LDLコレステロールが高いと言われたら|原因・リスク・生活改善と受診の目安
健康診断の結果票を手にして「LDLコレステロールが高め」と指摘を受けた経験がある方は少なくありません。しかし、LDLコレステロールが何を意味するのか、どの程度から気にすればよいのか、日常生活で何ができるのかを正確に理解している方はそれほど多くないのが実情です。
本記事では、LDLコレステロールの基本的な役割から、高値が続いた場合の体への影響、生活習慣の改善ポイント、そして受診の目安まで、医学的根拠をもとに丁寧に解説します。診断や治療の判断は医師の診察が前提となりますが、まず正しい知識を持つことが最初のステップです。
LDLコレステロールとは
コレステロールは細胞膜やホルモン、胆汁酸の材料となる脂質の一種であり、体にとって欠かせない物質です。コレステロール自体は水に溶けないため、血液中では「リポタンパク」と呼ばれるタンパク質と結合して運ばれます。
LDL(低比重リポタンパク)は、肝臓から全身の細胞へコレステロールを届ける働きを担っています。一方、HDLコレステロールは余分なコレステロールを肝臓へ回収する役割を持つため、「善玉」とも呼ばれます。
LDLが「悪玉」と呼ばれるのは、過剰になった場合に血管壁に蓄積しやすく、動脈硬化を促進する可能性があるからです。血液検査では、血清中に含まれるLDLコレステロールの濃度(mg/dL)を測定します。
LDLコレステロールが高いと言われる基準
日本動脈硬化学会の「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版」では、LDLコレステロールの管理目標値は個人のリスク分類によって異なります。一般的な健診での目安として、空腹時採血での値が140mg/dL以上の場合は「高LDLコレステロール血症」、120〜139mg/dLは「境界域高LDLコレステロール血症」とされています。
ただし、この数値だけで対応の緊急度が決まるわけではありません。心筋梗塞や脳梗塞の既往がある方、糖尿病・高血圧・慢性腎臓病などを合併している方は、より低い目標値が設定されることがあります。年齢や性別、家族歴なども考慮される重要な要素です。数値をひとつの参考として受け止めつつ、詳しい評価は医師に相談されることをお勧めします。
LDLコレステロールが高い主な原因
LDLコレステロールが高くなる原因は複数あり、多くの場合は複合的です。
- 食事内容:飽和脂肪酸(動物性脂肪、バター、ラードなど)やトランス脂肪酸(一部のマーガリン、加工食品など)の過剰摂取はLDL上昇に関連するとされています。
- 運動不足・肥満:身体活動量の低下や内臓脂肪の蓄積は脂質代謝に影響します。
- 喫煙:喫煙はHDLを低下させる一方で、動脈硬化リスクを複合的に高めることが知られています。
- 飲酒:過度な飲酒は中性脂肪の増加をまねきやすく、総合的な脂質バランスに影響します。
- 遺伝的要因:「家族性高コレステロール血症」は遺伝子変異によりLDLが著しく上昇する疾患であり、食事や運動だけでは改善が難しいケースがあります。
- 年齢・ホルモン変化:閉経後の女性はエストロゲンの減少に伴いLDLが上昇しやすいとされています。
- 基礎疾患:甲状腺機能低下症、慢性腎臓病、ネフローゼ症候群などが原因となる「二次性高脂血症」もあります。
放置するとどうなるか
LDLコレステロールが長期にわたって高い状態が続くと、血管壁の内側にコレステロールが蓄積し、「プラーク」と呼ばれる塊が形成されます。これが動脈硬化の進行です。動脈硬化が進むと血管が硬くなり、内腔が狭くなることで、心筋梗塞や脳梗塞、末梢動脈疾患などのリスクが高まる可能性があります。
重要なのは、LDLコレステロールが高い状態だけで直ちに何か起きるわけではなく、他のリスク因子(高血圧・糖尿病・喫煙・肥満など)と重なることで相乗的にリスクが高まるとされている点です。「LDLが少し高いだけだから大丈夫」と自己判断せず、総合的な評価を受けることが大切です。
LDLコレステロールが高いときに確認したいこと
LDLコレステロールの数値は単独ではなく、以下の情報と合わせて評価されます。
- HDLコレステロール:HDLコレステロールが低い場合は動脈硬化リスクが高まるとされています。
- 中性脂肪(トリグリセライド):高値の場合は食事や飲酒との関連が疑われます。
- 血圧・血糖値(HbA1c):高血圧・糖尿病の合併はリスクを高めます。
- 喫煙歴・家族歴:心血管疾患の家族歴がある場合はリスク評価に影響します。
- 体重・BMI・腹囲:メタボリックシンドロームの評価に使われます。
これらを総合的に見た上で、医師が管理の方針を検討します。
自分でできる生活改善
食事の見直し
飽和脂肪酸(牛・豚の脂身、バター、生クリームなど)やトランス脂肪酸(一部のショートニングやマーガリン)を控えることが基本とされています。代わりに取り入れたいのは以下のような食品です。
- 魚(特に青魚):DHAやEPAなどのオメガ3系脂肪酸を多く含みます。
- 食物繊維が豊富な野菜・豆類・海藻・きのこ:コレステロールの吸収を穏やかにする働きが期待されます。
- 大豆製品(豆腐・納豆など):植物性タンパク質と大豆イソフラボンを含みます。
- コレステロールを多く含む食品(卵・内臓類など):個人差があるため、量の調整を医師や管理栄養士と相談するのが望ましいです。
運動習慣
ウォーキングや軽いジョギング、水泳などの有酸素運動が推奨されます。目安として、週に合計150分程度の中等度の有酸素運動が示されていますが、まずは「1日10分のウォーキングを習慣にする」など、継続しやすい目標から始めることが大切です。エレベーターではなく階段を使う、一駅分歩くといった日常活動量の積み上げも有効です。
体重管理
肥満(特に内臓脂肪型肥満)はLDLコレステロールや中性脂肪を高めやすい傾向があります。体重を適正範囲に近づけることで脂質代謝が改善する場合がありますが、急激な食事制限は栄養バランスを崩す恐れがあるため、緩やかな改善を目指すことが重要です。
禁煙と飲酒の見直し
喫煙はHDLコレステロールを低下させるとともに、動脈硬化を直接促進する作用があるとされています。禁煙は脂質管理だけでなく、心血管疾患の総合的なリスク低減につながります。飲酒は適量(一般的に1日アルコール20g程度が目安とされています)を超えると中性脂肪の増加をまねくため、量と頻度の見直しが求められます。
薬物治療が検討されるケース
生活習慣の改善を続けても目標値に達しない場合や、すでに心筋梗塞・狭心症などの心血管疾患の既往がある場合、家族性高コレステロール血症が疑われる場合などは、医師の判断のもとで薬物療法が検討されることがあります。
主な薬の種類
- スタチン系薬:肝臓でのコレステロール合成を抑制し、LDLを低下させる薬として広く使われています。
- エゼチミブ:腸からのコレステロール吸収を抑える薬で、スタチンと組み合わせて使用されることがあります。
- PCSK9阻害薬:主に家族性高コレステロール血症や心血管疾患リスクが特に高い方に用いられる注射薬です。
- フィブラート系・EPA製剤:主に中性脂肪が高い場合に使われます。
薬を使うときの注意点
薬を服用する際は定期的な採血による効果・副作用のモニタリングが重要です。スタチン系薬では稀に筋肉痛や肝機能への影響が報告されています。自己判断での中止は脂質値の急な悪化をまねく可能性があるため、必ず医師の指示に従って使用を継続・変更してください。
健診結果を受け取った後の行動
健診結果でLDLコレステロールの高値を指摘されたら、まず以下を確認してください。
- 他の数値との組み合わせを確認する:血圧・血糖・HDL・中性脂肪なども同時に確認します。
- 「要再検査」「要精密検査」の指示がある場合は早めに受診する:指示がなくても気になる方は医療機関に相談することができます。
- 生活習慣の見直しを始める:結果が届いたその日から、食事や運動の振り返りを始めるきっかけにしましょう。
受診の目安
以下のような場合は、医療機関への受診をお勧めします。
- LDLコレステロールが140mg/dL以上の状態が続いている
- 健診で「要受診」「要精密検査」と指示されている
- 胸の痛み・息切れなど気になる症状がある
- 家族に若いうちに心筋梗塞や脳梗塞を発症した方がいる
- 糖尿病・高血圧・慢性腎臓病などの持病がある
症状がないからといって安心せず、数値が気になる場合は早めに専門家に相談されることが大切です。
何科を受診すればよいか
LDLコレステロールの管理は内科・循環器内科が一般的な受診先です。糖尿病が合併している場合は糖尿病内科も選択肢となります。どの科を受診すべか迷う場合は、かかりつけの内科医にまず相談するのが最初のステップとして適切です。健診結果票を持参すると、より詳しい評価を受けやすくなります。
よくある質問
LDLコレステロールが高いだけで症状はありますか
LDLコレステロールが高い状態では、通常自覚症状はほとんどありません。「サイレントリスク」とも呼ばれ、健診や血液検査で偶然発見されることが多いのが特徴です。だからこそ定期的な健診が重要です。
食事だけで下がりますか
食事の改善で一定程度の改善が見込まれる方もいますが、遺伝的要因が強い場合や、もともとの数値が高い場合は生活習慣の改善だけでは不十分なこともあります。個人差が大きいため、経過を見ながら医師と方針を検討することが大切です。
すぐに下げる方法はありますか
極端な食事制限や特定食品の過剰摂取など、短期間での劇的な改善を目指す方法は、栄養バランスの崩れや体調不良をまねくことがあります。継続可能な食事・運動習慣の改善が、長期的なリスク管理において重要です。
数値が少し高いだけなら様子見でよいですか
「少し高い程度」であっても、年齢・既往歴・家族歴・他のリスク因子によって対応は大きく変わります。また、HDLコレステロールが高い場合にどうなるかといった他の数値との組み合わせも評価の材料となります。自己判断で様子見を続けることは避け、医師に確認することをお勧めします。
サプリメントは有効ですか
紅麹由来のモナコリンKや植物ステロールなど、一部のサプリメントについて研究が行われていますが、エビデンスの質や安全性には製品によってばらつきがあります。また、服用中の薬との相互作用が生じる場合もあります。サプリメントを検討する際は必ず医師に相談してください。
まとめ
LDLコレステロールが高いと言われたとき、まず大切なのは「その数値が自分にとって何を意味するか」を正しく理解することです。原因はさまざまであり、食事・運動・体重管理・禁煙など生活習慣の見直しが基本となります。一方で、リスクが高い場合や生活改善だけでは不十分な場合は、医師の指導のもとで薬物療法が検討されることもあります。
健診結果を受け取ったら、数値を放置せず、まずかかりつけ医や専門医に相談することが、将来の心血管疾患リスクを管理するうえでの第一歩です。
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本記事の監修医師
佐藤 靖郎(さとう やすお)
医師(医学博士)/AIプラスクリニックたまプラーザ 理事長
専門:消化器外科
福島県立医科大学大学院 外科学修了。NTT東日本関東病院や国立病院機構横浜医療センター等で外科医長・救命救急センター副部長を歴任。厚生労働省の地域連携クリティカルパスモデル開発の班研究員、神奈川県がん診療連携協議会相談役などを務める。
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