下痢でおしりの穴がヒリヒリ・痛い|原因と対処法を内科医が解説【たまプラーザ】
下痢が続くとおしりの穴(肛門周囲)がヒリヒリ・ズキズキと痛くなることがあります。これは、頻回の排便や便の刺激によって肛門周囲の皮膚が傷みやすくなるために起こるもので、多くの場合は適切なケアと下痢の改善によって症状が落ち着いてきます。ただし、出血・発熱・膿の排出などを伴う場合は、早めに医療機関を受診することが大切です。
本記事では、下痢によるおしりのヒリヒリ・痛みの原因・対処法・受診の目安を、消化器内科の観点からわかりやすく解説します。なお、症状の判断・診断・治療は必ず医師の診察を前提としてください。
本記事は「下痢とは?原因・症状・治し方まで内科医が解説【たまプラーザ】」のクラスター記事です。下痢全般についてはピラーページもあわせてご覧ください。
下痢でおしりの穴がヒリヒリ痛いのはなぜ?
まず知っておきたい症状の特徴
肛門周囲の皮膚は非常に薄く繊細です。下痢が続くと、排便の回数が増えるだけでなく、便の水分・消化酵素・胆汁酸などの刺激性成分が肛門周囲の皮膚に繰り返し触れることになります。その結果、皮膚が赤くただれ、ヒリヒリ感・灼熱感・痛みとして自覚されます。
受診前に押さえたい考え方
「下痢が治ればおしりの痛みも改善する」ケースが多い一方、痔・感染・炎症などが重なっている場合は別途対処が必要です。症状が長引く・悪化するときは自己判断でのケアに頼らず、医師に相談することをお勧めします。
下痢でおしりの穴が痛くなる主な原因
肛門まわりの皮膚が便や拭き取りで刺激される
排便後に強く拭くことで、もともと弱い肛門周囲の皮膚に微細な傷ができます。下痢中は拭く回数も増えるため、摩擦による皮膚ダメージが積み重なりやすくなります。
酸性の便や回数の多い下痢による刺激
下痢便は通常便より酸性度が高く、消化酵素や胆汁酸を多く含むことがあります。これらが皮膚に繰り返し触れると、化学的な刺激となって炎症・びらん(ただれ)を引き起こします。
切れ痔(裂肛)が起きている場合
下痢便であっても、排便の勢いや刺激によって肛門の皮膚に小さな裂け目(裂肛)が生じることがあります。排便時・排便後にピリッとした鋭い痛みがある場合は裂肛が疑われます。
いぼ痔(痔核)や肛門周囲炎が関係する場合
もともと痔核(内痔核・外痔核)がある方は、下痢による刺激でさらに炎症が強まることがあります。また、肛門周囲に細菌感染が起きると肛門周囲炎を発症し、ズキズキとした痛みや腫れが現れることがあります。
感染性胃腸炎などで肛門周囲が荒れる場合
ウイルスや細菌による感染性胃腸炎では、下痢の回数が非常に多くなり、肛門周囲の皮膚が著しく荒れやすくなります。感染の種類によっては便の性状が強く刺激的となる場合もあります。
こんな症状があるときは注意が必要
出血がある
明らかな出血(鮮血・便への血液混入など)がある場合は、裂肛・痔核の悪化のほか、大腸疾患が隠れている可能性も否定できないため、医師への相談が勧められます。
強い痛みが続く
「排便後しばらくしても痛みが引かない」「日常生活に支障が出るほど痛い」場合は自己対処の限界を超えている可能性があります。
発熱や腹痛を伴う
発熱・強い腹痛・悪心・嘔吐を伴う下痢は、感染性胃腸炎や炎症性腸疾患など、医師の診察が必要な疾患のサインである場合があります。
膿・腫れ・しこりがある
肛門周囲に膿・腫れ・熱感・しこりがある場合は、肛門周囲膿瘍(こうもんしゅういのうよう) の可能性があります。放置すると痔ろう(肛門と皮膚をつなぐトンネル状の病変)に移行することがあるため、早期受診が大切です。
黒い便、強い脱水症状がある
黒いタール状の便(タール便)は上部消化管からの出血を示すサインとなる場合があります。また、下痢による強い脱水(ふらつき・尿量の著明な減少・意識の変化など)は速やかな医療対応が必要です。
下痢でおしりの穴がヒリヒリするときの対処法
便回数を増やさないよう水分補給を意識する
脱水を防ぐために水分補給は重要ですが、一度に大量に飲むと腸を刺激することがあります。経口補水液や白湯などを、少量ずつこまめに摂ることが勧められます。
刺激の少ない食事を心がける
油脂・香辛料・アルコール・カフェイン・乳製品(乳糖不耐症の場合)は下痢を悪化させることがあります。おかゆ・うどん・白身魚・豆腐など消化に良いものを選ぶとよいでしょう。
ぬるま湯でやさしく洗い、こすりすぎない
排便後はシャワーやお湯をかけて、石鹸は使わずにやさしく流す方法が皮膚への負担を軽減します。ゴシゴシとこすることは逆効果です。
トイレットペーパーの代わりに温水洗浄や濡れたやわらかい紙を活用する
温水洗浄便座(ウォシュレット等)を活用するか、水で湿らせたやわらかいティッシュで軽くおさえる(押さえ拭き)ようにすると、摩擦を大幅に減らせます。ただし、洗浄後はやさしく水分をおさえて取り除いてください。
皮膚を保護する市販薬やワセリンの使い方
肛門周囲の皮膚を保護するためにワセリン(白色ワセリン)を薄く塗る方法は、刺激を和らげる一助となります。また、ヒドロコルチゾン含有の市販軟膏(炎症を抑える成分を含む)も短期使用であれば選択肢になりますが、使用前に添付文書をよく確認し、長期連用は避けてください。不安な場合は薬剤師や医師にご相談ください。
なるべく安静にして肛門への刺激を減らす
長時間の座位・激しい運動は肛門部への圧迫や摩擦を増やします。症状がある間はなるべく安静を心がけましょう。
やってはいけない対処
強くこする・何度も拭く
摩擦によって皮膚の傷が深くなり、炎症が悪化します。
アルコール成分の強い清拭
アルコールは肛門周囲のただれた皮膚にとって強い刺激となり、症状を悪化させることがあります。
自己判断で下痢止めを使い続けること
下痢止め(止瀉薬)の安易な使用は、感染性胃腸炎の場合に細菌・毒素の排出を妨げる可能性があります。使用の判断については医師や薬剤師にご相談ください。詳しくは下痢止めとは?原因・症状・対処を内科医が解説【たまプラーザ】もあわせてご参照ください。
痛みが強いのに放置すること
強い痛みや悪化する症状を放置すると、肛門周囲膿瘍や痔ろうなど治療が複雑になる状態に進む可能性があります。
受診の目安
早めに内科・消化器内科を受診したほうがよい場合
- 下痢が3日以上続いている
- 発熱・血便・強い腹痛を伴う
- 水分が十分に摂れない
肛門の痛みが強いときは肛門科の受診も検討する
- 肛門周囲の腫れ・膿・しこりがある
- 排便時の出血が続く
- 市販薬を使っても改善しない
救急受診を考えるべき症状
- タール状(黒い)便や大量の血便
- 強い脱水症状(意識の変化・ふらつき・尿が全く出ない)
- 高熱と激しい腹痛が同時にある
病院ではどんな診察・治療をする?
問診で確認すること
下痢の期間・回数・性状、発熱・血便の有無、食歴・海外渡航歴・服用中の薬などを確認します。肛門の症状については、視診・触診(指診)を行うこともあります。
必要に応じて行う検査
便培養検査(感染性胃腸炎の確認)、血液検査(炎症・脱水の評価)、必要に応じて大腸内視鏡検査などが選択されます。
原因に応じた治療の考え方
- 感染性胃腸炎:水分・電解質の補給が基本。細菌性であれば抗菌薬が用いられることがあります。
- 裂肛・痔核:軟膏・座薬による局所治療、重症例では専門的な処置。
- 肛門周囲膿瘍:切開・排膿が必要となる場合があります。
下痢と肛門のヒリヒリを予防するには
日常生活でできる予防のポイント
- 手洗いの徹底(感染性胃腸炎の予防)
- バランスの良い食事・規則正しい生活で腸の環境を整える
- 排便後は強くこすらず、やさしく洗浄する習慣をつける
下痢を繰り返す人が気をつけたいこと
過敏性腸症候群(IBS)や炎症性腸疾患(クローン病・潰瘍性大腸炎)など、慢性的に下痢が続く疾患が背景にある場合は、適切な診断と治療が繰り返しの肛門トラブル予防につながります。水下痢を出し切る方法|内科医がわかりやすく解説【たまプラーザ】も参考にしてください。
よくある質問(FAQ)
下痢が治ればおしりの痛みも自然に治りますか?
多くの場合、下痢が改善し肛門周囲への刺激がなくなれば、ヒリヒリ感・痛みも徐々に落ち着いてきます。ただし、裂肛や感染が起きている場合は、下痢が治っても肛門の症状が残ることがあります。症状が続くようであれば医師への相談をお勧めします。
市販の軟膏を使っても大丈夫ですか?
ワセリンや市販の痔・肛門ケア用軟膏は、皮膚保護や炎症緩和の一助として使用できます。ただし、ステロイド含有薬の長期連用は皮膚の菲薄化(薄くなること)などの副作用があるため、添付文書の用法・用量を守り、改善しない場合は医師に相談してください。
温めるのと冷やすのはどちらがよいですか?
一般的に、肛門周囲の血行を促し筋肉の緊張をほぐす観点から、温める(入浴・坐浴など)ほうが症状を和らげやすいとされています。冷やすことで一時的に痛みが和らぐ場合もありますが、長時間の冷却は血行を悪化させることがあります。発熱・膿がある場合は自己判断で温めず医師に相談してください。
下痢のたびにおしりが痛くなるのは病気ですか?
繰り返す下痢のたびに肛門が痛くなる場合、過敏性腸症候群・炎症性腸疾患・慢性痔核など、継続的な対処が必要な状態が背景にあることがあります。頻繁に症状が出るようであれば、一度消化器内科・内科を受診して原因を調べることをお勧めします。
子どもでも同じ対処法でよいですか?
基本的なケア(やさしく洗浄する・水分補給など)は共通ですが、市販薬の使用は年齢制限があるものも多く、小児への適用を必ず確認してください。症状が強い・長引く・血便がある場合は、小児科・内科を受診するようにしてください。
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本記事の監修医師
佐藤 靖郎(さとう やすお)
医師(医学博士)/AIプラスクリニックたまプラーザ 監修医
専門:消化器・内科(消化器外科/内視鏡/一般内科)
略歴:
1988年 福島県立医科大学医学部卒業、医師免許取得。1997年 同大学大学院修了、博士号取得。国立国際医療研究センター、東京新宿メディカルセンター、NTT東日本関東病院、横浜市立大学関連病院、国立病院機構横浜医療センター 外科医長・救命救急センター副部長、済生会若草病院(横浜市)外科部長・内視鏡センター・診療部長を歴任。丸亀医療センター・佐々木病院副理事長、日立おおみか病院理事を経て現在に至る。
公的役割:
厚生労働省「地域連携クリティカルパスモデルの開発」班研究員/全国保健所長会 地域連携パス推進班アドバイザー/神奈川県がん診療連携協議会 地域連携クリティカルパス部会 相談役
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