おならと一緒にうんちが出る(大人)|原因・対処法・受診の目安を消化器外科医が解説
「おならをしたら、少し便が出てしまった」「ガスを出そうとすると、便が一緒に漏れてしまう」——こうした悩みを抱えながらも、なかなか人に相談できずにいる大人の方は少なくありません。この状態は医学的に「便失禁」や「便漏れ」と呼ばれる症状に近く、一時的なものから繰り返すものまで、さまざまな程度があります。本記事では、消化器外科専門医の立場から、起こる仕組みや考えられる原因、対処法、受診の目安をわかりやすく整理します。
おならと一緒にうんちが出るのはなぜ?考えられる仕組み
おならと便は、どちらも腸・直腸・肛門を通って体外に排出されます。通常、肛門括約筋(内括約筋・外括約筋)が便とガスをある程度区別して調節しますが、便の性状や腸の動き、括約筋の状態によってはガスの排出と同時に便が漏れることがあります。
便がゆるいと漏れやすい理由
下痢のときのように便が液状または半液状になると、肛門のわずかな隙間からも流れ出やすくなります。固形便に比べて保持が難しく、ガスの圧力が加わるだけで便が一緒に出てしまうことがあります。
直腸に便が残っているときに起こること
直腸に便が蓄積した状態では、強い便意がなくても、ガスの排出時に周囲の便が押し出されることがあります。特に便秘が続いて直腸内に便が長くとどまっている場合や、便意を感じにくくなっている場合に起こりやすいとされています。
肛門括約筋や骨盤底の機能低下
加齢、出産(特に器械分娩や会陰切開・裂傷の既往)、肛門周囲の手術歴などによって、括約筋や骨盤底筋の機能が低下することがあります。こうした場合、ガスと便を分けてコントロールする力が弱まり、便が漏れやすくなることがあります。
考えられる主な原因
下痢
感染性胃腸炎や食あたり、薬剤の副作用、冷え、過度のストレスなどで便がゆるくなると、一時的に便漏れが起こりやすくなります。多くの場合、原因が解消されれば改善します。
過敏性腸症候群(IBS)
腹痛や便通異常(下痢・便秘を繰り返す)を特徴とするIBSでは、ガスの産生が増加しやすく、下痢型の方を中心に便漏れを経験されるケースがあります。日本消化器病学会のIBS診療ガイドラインでも、便失禁はQOL(生活の質)に影響する症状として言及されています。
便秘と便塞栓(溢流性便失禁)
便秘が長期間続くと、直腸内に硬い便が詰まった状態(便塞栓)が生じることがあります。この状態では、硬い便の隙間からゆるい便やガスが漏れ出す「溢流性便失禁」が起こることがあります。「なんとなく下痢気味」と思っていたら、実は重度の便秘だったというケースもあります。うんちが出そうで出ないという状態が続く場合も、同様のメカニズムが背景にある可能性があります。
痔や肛門のトラブル
痔核(いぼ痔)や裂肛(切れ痔)による痛みを避けるために排便を我慢し続けると、便秘や排便コントロールの乱れにつながることがあります。また、痔核が大きく脱出した状態では、肛門が完全に閉じにくくなるケースもあります。
加齢・出産・手術後の影響
60歳以上になると、骨盤底筋や括約筋の筋力低下、肛門周囲の感覚鈍化が少しずつ進むことがあります。女性では経膣分娩時の括約筋損傷が、長年経ってから便漏れとして現れることもあります。肛門・直腸周囲の手術後に括約筋機能が変化する場合もあります。
神経の病気や全身疾患
糖尿病性神経障害、脳血管障害、脊髄疾患、多発性硬化症などでは、腸や肛門の神経支配が乱れ、便失禁が起こることがあります。これらが疑われる場合は、背景にある疾患の管理も重要です。
どんな症状があれば注意が必要か
便が少量でも繰り返し漏れる
「たまに起こる」ではなく、頻度が増している、外出時に不安になる、下着が汚れることが続くといった場合は、医療機関での評価が勧められます。
血便・黒色便・強い腹痛を伴う
便に血が混じる(鮮血・黒色便)、強い腹痛がある場合は、消化管出血、炎症性腸疾患、大腸がんなどの可能性もあるため、早めの受診が望ましいです。便の色の変化についてはうんこに関する解説記事も参考にしてください。
発熱、脱水、体重減少がある
感染症や炎症性疾患、悪性疾患などが背景にある可能性があります。自己判断で様子を見続けることは避け、医療機関にご相談ください。
高齢者で急に始まった
新たな薬の服用(特に下剤・抗菌薬・降圧薬など)、便秘の悪化、神経疾患の進行など、複数の原因が考えられます。介護者や家族も気づいた際は医療機関への相談を検討してください。
自分でできる対処法
受診前・受診後にかかわらず、生活習慣の見直しが症状の改善に役立つことがあります。
便の状態を整える
1日1.5〜2リットル程度の水分摂取、食物繊維(野菜・海藻・豆類など)の適度な摂取は、便の性状を整えるうえで基本となります。脂っこい食事、香辛料、アルコール、冷たい飲食物は腸を刺激することがあるため、症状が強い時期には控えることが勧められます。
排便習慣を整える
便意を強く我慢しすぎると、直腸感覚が鈍くなることがあります。朝食後など決まった時間にトイレに行く習慣をつけること、トイレで前傾姿勢をとることが、排便の助けになることがあります。
下痢や便秘を悪化させる生活習慣を見直す
過度のストレス・睡眠不足・運動不足・過度の飲酒は、腸の動きや自律神経に影響を与えることが知られています。できる範囲での生活習慣の見直しが有益です。
市販薬を使う際の注意
下痢止め(ロペラミドなど)や便秘薬を自己判断で長期連用することは、原因によっては症状を悪化させる可能性があります。症状が続く場合や繰り返す場合は、医師・薬剤師にご相談ください。
医療機関ではどんな診察・検査を行うか
問診で確認する内容
いつ頃から始まったか、どの程度の頻度・量で漏れるか、便の性状(下痢・硬便・普通便)、腹痛や血便の有無、服薬歴(下剤・抗菌薬・降圧薬など)、手術歴、出産歴(女性)、体重減少の有無などを確認します。
必要に応じて行う検査
- 便検査:感染症(細菌・寄生虫)の確認
- 血液検査:炎症、貧血、血糖値、甲状腺機能など全身状態の評価
- 腹部画像検査(腹部X線・超音波・CT):腸管の状態、便秘の程度、腫瘤の有無
- 大腸内視鏡検査:炎症性腸疾患、大腸がんなどの除外
- 肛門機能検査(肛門内圧検査・超音波検査):専門施設で括約筋の状態を詳しく評価
何科を受診すべきか
消化器内科
下痢、便秘、腹痛、便通異常が中心の場合は、まず消化器内科への相談が適しています。
肛門科・大腸肛門外科
便失禁や肛門の締まりの問題、痔などが疑われる場合は、大腸肛門外科や肛門科が専門的な評価を行います。括約筋機能の検査や骨盤底リハビリなど、専門的な治療が検討されることがあります。
早急な受診が必要な場合
強い腹痛・血便・発熱・脱水・急な神経症状(手足のしびれ・麻痺など)を伴う場合は、速やかに医療機関を受診してください。
よくある質問
おならと一緒にうんちが出るのは病気ですか?
一時的な下痢に伴って起こることもあり、必ずしもすべてが疾患というわけではありません。ただし、繰り返す場合や生活に支障がある場合は、IBS・便失禁・便塞栓などの確認のため、医療機関への相談が勧められます。
大人で急に起こるのはなぜですか?
食事内容の変化、感染性胃腸炎、薬の副作用、便秘の悪化、肛門機能の変化など、複数の要因が考えられます。原因によって対応が異なりますので、繰り返す場合は受診をご検討ください。
便失禁と下痢の違いは何ですか?
下痢は便の性状が液状・泥状になる状態を指し、便失禁は意図せず便が漏れてしまう状態を指します。下痢が便失禁の原因になることも多く、両者が重なって起こるケースもあります。便の色や性状の変化が気になる方は緑色のうんち 大人やうんち 緑 大人の解説も参考にしてください。
何日くらい続いたら受診すべきですか?
明確な日数の基準はありませんが、数日経っても改善しない、繰り返す、出血や腹痛を伴う、日常生活に支障があるという場合は、早めに受診されることをお勧めします。
市販薬で様子を見ても大丈夫ですか?
原因によっては市販薬の使用が症状を長引かせたり、悪化させたりすることがあります。特に便秘による溢流性便失禁では、下痢止めの使用が逆効果になるケースがあります。長引く場合は自己判断を避け、医師・薬剤師にご相談ください。
受診の目安
以下に当てはまる場合は、医療機関への相談をご検討ください。
| 状況 | 対応の目安 |
|---|---|
| 数日以内に改善した一時的な下痢に伴うもの | 様子をみることも可能(悪化時は受診) |
| 1〜2週間以上繰り返す | 医療機関への受診を勧める |
| 血便・黒色便・強い腹痛を伴う | できるだけ早めに受診 |
| 発熱・脱水・体重減少がある | 早めに受診 |
| 急な神経症状(しびれ・麻痺)を伴う | 速やかに受診 |
| 高齢者で急に始まった | 早めに受診・相談 |
まとめ
「おならと一緒にうんちが出る」という状態は、下痢による一時的なものから、IBS・溢流性便失禁・括約筋機能低下・神経疾患など多様な背景まで、さまざまな原因が考えられます。一時的な下痢に伴う場合は自然に落ち着くことも多いですが、繰り返す・頻度が増している・血便や腹痛を伴うといった場合は、消化器内科や大腸肛門外科での評価が勧められます。一人で悩まずに、まずは専門医にご相談ください。
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本記事の監修医師
佐藤 靖郎(さとう やすお)
医師(医学博士)/AIプラスクリニックたまプラーザ 理事長
専門:消化器外科
福島県立医科大学大学院 外科学修了。NTT東日本関東病院や国立病院機構横浜医療センター等で外科医長・救命救急センター副部長を歴任。厚生労働省の地域連携クリティカルパスモデル開発の班研究員、神奈川県がん診療連携協議会相談役などを務める。
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