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ピロリ菌の症状|無症状でも感染している?検査・除菌の流れを消化器外科専門医が解説

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ピロリ菌の症状|無症状でも感染している?検査・除菌の流れを消化器外科専門医が解説

「胃がなんとなく重い」「食後に不快感が続く」——そのような悩みを抱えて「ピロリ菌 症状」と検索される方は少なくありません。しかし、ピロリ菌(Helicobacter pylori)は感染していても自覚症状がまったくないことが多く、症状の有無だけで感染の有無を判断することは困難です。本記事では、ピロリ菌と症状の関係、検査・除菌治療の概要、受診の目安について、医学的根拠をもとにわかりやすく解説します。診断や治療の可否は必ず医師の診察のうえで判断してください。

ピロリ菌とは

ピロリ菌(Helicobacter pylori)は、胃の粘膜に生息するらせん状のグラム陰性桿菌です。強酸性の胃内でも生存できる特殊な細菌で、1983年に発見されて以降、慢性胃炎や胃・十二指腸潰瘍、さらには胃がんとの関連が国内外の研究で報告されています。

日本では、特に1950年代以前に生まれた世代に感染率が高いとされており、衛生環境の改善とともに若い世代の感染率は低下傾向にあります。感染経路については、飲料水や食物を介した経口感染、あるいは人から人への経口-経口感染などが考えられていますが、詳細なメカニズムはすべて解明されているわけではありません。詳しくは「ピロリ菌 原因」の記事もあわせてご参照ください。

ピロリ菌に感染するとどうなる?

ピロリ菌が胃内に定着すると、胃の粘膜に慢性的な炎症(慢性胃炎)が生じることがあります。炎症が長期間続くと、胃の粘膜が薄くなる「萎縮性胃炎」に進展することがあり、さらに進んだ場合には腸上皮化生(胃粘膜が腸の粘膜に似た組織に変化する状態)がみられることもあります。また、ピロリ菌は胃・十二指腸潰瘍の主要な原因のひとつと考えられています。ただし、感染している方すべてに潰瘍や重篤な疾患が生じるわけではなく、感染者の多くは生涯無症状のままであるとも報告されています。

ピロリ菌でみられることがある症状

ピロリ菌に関連して相談されやすい症状としては、以下のものがあります。

  • 胃痛・みぞおちの不快感
  • 胃もたれ・消化不良感
  • 吐き気
  • 食欲不振
  • 胸やけ
  • げっぷが増える

ただし、これらの症状はピロリ菌感染に特有のものではなく、逆流性食道炎、機能性ディスペプシア、急性胃炎、胆石症など多くの消化器疾患でも同様の症状がみられます。症状だけでピロリ菌感染を判断することはできません。

無症状でも感染していることがある

ピロリ菌感染者の多くは自覚症状を持たないといわれています。健康診断の胃カメラや血液検査をきっかけに初めて感染を知る方も珍しくありません。「胃の調子が悪くないから大丈夫」と自己判断することは、感染の発見を遅らせるリスクがあります。

症状だけではピロリ菌かどうか判断できない理由

胃の不快症状は非常に多くの原因から生じます。逆流性食道炎では胸やけや酸っぱい感覚、機能性ディスペプシアでは胃もたれや早期満腹感が主な訴えになりますが、これらとピロリ菌関連胃炎の症状は重なりやすく、問診だけでは鑑別が困難です。適切な検査と医師の診察が不可欠です。

ピロリ菌感染が疑われるサイン

以下のような状況では、ピロリ菌感染の有無を確認する検査が考慮されます。

  • 胃の不快症状が数週間以上続いている
  • 健康診断や人間ドックで「胃炎」「萎縮性胃炎」を指摘された
  • 家族にピロリ菌感染歴・胃がんの既往がある
  • 過去に胃・十二指腸潰瘍と診断されたことがある

胃潰瘍・十二指腸潰瘍を疑う症状

次のような症状がある場合は、潰瘍の可能性を念頭に早めの受診が望まれます。

  • みぞおちの鋭い痛みや持続する重い痛み
  • 空腹時や夜間に悪化する胃痛(十二指腸潰瘍で多い)
  • 黒っぽいタール状の便(黒色便)
  • 吐血や血が混じった嘔吐

黒色便や吐血は出血を示唆する可能性があり、速やかな受診が必要です。

胃がんリスクとの関係

世界保健機関(WHO)はピロリ菌をグループ1発がん因子に分類しており、日本の研究でも胃がん患者の大多数にピロリ菌感染歴があることが報告されています。しかし、「感染=胃がん」ではなく、感染者のうち実際に胃がんを発症するのはごく一部です。胃がんリスクには感染以外に、食習慣・喫煙・遺伝的素因なども関与します。過度に不安を感じる必要はありませんが、感染が判明した際は適切な対応について医師に相談することが大切です。

ピロリ菌の検査方法

ピロリ菌の検査には複数の方法があり、患者さんの状態や目的に応じて選択されます。詳しくは「ピロリ菌検査」の記事もご参照ください。

内視鏡を使う検査

内視鏡検査(胃カメラ)を行う際に、胃粘膜の組織を採取して調べる方法です。

  • 迅速ウレアーゼ試験:採取した組織を薬液に浸け、ピロリ菌が産生するウレアーゼ酵素の反応を確認する方法
  • 培養法:採取組織を培地で培養し、菌を直接検出する方法
  • 病理組織検査:顕微鏡で粘膜の炎症や菌の有無を確認する方法

内視鏡検査は胃粘膜の状態(胃炎・潰瘍・腫瘍の有無など)も同時に評価できる点で有用です。

内視鏡を使わない検査

  • 尿素呼気試験:ピロリ菌が尿素を分解する際に生じる二酸化炭素を呼気で検出する方法。除菌判定に広く用いられます。
  • 便中抗原検査:便に含まれるピロリ菌の抗原を検出する方法。
  • 抗体検査(血液・尿):ピロリ菌に対する抗体を測定する方法。血液によるピロリ菌検査については別記事で詳しく解説しています。

検査を受ける前の注意点

プロトンポンプ阻害薬(PPI)などの胃酸を抑える薬や、抗菌薬を内服している場合、検査結果に影響が生じることがあります。検査前には服用中の薬を必ず医師・医療機関に申告し、指示に従って準備してください。

ピロリ菌が見つかった場合の対応

除菌治療の一般的な流れ

ピロリ菌が確認され、医師が除菌治療を判断した場合、一般的には「プロトンポンプ阻害薬(胃酸抑制薬)+2種類の抗菌薬」を一定期間(通常7日間)服用する方法(三剤併用療法)が標準的とされています。一次除菌が成功しなかった場合は、使用する抗菌薬を変更した二次除菌が行われます。除菌の適応や使用する薬剤は、患者さんの状態や薬剤アレルギーなどに応じて医師が判断します。

除菌後に確認すること

除菌治療終了後、一定期間(通常4週間以上)経過してから、除菌が成功したかどうかを確認する検査(除菌判定検査)を受けることが重要です。自覚症状が改善しても、除菌の成否は必ず検査で確認してください。また、除菌後も別の消化器疾患が生じる可能性はあるため、医師の指示に従って経過をみることが大切です。

除菌後も経過観察が必要な理由

除菌に成功した後も、胃粘膜の萎縮や腸上皮化生が高度な場合や、もともと潰瘍の既往がある場合、年齢や家族歴によっては、定期的な内視鏡検査などによる経過観察が推奨されることがあります。定期観察の必要性や頻度については、担当医師にご確認ください。

症状があるときに自分でできること

食生活・生活習慣の見直しは補助的な意味はありますが、ピロリ菌感染の診断や除菌治療の代わりにはなりません。症状があるときに気をつけたい点として、以下が挙げられます。

  • 刺激の強い食品(辛いもの、脂っこいもの)や炭酸飲料の過剰摂取を控える
  • 飲酒を控える
  • 喫煙は胃粘膜の血流を悪化させるとされており、禁煙が勧められる
  • 食事は規則正しく、腹八分目を心がける
  • ストレスの管理と十分な睡眠

市販薬で様子をみてよいケースと注意が必要なケース

軽い胃もたれや食べ過ぎによる一時的な不調であれば、市販の胃腸薬を短期間使用しながら様子をみることもあります。ただし、市販薬を継続しても症状が改善しない場合、黒色便・吐血・体重減少・強い痛みを伴う場合は、自己判断での対処を続けることなく医療機関を受診してください。

受診の目安

以下のような状況では、消化器内科・消化器外科への受診を検討してください。

  • 胃の症状が2〜3週間以上続いている
  • 症状を繰り返している
  • 健診で胃炎・萎縮性胃炎を指摘された

すぐに受診した方がよい症状(赤旗症状)

下記の症状がある場合は、速やかに医療機関を受診してください。

  • 強い腹痛・突然の激しい腹痛
  • 吐血(血を吐く)
  • 黒色便・タール便(黒くドロッとした便)
  • ふらつき・失神感をともなう
  • 短期間での急な体重減少
  • 貧血(動悸・息切れ・顔色不良)

よくある質問

ピロリ菌はうつるのか?

ピロリ菌は経口感染(口から入る感染)と考えられており、衛生状態が整っていない環境や幼少期の感染が多いとされています。日常的な接触(食器の共有など)で感染リスクが著しく高まるかについては、感染経路の詳細がすべて明らかになっているわけではなく、現時点では過度に神経質になる必要はないとされています。

ピロリ菌がいても症状がないのは普通か?

はい、感染していても無症状であることは少なくありません。感染者の大多数は生涯自覚症状なく過ごすともいわれており、検診や別の目的の検査で偶然発見されるケースもあります。

胃薬を飲めば症状は治るのか?

胃薬によって症状が一時的に和らぐことはありますが、ピロリ菌感染が原因の場合、薬で症状を抑えることと、菌そのものを排除することは別の話です。根本的な原因の診断には、医師による検査が必要です。

除菌すれば胃がんにならないのか?

除菌によって胃がんリスクが低減する可能性は複数の研究で示されていますが、除菌後にリスクがゼロになるわけではありません。特に除菌前から萎縮性胃炎が進んでいる場合には、除菌後も定期的な内視鏡観察が推奨されることがあります。

健康診断で見つかったらどうすればよいか?

まず医療機関を受診し、結果の意味や次のステップ(追加の精密検査・除菌治療の要否など)について専門医に相談してください。健診の結果だけで治療方針を自己判断することは避け、医師の指示に従って対応することが大切です。

まとめ

ピロリ菌は感染していても無症状であることが多く、症状の有無だけで感染の有無を判断することはできません。胃の不快症状が続く場合や、健診で胃炎を指摘された場合には、消化器内科・消化器外科を受診し、必要に応じた検査を受けることが大切です。また、赤旗症状(吐血・黒色便・強い腹痛・急激な体重減少など)がある場合は速やかに医療機関を受診してください。気になる症状や検診結果がある方は、ぜひ専門医にご相談ください。

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本記事の監修医師

佐藤 靖郎(さとう やすお)
医師(医学博士)/AIプラスクリニックたまプラーザ 理事長
専門:消化器外科

福島県立医科大学大学院 外科学修了。NTT東日本関東病院や国立病院機構横浜医療センター等で外科医長・救命救急センター副部長を歴任。厚生労働省の地域連携クリティカルパスモデル開発の班研究員、神奈川県がん診療連携協議会相談役などを務める。

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