左腹部のチクチクした痛みは、腸のガスや便秘といった一時的な不調から、大腸疾患・尿路疾患・婦人科疾患まで幅広い原因が関係します。多くの場合は深刻ではありませんが、痛みが強い・長引く・発熱や血便などの症状を伴う場合は速やかな受診が勧められます。この記事では、左腹部のチクチク痛みに関する原因・症状・受診の目安・自宅での対処法を、消化器・内科の観点からわかりやすく解説します。
腹痛は、その性質によって原因を推測する手がかりになります。チクチクとした刺すような痛みは、腸管内のガス・腸の蠕動(ぜんどう)運動の亢進・神経への刺激などと関連しやすいとされています。一方、ズキズキする拍動性の痛みは血管や炎症、差し込む痛み(疝痛)は尿管や腸管の痙攣(けいれん)と関連することがあります。
左腹部は大まかに「左上腹部」と「左下腹部」に分けられます。左上腹部には胃・膵臓(すいぞう)の一部・脾臓(ひぞう)・横行結腸・下行結腸の上部が位置します。左下腹部には下行結腸・S状結腸・女性では左卵巣・卵管、左尿管なども含まれます。痛みの場所をある程度把握しておくと、受診時の問診がスムーズになります。
数分〜数十分で自然に治まるチクチク感は、腸のガスや蠕動運動の一時的な変化によることが多いです。一方、数時間以上続く痛み・数日にわたって繰り返す痛み・徐々に強くなる痛みは、何らかの疾患が背景にある可能性があるため、医療機関への相談が勧められます。
左腹部痛で最も頻度が高い原因の一つが腸の不調です。便秘によってS状結腸付近に便やガスが貯留すると、チクチクした痛みや腹部膨満感が生じることがあります。また、ウイルス性・細菌性の感染性腸炎でも腸管の炎症が痛みを引き起こします。
下行結腸・S状結腸は左腹部を走行しています。過敏性腸症候群(IBS)・大腸憩室症(だいちょうけいしつしょう)・潰瘍性大腸炎・大腸がんなどは、左腹部に症状が出やすい疾患です。これらは便通異常(下痢・便秘の繰り返し)や血便を伴うことがあります。
左上腹部のチクチク感は、胃炎・胃潰瘍・膵炎(すいえん)・脾臓の腫大などが関連する場合があります。特に膵炎は左背部への放散痛(ほうさんつう)を伴うことがあり、注意が必要です。
左尿管結石や腎盂腎炎(じんうじんえん)は、左腰部から左下腹部にかけての痛みを引き起こすことがあります。結石による疝痛は突然始まり、血尿・頻尿を伴うことがあります。
腹壁の筋肉痛・肋間神経痛・帯状疱疹(たいじょうほうしん)は、お腹の内臓ではなく体表面が痛む「体性痛」として現れます。帯状疱疹は発疹が出る前からチクチク・ピリピリした痛みが先行するため注意が必要です。
左卵巣嚢腫(らんそうのうしゅ)・子宮内膜症・卵管炎・子宮外妊娠(異所性妊娠)などは左下腹部痛の原因となることがあります。特に子宮外妊娠は緊急性が高く、妊娠の可能性がある場合は速やかな受診が必要です。
S状結腸の便秘・ガスだまり・過敏性腸症候群・大腸憩室炎などが考えられます。下腹部痛みとは?原因・症状・対処を内科医が解説【たまプラーザ】も参考にしてください。
感染性腸炎・憩室炎・膵炎・腎盂腎炎などの炎症性疾患が疑われます。発熱を伴う腹痛は放置せず、早めの受診が勧められます。
尿路結石・膀胱炎・腎盂腎炎などの尿路系の疾患が考えられます。泌尿器科または内科への受診を検討してください。
排卵痛・月経困難症・子宮内膜症・卵巣嚢腫などが関連することがあります。婦人科への相談が適切です。
腹壁の筋肉痛・帯状疱疹など体表面の問題、あるいは腹膜炎への進展が疑われる場合もあります。特に腹壁が非常に硬い(板状硬直)場合は急を要することがあります。
突然始まる激しい左腹部痛は、尿管結石の疝痛・腸閉塞・大腸穿孔(せんこう)などの可能性があります。
感染や消化管の出血・炎症の広がりが疑われます。黒色便(タール便)は上部消化管出血のサインである可能性があります。
腸閉塞が疑われます。腹部膨満・嘔吐・排便・排ガスの停止が揃う場合は救急受診を検討してください。
血圧低下や大量出血のサインである可能性があります。速やかに救急外来を受診してください。
発熱・吐き気・食欲低下を伴う腹痛、原因が不明の腹痛など。まず内科で全身的な評価を受けるとよいでしょう。
血便・下痢・便秘の繰り返し・腹部膨満感が続くケース。大腸内視鏡などの専門的な検査が可能です。
月経周期と関連した痛み、妊娠の可能性がある場合。
血尿・頻尿・排尿時痛を伴う左腹部痛。
痛みの場所・性質・始まった時期・持続時間・排便の変化・月経周期・発熱・食事との関連などを確認します。
腹部の触診・打診・聴診を行い、腹膜刺激症状の有無などを評価します。
血液検査では炎症の程度(CRP・白血球数)、腎機能・膵臓の酵素(アミラーゼ・リパーゼ)などを評価します。尿検査では血尿・感染の有無を確認します。腹部超音波検査やCT検査では臓器の状態を画像で評価します。
強い痛みや発熱・血便などがなく、軽度のチクチク感のみであれば、まず安静にして様子をみることができます。ただし数時間以上改善しない場合や悪化する場合は医療機関へ相談してください。
腹痛時は消化のよい食事(おかゆ・うどんなど)と十分な水分補給が基本です。刺激物・アルコール・脂肪分の多い食事は控えましょう。
適度な水分(1日1.5〜2L目安)・食物繊維の摂取・適度な運動・腸をやさしくマッサージする方法が役立つことがあります。
市販の整腸剤や便秘薬は一時的な対処として利用できますが、強い痛み・発熱・血便などがある場合は市販薬でごまかさず受診を優先してください。鎮痛薬(NSAIDs)の使用は消化管への負担になる場合もあるため注意が必要です。
チクチク感が2〜3日以上続く、または週に何度も繰り返す場合は、消化器内科などへの受診を検討してください。
妊娠の可能性がある女性の急な左下腹部痛は、子宮外妊娠の可能性を念頭に置き、速やかに受診してください。
糖尿病・免疫抑制剤使用中・高齢の方は症状が軽く見えても重篤な疾患が潜んでいることがあります。早めの受診が安心です。
食物繊維・発酵食品の摂取、十分な水分補給、規則正しい食事・排便リズムを意識しましょう。厚生労働省の「健康日本21」でも野菜摂取量(1日350g目安)が推奨されています。
腸は自律神経の影響を受けやすく、ストレス・睡眠不足・冷えは腸の動きを乱す要因になります。適度な運動・十分な睡眠・リラクゼーションを取り入れてください。
痛みが出た日時・場所・強さ(10段階)・持続時間・随伴症状(下痢・発熱など)・食事内容・月経周期などをメモしておくと、受診時の問診に役立ちます。腹痛の治し方・治療法|内科医がわかりやすく解説【たまプラーザ】もあわせてご覧ください。
短時間(数分〜数十分)で自然に治まり、その後は全く問題なければ、まず安静にして様子をみることができます。ただし、痛みが数時間以上続く・繰り返す・発熱や血便を伴うなどの場合は、受診を検討してください。
便秘はよくある原因の一つですが、過敏性腸症候群・大腸憩室炎・尿路結石・婦人科疾患など多くの可能性があります。便秘を改善しても痛みが続く場合は医療機関への相談が勧められます。
盲腸(虫垂炎)は一般的に右下腹部の痛みを引き起こします。左腹部痛とは解剖学的に異なる位置です。ただし、まれに虫垂の位置の変異などがある場合もあるため、強い痛みがある場合は医師に相談してください。
排卵痛・月経困難症・子宮内膜症などにより、生理周期に合わせて左下腹部にチクチク感が生じることがあります。毎月繰り返す・日常生活に支障が出るほど痛い場合は婦人科への受診を検討してください。
明確な基準はありませんが、2〜3日以上チクチク感が続く場合、または徐々に痛みが強くなる・他の症状(発熱・下痢・血便・頻尿など)が加わる場合は早めに受診することが勧められます。強い痛みや冷や汗などを伴う場合はその日のうちに受診してください。
佐藤 靖郎(さとう やすお)
医師(医学博士)/AIプラスクリニックたまプラーザ 監修医
専門:消化器・内科(消化器外科/内視鏡/一般内科)
略歴:
1988年 福島県立医科大学医学部卒業、医師免許取得。1997年 同大学大学院修了、博士号取得。国立国際医療研究センター、東京新宿メディカルセンター、NTT東日本関東病院、横浜市立大学関連病院、国立病院機構横浜医療センター外科医長・救命救急センター副部長、済生会若草病院(横浜市)外科部長・内視鏡センター・診療部長を歴任。丸亀医療センター・佐々木病院副理事長、日立おおみか病院理事を経て現在に至る。
公的役割:
厚生労働省「地域連携クリティカルパスモデルの開発」班研究員、全国保健所長会 地域連携パス推進班アドバイザー、神奈川県がん診療連携協議会 地域連携クリティカルパス部会 相談役。
たまプラーザで内科・消化器の気になる症状がある方へ。左腹部のチクチク感や繰り返す腹痛でお困りの際は、受診の目安や必要な検査についてお気軽にご相談ください。
TEL:045-909-0117(横浜市青葉区・たまプラーザ)
初診の際は、保険証・お薬手帳・(お持ちであれば)健診結果や紹介状をご用意いただくとスムーズです。ご予約はWebまたはお電話で承ります。