「腹部仙痛(ふくぶせんつう)」とは、腸・胆のう・尿管など管状の臓器が強くけいれんすることで起こる、波のある鋭い腹痛のことです。痛みが突然強くなり、しばらくすると和らぐという繰り返しのパターンが特徴で、原因となる病気はさまざまです。本記事では、腹部仙痛の意味・症状・原因から受診の目安・治療まで、内科医の視点でわかりやすく解説します。
腹痛全般についての基礎知識は、親ページ「お腹痛いとは?原因・症状・治し方まで内科医が解説【たまプラーザ】」もあわせてご参照ください。
「疝痛(せんつう)」は医学用語で、中空の管状臓器(腸・胆管・尿管など)の平滑筋が過剰に収縮・けいれんすることで生じる、発作的な強い痛みを指します。「腹部仙痛」はこの疝痛のなかでも腹部に生じるものを指し、一般向けに”仙痛”と表記されることがあります。呼称は異なりますが、医学的には同じ概念です。
内臓の管がけいれんするときに起こる痛みで、「差し込むような」「波が来ては引く」という表現がよく使われます。持続的にズキズキ痛む炎症性の腹痛とは異なり、痛みの強さが周期的に変化するのが大きな特徴です。
前触れなく激しい痛みが始まり、数分〜数十分後に自然と和らぐ、という波のある経過をたどることが多いです。
腸や胆管・尿管の蠕動(ぜんどう)運動に合わせて痛みが強まったり弱まったりします。「刺すような」「ねじれるような」と表現されることもあります。
強い内臓痛は迷走神経を刺激するため、吐き気・嘔吐・冷や汗・顔面蒼白などの自律神経症状を同時に引き起こすことがあります。
過敏性腸症候群(IBS)・急性腸炎・腸閉塞(イレウス)など、腸管の動きが乱れる病気が代表的です。
胆石が胆管につまる「胆石発作」は典型的な疝痛の一つです。右上腹部から背中にかけての激しい痛みが特徴で、脂肪の多い食事後に起こりやすいとされています。
腎臓や尿管に結石が詰まると、側腹部から腰・鼠径部(そけいぶ)にかけての激烈な疝痛が生じます。尿路結石による疝痛は最も強い痛みの一つとされています。
子宮内膜症・卵巣囊腫の茎捻転・月経困難症なども下腹部の疝痛様の痛みを引き起こすことがあります。
腸閉塞・腸管虚血・大動脈解離・異所性妊娠(子宮外妊娠)など、緊急処置が必要な疾患が腹部仙痛様の症状を呈する場合があります。自己判断は禁物です。
- 痛みが繰り返し起こる、または数時間続く
- 発熱・黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)を伴う
- 尿が赤い・茶色い(血尿の可能性)
- 嘔吐が続いて水分が取れない
- 突然の激烈な痛みで動けない
- お腹全体が板のように硬い
- 意識がもうろうとする、ショック症状(脈が弱い・皮膚が冷たい)
- 大量の血便・下血
上記のサインがあるときはすぐに救急車を呼ぶか、救急医療機関を受診してください。
痛みが始まった時刻・部位(みぞおち・右上・下腹部など)・性状(刺すような・波がある・ずっと続くなど)を整理しておくと診察がスムーズです。
1回の発作が何分続くか、何時間おきに起こるかを伝えましょう。
これらの随伴症状は原因の絞り込みに大きく役立ちます。
食後に悪化する(胆石など)、横になると楽になる(尿路結石など)といった情報も重要です。
問診で痛みの特徴・既往歴・服薬歴を確認し、腹部の触診・打診・聴診を行います。
血液検査・尿検査・腹部超音波(エコー)・腹部CT・X線などを組み合わせて原因を調べます。
胆石なら消化器内科・外科、尿路結石なら泌尿器科、婦人科疾患なら産婦人科が専門となります。内科・総合診療科を受診してまず評価してもらい、必要に応じて専門科へ紹介を受けるのが一般的な流れです。
鎮痙薬(ちんけいやく)や鎮痛薬で平滑筋のけいれんを和らげます。原因疾患に応じた薬(抗菌薬・消化管調整薬など)も併用します。
嘔吐が続いて経口摂取が難しいときや、脱水が疑われるときは点滴による水分・電解質補給を行います。
腸閉塞・胆道炎・尿路結石で自然排石が見込めない場合・異所性妊娠などは手術や内視鏡的処置が必要になることがあります。
楽な姿勢で横になり、腹部に過度な力がかからないようにします。
吐き気が強いときは無理に食べず、水分は少量ずつ補います。症状が落ち着いてから消化のよい食事に戻すのが基本です。
市販の鎮痛薬(NSAIDsなど)は胃腸への負担があり、原因によっては症状を見えにくくする場合があります。市販薬を使う場合も、痛みが繰り返す・悪化するときは速やかに受診してください。
治療法の詳細は「腹痛の治し方・治療法|内科医がわかりやすく解説【たまプラーザ】」もご参照ください。
虫垂炎(盲腸)の典型的な部位です。疝痛と混同されることがありますが、虫垂炎では痛みが徐々に増強し、発熱を伴うことが多いです。
尿路結石・膵炎・大動脈瘤の可能性があります。背中への放散痛は見逃しやすいため注意が必要です。
妊娠初期に強い腹痛がある場合は異所性妊娠(子宮外妊娠)の可能性があり、緊急性が高いです。速やかに医療機関を受診してください。
下腹部の痛みについては「下腹部痛とは?原因・症状・対処を内科医が解説【たまプラーザ】」も参考にしてください。
脂質の多い食事・水分不足・不規則な生活は、胆石や尿路結石・過敏性腸症候群の誘因になるとされています。
「また同じ痛みだから大丈夫」と自己判断せず、繰り返す腹痛は一度医師に相談することをおすすめします。根本的な原因の治療が再発予防につながります。
原因によっては発作が自然におさまる場合があります(例:腸のけいれんが一時的なもの)。ただし、繰り返す場合や原因疾患が進行する場合もあるため、一度おさまっても医師に相談することが望ましいです。
まずは内科・消化器内科・または総合診療科を受診するとよいでしょう。症状や検査結果に応じて、泌尿器科・外科・産婦人科などへ紹介を受けることがあります。
市販薬の使用が原因の特定や診察を妨げることがあります。特に強い痛みや高熱・血尿を伴う場合は自己判断での服薬より先に受診することをおすすめします。
痛みが強く日常動作が困難な場合は無理をしないことが大切です。受診して原因を確認したうえで、医師の指示に従って判断してください。
はい。痛みがおさまっても原因疾患が残っている場合があります。特に発作を繰り返す場合は、おさまっているうちに検査・診断を受けることが再発予防や早期治療につながります。
佐藤 靖郎(さとう やすお)
医師(医学博士)/AIプラスクリニックたまプラーザ 監修医
専門:消化器・内科(消化器外科/内視鏡/一般内科)
略歴:
1988年 福島県立医科大学医学部卒業、医師免許取得。1997年 同大学大学院修了、博士号取得。国立国際医療研究センター、東京新宿メディカルセンター、NTT東日本関東病院、横浜市立大学関連病院、国立病院機構横浜医療センター外科医長・救命救急センター副部長、済生会若草病院(横浜市)外科部長・内視鏡センター・診療部長を歴任。丸亀医療センター・佐々木病院副理事長、日立おおみか病院理事を経て現在に至る。
公的役割:
厚生労働省「地域連携クリティカルパスモデルの開発」班研究員/全国保健所長会 地域連携パス推進班アドバイザー/神奈川県がん診療連携協議会 地域連携クリティカルパス部会 相談役
たまプラーザで腹部仙痛や腹痛など、内科・消化器の気になる症状がある方は、AIプラスクリニックたまプラーザへお気軽にご相談ください。受診の目安や必要な検査についても丁寧にご説明いたします。
TEL:045-909-0117(横浜市青葉区・たまプラーザ)
初診の際は、保険証・お薬手帳・お持ちであれば健診結果や紹介状をご用意いただくとスムーズです。ご予約はWebまたはお電話で承っております。