腹部エコーは、腹部全体を幅広く観察する場合と、特定の臓器(胆のう・膵臓など)に絞って観察する場合とがあります。食事制限が特に重要になるのは、胆のうや膵臓を中心に観察するときです。これらの臓器は食後に変化しやすく、空腹状態のほうが精度よく観察できます。
食事をすると消化管にガスが発生し、超音波が散乱して画像が見えにくくなります。また、胆のうは食後に収縮するため、空腹時よりもサイズが小さくなり観察しにくくなります。こうした理由から、多くの医療機関では「空腹で来院してください」と案内しています。
検査の数時間前(目安として4〜6時間前)までであれば、消化の良い食事(白米のおかゆ、トースト、卵料理など)を少量とることは一般的に許容される場合があります。ただし、前日から制限を求める医療機関もあるため、必ず予約時の案内に従ってください。
以下の食品・飲料は、腸内ガスを増やしたり消化に時間がかかったりするため、検査前には避けることが望ましいとされています。
- 脂肪分の多い食事(揚げ物・肉料理など)
- 乳製品(牛乳・ヨーグルト・チーズ)
- 豆類・いも類・野菜(食物繊維が多くガスを生じやすいもの)
- 炭酸飲料・アルコール
- コーヒー・紅茶(空腹時の胃への刺激や胆のう収縮の可能性があるため)
糖分・乳成分を含まない水や麦茶などは、少量であれば検査直前でも問題ないとされることがほとんどです。 ただし、スポーツドリンクや果汁入り飲料は糖分を含むため避けるほうが無難です。服薬のための少量の水は通常許容されますが、医療機関へ事前に確認することをおすすめします。
超音波は空気をほとんど通さない性質があります。食事後は胃や腸にガスが発生・停滞しやすくなり、そのガスが超音波をさえぎることで、背後にある臓器(膵臓・腎臓・腹部大動脈など)が観察しにくくなります。
胆のうは空腹時に胆汁を蓄えてふくらんでいるため、超音波でよく見えます。食後は胆汁が排出されて収縮するため、胆のう内の結石や壁の状態が確認しにくくなります。膵臓も、胃内容物によるガスの影響を受けやすい位置にあるため、空腹状態のほうが観察精度が高まります。
前日の夜21時以降は食事を控え、当日は朝食を食べずに来院することが一般的な目安です。水・お茶(少量)は服薬などのために許容される場合があります。
昼食を控えるよう案内されることが多く、「検査の4〜6時間前から絶食」が基準となります。午前中に軽い朝食をとることを許可している医療機関もありますが、内容は消化の良いものに限られます。
一般的には検査の4〜6時間前からの絶食が目安とされています。医療機関や検査目的によって異なるため、予約時に必ず確認してください。
血圧の薬は、少量の水で服用するよう指示される場合がほとんどです。一方、糖尿病の薬(特にインスリンや内服薬)は、絶食状態での服用が低血糖を引き起こすリスクがあるため、事前に主治医または検査を行う医療機関へ相談することが必要です。
サプリメントは食品由来成分を含み、胆のうの収縮を促す場合があります。また、制酸薬・胃薬なども消化管の動きに影響することがあるため、服用の可否は事前に確認することをおすすめします。
薬の扱いで迷った場合は、処方医または検査を受ける医療機関に直接確認することが最も確実です。「飲んでよいかわからないから飲まない」という判断は、血圧管理などの面でリスクを生じる可能性があるため避けてください。
アルコールは消化管の動きを変化させ、腸内ガスを増やす可能性があります。検査前日の夜から控えることが望ましいとされています。
喫煙は空気の嚥下を促し、腸管ガスの増加につながります。検査当日の喫煙は可能な限り控えましょう。
ガムや飴は咀嚼・嚥下によって空気を飲み込みやすくし、腸内ガスを増やす原因になります。炭酸飲料は直接ガスを取り込むため、検査前は避けてください。
激しい運動は腸の動きを活発にし、ガスの移動や分布を変える可能性があります。検査当日の激しい運動は控えることが望ましいです。
空腹感が強い場合でも、糖分を含まない水・麦茶を少量ずつ飲むことで不快感を和らげることができます。 一度に大量に飲むと胃が膨らみ、検査に影響する場合があるため、少量ずつにとどめてください。
糖尿病の方や低血糖になりやすい体質の方は、長時間の絶食がリスクになる場合があります。検査の予約時に必ず申し出て、医師・スタッフの指示を仰いでください。
- 糖尿病や低血糖発作の既往がある方
- 胃切除後など消化器手術の既往がある方
- 複数の薬を服用中の方
- 絶食が困難な持病(透析、肝疾患など)がある方
こうした方は事前にご予約・お問い合わせのページからご相談いただくか、お電話でご確認ください。
胆のうは食事内容(特に脂肪分)に反応して収縮します。食後は胆のうが小さくなり、内部の胆石や壁の肥厚が確認しにくくなるため、胆のうの検査では空腹状態の維持が最も重要です。
膵臓は胃の背後にあり、胃内容物やガスの影響を受けやすい位置にあります。肝臓は比較的観察しやすい臓器ですが、脂肪肝の評価などには安定した空腹状態が望ましいとされています。
食後に症状が出る場合など、あえて食後の状態で検査を行うこともあります。この場合は医師の指示に従い、食事制限を設けないこともあります。
腹部エコーは放射線を使用しないため、妊娠中・授乳中でも安全に受けられる検査です。ただし、食事制限については体調や週数に応じた配慮が必要なため、事前に医師へご相談ください。
便秘やガスが多い状態では、腸内の内容物が超音波をさえぎり、観察精度が低下することがあります。検査前に便秘の状態が続いている場合は、医療機関へあらかじめ伝えておくとよいでしょう。
小児は長時間の絶食が困難な場合があり、年齢や体格に応じた柔軟な対応が必要です。高齢者も脱水や低血糖への配慮が求められることがあります。いずれの場合も、事前に医療機関へ相談することをおすすめします。
受付後、検査着に着替える場合があります。問診票に症状・服薬情報などを記入し、超音波技師または医師による検査を受けます。
腹部エコー単体であれば、通常10〜20分程度で終了します。精密に観察する場合や、観察が難しい部位がある場合は時間がかかることがあります。
基本的に痛みはありません。ゼリー状の超音波伝導ゲルを腹部に塗り、プローブ(探触子)を皮膚に当てながら検査します。押される感覚や、体位変換を求められることはありますが、侵襲(身体への傷)はありません。
- 肝臓の形態・脂肪肝・肝のう胞・腫瘤性病変
- 胆のうの結石・ポリープ・壁の肥厚
- 膵臓の形態変化・膵管の拡張
- 腎臓の結石・水腎症・腫瘤
- 脾臓の腫大
- 腹水の有無
- 腹部大動脈の拡張(大動脈瘤)
腸管ガスの影響や体格によっては、腹部エコーだけでは確認が難しい部位が生じることがあります。その場合はCT・MRI・内視鏡検査などの追加検査を提案されることがあります。腹痛の原因検索については腹痛の治し方・治療法|内科医がわかりやすく解説【たまプラーザ】も参考にしてください。
- 右上腹部の痛み(食後に増悪する場合)
- 黄疸(皮膚や白目の黄染)
- 食欲不振・体重減少が続く場合
- 腹部のしこりや張り感が持続する場合
以下の症状がある場合は、速やかに医療機関を受診するか、症状が重篤な場合は救急受診を検討してください。
- 突然の激しい腹痛
- 腹痛とともに発熱・嘔吐が重なる場合
- 意識の変容・ぐったりした状態
- 便に血が混じる場合(大量の血便)
下腹部の痛みが気になる方は下腹部痛みとは?原因・症状・対処を内科医が解説【たまプラーザ】もあわせてご参照ください。
食事制限の内容は、検査目的・医療機関・患者さんの状態によって異なります。最も確実なのは予約時に受け取った案内を守ることです。 一般的な目安は「検査4〜6時間前からの絶食・水やお茶は少量可」です。
服薬・持病・妊娠などの事情がある場合は、必ず事前に医療機関へ確認してください。「食べてしまったがどうすればよいか」という場合も、来院前に電話で確認するとスムーズです。
- お腹痛いとは?原因・症状・治し方まで内科医が解説【たまプラーザ】(親ピラーページ)
- 下腹部痛みとは?原因・症状・対処を内科医が解説【たまプラーザ】
- 腹痛の治し方・治療法|内科医がわかりやすく解説【たまプラーザ】
佐藤 靖郎(さとう やすお)
医師(医学博士)/AIプラスクリニックたまプラーザ 監修医
専門: 消化器・内科(消化器外科/内視鏡/一般内科)
略歴:
1988年 福島県立医科大学医学部卒業、医師免許取得。1997年 同大学大学院修了、博士号取得。国立国際医療研究センター、東京新宿メディカルセンター、NTT東日本関東病院、横浜市立大学関連病院、国立病院機構横浜医療センター外科医長・救命救急センター副部長、済生会若草病院(横浜市)外科部長・内視鏡センター・診療部長を歴任。丸亀医療センター・佐々木病院副理事長、日立おおみか病院理事を経て現在に至る。
公的役割:
厚生労働省「地域連携クリティカルパスモデルの開発」班研究員、全国保健所長会 地域連携パス推進班アドバイザー、神奈川県がん診療連携協議会 地域連携クリティカルパス部会 相談役。
たまプラーザで内科・消化器の気になる症状がある方へ。腹部エコー検査の受診の目安や食事制限に関するご不明点など、お気軽にご相談ください。
TEL:045-909-0117(横浜市青葉区・たまプラーザ)
初診の際は、保険証・お薬手帳・(お持ちであれば)健診結果や紹介状をご用意いただくとスムーズです。ご予約はWebまたはお電話で承っております。