結石・尿管結石では激しい疝痛(コリック)と血尿を伴うことがあります。腎盂腎炎では発熱・腰背部の叩打痛を伴う場合が特徴的です。
肋骨・筋肉・神経の痛み
肋間神経痛・帯状疱疹(皮疹出現前を含む)・筋肉痛は体表の痛みとして感じられ、体を動かしたり触ったりすると悪化する傾向があります。
女性特有の原因が関係する場合
子宮内膜症・卵巣嚢腫・排卵痛(中間痛)が左側の骨盤から上腹部にかけて放散する痛みとして感じられることがあります。
女性に多い左上腹部痛の特徴
月経周期と痛みの関係
月経直前〜月経中に骨盤周囲から左上腹部にかけて痛みが拡がる場合、子宮内膜症や月経困難症との関連を考慮します。排卵期(月経開始から約14日前後)の一時的な痛みは「排卵痛」として生理的範囲のこともありますが、繰り返す・強い場合は受診が望ましいです。
妊娠の可能性がある場合に注意したいこと
妊娠初期に異所性妊娠(子宮外妊娠)がある場合、卵管の破裂による急激な腹痛・内出血を起こすことがあります。月経不順・妊娠の可能性がある女性で急な腹痛が出た場合は、速やかに医療機関を受診してください。
下腹部痛との違いを見分けるポイント
痛みがへそより上か下かで関与する臓器が異なります。ただし腸や卵管・卵巣の痛みは部位が広がりやすいため、自己判断は難しい場合があります。痛みの位置・強さ・周期性をメモしておくと受診時に役立ちます。
一緒に出やすい症状
吐き気・嘔吐がある場合
胃炎・急性膵炎・腸閉塞などが考えられます。嘔吐を繰り返す場合は早めの受診を検討してください。
発熱がある場合
腎盂腎炎・膵炎・腹膜炎・脾膿瘍などの感染・炎症性疾患を疑います。38℃以上の発熱が続く場合は当日受診を検討します。
下痢・便秘を伴う場合
過敏性腸症候群・感染性腸炎・大腸疾患との関連が考えられます。
背中まで痛む場合
膵炎や腎結石・腎盂腎炎では背中・腰への放散痛が典型的です。膵炎は重症化リスクがあるため注意が必要です。
食後に悪化する場合
胃炎・胃潰瘍・機能性ディスペプシア・膵炎などが原因として挙がります。
押すと痛い場合
腹膜刺激症状(反跳痛・筋性防御)を伴う場合は腹膜炎・臓器穿孔などの可能性があり、緊急受診が必要です。
受診を急いだほうがよい症状
強い痛みが急に出た
それまでなかった激しい腹痛が突然出現した場合は、腸閉塞・消化管穿孔・膵炎・脾梗塞・異所性妊娠破裂などが疑われ、救急受診の対象となります。
冷や汗・息苦しさ・胸の痛みがある
これらは心筋梗塞が腹痛として現れるサインである可能性があり、速やかに救急車を要請してください。
血を吐く・黒い便・血便がある
消化管出血を示すサインです。緊急内視鏡が必要になる場合があります。
高熱やぐったりする症状がある
敗血症・重症感染症の可能性があります。ためらわずに救急受診してください。
妊娠中で強い腹痛がある
常位胎盤早期剥離・子宮外妊娠など緊急性の高い状態が考えられます。産科へ速やかに受診してください。
医療機関では何を調べるか
問診で確認するポイント
痛みの発症様式(急か緩徐か)・部位・性状・持続時間・増悪・軽快因子・随伴症状・月経歴・妊娠歴・服薬歴などを確認します。
身体診察でみるポイント
腹部の触診・打診で圧痛部位・筋緊張・臓器腫大の有無を確認します。腎臓部の叩打痛(CVA叩打痛)も評価します。
血液検査・尿検査
炎症反応(CRP・白血球数)・肝・膵酵素(AMY・リパーゼ)・腎機能・血算などを評価します。尿検査では血尿・膿尿を確認します。妊娠の可能性がある女性ではhCG検査も行われます。
胃カメラ・腹部エコー・CTなどの検査
腹部超音波検査は被曝なく脾臓・腎臓・胆囊・膵臓などを観察できます。胃カメラ(上部消化管内視鏡)は胃・十二指腸の粘膜病変を直接確認します。腹部CTは出血・穿孔・腫瘤の評価に優れています。
婦人科系の評価が必要になる場合
月経異常・骨盤痛・不妊の既往がある場合や、産婦人科的疾患が疑われる場合は婦人科への紹介または並行受診が行われます。
自宅でできる対処と注意点
安静にして様子を見るときの考え方
軽度の鈍痛で発熱・嘔吐・出血などの危険なサインがない場合、短時間の安静で様子を見ることがあります。ただし数時間で改善しない・悪化する場合は受診してください。
食事で気をつけたいこと
胃腸への刺激を避けるため、脂肪分・香辛料・アルコールを控え、消化のよい食事を心がけることが基本です。
市販薬を使う前に注意したいこと
胃薬・鎮痛薬を安易に服用すると症状が紛れ、診断が遅れる可能性があります。特にNSAIDs系鎮痛薬は胃粘膜障害・腎機能への影響があるため、原因不明の腹痛への自己判断使用は避けることが推奨されます。
やってはいけない対処
腹部への強い圧迫・揉みほぐし・急激な飲食の再開は避けてください。「温めると楽」と感じる場合でも、炎症性疾患では悪化する場合があります。
再発を防ぐために意識したいこと
胃腸への負担を減らす生活習慣
規則正しい食事・適度な運動・禁煙・節酒が胃腸全般の健康維持に役立ちます。
便秘対策
食物繊維・水分を十分に摂取し、腸内環境を整えることが脾弯曲部のガス貯留や過敏性腸症候群の症状緩和につながります。
ストレスや睡眠不足への対策
機能性ディスペプシアや過敏性腸症候群は心理社会的ストレスと密接な関連があります。睡眠の質の改善や適切なストレス管理が症状の安定に寄与することが知られています(日本消化器病学会ガイドライン参照)。
月経痛や婦人科症状の記録
月経周期・痛みの強さ・出血量などをアプリや手帳に記録しておくと、産婦人科・内科いずれの受診時にも役立ちます。
受診先の目安
内科を受診するとよいケース
発熱・吐き気・食後悪化・背部痛など、内臓疾患が疑われるが専門科が判断できない場合は、まず内科での診察・スクリーニング検査が有用です。
消化器内科が向くケース
胃炎・潰瘍・膵炎・大腸疾患が疑われる場合や、胃カメラ・腹部エコーなどの精査が必要な場合は消化器内科が適しています。腹痛全般の対処法については腹痛の治し方・治療法|内科医がわかりやすく解説【たまプラーザ】もご覧ください。
婦人科を受診するとよいケース
月経周期との関連が明確・骨盤痛・不正出血・不妊がある場合は、産婦人科への受診を検討してください。
救急受診を考えるべきケース
突然の激しい腹痛・吐血・黒色便・高熱・冷や汗・意識の変容・妊娠中の強い腹痛などがある場合は、救急車を要請するか、救急外来を受診してください。
よくある質問(FAQ)
左上腹部がチクチク痛むのは何が原因ですか?
チクチクとした痛みは肋間神経痛・帯状疱疹(皮疹の出現前を含む)・筋肉痛・胃炎などで見られることがあります。皮膚に発疹・水ぶくれが出てきた場合は帯状疱疹が疑われるため、早めに皮膚科または内科を受診してください。
便秘だけで左上腹部が痛くなることはありますか?
はい、大腸の脾弯曲部付近にガスや便が貯留すると、左上腹部の張りや鈍痛が生じることがあります。排便後に改善するようであれば便秘・ガス貯留が原因である可能性が高いですが、繰り返す場合は大腸の精査を受けることをお勧めします。
女性で左上腹部痛があるとき、婦人科受診は必要ですか?
痛みが月経周期と連動している・骨盤部にも痛みがある・不正出血がある場合は、産婦人科への受診を検討してください。判断に迷う場合はまず内科・消化器内科で診察を受け、必要に応じて婦人科への紹介を受ける流れも一般的です。
痛みが軽くても受診したほうがよいですか?
軽い痛みでも、2〜3日以上持続する・繰り返す・体重減少・食欲低下・貧血症状を伴うなどの場合は受診をお勧めします。自覚症状が軽くても、背景に重要な疾患が潜んでいることがあります。
何日くらい続いたら病院へ行くべきですか?
痛みが2〜3日以上続く・日常生活に支障が出ている場合は受診の目安です。ただし強い痛み・発熱・出血などの危険なサインがある場合はその日のうちに受診してください。
本記事の監修医師
佐藤 靖郎(さとう やすお)
医師(医学博士)/AIプラスクリニックたまプラーザ 監修医
専門:消化器・内科(消化器外科/内視鏡/一般内科)
略歴:
1988年 福島県立医科大学医学部卒業、医師免許取得。1997年 同大学大学院修了、博士号取得。国立国際医療研究センター、東京新宿メディカルセンター、NTT東日本関東病院、横浜市立大学関連病院、国立病院機構横浜医療センター外科医長・救命救急センター副部長、済生会若草病院(横浜市)外科部長・内視鏡センター・診療部長を歴任。丸亀医療センター・佐々木病院副理事長、日立おおみか病院理事を経て現在に至る。
公的役割:
厚生労働省「地域連携クリティカルパスモデルの開発」班研究員、全国保健所長会 地域連携パス推進班アドバイザー、神奈川県がん診療連携協議会 地域連携クリティカルパス部会 相談役。
AIプラスクリニックたまプラーザのご案内
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TEL:045-909-0117(横浜市青葉区・たまプラーザ)
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