大腸がんの下痢はなぜ起こる?便秘との関係と受診の目安
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大腸がんでは、腫瘍が腸の通り道を狭めたり、腸の動きや粘膜の状態を変えたりすることで、下痢・便秘・両者の交互発生など多様な便通異常が起こります。治療中には手術や抗がん剤の影響も加わり、症状はさらに複雑になることがあります。本記事では「なぜ起こるのか」「普通の下痢・便秘との違い」「自分でできるケア」「受診の目安」を順にまとめます。まずはご自身の症状を整理し、気になる点は早めに主治医へご相談ください。
副作用・合併症全般のポイントは、大腸がんの副作用・合併症ケアもあわせてご覧ください。
大腸がんで下痢や便秘が起こるのはなぜか
腸の通り道が狭くなると便の状態が変わる
大腸(結腸・直腸)の内腔に腫瘍が育つと、便が通る道が物理的に狭まります。狭い部分を便が通ろうとすると、腸が過剰に収縮して下痢状になることがあります。一方、狭窄が進むと便が詰まり、便秘や腹部膨満(おなかの張り)をきたすこともあります。
腫瘍の位置によって症状が出やすい違いがある
右側は内腔が広く便が水様なため、狭くなっても下痢症状が出にくく、かえって発見が遅れやすい場合があります。左側・直腸では内腔が狭く、便が固まった状態で通過するため、便形の変化や便秘が現れやすいとされています(国立がん研究センター がん情報サービス参照)。
便秘と下痢が交互に起こることがある理由
腫瘍による部分的な狭窄がある場合、便が一定量たまって圧が高まると、液状の便だけが狭い部分を通り抜けて下痢のように出ることがあります。その後また便が詰まって便秘になる——というサイクルが繰り返されます。「便秘だったのに急に下痢になった」という変化は、単なる体調不良ではなく腸内に何らかの通過障害が生じているサインである可能性があります。
大腸がんでみられる下痢・便秘の特徴
普通の下痢や便秘との違い
一時的な食あたりやストレスによる下痢・便秘は、数日で改善することが多いです。一方、大腸がんに関連した便通異常では、2〜3週間以上便通の変化が続く、以前と比べて明らかに便の状態や太さが変わった、腹部の不快感や痛みを伴うといった特徴が見られることがあります。
便が細くなる・残便感があるときに考えること
便が鉛筆のように細くなる(鉛筆様便)のは、直腸や肛門近くの腸が腫瘍で狭まっているサインの一つとして知られています。また、排便後も「まだ出し切れていない」という残便感(残便感・しぶり腹)が続く場合も、直腸付近に病変がある可能性を否定できません。便の細さや残便感の変化が続く場合は、自己判断せずに医療機関へのご相談をお勧めします。
血便や粘液便を伴う場合に注意したいこと
下痢や便秘に加え、血便(赤い血が混じる・便に血がつく)や粘液便(ねばねばした粘液が混じる)を伴う場合は、より注意が必要です。これらの症状は痔核(いぼ痔)でも起こるため混同されやすいですが、大腸がんでも同様の症状が現れます。血便を自己判断で痔と決めつけるのは危険です。内視鏡検査で原因を確かめることが重要です。
治療中に下痢・便秘が起こりやすい場面
手術後に腸の動きが変化することがある
大腸の一部を切除する手術の後は、腸の連続性が変わるため、便通が一時的に乱れることがよくあります。腸の蠕動(ぜんどう:腸が波状に動いて便を送り出す運動)が落ち着くまでの間、下痢や頻便が続く場合があります。直腸を切除した場合は、排便回数の増加・便意切迫(急にトイレに行きたくなる)・便失禁傾向が数か月単位で続くこともあります。
抗がん剤や支持療法の影響で便通が乱れることがある
大腸がんの化学療法で用いられるオキサリプラチン、フルオロウラシル(5-FU)、カペシタビンなどは、腸粘膜へのダメージにより下痢を起こしやすい薬剤です。一方、制吐薬(吐き気止め)として使われるセロトニン拮抗薬(5-HT₃拮抗薬)は便秘を引き起こしやすく、オピオイド系の鎮痛薬(モルヒネなど)も腸の動きを低下させるため便秘の原因となります。
食事量低下・脱水・運動不足が便秘を悪化させることがある
治療に伴う食欲不振・吐き気で食事量・水分摂取量が減ると、腸への刺激が乏しくなり便秘が悪化しやすくなります。入院中や療養中の活動量低下も腸の動きを鈍らせます。これらが重なると便秘が慢性化しやすいため、可能な範囲での水分補給と体を動かすことが大切です。
自分でできる便通ケアの基本
水分摂取と食事の工夫
- 水分は1日1,500〜2,000 mL程度を目安に(治療中は主治医の指示に従ってください)。
- 水溶性食物繊維(納豆・海藻・果物など)は便を柔らかくする効果が期待されています。
- 腸の状態に合わせて、刺激の強いもの(辛いもの・アルコール・炭酸)は控えめにしましょう。
下痢のときに避けたいこと
- 脂っこい食事・乳製品(乳糖不耐の方)・冷たいもの・生野菜など腸への刺激になりやすい食品。
- 水分が失われやすいため、スポーツドリンク(薄めたもの)や経口補水液で電解質も補いましょう。
- 下痢が1日に5〜6回を超える、または発熱・腹痛が強い場合は自己管理の範囲を超えます。
便秘のときに意識したい生活習慣
- 起床後に水分を摂ると腸が刺激されやすくなります。
- 便意を我慢せず、排便習慣を一定の時間帯に整えることを心がけましょう。
- 病状・体力の許す範囲でウォーキングなど軽い運動を取り入れましょう。
市販薬を使う前に確認したいこと
市販の下痢止め(ロペラミドなど)や便秘薬(刺激性下剤など)は、治療薬との相互作用や腸閉塞が潜む状況では使用が適さない場合があります。治療中の方は必ず主治医または担当薬剤師に相談してから使用するようにしてください。
受診・相談の目安
早めに主治医へ相談したい症状
- 2週間以上、下痢または便秘が改善しない
- 以前と比べて明らかに便の形・色・太さが変わった
- 残便感・しぶり腹が続く
- 体重が意図せず減っている(1か月で2〜3 kg以上を目安に)
すぐに受診を検討したい危険なサイン
以下の症状があれば、速やかに医療機関を受診してください。
症状が続くときに伝えるとよい情報
診察の際に以下を整理してお伝えいただくと、原因の特定がスムーズになります。
- 症状が始まった時期・頻度・1日の排便回数
- 便の性状(やわらかさ・色・血液や粘液の有無)
- 治療中の薬の種類(抗がん剤・制吐薬・鎮痛薬など)
- 食事量・水分摂取量の変化
- 発熱・腹痛・体重減少の有無
ご予約・お問い合わせ からも受診のご相談を承っております。
当院での診療から
当院(AIプラスクリニックたまプラーザ)は消化器内視鏡センターを備え、鎮静下での大腸内視鏡検査を日常的に実施しています。便通の変化や血便・残便感といった訴えに対しては、問診・腹部診察に加え必要に応じて内視鏡検査を行い、がんをはじめとする器質的疾患(腸に実際の病変がある状態)の有無を確認します。
早期がんや精密検査が必要と判断した場合は、地域の基幹病院へ速やかに紹介し、地域連携クリティカルパスを活用して術後の外来フォローを継続します。治療中に下痢・便秘が問題となっている方に対しては、使用中の薬剤(抗がん剤・制吐薬・鎮痛薬)の種類を確認しながら、管理栄養士や緩和ケアチームとも連携した対策を検討します。在宅療養支援診療所として在宅緩和ケアにも対応しており、通院が困難な方の便通管理も訪問診療の中でサポートしています。気になる症状がある方は、お気軽にご相談ください。
公的データ・ガイドラインからみた大腸がんの便通症状
大腸がん情報サービスで確認できる症状情報
国立がん研究センター がん情報サービスでは、大腸がんの代表的な症状として「便通の変化(下痢・便秘・下痢と便秘の繰り返し)」「血便」「便が細くなる」「残便感」「腹痛・腹部膨満」などを挙げています。これらは必ずしも初期症状として現れるわけではなく、腫瘍の位置・大きさ・進行度によって異なります。統計的な生存率や罹患数などの最新情報は、同サービスまたは国立がん研究センター がん統計でもご確認いただけます。
診療ガイドラインで重視される評価の視点
Mindsガイドラインライブラリ(日本医療機能評価機構)をはじめとする診療ガイドラインでは、下痢の重症度評価にCTCAEスケール(米国国立がん研究所が定める有害事象共通用語規準)が広く使われています。グレード1(症状が軽く日常生活に支障なし)からグレード4(生命を脅かすレベル)まで段階的に定義されており、治療の継続・減量・中止の判断基準として活用されます。便通症状は「数えにくい主観的な症状」ではなく、医療者が客観的に評価・記録すべき重要な副作用として扱われています。
よくある質問(FAQ)
大腸がんで下痢だけが続くことはありますか
あります。特に右側結腸(上行結腸・横行結腸)のがんでは、腸の内腔が広く便が水様のため、便秘よりも下痢・軟便が続くことがあります。また、直腸がんでも腸の炎症反応や粘液分泌の増加により、下痢が前景に立つことがあります。2週間以上続く下痢は消化器内科・外科へのご相談をお勧めします。
便秘と下痢を繰り返すのは大腸がんのサインですか
必ずしも大腸がんとは限りませんが、注意が必要なサインの一つです。過敏性腸症候群(IBS)でも同様のパターンが起こりますが、以前と比べて急に始まった変化・血便の合併・体重減少を伴う場合は、大腸がんを含む器質的疾患の除外が重要です。大腸内視鏡検査で腸の中を直接確認することが最も確実な方法です。
下痢止めや便秘薬は自己判断で使ってもよいですか
治療を受けている方は、自己判断での市販薬使用はお勧めできません。抗がん剤による下痢に下痢止めを使ってよいかどうかは薬剤と症状の程度によって異なります。また、腸閉塞が疑われる状況で下剤を使うことは危険を伴う場合があります。必ず主治医または担当薬剤師に相談してから使用してください。治療中でない方も、2週間以上続く症状には受診を優先してください。
治療が終われば下痢や便秘は落ち着きますか
手術後の下痢・頻便は、多くの場合は数か月〜1年程度かけて徐々に改善していきます。ただし、直腸切除後は「低位前方切除後症候群(LARS)」として、排便コントロールが長期にわたって難しくなる方もいます。化学療法による下痢は治療終了後に軽快することが多いですが、末梢神経障害(しびれ)などは残存することがあります。個人差が大きいため、経過を主治医と丁寧に確認していくことが大切です。なお、余命や回復期間の予測には統計的な傾向がありますが、個々の患者さんの経過は異なります。統計の数字がそのままご自身に当てはまるわけではありません。
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参考文献・出典
- 国立がん研究センター がん情報サービス「大腸がん」
- 国立がん研究センター がん統計
- 厚生労働省 がん対策
- Mindsガイドラインライブラリ(日本医療機能評価機構)
- 日本癌治療学会 がん診療ガイドライン
本記事の監修医師
佐藤 靖郎(さとう やすお) 医師・医学博士
AIプラスクリニックたまプラーザ 監修医
専門:消化器・内科(消化器外科/内視鏡/一般内科)
略歴: 1988年 福島県立医科大学医学部卒業・医師免許取得。1997年 同大学大学院修了・博士号取得。国立国際医療研究センター、東京新宿メディカルセンター、NTT東日本関東病院、横浜市立大学関連病院、国立病院機構横浜医療センター外科医長・救命救急センター副部長、済生会若草病院(横浜市)外科部長・内視鏡センター・診療部長を歴任。丸亀医療センター・佐々木病院副理事長、日立おおみか病院理事を経て現在に至る。
公的役割: 厚生労働省「地域連携クリティカルパスモデルの開発」班研究員、全国保健所長会 地域連携パス推進班アドバイザー、神奈川県がん診療連携協議会 地域連携クリティカルパス部会 相談役。
AIプラスクリニックたまプラーザのご案内
たまプラーザで大腸の症状(下痢・便秘・血便・腹痛など)が気になる方は、どうぞお気軽にご相談ください。消化器内視鏡検査をはじめ、症状の原因を丁寧に確認し、必要に応じて専門病院へのご紹介も行います。
TEL: 045-909-0117(横浜市青葉区・たまプラーザ)
初診の際は、保険証・お薬手帳・(お持ちであれば)健診結果や紹介状をご用意いただくとスムーズです。ご予約はWebまたはお電話で承ります。
免責事項
本記事は一般的な医学情報の提供を目的としており、個別の診断・治療方針を示すものではありません。症状や治療についての判断は、必ず主治医・専門医にご相談ください。記載内容は公開時点の公的情報・診療ガイドラインに基づいており、最新情報は国立がん研究センター「がん情報サービス」等でご確認ください。